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思考19 続・知的生命体を設定しよう!

【白の部屋】


 白い部屋にドアがよっつと温泉がある。適度に広い。

 カエル一匹とカピバラ一匹とクマ一匹と、たくさんのムチムーとヤツアシテンモクがいる。


 ミニサイズの温泉には複数のムチムーが集まりまったりしている。




遠闇『ちょっと気になったんだけど、知的生命体誕生に必要なのって火だけじゃないんじゃないかな』

宵闇|《どういうことかな、 遠闇君》

『うん。“言語”も重要な要素の一つじゃないかと思ってさ』

しらず〔それなら今度は、火以外の “知的生命体誕生に必要な要素”について、考えていこう〕

「ラジャー!」



「まず、火が知的生命体誕生に重要だってことは判った」

「でもたぶん知的生命体が生まれる為の条件ってそれだけじゃないよねぇ?」

「例えば日本モンキーセンターには焚火にあたるサルが居るけど、それってブレインズが求める知的生命体とは違うよな?」

「我々ブレインズは『あわよくば知的生命体と会話をしたり、文明の発展を楽しみたい』という野望を持っているのだけど」

「それじゃあ、ただ火を原始的な調理や暖取りに使うだけの生物だとまだ理想に届かない」

「うんうん」



《人間の顕著な特徴としてしばしば挙げられるものに『言葉によるコミュニケーション・道具を使う・文化を伝える』というものがあるよ》

〔それをせかるよ仕様に私の一存で言い換えるなら以下を持ち合わせた生物ならば、知的生命体と言っていいんじゃないか〕



・言語を持つこと

――ブレインズとコミュニケーションを取るためには言語を持つことが必須なため。


・器用であること

――道具や建物・将来的には機械など、器用さがなければ文明は発展しないため。


・協調性があること

――産み出した技術や知識は継承されなければ文明は発展しないため。



「ほほう?」

「確かに言語は大事かな?」

「お喋りできる方が楽しいもんね!」

「言語ってのはいくつかの特徴的な性質に分けられるんだって」

「例えば目の前に無いものを表現する“超越性”、記号を組み合わせて意味ある言葉を表現する“分離性”とかだな」

「ちなみに性質については書かれているサイトによって4種類とか7種類とか11種類とかてんでバラバラだ」

「幾つかの性質を備えた『言語』を使う動物は存在する。ただし、すべての性質を兼ね備えているのは人間だけらしい」

「この話も中々興味深いんだけど、今はややこしくなるからちょっと置いておこうか」

「気になる人は“人間以外の動物も言語を持っているのか?”で検索してみてちょ」

「もしくはお近くのブレインズに聞いてみてちょ」



「単純に、言語を扱ったり器用であることってのは知的生命体への進化には重要だと思う」

「現在の人類の祖先であるクロマニヨン人と絶滅したネアンデルタール人の差は“喉などの発声器官の発達の差”だという説が昔からあるな」

「クロマニヨン人が複雑で多様な発音が出来るようになったのは二足歩行で喉の奥が開いたからだって話だね」

「……つまり、高度なコミュニケーションを取れる知的生命体をつくるなら四足ではなく二足歩行になるってこと……?」

「ええ……うーん……なんだか、せっかく新生物考えてるのに安易に人間を真似るのもなぁ……」

「二足歩行いてもいいよ? いてもいいけど、そうじゃない生命ともお話したいかなぁ」



〔そこに関しては心配しなくてもいい。Bチームがつくっているのは“音を駆使して魔法を使う世界”。地球よりも音の出し方に多様性がある生物たちが生まれるだろう。それこそ、音を発する場所が喉の一ヶ所だけとは限らない〕

「そっか、二ヶ所から同時に出せればその組み合わせで表現できる言葉も増えるよね」

「電話のプッシュ音みたいなもんだな」

「いっそオルガンみたいにたくさん音を出せるなら? 人なんかよりももーっと複雑な表現だってできちゃうよ!」

「おわーそれってすっごく幻想世界の生き物っぽい!」



「問題は器用方面で考えた時の見た目だな」

「器用ってのは、人なら前足が発達して手になったりするよね」

「犬の前足だと道具も使えないしね」

「んぇー待って。だとするとやっぱし二足歩行必須なの?」

「いやいや、それはたまたま地球に似たような器用な生物が人くらいしかいなかっただけで、そう結論づけるのは早計だ」

「ちょっと他の方向考えてみよー!」




「例えばカラスとかキツツキフィンチとかさ、道具を器用に使う鳥っているじゃない? その脚が手に発達するとかは?」

「……なんか、鳥の脚が人の手になった生き物想像しちゃった……」

「怖いわ!!」

「なんかそんな中国妖怪いるわ!!」

「まあそれはそれとしてカラスとかめっちゃ頭いいもんな」

「でも脚を手にすると地上の歩行的な部分が困難にならない?」

「魔法で常に浮いているような生体の生き物なら脚が手に発達することは可能かもしれない」

「六脚生物だったら前脚が手に発達してケンタウロスみたいな見た目の生物になるのもワンチャンあるんじゃない?」

「他にはゾウの鼻みたいな、手の代わりになる器用な器官があればオッケーかも」

「タコみたいに脚がいっぱいあるとか……触手生物爆誕する?」

「あータコも賢いしかなり器用だよねぇ」



「あっそうだ! 幻想の部屋なら前脚が使えなくても、魔法の力で物を持ち上げたり加工したり出来れば問題解決するよね?」

「確かに、でもあの世界の魔法にそんなことできるのかな」

「後で考えてみよっか」

「しかしその手段はSFの部屋じゃあ使えないなぁ」

「一人の手ですべての作業をこなすってのは人間的な発想だよね。アリのように皆で力を合わせて物を運んだり作ったりする可能性だってある」

「なるほど、昆虫にだってハキリアリみたいに農業をする虫がいるんだものな。小さい生き物でも社会はつくられる」

「そこは盲点だったな。共感性の強い生き物なら意思を疎通し合って皆で一斉に動いて何かを作ることも出来るのかもしれん」

「それって三つ目の条件の『協調性』にも繋がりそうだね!」

「一気に想像の幅が広がった感じだな!」

「なにはともあれ、知的生命体の見た目は思ったよりも自由度が高そうだ」

「ただし見た目が不気味じゃないルートを探すのは中々難儀しそうだ」





「そういや話は変わるんだけど、前回しらずが『ファンタジー世界に同時に多くの種族の知的生命体が林立していることも説明できる』っていってたじゃない?」

「ファンタジー世界は火魔法があるからエルフとかドワーフとか多種族の知的生命体が生まれやすいってやつ?」

「そうそれ、そのエルフの誕生にさ、疑問が残るのよ!」

「……そうだね、その理屈だとエルフの祖先も動物の肉を食べてる前提になるよね」

〔ん? エルフは肉は食べないのか? よくある設定では『森の人』『弓の名手』というものがあるが、基本的には狩猟弓なんじゃないのか。元々の原典のエルフがどうなのかは知らないが〕

「食べる場合もあるけど、作品によっては弓じゃなくて魔法の達人で、植物とか木の実しか食べないってこともあるわよ」

「そうなると祖先が動物の肉を焼いて進化していった訳じゃないのかなー?」


〔ふむ。そのエルフは草食か? それとも菜食主義か?〕


「なんだその質問」

「待って、なんかすごくファンタジックじゃないその質問」

「えーと、何が違うのかな?」

〔そもそも草食動物も肉食動物も身体を作るのに必要とされる栄養素は一緒だ。肉食動物は他の動物の肉からそのままタンパク質を得る。雑食も同様だ。一方草食動物は腹や腸の中の細菌・バクテリアに植物を食わせることでタンパク質を作っている〕

「ふんふん」

「それで、菜食主義は?」

〔人間は基本的には雑食動物で、あくまで個人の事情や戒律で肉を摂らないのが菜食主義だ。いくら草食動物と同じように植物だけ食べようと腹の中に分解するバクテリアを飼っていなければ草食動物と同じ結果にはならない〕

「ほーん」

〔もしエルフが草食だとしたら、確かに火の獲得とは違う方向からの進化を果たしたのかもしれないな〕


《……何千年も菜食主義極めたら雑食のエルフだって体内にバクテリアを獲得しているかも》


『その可能性はあるね。菜食主義で巨乳のエルフはほぼ確実に腹にバクテリアいるよ』


「待って……!」

「なんか夢が! 夢が壊れるよその会話!!!」


〔草食か雑食か見分ける方法はあるぞ。顎の骨格や歯の形を見れば大体の食性が判る。恐竜の化石から草食か肉食か判別するようなものだ〕


「エルフと恐竜の化石を同列に扱うなし!!?」

「何かが……何かが間違っている!!」


『じゃあ「食肉など野蛮だ!」とか言ってるエルフの口の中こじ開けてみれば先祖が草食だったか雑食だったかある程度判別できるね』


《祖先の骨格と比較できればなおいいかな》




「もうやだこの名前持ち達!?」




つづく




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