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思考33 本格始動!※手を着けるとは言っていない〈Bチーム〉


「お久しぶりの更新だぞい!」

「ブレインズ一番のマイペースは宵闇くん説ある」


【幻想の部屋】


 小部屋へと続くドアがみっつと音響セットがある。

 カピバラ一匹と姿なきブレインズBチームがいる。

 



「ちょっと宵闇ちゃん! 何あのSFの部屋で始まった実況中継は!?」

「唐突な展開過ぎて驚きまくったんだが!?」

「ボクたち全員白の部屋の中継テレビでかぶりつきで見ちゃったよー」

「まあかぶりつくも何も」

「肉体ないけどな!」

「いつものブレインズジョーク定期」

「いいなぁ楽しそうだなぁ」

「私たちもつくった世界であそびたい」

「冒険したい!」

「探検したい!」

「こっちにもしらず君と遠闇ちゃんを招待したい!」

「つまりバカ騒ぎしたいってことだな!」

「遠闇イコールバカ騒ぎに直結させるのやめたってよぉ!?」

「誰もそこまでは言ってないんだよなぁ」

「遠闇イコールバカ騒ぎの図式がブレインズの間で共通認識となりつつあるというこの事実」

「それにしても、あの生物の名前ややこしすぎない? レポート読んで一瞬【ドラゴン】かと思ったらまさかの【ドラコン】だったよ?」

「名前から色々事情が察せられる」

「ドラゴンに……なり損ねたんだな、きっと……」

「こっちよりも生態系づくりが順調に進んでるイメージのAチームでもまだドラゴン誕生には至らなかったかー」

「次回に期待だな!」

「おーいそろそろBチームの話し合いに戻るぞー」

「はーい!」



「それで今回はどんな話し合いをするの?」

宵闇|《実は、君たちに今言うべきかちょっと悩んでいた件があるんだけど、タイミング的に今じゃないんじゃないかなって怖気づいてどうしても言い出せなかったことを聞いてくれるかい?》

「宵闇ちゃんがそんなに悩んでいたなんて……」

「それで今回Bチーム招集に時間が掛かってたのか」

「へっ、遠慮なんて水臭いじゃねぇかカピ公! 俺たちの仲だろ!」

「ニンジンでも食って元気出せよ」

《ありがとう》

「うんうん、それでそれで?」

「お姉さんにゆってみそ?」

「宵闇くんの悩みは我々ブレインズ皆の悩みであ~る!」

「胸を借りるつもりでどーんと来んしゃい!」

「胸ないけどなー」

《それじゃあ言うね。えっと……》




《幻想の部屋でドラゴンつくれちゃいそうだなって》




「ほぇ?」

「ふぁ?」

「ほげら」

「あべし」

「たわば」

「ひでぶ」

「ぎゃふん」



「ふぇぇ……」

「か……軽い気持ちで悩みを聞いたらとんでもない爆弾だったよぉ……」

「わけがわからないよ……」

「しっかりしろお前等。ひょっとしたらよく聞いたら宵闇はドラコンとかドワゴンとかドランゴって言っていたのかもしれん、聞き間違いの可能性がある。ということで悪いが宵闇、もういっぺん言ってくれるか」

《幻想の部屋でドラゴンつくれちゃいそうだなって》

「ふぇぇ……聞き間違いじゃなかったよぉ……」

「どうするのよ、あまりの衝撃に皆幼児化しちゃったじゃない」

「悩めるカピバラに胸貸したらドラゴン押しつけられた件!」

「むしろ内容に対して宵闇のテンションのブレなさよ!」

「宵闇クンそういうところだぞ!」

「のん気にニンジンもぐもぐしてる場合じゃないぞ宵闇くん!」

《ごめんよブレインズ》



《ええと、順を追って話すよ。そもそも僕たちが精霊の設定をしたのはドラゴンを飛ばせるためだよね》

「うん」

「そうね」

《その上で前回精霊を生物の身体に蓄積させる仕組みも設定したよね》

「うん」

「したした」

《つまりやろうと思えばもう精霊の力を使って飛翔する生物が設定出来ちゃいそうなんだ》

「ほんとだ」

「出来ちゃいそうだな」

「よく考えたら出来ちゃいそうだなぁ!?」

「なんならもうだいぶ序盤の頃からやろうと思えばやれたなぁ!? 精霊さえいれば飛ばせられそうだものなぁ!?」



《一応すぐにドラゴンの設定にいかなかったのにも理由があるんだ。外観だけドラゴンっぽい生物をただ用意して飛ばしたとして、それでブレインズが満足するかな》

「しないね、その生物が何故飛ぶのか? どのような生態なのか? 何故その形になったのか? それが誤魔化されたままではドラゴンという生命体をつくったとは言えない!」

「我々の“なんかしらつくりたい欲”は満たされない!」

「ないなーい!」

《うん。だからこの幻想の部屋がどんな世界でどんな生き物たちが棲んでいるのか、世界の輪郭がもう少しはっきりするまでは、ドラゴンに行くのは早すぎるかなって思って温めておいたんだよね》

「なるほどな、そうして温められていたドラゴンが時限爆弾のように今このタイミングで爆発したと」



「でもじゃあなんで今このタイミングなの?」

《つくりたくなっちゃった》

「つくりたくなっちゃったか」

「つくりたくなっちゃったならしょうがないな」

「俺たちはつくりたくなった時につくりたいもんをつくる。それがブレインズの存在意義だからな」

「我らの辞書に計画性の文字なし!」

「威張れることではない」

「フッ。いよいよドラゴン設定に本格的に取り掛かる時が来たようだな……!」

「フッ。腕が鳴るぜ……!」

「フッ。やっぱり鳴らす腕なかったぜ……!」


《ありがとう皆。それじゃあ――宵闇と仲良しBチーム、ドラゴン誕生に向けて本格始動だよ》


「「「「「おーっ!」」」」」






「となると何から決めていくか」

「やっぱり第一に飛翔方法、では?」

「それはどのくらいの大きさのドラゴンにするかによって変わってくるんでない?」

「大きさか……まず大きいは大前提だよな?」

「おっきいは浪漫」

「外のブレインズも“ 巨大生物はファンタジーの醍醐味”って言ってた!」

「でもおっきすぎると戯れられないぞ?」

「戯れる気なのか」

「じゃあとりあえず間をとって……人一人丸呑み出来るくらいの大きさで考えてみようか」

「うーん、一人呑みサイズなら頭は乗用車くらいか?」

「それだと乗車人数からみても四人呑みはいけるんじゃないか?」

「一人呑み用ならレーシングカーくらいのサイズでしょ」

「“一人乗り”ぐらいの気安さで物騒な単位使ってんなぁ!?」



《じゃあとりあえず頭はレーシングカーサイズ、胴体はワゴン車サイズで考えてみようか》

「サイよりでっかくゾウより小さい」

「この大型動物をどうやって飛ばせるか、だな……」

「ていうかやっぱり重くない? 現世界の鳥さんがどんだけ努力して減量してるかを考えるとさ、重すぎるよ」

「鳥さんは排泄すらも厳しく管理して減量してるんだからな!」

「鳥さんは偉大なんだかんな!」

《こっちにも鳥のフン過激派なブレインズが……》

「ん? 何のこと?」

《なんでもないよ。気になるひとは思考32を参照してみてね》

「ウチらは確認できんやつや」

「遠闇チームに謎の過激派グループが登場したらしいことだけは確かだな」

「あっちは進行役からして細胞狂(かげきは)だから……」



「そもそも“重い=飛べない”とは必ずしも限らないぞ」

「そうなの?」

「現世界にだってジャンボジェット機とかあるだろ」

「HAHAHAなに言ってるんだ、あんな重い物が空を飛べるわけないだろう?」

「いや実際に飛んでるし……」

「莫迦野郎ッ! あんなもん勘違いで飛んでるに決まってるだろ!」

「そーよそーよ! 自分が鉄の塊だってこと忘れてウッカリ飛んじゃったに違いないわ!」

「まったく、ウッカリさんなジャンボジェット君だぜ☆」

「鉄塊が空を飛べるわけ無いのに変なことを言い出すなよな、兄弟!」


「「「「「HAHAHA~HA!」」」」」


「“飛行”機の概念を根底から揺らがすな!?」





「いやー……だってさあ……」

「あんなもん飛ばしちゃうなんて改めて人間の技術力ってすごいなぁって……」

「こちとらドラゴン一匹飛ばすのにも苦労してるってのに……」

「だからって現実逃避すんなしブレインズ」

「そもそもあんな重い塊が飛べるのはどうしてなんだってばよ?」

《航空機は翼に風を受けることで揚力を発生させているみたい。その代わり平地で機体を飛ばせる程の揚力を得るにはかなりのスピードで助走をつける必要があるみたいだね》

「あー。長いよね、空港の滑走路」

「滅茶滅茶助走つけて飛ぶドラゴンてのもあんまり現実的ではないような」

「しかも胴体ワゴン車サイズのな?」

「はわわ……衝突事故の予感!?」

《一度上昇気流に乗ってしまえばほとんど羽ばたかなくても飛んでいられるんだけどね》

「そうなんだ?」

《助走しなくても常に翼に風を受けていられるからじゃないかな》

「トンビやコンドルやアホウドリみたいな大型の鳥に見られる飛行方法のようだな。羽ばたき飛行に対して“滑空”や“帆翔”と呼ばれる飛び方らしい」

「コンドルは羽ばたかずに5時間飛行を続けられるらしい」

「コンドルさんすごい」



「ハイハーイ! わたしいいこと思いついたよ! それなら地上に降りずにずっと飛びながら生活すればいいじゃん? いいじゃん?」

「それは流石に難しいんじゃないか? 最低限睡眠とかは必要だろう」

「流石に飛びながら眠る生物なんているわけ……」

「いるぞ」

「いるの!?!?」


「説明しよう!

 アマツバメは捕食・睡眠・排泄・交尾に至るまで全部上空で済ませてしまううえ、地上に降りたがらないあまり巣作りも断崖絶壁に作っちゃう究極の逆引きこもりである! あまりに地上に降り立たないが為に翼のつくり上水平な地面に置かれたら二度と飛び立てないレベルに地に足着かない生活をしているのだ!」


「究極の逆引きこもり」

「地に足着かないの意味が違うのでは」

「ちなみに捕食は空中でお口を開けてご飯()が飛び込んでくるの待ちらしい」

「なんでそこだけ引きこもり気質だ」



「いやまあでも、流石のアマツバメさんでも子育てとかは崖っぷちの壁面でしてるし、流石に一生を陸地に降りずにってのは生物的に厳しいのじゃないかなぁ」

「あーあ。もし空にも陸地があれば、そこから滑空したり上昇気流に乗ったりして生活できるのになぁー」

「ああ~浮遊する陸地の周囲にだけ生息するドラゴン……浪漫なんじゃあ~」

「一生地上に降りないでも生活できるしね?」

「いいねそれ」

「やりたい」

「面白そう」

「よーしそれじゃあいっそのこと、ドラゴン快適上空生活のために空島つくっちゃうかー!」


「「「「「おーっ!」」」」」



「いやサラッとドラゴンより重いもん浮かばせようとしてないかっ!?」




つづく




「余談だが後日判明したところ、現世界のグンカンドリは二ヶ月もの間飛び続けた記録を持つらしい」

「ヤバイ」

「すごいってかむしろヤバイ」

「やばばば」


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