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思考23 特撮怪獣はロマン〈Bチーム〉


「硬梨菜先生の小説『シャングリラ・フロンティア』漫画化の発表があったので喜びの更新です」



【幻想の部屋】


 風穴の小部屋へと続くドアと音響セットがある。

 カピバラ一匹と姿なきブレインズBチームがいる。




「さて次行ってみよう」

「お次は地の精霊アメーバさんだな」

宵闇|《地精霊の特性は“結合・腐食”だよ》

「地精霊を使うヤツなら土属性生物・ヒラタムカデがいるぜ!」

《ヒラタムカデは鳴き声で岩盤中にいる地精霊に働きかけて“腐食”で脆くなった岩盤に穴を開けて巣穴や、隠れる時に使うよ。巣穴を頑丈にするために逆に“結合”で固めたりもするね》

「一見地味な魔法だけど、土だけじゃなく岩まで脆くするってのがポイントだな」

「将来的に器の削り出しとかに重宝しそう」

「やっぱり土は巣穴とか生産系が強いのかな」



「ちなみにヒラタムカデ君の穴掘りの様子は探検2で披露済みだけどどうする? 呼び出す?」

「ヒラタムカデ君は基本的に地上と地中を行き来していてトンネルを作るような生態じゃないけど、地魔法で岩を掘れるなら岩場を巣穴にするモグラみたいな生き物もいそうだな」

「岩を掘る前脚と岩場を登れる足腰が必要になるね。考える候補に入れておこうか!」

「あ、アタシ地魔法を捕食に使う肉食生物思い着いちゃった。獲物はその岩モグラ」

「ガーン、なんか知らんがショック!」

「詳細詰める前からもぐもぐされることが決定してしまった……」

《地魔法を攻撃的に使う生き物というのは気になるね。どんなのかな?》



「地魔法を使って岩モグラの巣穴を崩して出てきたところをもぐもぐしちゃうのさ!」

「ふむ」

「んーもうちょっと具体性が欲しいかな? 基本的な能力が地魔法でトンネル作って生活する岩モグラと被ってる気がするし」

「むぅ~っ……じゃあじゃあ、もっと大規模に岩盤崩落させて岩ごと丸呑みしちゃうもん!」

「待った待った!」

「なんかとんでもないこと言い出した!」

「ヤケになってない!?」

「なってない! 極めて論理的思考による結実!」

「なんか難しげなこと言ってごまかした!」

「ええっと、そんなことが出来るってことはつまり……」

「ズバリ、この生物は怪獣サイズ!!」

「わぉ」

「前回までちまちま小動物作ってたと思ったらまた突然な展開に」



「それなら見た目はちょっとしたガメラサイズの陸亀みたいなやつにしよー!」


「岩盤を削り取るイシダイのような硬く扁平な口、ゾウガメのような太く爪のついた脚で岩を切り崩す!」


「見た目が陸亀なら甲羅もまるくて大きいよね!? なら魔法は鳴き声じゃなく甲羅をハンマー状の尻尾で叩いて銅鑼鐘のように打ち鳴らそうじゃないか!」


「うわここに来て特撮好きなブレインズが俄然食いついてきた!」

「前回に引き続きガメラ引っ張るのか」

「いやむしろ前回のガメラから着想を得たって感じでは?」

「予定していたところとは全く別の設定思いつくのは、我々ブレインズにはままあること」



《とりあえず暫定的にその生物を【リクガメラ】と呼ぶとして、いくつかクリアしなくちゃならない問題点があるね》

「そうだそうだ、岩ごと岩モグラをかじるのはまあいいとして、腹に溜まってった岩はどうなるんだ」

「現世界の生き物にもわざと砂や小石を食べて消化に役立てる奴がいたよね?」

「牛とか鳥とか、あとワニや魚も胃石や砂嚢と呼ばれるものを持っていたな」

「砂嚢は砂肝っていうと馴染み深いよね!」

「じゃあリクガメラの岩も胃石の一種なのだろうか?」

「食べ物をすり潰すにしたって、かじり取って角張った欠片じゃあ動きが悪くて役に立たないんじゃあないか?」

「それでは石は排泄、もしくは吐き戻しで体外に排出するのだろうか」



「第二に、ちょっとしたガメラサイズの巨体を維持するには相当のエネルギーが必要になるだろう」

「岩モグラみたいな小動物でその身体の大きさが賄えるかな?」

「岩モグラめっちゃ繁殖力高いとか?」

「繁殖力をどの程度にするかは僕らのさじ加減だけど蟻塚レベルにうじゃうじゃしていないと恐ろしく効率悪そうだな」

「いっそ岩を消化吸収出来ちゃえばどっちの問題も解決しちゃうんだけどなぁ」

「うーん、岩が実はミネラルとかカルシウム豊富ってくらいなら可能だけど……タンパク源がないことにはなぁ」

「もしくは草食動物のように胃にタンパク質をつくるバクテリアを飼っている?」

「岩が主食っていいなぁ! 石とか粘土層とか、たまに無性に食べてみたくならない!? なるよね!? ね!?」

「ここにも変な嗜好のブレインズが」

「前世ミミズかな?」



「第三に、そんな巨大生物が岩をボリボリ消費してはじきにエサ場となる岩壁が枯渇するぞ」

「といっても現世界でも長さ25kmの谷とかあるし、意外となんとかなるかもしれんぞ」

「あとは火山活動で不定期に地面が隆起するとか」

「昭和新山みたいなものか」

「昭和新山は粘性の強いマグマが噴出して出来た山で、名前の通り昭和というかなり最近の時代に誕生している。僅か2年で400mの小山が出現した興味深い現象だぞい」

「そう都合よく新たな岩場が生まれてもいいものか。そもそもそうも活発な噴火活動が起きていては生物も過酷すぎて棲めないのではないか」

「特に岩モグラね」



「ん? 都合よく……そっか、この世界には精霊っていう都合のいい存在がいるんだった!」

「そうだね! そんな不自然な環境の陰には精霊の存在がある……つまりそこは"聖域"だ!」

「精霊の力がなんやかんや働いて地面が隆起する、そんな場所があるのも面白いんじゃないかな!?」

《リクガメラの基本設定は巨体で岩を崩し獲物を岩ごと齧り取るんだね。問題点をまとめるよ》



・体内に取り込んだ岩をその後どうするのか?


・巨体を維持するだけのエネルギーをいかに摂取するのか?


・餌場となる岩壁の補充



「これを踏まえたリクガメラの生態を、考えていくぞー!」

「「「「「おー!」」」」」





【岩立の小部屋】


 テング石柱群。

 草木もまばらなその土地には塔のように巨大な岩石が無数にも屹立する。

 これだけでも充分絶景足りうるが、そこに棲む者もまた驚くべき生物であった。



 硫黄の臭いが立ち込め、大地の割れ目からは肌を焼くほどの高温の蒸気が至るところで噴き出す。

 その塔の合間を大地をどっしりと踏みしめ小山のような影が動く、その正体はリクガメラだ。

 このような岩ばかりの場所でどうやって糧を得ているのかと疑問に思うだろうか。しかしてその答えは眼前に広がっている。



 ――GOAAAAAANNNN……!!



 リクガメラがさながら重機のようなハンマー状の尻尾を振り回して自身の甲羅を殴りつける。銅鑼鐘のような大音量が空気を大きく震わせた。

 その余韻も消えぬうち、リクガメラは目の前のまだらな層を成す岩壁に齧りつく。

 とてつもない旺盛さで貪るそれこそがリクガメラの糧なのである。



 至るところで銅鑼鐘が鳴り響き、蒸気と熱気の中を巨大な影が蠢き岩壁を貪る。

 修羅もかくやのダイナミックな光景であるが、これこそがテング石柱群の日常風景であった――。




「テング石柱群のココがスゴイ! そのいち!」


「火山・地震地帯に広がり、地鳴りが起こす振動音によって地精霊が活性化、縦方向に脆くなった岩盤が地下のマグマによって地表数十mに押し上げられて石柱が乱立しているぞ!」

「この地形変動は火山噴火由来じゃないから生態系にも優しいぞ!」



「テング石柱群のココがスゴイ! そのに!」


「硬い岩盤と黄褐色の粘土層がミルフィーユ上に折り重なっている! 実はこの粘土層は微生物の塊で、これこそがリクガメラの食糧なのだ!」

「食べられる土に興味がある人は“天狗の麦飯”で検索してみてね!」

「まさかの土食べたい派ブレインズの意見が通ってしまった!」



「リクガメラのココがスゴイ! そのいち!」


「雑食のリクガメラは地精霊の共鳴で岩盤を脆くして岩盤ごと微生物粘土をもぐもぐしちゃうぞ! オキアミ食ってるシロナガスクジラの如くめっちゃ食べてめっちゃ大きく育つ!」

「それじゃあもう岩モグラ君がもぐもぐされることはないんだね!」

「雑食だからうっかり誤飲してもついでに消化しちゃう!」

「岩モグラくぅーーーーん!!?」



「リクガメラのココがスゴイ! そのに!」


「噛み砕いた岩盤は体内ですり潰されながら特別な内臓に種類別に貯めこまれる! ある程度溜まると体外に吐き戻して排出されるし、体内に残り続けちゃう石は内臓を傷付けないようにコーティングされる!」

「なんか真珠層とかキチン質的なものを想像してくれるとよい!」



「リクガメラのココがスゴイ! そのさん!」


「老いたリクガメラは体内に取り込んだ石をうまく吐き戻すことが出来ない! それでも旺盛に食べ続けた結果自重で動けなくなって一生を終えるのだ!」

「リ、リクガメラくぅーーーーん!!?」





「最期は餓死確定とか、壮絶な生態背負わされてんなリクガメラ君」

《でも、現世界の動物も実際似たり寄ったりな生態なんだよねぇ》


「説明しよう!

 カミツキガメはミミズっぽいピンク色の舌を疑似餌にして魚をおびき寄せもぐもぐしちゃうが、歳を取ると舌の色がくすんできて魚が近寄らなくなって死んでしまう! そのため死因は餓死である!」


「説明しよう!

 恐竜は生きている間成長を続け止まることがない! 多くの化石で足の骨が折れていることから、ティラノサウルスは成長しすぎた自重を支えられずに獲物が狩れなくなって死ぬと考えられている! つまるところ死因は餓死である!」


「説明しよう!

 ナマケモノは気温が上がり過ぎたり下がり過ぎたりすると新陳代謝が止まってしまうため、せっかくごはんをもぐもぐしても肝心の消化が出来ずに死んじゃう事態に陥るのだ! 要するに死因は餓死である! 満腹なのに!」


《こんな感じに》

「怒涛の説明回」

「うーむ……こうして並べられるとリクガメラ君も特別理不尽な最期ではない気がしてきたな……」

「そだねぇ」

「人間が特殊なだけで、自然界の最期とはえてして厳しいものなのであーる」



「なんだかんだ今回も新生物の設定が出来たわね!」

「今後も精霊の特性を振り返りつつ思いつくまま新生物を設定していく感じかな?」

《今回出てきたその他の考えたい候補もここにまとめておくよ。いいかんじの設定が思いついたら新生物として考えよう》



・ "発火・昇温"の力で熱気球的に浮かぶことが出来る生き物

・火を噴くガメラ的な生き物

・岩モグラ



「岩モグラはほぼ名前というか……岩に巣を作る生き物ってことしか決まってないんだよね」

「なのにリクガメラ君に主食でもないのに誤飲でもぐもぐされる運命が既に決まっているかわいそうなな岩モグラ君……」

「リクガメラが岩盤ごと微生物粘土をもぐもぐするばっかりに……」

「ちくしょーリクガメラめ、ちょっと強くていかすガメラサイズだからってデカい態度取りやがって!」

「いや身体がでかいんや」

「今のところこれといった天敵もいないんでしょう? 大きい顔しちゃってさ」

「だから身体がでかいんや」

「あー……しかし、リクガメラは成分ごとに別の胃袋に食べた石を分けていくんだ」

「それが何か?」

「そんでもって生息地は様々な鉱物の宝庫、火山地帯だぞ」

「それがどーしたのさ?」



「つまり……文明の進んだ知的生命体が生まれたら恐らく体内の希少鉱物目当てに乱獲される」



「リ、リクガメラくぅーーーーん!!?」



《世知辛いねぇ……》



つづく



「ここで重大な問題が」

「この更新でついに書き溜めが尽きてしまった」

「でも硬梨菜先生の小説『シャングリラ・フロンティア』漫画化の発表があったんだから仕方ないよね」

「硬梨菜先生の小説『シャングリラ・フロンティア』漫画化は大変なことだよ」

「喜びのあまり初の活動報告が硬梨菜先生の小説『シャングリラ・フロンティア』一色だからな!」

「設定と情報の暴力、硬梨菜先生の小説『シャングリラ・フロンティア』をよろしくな!」

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