世界武術大会!!
みんなが僕の”世界がまとまって魔界に対抗するべきだ”という考えに賛同し、協力を申し出てくれてからというもの、僕たちは放課後に何度も話し合いを重ねた。そしてこう思った。
僕たちは、無力だ。
生徒はまだ子供だ。大人に対しての影響力はまだまだ小さいし、ましてや社会に対してなど全くない。
そして僕たちはこういう結論に至った。
力をつけなければならない。
人脈も勿論のこと、その人脈を得るために個々の能力も高めなければならない。
だから僕たちは自分の能力を、大人に大きな影響を与えられるようになるまでに高めると互いに誓った。
そして今、僕達のクラスでは
武術・体術が得意な者はクラスメート同士で模擬戦闘をしたり、互いの術を自分の技に取り入れたりして自分の能力を高めており、また錬金術などの特殊能力を持っている者は、その規模・スピード・正確さなどの観点から自分の弱点をなくし、更に上へ行こうと努力している。
そうした才能のない僕は何をしているかというと、ひたすら勉強だ。
軍略から経済、商いに至るまであらゆる知識を詰め込み、それを実践するということを繰り返す。
そんな生活がしばらく続いた。
―――半年後。
「うわぁ、大きな武道館だね〜」
こう感心しているのはスカーレットだ。
半年前は知り合ったばかりでまだぎこちなかったが、今ではすっかり僕と仲良くなっている。
「ほんとな。こんなところであいつらは競うんだもんなぁ、なんかこっちまで緊張してきた」
「も〜ノアが緊張してどうするのよ」
僕たちはクラス全員である大会に来ている。
世界武術大会だ。
今日はこの大会に我らがαクラスの一部が参加する。僕たちはみんなで応援すべく会場へ来ていた。
「シノブも出るのよね。複合体術だから〜。えっと…」
「午後の第3部だよ。」
この世界大会は午前に3部、午後に3部の合計6部に分かれている。
開催する競技は体術のみで、弓術も武術ではあるが死人が出てしまうので大会側は企画していない。
「今日はノアの知り合いの人も出るって言ってたっけ?」
「ん?あぁ。タイガだろ?あいつは剣術だから…午前の1部。初めの方に見れると思うよ。」
「優勝候補なんでしょ?できるといいね。優勝したら何かプレゼントでも送ろうかな…」
そう。優勝候補。
タイガは武術学校に入ってからというもの、更に練習に熱が入り、この国最強と謳われる、王宮直属の騎士団の団長から指導を受けるようになった。そして3ヶ月ほど前であろうか。タイガは騎士団長を超えた。
この国最強の剣士になったんだ。
「やめとけ。そんなことしたらルアが嫉妬してブチ切れる。」
「ルアってあの!?」彼女は目を見開いた。
「そ。だいぶ前から付き合ってるよあの二人。」
ルアは魔法学校に入ってから、学校活動に加えて冒険活動をするようになった。そう。冒険者になったのだ。魔法使いなのにパーティを組まずソロで戦う。それでいてギルド最速で最高ランクに到達した。この2つのことがルアの知名度を爆発的に上げた。
こんなデタラメな2人が幼馴染で今でも親友だと考えると、とても誇らしい。そして、同時に嬉しい。
2人は僕に賛同し、協力させてくれと言ってくれたのだ。こんなに嬉しいことはない。
「あ、始まった。」
剣術の部が始まった。タイガはシードだった。
そしていくつもの試合が終わり、タイガの試合が始まった。
「すげぇ。」
この一言に尽きた。僕はまだタイガの剣技を間近で見たことがなかった。
あいつは、飛んでいた。
僕は初め目を疑った。剣術の試合である確認までした。
タイガは相手と剣を交えるなり高く上に飛び、相手に向かって落下しながら剣を突き出した。そしてすごい速さで剣を振るい、その反発力によって空中で舞っていた。見事だった。
決着がついた。もちろん結果はタイガの勝利だった。文句なしの優勝だ。
対戦相手は上からのしかかってくる剣の重さに耐えきれなくなったところで足を折った。
膝をついた相手にタイガが剣を突きつけ、試合は終わった。
僕たちは顔を見合わせた。
「…あれ本当にノアさんの知り合いですか?」
「あぁ。僕もびっくりしてる。」
しばらく沈黙が流れたが、次の部が始まったのでクラスメートの応援に専念することにした。
みんなの応援をしていたらあっという間に午前の部が終わった。
昼休みになり、久しぶりに見る顔が僕の目の前に現れた。
「優勝おめでとう。すごかったよ。」
「ありがとう。」
タイガだ。試合が終わったあとはルアのところに行っていたらしい。
「あの空中からの剣撃すごかったよ。どうして空中から攻めようと思ったの?」
「あぁ。あれな、師匠に教わったから使ってみたくなったんだ。ちょうど相手は足が比較的弱そうだったから、耐久に持ち込んだら勝てるかなって。」
こいつは…。大勢に見られての試合なのに相手の体を見て弱点まで見抜いたのか。
僕はこの幼馴染に尊敬の念を抱いた。
「午後も見てくのか?」
「あぁ。クラスメートが出てるからね。」
「そっか。俺達はここで帰るわ。そんじゃまた。」
そう言ってタイガは帰った。
―――しばらく時間がたち、ようやく複合体術の部に移った。
「これが最後の部ね。シノブ大丈夫かなぁ。」
「大丈夫だよ。この歳でシノビ衆の頭領やってんだし。」
この部は人数が少ないのですぐに決勝となった。
シノブの相手、どこかで見覚えがある。
審判がホイッスルを構えると、こちらに向かって笑っていたシノブの顔は一気に険しくなった。
ピーーッ!!
試合開始のホイッスルがなるとすぐにシノブの姿は会場から消えた。
会場がざわめいた。しかし、すぐにシノブがどこにいるのかわかった。
勝負は一瞬だった。シノブが消えたと思ったら相手が倒れていた。
シノブはどこに行ったのかと見渡すと、もうシノブは控室に帰ろうとしていた。
会場内みんなが唖然とした。
「これがシノビ衆トップの実力…」
クラスメートたちも唖然としていた。みんなで力を高めあってきたが、シノブだけは1人別で修行していたため、その力を知らなかったらしい。
シノブすごいな と思った。しかし、シノブの対戦相手絶対にどこかで見たことがある。
その後僕たちは帰ることにして、シノブを待った。
「お待たせしました〜。」
シノブが来た。試合中とはうって変わって明るい笑顔だ。
「おつかれさん。そしておめでとう!!いきなり突然で悪いんだがシノブの対戦相手どっかで見たことあるんだけど誰だったの?」
「ありがとうルア。あー、えーっとねあれシノビ衆。」
「え。」
「シノビ衆も出るんだよこの大会。まぁだから決勝戦相手が部下で僕は頭だから優勝確定だった〜」
驚く僕たちを他所にシノブはドヤ顔でピースをしている。
「まじかよ。」
試合時間が短すぎてよくわからなかったが、決勝まで残るというのは相手の部下の人も相当腕が立つんだろう。なのにあんな瞬殺するなんて…シノブ怒らせちゃダメだな。うん。
「そんじゃシノブも来たし、みんな帰ろうか!」
そういって僕たちは自分たちの家に帰った。そして僕は思った。
力がついてきた。
仲間のうち、入賞できたのはさっきの2人だが、世界大会本戦に出ることができたのは7人いる。
世界大会は世界大会は世界中から参加申請が来るので本戦の前に予選を行い、勝ち残った上位約15人ほどが本戦に出ることができるのだ。
つまり、うちのクラスメートはこの半年間でどんどん世界に通用し、影響を与えることができる存在になっていっている。
そろそろ次の段階に進んでもいいか。そう思い僕はノートを開いて、1人魔界に対抗する方法について考えていた。