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思考12 カタツムリがキノコ食べるって知ってた?〈Aチーム〉


【SFの部屋】


 もしその地に人が立ったとしたら手足に纏わりつく空気に違和感を覚えるのだろうか――いや、それよりも先に危険極まるこの空気に肺を蝕まれ瞬く間に物言えぬ骸となる方が早いだろう。

 そんな危険を冒しても尚その地に立つことを望むならば、まさしくこの世の物とも思えぬ光景を目にすることが出来ることだろう。


 青、黄色、緑、桃色……一面を埋め尽くさんばかりの大小の茸が暗闇の中ポツポツと色とりどりに淡く柔らかい光を灯す。


 見上げてみれば柱のような建造物かと思えたものが巨大な植物の一部だったと気がつく筈だ。射し込む月光が時折、柱の合間を縫うように悠々と飛行する巨大な何かの影を浮かび上がらせるが、その正体を知る者はまだない。


 この光景を目にした者はきっと誰しも思う事だろう。こここそは《死ぬまでに一度は目にしたい景色》のひとつであった――と。




「ねえなんかいつの間にかキノコ光ってるみたいなんだけど」

遠闇『ノリだよ!』

「ノリか」

「ノリならしょうがないね」

「ていうかこの惑星に月ってあったの?」

『きっと一つや二つくらいあるよ、なんかオシャレじゃん?』

「オシャレか」

「オシャレならしょうがないよな」

「たぶんあるんだろうな」



『という訳でスリバチ盆地に生息する重気性生物バキバキ募集中だよ!』

「擬音がおかしい」

「前回出来上がった環境を考えればおのずとどんな生物が生息しているか思いつくはず」

「視界はきのこ明かりと月明かりがあるけど基本は暗い」

「地面は隙間が多くてデコボコしてるな」

「となると重気性生物はこの不安定な足場を歩けるような姿をしているな」

「そしてそして夜間とはいえ上空からの敵にも気を付けないといけない」

「食物連鎖でキノコの上にいるのは……」

「キノコを食べる生物たち!」

「哺乳類、虫、かたつむりなどですね」

「キノコを巣にする生物もいそうだね」

『じゃあ早速そうした生物を考えていこうぜよ!』



「たとえば“殻をキノコに擬態させて身を守る貝”なんてどうだい?」

「キノコを背負ったカタツムリみたいになるのかな」

「どっちかというとウミウシみたいに派手な奴がいいな」

「キノコ型の殻を背負ったウミウシか……それ絶対かわいいやつやん!」

「殻の形や体色は食べるキノコによって変わるからその見た目は様々」

「マニア大喜びじゃん!」

「絶対コレクターとかいるやつじゃん!」

「そもそもこの惑星にマニアもコレクターもおらんわ」

「名前は【カサセオイ】なんてどうかな?」



「それじゃどんな生態か詳しく考えてみようか」

「えーと、確かキノコを食べるんだっけ?」

「盆地内部のキノコってどれも毒持ってそうだよね……」

「重気体とかいう怪しい空気吸って成長してるんだもんね」

『ふーんどれどれ』


 パクッ


「あっ」

「あっ」

「遠闇ちゃんがキノコもぐもぐしちゃった!」

「ぺっしなさい! ぺっ!」

『――なんかむにぇっとした味がする』

「食レポ下手か」



『青臭くはなくちょっと土臭い胸にわだかまる謎風味』

「まあたぶん光合成とかしてないからな」

『舌がピリピリしてお腹壊しそうだから人は食べない方が良いと思うな』

「やっぱり毒キノコじゃないか」

『んでこっちはねー』


 パクッ


「あっまた食べた!」

『――炭酸の抜けた炭酸水味のスポンジ食べてるみたい』

「なにそれまずそう」

『後から舌がひりひりしてくる』

「これも食べちゃダメな奴っぽいな」

『で次はねー』


 パクッ


「手当たり次第か」

『あ、これは食感がエリンギっぽいぞ!』

「おお!」

『錆びた鉄釘みたいな味!』

「ろくなもんじゃねぇ」

「遠闇くんすごい」

「アバターとはいえ躊躇なしだな」



「ハイ質問です!」

『何かねブレインズ君?』

「【カサセオイ】についてですが、せっかくキノコ型の殻で擬態してるのに、派手な体色では目立ってしまわないでしょうか! ワタシは地味な体色の方がいいと思います!」

「確かに」

「言われてみれば」

「ノロい上に目立つって食べてくれと言わんばかり」



『ふむ……そこんところどうなのかねブレインズ君?』

「地味より派手な方がいいに決まってるよ! だってその方がかわいいじゃん!」

「殻背負った派手じゃないウミウシってそれもうほとんどアメフラシじゃねえか!」

「アメフラシさんはなぁ、海の宝石と持て囃されてるウミウシと違って地味ってだけで見向きもされないんだぞ!?」

「ウミウシって先例が居るんだから【カサセオイ】が派手でもおかしくないだろ! ウミウシはあえて派手にして自分を食べると危険だって捕食者に知らせてるんだぞ!」



「だったら【カサセオイ】だって警戒色があるならもう殻なんてなくていいじゃん! 家無しでいいじゃん!」

「なにをぅ殻が無くてどうやって昼間の重気体減少を乗り切るってんだ! そこまで言うならそっちが家無しにしてみろってんだい!」

「地味で家がないウミウシってそんなもんほぼナメクジじゃろがい!」

「ざんねんでした~ウミウシにだって地味柄はいますぅ地味だけど侘び寂びがあるんですぅ~」

「だったら地味色【カサセオイ】がいたっていいでしょーっ」

「ナメクジが殻背負ってたらアメフラシじゃなくてカタツムリだと思うんですけど!」

「カタツムリは割と受け入れられてるからセーフ!!」

「ヒートアップしてるぞ」

「もう何が何やら」



「分岐ルート発生だよ遠闇ちゃん!」

「派手色と地味色どっちにするのだ遠闇!」

『んー……どっちも採用しちゃえば?』

「えっ」

「えっ」

「おおっ?」

『元々“殻の形や体色は食べるキノコによって変わるからその見た目は様々”っていうおもしろ設定があるんだし、地味なのも派手なのも殻がキノコ型もそうじゃないのも色々用意しちゃえばいいんだよ!』



「い、言われてみれば、2パターンからどちらかを選ばなければいけないような気になっていた……」

「進化とは多様性の中で最も環境に適した生物が種を繋ぐこと……」

「色々なパターンから進化し淘汰されその環境に適応した種が完成していくもの……」

「ふふ。まさかここにきて遠闇ちゃんに教えられちゃうとはね」

「見直したぜ遠闇……」

『ふっふーん、君たちが言い争ってる間に別チャンネルで宵闇君に相談して助言してもらったんだもんね!』

「宵闇くんのおかげかよ!」

「それ宵闇くんの手柄だろうが!」

「宵闇は頼りになるナァー」



『ちゅうもーく! これからブレインズ諸君は各自班に分かれて【カサセオイ】のデザインを担当していくよーに!』


「「「「「はーい!」」」」」


『もし環境に順応できなくて淘汰されていったとしても恨みっこなしだよ!』

「オッケー!」

「弱肉強食!」

「強者生存!」

「これぞ自然の摂理哉!」


『しからば一時かいさーん!!』


「「「「「オー!」」」」」



つづく





『よいこの皆はキノコの生食は絶対にしちゃいけないぞ!』

「シメジとかエリンギみたいな食用キノコも生食で中毒起こして病院に運ばれたりしちゃうんだ」

「遠闇君は特別な訓練を受けたカエルです」

「受けてないけどアバターだから平気なのです」

『でもやっぱり焼いて食べたいなぁ……(じゅるり)』

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