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思考28 帰ってきた宇宙細胞説!


『皆も細胞大好きだよね? ドキドキわくわく細胞回がは~じま~るよ~!』




【白の部屋】


 白い部屋にドアがよっつと温泉がある。適度に広い。

 カエル一匹とカピバラ一匹とクマ一匹と、たくさんのゾールとカサセオイがいる。




遠闇『というわけで某所で宇宙細胞説に関する疑問をキャッチしたぞ!』

「始まってしまった」

「謎の細胞タイムが始まってしまった」

「宇宙細胞説を知らない人や忘れてしまった人はレポート【宇宙】の項をチェックだ!」

「ええーと、今回外のブレインズから来た疑問の内容としては……」



 “インド神話を例に出してきたかー”

 “細胞が分裂する時どうなるんだろうか?”

 “宇宙エネルギーの無駄遣いにはならないのかな?”

 “細胞の欠点は熱に弱いことだよね”



「……などなどの意見がもたらされました」

『んっふっふ、宇宙細胞説に興味を持ってくれてありがとー! ここはオイラが答えてしんぜよう!』

「出たな細胞狂」

『認識が酷くなってる!? それだとなんかオイラがめっちゃ危ない奴みたいじゃん!? 恍惚の表情で「細胞……細胞……ハァハァ」とかしてそうじゃん!?』

「してたとしても誰も驚かないくらいには細胞への食いつき半端ないぞキミ」

「うんうん」

『うーんその辺の認識の違いはまぁ今はいいや』

「往生際の悪いカエルじゃな」

『お黙りブレインズ! ……それじゃ、宇宙細胞説について説明していくぞい』



・議題:宇宙細胞説についての色々



「じゃーまず、宇宙って細胞みたいに分裂するの? 細胞分裂したら宇宙はどうなるの?」

『分裂するね。それに役目を終えた細胞も通常の生物の身体のサイクルと同じようにいずれ消滅する。オイラたちが前回いた【細胞の部屋】も、そんないつかはなくなる細胞の一つに過ぎないんだ』

「それじゃああの宇宙いつかは消滅しちゃうんだ?」

「最強生物(仮)君の中では常に宇宙の誕生と消滅が繰り返されているんだな」

「でも、見た目は宇宙なんだよね?」

「どうかな。中から見たらさながら宇宙のようでも、外から見たらそうではないかもしれない」

「観測者の大きさも、時間の進み方も、持っている()も何もかも違うんだ。そこに見えている物はきっと、まったく別物に見えるのだろうな」

「外から見たら普通の細胞のようにしか見えなかったりしてね」



「それなら、宇宙の莫大なエネルギーはどこへ行っているの?」

『これは単純に、細胞の維持に使われてる。むしろ細胞活動の副産物として銀河系や太陽系、生物と呼ばれている有機物の集合体が生まれた、とも言い換えられるね』

「宇宙は細胞活動の副産物だって?」

「細胞が分裂する余波で生まれた、みたいな?」

「じゃ星って本当は宇宙にとって不要物?」

『それは判らない。もしかしたら銀河やブラックホールは細胞の維持に欠かせない機能の一つかもしれないし、生物も細胞の活動に必要だから生まれるべくして生まれたのかもしれない』

「そうじゃないかもしれない」

「ぶっちゃけ決まってない」

『そ~ゆ~ことさ!』

「というより、決めない方が面白いって思ったんでしょう?」



 “この世界は必然か、偶然か”


 “生命の存在は何者かの意思によるものなのか”


 “我々の存在が何か大きなものの運命を動かしているのか”


 “それとも我々は星に蔓延る一介の黴に過ぎないのか”



「これはボクたちがここで簡単に決めていい問題じゃないのさ」

「答えを探し求めたまえ、真理を探究せし哲学者よ!」

「自身のルーツに触れんとする者は大いなる宇宙の外側を覗くこととなるだろう!」

「宇宙のすべての謎が解明された時、生きとし生けるものの存在する意味もまた明らかになる!」

「うははは悩め若人ー!」



「じゃあ次、細胞は熱に弱いんだってね?」

『へーそうなんだ?』

「って、遠闇ちゃんが知らんのかい!?」

『聞いたことあるような無いような。自分別にそこまで細胞に詳しくないんだよね』

「細胞フェチのくせに!?」

『何度も言うけどフェチじゃないし!? 単に細胞の万能性・多様性が好きなんであって、詳しい仕組みとか一通り調べたことはあるけど大体忘れた!』


「細胞フェチのくせに!!」


「君なんて細胞フェチの名折れだ!!」


「いやそんなもん折れたところでどうってことなくね?」


「君それは細胞フェチのひとに失礼だよ」

「全国の細胞フェチのひとに謝った方がいい」

「ごめんなさい全国の細胞フェチのひと」



『この最強生物(仮)くんは“気候変動・天変地異・外敵などあらゆる外界の脅威に左右されることなく存在し”とある通り、熱にもつおい都合のいい存在だから大丈夫! でも実は、この都合の良さにも理由があるんだよね』

「最強生物(仮)くんが最強生物たるゆえん」

「最強生物周りの設定がつくられていないゆえんでもある」

「ここから先は神話や概念的な話になるぞ!」

「というわけでここからはしらず君、よろしく!」

「バトンタッチだ!」

しらず〔了解した〕




〔私たちが新しい宇宙をつくるにあたって、気付いたことがある。それは、この概念には終わりを設定できないという問題だ〕

「終わりってのは?」

「宇宙の外側に何があるか、だね」

「うんうん。俺たちも宇宙つくる時に何度も躓いたぜ……」

〔現世界には様々な宇宙観がある。”地球平面説”、”世界樹”、”三千大千世界”……〕

「どの時代どの国のひとたちも皆、『この海の先はどうなっているのか?』『この空の向こうは何があるのか?』って考えるんだね~」

〔そしてこれら世界の根幹となる概念を考えた人たちは皆こう思ったはずだ、『それではこの世界の先は?』『この世界そのものはどこにあるのか?』〕



「現代の宇宙論と一緒だね~」

「宇宙に終わりがあるなら、その向こう側には何があるのか?」

「宇宙はどこにあるのか? 宇宙が誕生する前そこはなんだったのか?」

〔観測する手段がない人々は想像で補った。――或いは大地の周囲は広大な海だったのだ〕

「でも海の果てを見た人はいないよ?」

〔海の果ては滝になって落ちているから辿り着けないんだ〕

「滝という事は大地は宙に浮いているの? そんな馬鹿な」

〔大地は途方もない程大きな存在が支えているのだ〕

「その途方もない程大きな存在はどこにいるんだ?」

〔想像もできない程大きな存在の上にあるのだ〕

「その想像もできない程大きな存在はどこにあるんだ?」

〔知るかバカ! 想像できないって言ってるでしょ!〕

「ふぇぇ……」



〔――と、こんなやり取りがあったかは知らないが、この概念は果ての果ての果てを考えてもどこまでもキリがない。必ずどこかで一旦区切りを入れなければいけないんだ〕

「我々の宇宙細胞説でいくなら……この大地は宇宙に浮かぶ星の一つである!」

「この宇宙はめちゃくちゃ広大なんである!」

「宇宙の向こうには別の宇宙が、その向こうにも更なる宇宙が待っているのである!」

「そこには何十兆もの別の宇宙が存在する!」

「そしてそのすべての宇宙によって、大いなる存在は形作られているのだ!!!」

「この大いなる存在はあらゆる天変地異を撥ね退け……」

「何人たりとも傷一つつけることはできず……」

「気候変動などない穏やかな地で悠久の眠りについている……」

「すごいでしょ! おしまい!」


〔――とまあこういった具合だな〕



「つまりは、最強生物が最強な理由とか、周辺の環境がどうなってるのかとかを考え始めたらどこまでもキリがない。だからブレインズの宇宙細胞説はここまでで一区切り入れている、ということだな?」

「一応別方向でこの問題を解決する手段もあったんだけどね」

「“終わりがない”ことそれ自体を世界観に入れ込んだ――ループする宇宙、だな」

「詳しくは思考4を参照だ!」

『これ自体はブレインズから不評で不採用になっちゃったけど、世界観としてはアリだと思うんだよねーオイラ』

「アリだったね。ここで扱うにはちょっと殺伐としすぎてるから見送られただけで」

『誰か使ってくれていいんだぞ!』

「他力本願極まる」




「――さて、一通り宇宙細胞説のそぼくな疑問に答えていった訳だけど……」


「マジで細胞だけで丸々一話使っちゃってんじゃん!? 細胞だけで!!」


「どれだけ宇宙細胞説について長々語ってるんだ!?」


「過去にたっぷり三話も使って話した癖にな!?」


『ケロ……本当は皆も細胞が大好きだったんだね……素直じゃないんだからもう』

「ばっ馬鹿な……!?」

「こんな筈じゃ……!?」

「クッ……カエルに温かい目を向けられるのなんか屈辱……ッ!」

『どーいう意味じゃ!』



〔届いた疑問はまだ他にもあったんだが……まぁ、磁精霊の力に関する質問だし、次回宵闇に取り上げてもらえばいいか……〕




つづく




「一方その頃の宵闇ちゃん」

「温泉浸かってすよすよ」


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