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思考9 魔力について設定しよう!〈Bチーム〉


【幻想の部屋】


 なにもない空間。

 カピバラが一匹と姿なきブレインズBチームがいる。



「それじゃイメージを固めていこうか!」

「そもそも【魔力の素】って言ってるけど魔力とは違うの?」

宵闇|《力って作用する方向性のことをいうのかなって思って、ちょっと変則的だけど力を発揮する素となる物質を指して【魔力の素】っていう表現にしておいたよ》

「この【魔力の素】が火になったり水になったりするんだよね?」

「やっぱり万能だなぁ魔力は」

「万能過ぎてもう少し制限を設けないと意味がない気もする」

「よく考えれば別に【魔力の素】をひとつの物質に決めることはないんじゃないかな?」

「ああ、そうか! 火には【火の魔力の素】、水には【水の魔力の素】が存在しているとすれば……」

「音波の種類によって違う現象が起こる事にも説得力があるね!」



「この【魔力の素】ってなんなんだろ?」

「空気中の元素のひとつじゃない?」

「それか目には見えない大きさの微生物とか」

「ウイルスみたいな?」

「なんというか僕ら……考え方が結構即物的だよね」

「最終的に“精霊”とかいい感じに名づけとけば大丈夫大丈夫」

「精霊も微生物も呼び方が違うだけでほぼほぼ一緒一緒」

「清々しいくらいの暴論だな」

「ほんとにファンタジー世界作る気があるんだろうか……?」



「それならクリオネっぽい形の奴にしよう! プランクトンだけどあれギリ精霊っぽいよ! バッカルコーンは絶対外せないけどね!」

「微生物の代表と言えばミジンコより他にあるまい」

「ミカヅキモのスタイリッシュさはもっと評価されてよい」

「魅惑のボルボックスを忘れちゃ困るぜ!」

「マイナーどころでクンショウモとか」

「ほんと~~にちゃんとファンタジー世界になるんだろうな!?」



《ちょっと待ってね。まずどんな種類の微せ……精霊が必要か考えてみよう》

「よくある魔法ものだと『火・水・風・土』でワンセットだよね」

「『金属』が入ってくることもあるよね」

「はいはい!」

「あるある!」

「現代の魔術とか陰陽道にも通じる奴ですな」

「あとは『雷・光・闇・重力・空間・時間・隕石』――…」

「……ああはい……」

「……あるある……」

「……便利便利……ははは……」

「一気にテンション落ちた!!」



「だってさ、その辺なにをどうしてどうなってるんだかサッパリじゃん!」


「『雷』入ってきたら最強じゃね!? もはや攻撃に『火・水・風・土』いらんでしょ!」


「『光・闇』って何!? 具体的に何をどうしてるの!? あと『闇』、お前冷静に考えて“黒い光”とかありえねーかんな!」


「『重力』操るとか簡単に言うけどさ、それ地球さんの前でも同じこと言えんの? 創造神かなにかなの?」


「『空間』ってなんだよ!! なんでそんな凄い魔法を当然のようにカバン代わりに使ってるの!? わけわかんない!!」


「『時間』って前から不思議なんだけど使った瞬間周囲の空気が固定されて二度と身動き取れなくならない?」


「『隕石』とかさぁぁぁもぉぉぉぉぉッ!!」



《ブレインズは基本的に小市民だから小学校理科の規模を超える話になると混乱するんだ》




  ・・・しばらくお待ちください・・・




「……『聖・呪い・精神』とかもあるけどさ、これに至っては神とか魂の存在とかが密接に関わってくるから……ゼィハァ……」

「……うん、異次元の概念に突入してきちゃうから……ゼーゼー……」

「……この世界ではとりあえず横に置いておこう……はふぅ……」

「いやぁ、興奮しすぎて息も絶え絶えだよ」

「肉体ないけどな」

「細かいことは気にしない」

「よし、落ち着いたところで順番に見ていこう」

《『水・火』は流石に採用してもいいかな?》

「賛成」

「異議なし」

「音と共鳴した時の働きは――…」

「水は空中からブクブク湧き出して、火はパッと燃え上がるイメージ!」

《じゃあこんな感じだね》



・水の精霊……湧水、降温

・火の精霊……燃焼、昇温



《『風』はどうする?》

「風って実際そんなに強そうなイメージじゃないんだよねぇ……必要ある?」

「後々ドラゴンが飛ぶためには必要じゃない?」

「巨体を飛ばす為の風量って生半可なもんじゃないぞ」

「しかも吠え続けてないと飛べない?」

「効率悪い」

「いや、きっとただ風を当てる以外にも方法はあるだろう。現世界だって魔法なしに航空力学で鉄の塊を飛ばせているんだ」

「あのー思ったんだけどさ、精霊は何種類も居て、それぞれ違う働きをするんでしょう? ということは、【火の精霊】は基本的に火を生み出す事しかできない訳で、それを火炎放射のごとく遠くに飛ばす為にはひょっとして【風の精霊】の力が必要になるのでは……」

《――確かに風がいるのに火や水の精霊に自ら飛んでいく能力も与えるとコンセプトがズレてくる感じがするね》

「と、いうことは風がなければ水は目の前で湧き出すだけ……?」

「火は使用者の周りに燃え広がるだけ……?」

「うわ危険が危ない」

「風さんめっちゃ大事じゃん」

「風さんナメたこと言ってマジスンマセンした」

《じゃあ『風』も採用するね》



・風の精霊……運動、拡散



《『土・金属』はどうだろう?》

「土中にいるタイプの精霊かな」

「地面から石壁やら鉄槍やら生やしてるのをよく見かけるぞ」

「硬さを変えたり金属的な性質を持つ魔法だね」

「この属性はクリエイティブ過ぎて使用方法を弁えないとすぐ便利魔法と化すからな!」

「最初からなるべく不遇にしてやろうぜ!」

「土属性が何をしたっていうんだ」

「今思い切りフラグが立ったよね」

「後から隠された真価が発揮される奴だよね」

《じゃあこれは『地』でひとつにまとめて採用だね》



・地の精霊……結合、腐食



《あと入れたいものはある?》

「ハイ。実はわたし、『雷』を入れたいんだけど……」

「ええーッ!?」

「あのバランスブレイカーを!? 何故!!」

「確かに雷落とされたりしたら普通に考えればまず即死だと思う。でもよく考えたら地球にもデンキウナギとかデンキナマズとかいるでしょ?」

「確かに電気を使う奴らはいるな」

「デンキウナギってさ、ひとつひとつは小さい電圧をいくつも同時に発生させて900Vくらいに達してるらしいよ? 同じように精霊一体ずつでは小さい電圧でもその場にいる精霊の数によって威力が変化するのはどうだろう?」

「稲妻が落ちて敵を襲うわけじゃなく、いわばスタンガンみたいなものか」

「うん。それなら良さそうだね」

《じゃあ電気……電の精霊……語呂が悪いし『雷』にしておくね》

「オッケーオッケー」

「空気中の精霊自体の数も減らしてごく稀にものすごく条件が合えば雷を誘発できちゃう、みたいなね」



・雷の精霊……発電、伝播



「ハイ。それなら自分も『重力』で思いついたのが! 実は場の重力ではなく自らの質量が変化する精霊ってのはどうでしょうか!」

「精霊が重くなったり軽くなったり?」

「精霊にのしかかられた状態で重くなられると空気に上から押し潰されるように感じるのか」

「それなら地面の重力操るより単純で分かりやすいね」

「レア物ってことで入れちゃおっか」

《じゃあ『重』も採用するね》



・重の精霊……増量、減量



「ハイ。それがアリならひとつ相談なんだけど……『磁力』を入れられないかな」

「ふぅん? 魔法としてはレア中のレアだね?」

「磁力は“目に見えないけど確実に存在する力”として以前から注目していたんだ」

「離れた位置から影響し合える力というのも考えてみると面白いよね」

「でも音の共鳴で磁力を高めたとして何か生き物の役に立つと思う?」

「それは、やってみなくちゃ分からない――…」

「 大 科 学 実 験 で 」

「よっしゃもうノリで採用ッ!」

《じゃあ『磁』も採用するね》

「ねぇ皆ここがファンタジー世界だってほんっっとうに判ってるかな!?」



・磁の精霊……引力、斥力



《ハイ、僕からもいいかな。実は『光』を仲間に入れたいんだ》

「えーっあの具体的に何をやってるんだか一番サッパリな光を!?」

「光と闇の力に手を出すな、大変なことになるぞ!?」

「あれは一介のブレインズが手を出していいもんじゃない!」

「設定が収集つかなくてダークサイドに堕ちちゃうぞ!?」

「いや冷静に考えれば“宵闇”って既に“闇”では」

「そうか、だから“光”に憧れて……」

《ダークサイドにもライトサイドにも行かないから安心してね》



《僕の言う『光』は攻撃能力も神聖なパワーもないよ。自分の分身が浴びた光をもうひとつの分身に反映させる、それだけの働きを持つ精霊だよ。いたら面白いかなって思ったんだ》

「浴びた光をもうひとつに反映?」

「どんな感じに利用できるのか全く想像できん」

「それがどうなるの?」

《ふふ。それはナイショ》

「おお?」

《使い道の分からない要素があると生き物の設定を考える時により楽しめそうでしょ?》

「そういうことなら」

「これからのお楽しみにしておこう」

「この世界に生き物が生まれてくるのが待ち遠しいなぁ」

《それじゃあ『光』を追加するよ》



・光の精霊……反射、分身



《という訳で精霊の種類は『水・火・風・地・雷・重・磁・光』の8種ということになりました》


「想定より大幅に増えた」

「考えれば意外と出てくるもんなんだなぁ」

「もうそろそろ一旦区切り入れた方が良さそうだね」

「まだまだ設定しなくちゃいけないものがいっぱいあるぜ!」

《それじゃあ次回にもこのまま入ろうか》

「らじゃー!」

「CMのあとも引き続きBチーム!!」



つづく

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