VS魔王軍!!
「申し上げます!我が国の領土に魔王軍が侵攻しています!」
「うむ。して数はいかほどか。」
「およそ、に、二十万の軍勢です!」
「なに!?それは本当か!」
「この王都、そしてミヴァロスに向けて進攻中!」
「このことを急ぎ国民に伝え、避難の準備をさせよ。戦えるものは王都に配置し万全の体制で迎え撃つぞ」
―――王国学校にて。
「大変です!フローレス先生!!これを!!」
用務員のおじさんが駆け込んできて、先生に紙を一枚渡した。
「な、なに…!?わかった。少し待ってくれ、すぐに向かう。」
先生はこちらを振り返った。
「諸君。残念なことだが私と君たちは今日でお別れになるかもしれない。魔王軍がこの王都と、そしてミヴァロスに向けて進攻している。数はおよそ20万だそうだ。戦える国民総出で迎え撃つがどうなるかわからない。この緊急時だ、大人たちは守ってくれないぞ。各自で判断し、身を守れ。そして生き延びろ。解散。」
そう言って先生は用務員と一緒に走っていった。
「どうする?ノア。」
みんなにそう聞かれた僕は、答える代わりに通信機に向かってこう言った。
「ギルローイ広場に集合。」
「どうするんだ、ノア。俺達は出陣するのか?」
「そのことなんだ。タイガ、僕は今回の戦い参加すべきだと思う。」
「…わかった。作戦は?」
「今まで通りだ。2班に分かれて戦う。ただし、今回はいつもとは組むメンバーが違う。」
「王都はスカーレット、マーグ、、、、ハンスのこのメンバーで戦う。そしてミヴァロスは主に剣術・魔法学校の生徒で固める。おそらく本隊は王都を攻めるだろうからルア、お前の範囲攻撃でささっと片付けてから王都の軍をはさみ撃ってくれ。」
「わかった〜。」
「僕はスカーレットの開発した空飛ぶ布団でミヴァロスと王都を往復して作戦の変更内容や増援を送る。」
「えぇ、それが最適だと思うわ。」
「よし、作戦はこんな感じ。今回の敵はかなり数が多いし強い、でも勝てばピースディザイアはかなりやりやすくなる。みんな全力を尽くしてくれ。それと、頼むから死ぬな、死にそうになったら離脱しろ。今のお前たちで勝てない相手に勝てる人材なんて王都にはいない。」
「了解。」
「シノブ、バナードさんに”とあるグループも戦闘に参加したいと言っている。彼らは強大な力を持っているからぜひ参加できるように話をつけといてやってくれ”っていうことを王に進言するように頼んでくれ。」
「承知。」
「じゃあ各自戦闘に備えて待機。戦闘が始まったら、戦って…勝とう!」
「おう!!」
この戦いに勝たないと世界を変えるどころか世界が滅ぶきっかけになってしまう。なんとしても勝たなくては…
―――4時間後。
ピーッピーッピッピーッ!!
鋭く4回吹かれた。開戦の合図だ。
僕はみんながやるべきことを伝えて回る。
「スカーレット!例の大砲ありったけ用意して。全部向き変えてね。それとハンス、もう複数ゴーレム扱えるよな?防壁作ったら今度はそれで攻勢へのきっかけを作れ。」
ミヴァロスを見に行くと、ルア・タイガのコンビが素晴らしく正に一騎当千、いや当万と言っても過言ではなかった。
戦力的にもまだまだミヴァロスは大丈夫そうだ。
空飛ぶ布団に乗って、僕は通信機に念じた。
「(今どんな感じだ?)」
「(スカーレットの大砲でどうにか押し戻している状況だ。打って出るタイミングがあったら教えてくれ。)」
「いや、まだだ。打って出るのは同じ戦力になるまで待て。」
くそ、戦場が大きすぎて事態が把握しきれない。
―――数時間後。
「ルア、聞こえるか?ミヴァロスの方の軍勢10万は無事殲滅した。これからそっちに向かう。」
「ありがとう、助かる。」
「みんな!タイガたちがこっちに向かってるぞ!!踏ん張れ!」
みんなは力強く頷いた。
「今だ!サリアの攻撃隊突撃!!スカーレットとハンスは全力でサリアたちを援護!」
「わかった!」
サリアは全身強化し中隊レベルを1人で壊滅させた。
そうして勢力がようやく2分の1ほど削れたかというとき、「撤退!!」という敵の声が聞こえてきた。
「勝った、か…」そう呟くと僕は床に座り込んでしまった。みんなを見ると、みんなも僕と同じように座り込んでいた。初の大規模な戦争でしかも守り側。神経をすり減らして戦わなければならなかった。
ミヴァロスに行っていた班が王都内に帰ってきた。
「おつかれ〜」そう言いながらルアは顔についた血を拭う。
「あぁおつかれ。大活躍だったそうじゃないかタイガとルア。」
「うん〜伊達にカップルやってないからね〜」
そう言ってルアはキャハキャハと笑っている。さすが冒険者。死を間近に感じることも戦闘の疲れも全部慣れたのか。
「そっちもスカーレットの大砲がすごかったんだってな。騎士団長に聞いたぞ。あれがなければ王都はもう陥落していただろうって。」
「いえいえ、私の大砲は普通の大砲ですごいのは玉に魔法を付与する魔法学校の皆さんですよ」
「素直に受け取れよ〜実際大砲を一瞬であんなに用意できるのはスカーレットだけだろ?」
誰かがそう言うとスカーレットは照れくさそうに笑った。
「勝った、か。シノブ、シノビ衆で情報拡散任せたぞ。」
「わかった。」
シノブが消えた後僕はみんなを集めて集会を開いた。
「みんなお疲れ様。そして勝利おめでとう。あんな数の敵を相手にして怖かっただろうがよく戦ってくれた。今日は1つ言ったら解散にするから聞いてくれ。サリアや冒険者ギルドに入ってる、国民に影響力を持つ者はこれから口コミ、公言。なんでもいいからピースディザイアの構成員であること、そしてピースディザイアの目的の拡散、これを頼む。影響力なんてないという者も知り合いみんなにさっき言ったことを伝えてくれ。以上だ。質問がなければ疲れてるだろうしこれで解散する。」
「よし、ないな。じゃあみんなで帰ろう!」
―――魔王城。
「なぜ負けたのだ!幹部がいなくても勝てるはずじゃなかったのかギルロボーン!」
「はっ。申し訳ございません我が主。計算は間違っておりませんでした。」
「ピースディザイアという者たちかと。」
魔王の側近の者たちが言った。
「何者だ?」
「この前の中隊を全滅させたやつらです。」
「そうか…ピースディザイア、覚えたぞ…!」