思考14 洞窟の生き物を設定しよう!〈Bチーム〉
【幻想の部屋】
バースデー洞窟。
じめじめとした縦穴の洞窟。湿った壁は苔むし所々にシダのような葉をつけた植物が生えている。中心には沁み出した湧き水が溜まり、穴の入り口から差し込む陽が苔の露に反射し輝いている。
「この部屋もようやく何もない空間じゃなくなったな」
「まだ描写出来ることは少ないけどね」
「さてこれからどうする宵闇くん?」
宵闇|《そうだね、これからの方針をはっきりさせる為に一旦現状を振り返ってみようか》
「さんせーい」
《僕たちの今後の予定はこんな感じだよ》
・色々な場所の生き物などを設定する
・その後時代を飛ばして生き物たちの進化した姿を設定する
・最終的にドラゴンを設定する
「あわよくばやりたいことリストのひとつ、“進化の過程”を楽しむ目論見だ!」
「ちょっとだけ予定が変わったけどまだ生き物の設定を具体的に進めていなかったから多分なんとでもなるよね」
「生態系を細かく設定する必要がなくなった分、注目したい生き物だけを考えていけるんじゃないか」
「自分は精霊を活用する生物として“背ビレのあるトカゲ”とかつくりたいな。背ビレを岩とかに擦り合わせて火精霊の活性化による昇温現象で身体を温めるの」
「いいねそれ」
「適切な環境があればどっかに配置しようよ」
「まあひとまず今はまとめとバースデー洞窟の設定だぞ、諸君」
「はーい」
《現段階の基本的な環境はこんな感じだよ》
・地質や植生は地球に近い
・その為地球と似た姿の生き物もいる
・環境の候補は洞窟、森、平原、山、川、谷、海、砂漠など
・その他に精霊が頻繁に活性化する“共鳴地帯”などこの世界特有の環境がある
「よぅし早速洞窟の生き物を手分けして考えようじゃないか!」
「オー!」
「そんな訳で私たちが考えたのはこれ!」
「プルプルピチピチの最弱ボディ!」
「無色透明なゾル・ゲルボディ!」
「歯応えのないウォーターボディ!」
「その名もゾル・ゲル生物【ゾール】だ!!」
「まんまだ!!」
「アメーバみたい」
「スライムのようにも見える」
「最初の敵はスライムと相場が決まってるしね」
「それはあまり関係ないような」
「うむ。最弱でまず浮かんだのがアメーバだったのだ」
「でもアメーバは既に我らが地の精霊アメーバさんがいる」
「なので【ゾール】は名前の通りゾル状の生き物って事にしたのだ!」
「天敵はいるの?」
「ゾル状生物って誰も食べなさそうだが……」
「それだと無限に増え続けちゃうぞ」
「ならば次は我々がそれを食べる奴を作ろう!」
「イモムシ型で自分より小さい【ゾール】をもぐもぐしちゃう生き物だ」
「それならゾール君は合体してもっと大きな複合体に成長するぞ」
「それならイモムシも脱皮してもっと大きくなるから」
「それならゾール君はもっともっと合体して大きくなるもんね!」
「それならこっちも何度も脱皮して――…」
「すとーっぷ!!」
「洞窟がこいつらで詰まるぞ!」
《まぁまぁ、とりあえずイモムシ君の設定を聞いてみよう。これはどんな生き物なんだい?》
「ふっふーんよくぞ聞いてくれた!」
「丸々太ったムチムチボディ」
「ちっちゃいお手手」
「表面はゴムみたいで押したらぐにぐにするよ」
「味もゴムみたいで不味い」
「雷の精霊クンショウモの力で微弱な電流を発して獲物を探すよ」
「名前はえーとうーんと、ムチムチの【ムチムー】!」
「ゾール君といいムチムー君といいまんまだな!」
「覚えやすくてよい」
「そして正面にまんまるなひとつ目!」
「ん? ひとつ?」
「断固ひとつ!」
「なんでひとつ?」
「カワイイからに決まってるじゃない!!」
「それ以外に如何なる理由があろうものか!!」
「……と思ったんだけどさぁー、自然界でひとつ目の生き物ってほとんどいないじゃん?」
「ミジンコみたいな微生物とか、起源の古い生き物しかないんよ」
「やはりひとつ目では生存戦略に難があるのか……」
「あーんどうしよぉ……!」
「かわいさを取るか、後世に生き残る確率を少しでも上げるか……!」
「ものっそい葛藤しているぞ」
「ひとつ目フェチなブレインズが集まっているのだな」
「ひとつ目フェチ」
「色んな趣味のブレインズが居るからねぇ」
《それなら周りの環境がもう少し固まってから決めるといいよ。先に他を考えていこうか》
「ありがとぉ~宵闇ちゃ~んっ」
「はいはーい! あのね、あたしたちいい事思いついたよ!」
「ここバースデー洞窟は天然の洞窟でしょう?」
「だったら、自然現象で起きてもおかしくない筈……」
「お?」
「なになに?」
「ズバリ、環境音による精霊の活性化……ッ!」
「ををっ!?」
「早速共鳴地帯設定が活かされるか!?」
「活性化は確か特定の超音波帯の周波数が同時に鳴らないと発動しないはず……!」
「周波成分的なアレソレね!」
《外と繋がっている洞窟・洞穴の構造上、風の条件次第で同じ音が繰り返し鳴ることは可能だね。それが偶々精霊を活性化させる音であってもおかしくはないよ》
「おぉーっ!」
「俄然テンション上がってきたよ!」
「やっとファンタジーっぽくなって来たぜ!」
「やっちゃう? やっちゃおう!」
《前回を振り返ると、8種の精霊は環境の差こそあれ世界中に満遍なく存在している。ただし共鳴して活性化する音の周波成分はそれぞれ違うよ。バースデー洞窟で頻繁に活性化するのは8種の精霊のどれか1、2種にしぼるのが良さそうだね》
「どれにする?」
「火……水……風……うーん、あんまり面白いイメージが湧かないなぁ」
「光は除外しようか? これはまだ最初に手を着けるには早い気がする」
「重は?」
「重はダメダメ! ゾール君の軟弱ボディが耐えられないから絶対!」
「水風船より繊細なんだからね!」
「あとは地とか?」
「意外性あって悪くないけど……地の精霊ってどんな性質だったっけ?」
《結合と腐食。地面が硬くなるか、柔らかくなるよ》
「じ、地味だ……」
「雷なら派手じゃない?」
「ふっふーん、ムチムー君は表皮がゴムっぽいからきっと電気耐性もあるのだ!」
「たぶんゾール君は衝撃で細胞が壊れて死んじゃうぞそれ」
「本当弱い生き物だな!」
「大垣の水まんじゅうより繊細か!」
「いいんだもん! 最弱が【ゾール】の生き残り戦略なんだもん!」
「【ゲール】になったら硬くなって強度上がるんだもん!」
「いや【ゲール】ってなにさ!?」
「いやだなぁ【ゾール】が大きくなり続けると【ゲール】になるでしょう?」
「初耳なんだけど!?」
「んーとじゃあ、磁の精霊は?」
《引力と斥力。鉱物中にいることが多くて互いを引き寄せたり反発したりするよ》
「ん? ちょっと面白い光景が浮かんだかも……磁の精霊が活性化すると洞窟内を石が無尽蔵に飛び交うみたいな」
「なにそれ笑うわ。採用しよう」
「決断はっや」
「でも地球では中々無い独自の環境で面白いかもしれない」
「あってたまるか!」
《ゾール君、ムチムー君的にはどうかな》
「弾力あるムチムーはなんとか生き残れるはず!」
「ゾールもそれなら大丈夫だよ」
「ゾール君は潰れるだろ」
「潰れても核と細胞が無事なら復活するから」
「マジか」
「なにそれすごい」
「ゾール君にめっちゃ興味湧いてきたわ」
「むっふっふ、詳しくは探検パートでのお楽しみだよ!」
《じゃあバースデー洞窟は地の精霊アメーバ、そして磁の精霊パンドリナが度々活性化する地帯ってことでいいかな》
「異議なーし!」
「よし。洞窟の設定も決まったし、私たちもムチムーの目をどうするか決めたよ」
「なんだったっけ?」
《ひとつ目にするかどうかだね》
「そうそう、ムチムー担当はひとつ目フェチが集まってるんだったな」
「どうすることにしたんだ?」
「ひとつ目は……ひとつ目は……涙を飲んで、諦める……ッ!」
「ムチムーの顔は正面に大きなひとつ目模様、その下に複眼的な小さい六つの本当の目を置くことにした……ッ!」
「せめて見た目だけでもひとつ目にしたい苦肉の、策……ッ!」
「意外」
「なんと」
「ひとつ目フェチブレインズがひとつ目を諦めるだって!?」
《どうしてひとつ目をやめることにしたんだい?》
「やっぱし大きな目玉は弱点にもなっちゃうしぃ? 性能の良い目を持っていても機動力がないと活かされなさそうだしぃ?」
「要するに費用対効果が低い」
「巨大な目玉ひとつを維持するためのエネルギー摂取量を栄養素の少なそうなゾールをもぐもぐするだけで得るのは難しいだろうという結論に至ったのだ」
「栄養素少なくて悪かったな!」
「生存戦略!」
《創作生物なんだしそこまで厳密に考えなくても……といいたいところだけど、それがブレインズだから仕方ないね》
「そのかわり、目玉模様の中心に感覚器系の細胞を配置するのだ!」
「いつか将来進化してここに目っぽい何かが生えて来る事を期待しているぞ!」
「往生際が悪いのもブレインズの特徴だぞ」
《ムチムーの目も決まったことだし、そろそろ一旦締めようか》
「次回も引き続き洞窟内の生き物づくりだな!」
「引き続きよろしく~」
つづく




