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思考10 続・魔力について設定しよう!〈Bチーム〉


【幻想の部屋】


 なにもない空間。

 カピバラが一匹と姿なきブレインズBチームがいる。



宵闇|《という訳で精霊の種類は『水・火・風・地・雷・重・磁・光』の8つということになりました》


「想定より大幅に増えた」

「考えれば意外と出てくるもんなんだなぁ」

「これ一回聞いたぞ」

「なぜ前回のセリフを繰り返したし」

「ほらCM開けってちょっと前からやり直したりするじゃん?」

「あれの尺長すぎる番組って嫌だよねぇ」



《前回の続きという事で、微せ……精霊の設定を考えていくよ》

「前回は各精霊の持つ特性を決めたんだったな」

「じゃあ今度は姿を決めちゃおうよ」

「でもどうせ目には見えないサイズなんでしょ?」

「いーのいーの! 姿がある方が愛着が湧くじゃん」

「どんな微生物がいいかなぁ」

「微生物縛りはしてない筈なんだが」

《それじゃあこの後も色々決めるしサクサクいこうか》


《まず水の精霊》

「微生物代表ミジンコさん!」


《火の精霊》

「クリオネさん! なんか内臓赤いし!」

「内臓いうな!」


《風の精霊》

「スタイリッシュミカヅキモさん! ブーメランっぽいよ!」


《地の精霊》

「粘土みたいに変幻自在なアメーバさん!」

「これ愛着湧くかな!?」


《雷の精霊》

「クンショウモさん! なんかいかにも全方位放電しそう!」


《重の精霊》

「まんまるキュートなボルボックスさん! 体細胞の中でポコポコ子どもが増えてくよ!」


《磁の精霊》

「ええいパンドリナさんでどーだ! 丸い粒がギュギュッと密着した感じが磁石っぽいぞ!」

「流石に苦しくなってきた!」


《最後に光の精霊》

「セネデスムスさん! 平べったくて光反射しそうだね!」

「日本名はイカダモだぜ!」


【画像:精霊】

挿絵(By みてみん)


「本当に微生物ばっかになった」

「微生物一覧片手に考えたしね仕方ないね」

「この精霊たちってどこから現れるのかな?」

「微生物だし好き勝手に分裂してるんじゃないか」

「光合成とか?」

「いや微生物なのは形だけだからね?」

《光合成をするとなると関係性を元素も絡ませて考えなくちゃいけなくなるよ。それに食物連鎖にも組み込まざるを得なくなるね》

「それはものすごく面倒くさいぞ!」

「精霊が本物の微生物みたいに生き物に消化・吸収されるのはあまりにも哀しい……!」

「精霊ってくらいだし神聖さを残そう!? ただでさえ微かなファンタジー要素は大事にしよう!?」



「常に世界に一定数いて総数が変わらないという案もある」

「力を使っても消滅したりしないってことか」

「でも増減がある方が戦略を立てられたり精霊不足で危機に瀕したり、物語を盛り上げる要素になるよ」

「おお、それはいいね」

「その方が面白そうだ」

「そうすると共鳴した時だけ活性化して物質に干渉するけど、普段は適度に増えたり減ったりしながら精霊同士でしか干渉し合わない存在ってのがいいんじゃない?」

「それなら過度に生態系に組み込まれることもないね」

「とはいえ好みの気候とか土地柄ってのはあると思うんだ。水や地の精霊はそのまま水と土の中に多くいるだろうし、火は砂漠みたいな熱いところが好きそう」

「そうだね。精霊が沢山いる土地はあっていいと思う!」



《次の問題は、環境音による魔法の誤発動・連鎖反応をどう防ぐかだよ》

「これまでに決まったことを踏まえてもう一度魔法の定義をおさらいしてみよう」



・魔法とは: “空中・水中・土中等に存在する精霊が、対応する音波に共鳴して力を振るう現象”



「こんな感じ?」

「もし火と風の魔力を同時に使った[火炎放射]って魔法を撃ちたい場合はどうすればいいの?」

「それぞれの精霊に対応する『ミ』の音と『ファ』の音を同時に出さなければいけないのだろうか」

「その音きちゃないよ」

「例えだ例え」



《声や楽器や自然の音っていうのは必ずいくつもの周波数が同時に鳴ってまとめて一つの“音”として聞こえているんだ。聴診器で聞く音みたいに一定じゃなくてね》

「それが音色の違いになるんだよね」

「同じ音程の『ラ』でもピアノとギターと人の声の音が違って聞こえる理由だな」

「部屋の環境にもよるけど『ラ』の音を鳴らすと周波数440Hzを基準にその周辺も出るし、オクターブ上の880Hz周辺も出るし、かと思えば全然関係ない周波数がピョコンと出てる事もあるし……」

「それに発音した瞬間のアタック音の違いが楽器の個性を決定付けるといっても過言ではないくらい重要だ」

《だから楽器によって違う音色、生き物によって違う鳴き声の、特徴の異なるでこぼこした波の形ができあがる》




《それってまるで、ひとつひとつ形の違った“鍵”のようじゃないかな》




「当然同じ楽器でも細かい音の個性は出るし、毎回完璧に同じ波を出せる訳でもない……」

「でもその中で“鍵”となる数種類の波の形が揃った時に……」

「条件を満たした精霊たちは共鳴し【魔法】という現象を起こす……」

「そういうことだな!」

「発した音波の中に火の精霊と風の精霊の共鳴の条件を満たす波があれば[火炎放射]の魔法が完成するワケだ!」

「それならなんでもかんでも音が鳴るだけで魔法が発動することもないね」

「でもあともう一押し安心できる設定がほしいなー」



「例えばその“鍵”になる周波数帯を、環境音ではほとんど出ないレベルの超音波にするとかは?」

「しかしそれだと戦闘描写が“ピィ―――”とか“キ―――ン”とかばかりになっちゃうぞ」

「……いや、ひょっとしたらその案悪くないかも。要は普通の鳴き声に混ざって超音波が出てれば良い訳だよ! それなら魔法描写も地味にならない」

「なるほど実は魔法は鳴き声そのものじゃなくてそれと共に発せられる超音波によって起きていたのか」

「それなら普段の鳴き声と戦闘用の鳴き声で使い分ければいいし、環境音から特定の音波が出ない限り簡単に自然災害も起きないわね」

「よかった……これでもう『くしゃみしたら連鎖爆発で世界終了』なんてことも起きないんだね……」

「全員ひっそり息をひそめて過ごさなくても良いんだね……」

「それはそれでシュールでちょっと見てみたいぞ」





「さて……ようやっと舞台設定が出来たわけだけど」

「いよいよ生き物を設定しはじめるか?」

「これまではイマイチファンタジーっぽくない話し合いだったけど、精霊の設定さえできちゃえばあとはこっちのもんだ!」

「さあさあ何から始める宵闇ちゃん!?」

《思考1で『単細胞レベルから全く新しい生物の進化の過程を楽しむような話を書きたい』っていう話が出てたんだけどどうしようか?》

「相変わらず話題性がファンタジーから遠い!!」

「単細胞からの進化っておもいっきりファンタジー向きじゃないよね!?」



《環境に応じた進化で独自の生き物を生み出すことは僕たちブレインズの当初からの目的でもあるんだ》

「いつになったら僕らの世界でファンタジーが始まるんだ……?」

「諦めろ。不思議なものに理由を設定して不思議から遠退かせている以上どうあがいても我々はファンタジーっぽくはならないのだ」

「この世界がファンタジーに見えるのはこの世界とは違う概念を持った“異世界人”だけだよね~」

「幻想の部屋(ファンタジーとは言ってない)って奴だな!」



「しかし真面目な話地球の進化の過程をなぞるとなると大変なものだぞ」

「海の中から始まらなきゃいけないし」

「しばらくバクテリアの仲間しか生まれないし」

「陸上進出は植物からだし」

「動物生まれてもかる~く数億年は海の中だし」


「音を出せる生き物現れるのいつだよ!」


「せっかく考えた精霊の設定どうした!!」


《うん。流石にバクテリアばかりじゃ面白くならないし地球の古生代~中生代みたいに何度も絶滅イベントを起こすのも気が引けるから、既に世界はある程度安定した環境がつくられてる事にしたいと思うんだ》

「いいと思う」

「ボクらは陸から始めようそうしよう」

「ぶっちゃけ海から始めてもカンブリア紀の生き物のぶっ飛んだデザイン力に勝てる気がしないしな!」

「うんうん」

「カンブリア紀デザインした人のセンスマジヤバイわ」



「それなら森や平原じゃなくて洞窟から始めない?」

「なんで?」

「いきなり外からだと生き物の量が多すぎて処理しきれないと思うのよ」

「確かに」

「洞窟にも色々あるが……」

「水が湧いて滝になって外に流れ落ちているなんていいんじゃない? 水辺と地面の環境が適度に混じってるよ」

「大きくなくてもいいから陽が射し込む洞窟がいいなぁ。苔も生えるし蝙蝠みたいなのが大量に住み着く洞窟はあまり居心地の良いものとは言えない」

「異議なし」

「蝙蝠そのものはかわいいんだけどね」

「虫が苦手な人は間違っても“蝙蝠の住む洞窟”で検索しちゃダメだぞ、ブレインズとの約束だ!」



《それじゃあこの世界で一番最初に生き物を設定する場所は……》

「最初の土地だから【バースデー洞窟】にしよー!」

「Oh,birthday」

「精霊の名前といいまんま過ぎるのでは」

「使ってるうちに慣れるから大丈夫大丈夫」

「自分なんて既にあの微生物たちの名前精霊としてアリって思えてるからね。火の精霊クリオネとかカッコよくね?」


《それじゃあBチームは次回から【バースデー洞窟】の生態系を考えていくよ》


「「「「「はーい!」」」」」



つづく

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