思考29 唐突に宇宙の話始めるからAパート始まったのかと思った(とあるクマの述懐)〈Bチーム〉
【幻想の部屋】
風穴の小部屋、岩立の小部屋へと続くドアと音響セットがある。
カピバラ一匹と姿なきブレインズBチームと山のように巨大なリクガメラがいる。
宵闇|《というわけでここからは*:。゜+はみだし☆彡遠闇の疑問質問コ~ナ~☆彡の時間だよ*:。゜+》
――GOAAAAAANNNN……!!
「ヘイストップ」
《うん》
「えぇーと、どこからツッコもうか」
「まず確認するけど……疑問質問コーナーは前回白の部屋で終わったんじゃなかったの?」
《宇宙論で一話使い切っちゃって入りきらなかった奴をしらずから預かってきたんだ》
「そっかそっか……それじゃあ改めて、ツッコんでいくな?」
《うん》
「いや遠闇ちゃんいないのに『遠闇』付いてる意味!!」
――GOAAAAAANNNN……!!
「そして宵闇ちゃんがすっごくキャピキャピな声出してびっくりした!」
――GOAAAAAANNNN……!!
「背後に配置された存在感マシマシなリクガメラ君はなんだ!?」
――GOAAA…GOAAAAAANNNN……!!
「ていうかリクガメラ君さっきからめっちゃ甲羅鳴らしてくるんだけど!」
《遠闇君から渡されたメモに“きらきらでド派手な効果音付のタイトルコールで!”って注釈があったから善処してみたんだ》
「効果音の付け方が人力かつ豪快!!」
「とりあえず喧しいからリクガメラ君には岩立の部屋にお引き取り願おうか」
「バイバイリクガメラ君」
「……キャピキャピな宵闇ちゃんてあんな声出すんだぁ……」
「……意外な声だったなぁ……」
「……ああ。貴重な声を聞けたなぁ……」
【幻想の部屋】
風穴の小部屋、岩立の小部屋へと続くドアと音響セットがある。
カピバラ一匹と姿なきブレインズBチームがいる。
《じゃあ仕切り直して、ここからは『はみだし!遠闇の疑問質問コーナー☆』の時間だよ》
「遠闇は残すんかい」
「もうそういうタイトルコーナーなんだと思うようにしよう……」
「着々と進めるのが宵闇ちゃんのいいところ」
「さーて、どんな疑問が来てるのかなー?」
・Aチームの重力の話で重精霊が活躍するか!?と思ったけど、引力を司るのは磁精霊だっけ?
・磁精霊の能力の"引力”って結局重力のことじゃないの?
「ほほぅ、磁力と重力が一緒だって?」
「なるほど……」
「これはなかなか、興味深い考察なんじゃないか……?」
「引力で有名なのは、物質同士が引き付け合う力と言われている“万有引力”だよね!」
「一方で磁石の引き付け合ったり反発したりする力の事も“引力・斥力”と呼ばれていることはご存知だろうか?」
「とどのつまり磁精霊の活性化によって起こる“引力・斥力”はあくまで磁力としての“引きつける力・反発する力”の範疇に留まります!」
「引力と万有引力はノットイコールなのです!」
「しかしだね……重力と磁力が同じじゃないかという視点は面白いのじゃないかね?」
「例えば、超強力な電磁石は金属以外の物体すらをも引き付ける」
「最近の実験ではごく一般的なちくわを浮かせることに成功してたね」
「気になる人は“磁石 ちくわ”で検索してね!」
「ちくわ」
「そんなビッグな実験に何故にちくわ」
「さぁ……ちくわしか持ってなかったんじゃない?」
「そっか。ちくわしか持ってねぇならしょうがないね」
「ちくわしか持ってねぇならしょうがないのですわ」
《なんでそこ強調し直したのかな》
「よーするにだ、強力な磁力は非金属である有機物を引き付けるほどの引力を持つ。もし天体の引力も近しい性質のものだと考えたらどうだろう……我々が地上に引っ張られているのも、すべては磁力によるものだったと考えられまいか!?」
「ヨッ、名探偵っ!」
「斥力の存在を無視した中々無理矢理な理屈だがな!」
「面白ければなんでもよいのだ!」
「まあしかし大抵の天体には磁場があるし、少なくとも関係性はありそうだよな?」
「現代は別の力として扱われているけど、この先それが覆ったらロマンだな」
「磁力の追及によって夢の反重力装置が実現するかも!?」
「なんてったって磁力の謎パワーっぷりったらないもんな!」
「ロマンだね!」
「確かになんかよく判んないけどすごい力だよな、わかるよ!」
「俺も磁力さんならやってくれる気がするわ!」
「ブレインズの磁力に対する絶対の信頼感なんなの」
「謎の憧れ持ってるよな」
「例えば無重力で二つの球体磁石をすれ違うように近づけると、円を描くように近づいたり離れたりを繰り返しながら何度もすれ違って、徐々にスピードを上げながら円を狭めて最後はくっついちゃうんだって」
「まるで互いの引力と遠心力で引っ張り合いながら公転する天体のようだわね」
「かに座の方に公転周期僅か5分の超スピードで回転し合う二つの恒星があるらしいけど、これもなんだか似たような動きに見えるような気がしない?」
「回ると言えば逆に原子核みたいな小さい中でも電子がくるくる回っているっていうじゃないか」
《物事の事象って案外シンプルで、本質は規模の大小の違いに過ぎないのかもしれないね》
「とにもかくにも磁力も引力もまだまだ研究が盛んな分野だ、これからに期待しよう!」
「うんうん、そーだねー!」
「それで、何の話してたんだっけ?」
「え? 宇宙の神秘でしょ」
「磁場じゃなかった?」
「やだなぁ磁力さんの知られざる真の力についてじゃない」
「ちくわ大明神」
《磁精霊の話だよ》
「えー諸君、話に一段落ついたところで、ボクから一ついいだろうか……」
「ん、なーに?」
「いいよー」
「はりきってどうぞ!」
「えーそれでは……おっほん」
「皆ここが幻想の部屋だってこと覚えてるかなぁっ!?」
「忘れてたな!!」
「そういや俺たちファンタジーチームだったな!!」
「宇宙に思いを馳せている場合じゃなかったな!!」
「魔法の話しよう魔法の!」
「今日も平常運転なBチームであ~る」
《それならファンタジーな世界でひとつ疑問があるんだけど》
「ほほう?」
「なんだい?」
《水が操作出来るのに水流を操ったり、水球に閉じこめるような規模の大きい戦いばかり見かけるのはどうしてなんだろうって》
「そりゃあ言っても水でしょう? 生半可な水量じゃ打撃は与えられないし」
「水を攻撃に使おうと思ったら規模を大きくするしかないんじゃない?」
《それなんだけど、人体の60%は水分だと言われてるんだ》
「まってなんかいやな予感が」
「この豆知識がこんな不穏に聞こえるタイミングってある?」
《例えば口の中の水分を集めて肺に流して気道を塞いじゃうとか》
「怖い!!!」
《体表から水分奪って干からびさせちゃうとか》
「怖い!!!」
《簡単なところで身体の血流を逆流させてみちゃうとか》
「怖いて!!!」
《どうしてそういう使い方がほとんどされないのかな?》
「怖いからだよ!!!」
「攻撃がいちいちエグい!」
「能力が完全に敵側のソレじゃねーか!」
《そもそも体内のほとんどが水分ならそれ動かすことで相手の身体を操れそうだよね》
「うわマジだ!」
「よく見る呪縛とか意に反して身体を操る系の技がまさかの水操作系とかまさかすぎるんですけど!?」
「闇的なソレじゃなかったんかい!? お前水能力だったんかい!?」
「うーむ……水操作って実は暗殺者向けの能力だったりするのかもな……」
「血液とかはほら、純粋な水じゃないからノーカンなんじゃないの?」
「しかしそれだとそこらの湖沼や温泉のような不純物の入った水の使用、並びに毒物を混入させた液体などの操作も不可能になるが、構わないだろうか?」
「うっ……目ざとい奴め……」
「毒物混入て」
「これはふぁんたじーせかいのはなしあいでおまちがえありません」
「確認定期」
「確認は大事」
「ちなみにこの幻想の部屋の水魔法はどうなるの?」
「水の精霊ミジンコに元々存在する水を操作する能力はないから、人体の血を操ったり抜かれることはないんじゃない?」
「そうか……この世界で他人を操る魔法の実現は想定外で中々興味深かったのだがな」
「俺たちが考えたのは何でも出来る『万能な魔力』ではない」
「だから当然出来ないこともいっぱいある!」
「精神操作、植物操作なんか特に方法も思いつかないしな」
「呪文、魔法陣なんかの設定もまだ話し合われてないじゃない?」
「その辺は是が非でも実現させたいよなー」
「縛りがあるルールの中で工夫してどれだけ自由な表現を目指すか、それが面白いのである!」
《それじゃあ一つ、この世界の特色で早めに考えておきたい事があるんだけど、いいかな》
「おっいいぜ!」
「どんなテーマだい?」
《魔法が存在する世界に登場するお馴染みのもの――魔石や魔法道具について》
「魔法道具……おそらく、大気中の魔力を使うんじゃなくて、あらかじめ魔力を加工して封入している道具のことだよね?」
《うん。その“魔力の蓄積方法”についての設定が、実は世界観にも関わってくる重要案件じゃないかと思うんだ》
「ほぅ、宵闇がそこまで念を押す程の案件なのか」
「ふむ。文明が発展したらその辺は間違いなく出てくるもんね?」
「ふむふむ。魔法世界を一から考えるならその辺の理屈も適当って訳にはいかないな!」
「えーと、魔法道具が魔石みたいなもんの加工品だとしたら……我々は魔石がどうやって出来上がるのかを考えればいい訳だな?」
「この世界の魔力の正体は精霊だろ? なら精霊の蓄積プロセスを考えていって……あれ?」
「ちょっと待てよ、これは、よくよく考えると重大な問題がないか?」
「そうよ。どうやって精霊を蓄積させればいいの? だって……」
「ああ。大変だ……この世界の精霊は……」
「……活性化しない限り、物質の干渉を受け付けない」
つづく




