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島崎さんの師匠と兄弟子の話


 歩いて15分程のところに『ハンバーグ王国 きのこの家』とポップ体で書いてある木目調の看板が見えた。

個性的な店名だなぁ。肉類のハンバーグ王国に菌類のきのこの家があるのか。

でも、こういう個性的なお店は好奇心でつい、入りたくなるようなお店だ。


 中に入ると、ハンバーグが焼けた匂いに包まれていた。これだけでご飯が食べられそうだ。

橙色の電光で少し暗い。木目調のカウンターとテーブル。サックスかドランペットとギターがベースの曲が流れていた。ジャズかな?


「いらっしゃいませ~ 2名様ですね。あら、島崎君。お久しぶりね~」


優しげでおっとりした雰囲気の中年女性が迎えてくれた。

島崎さんを一瞬見ただけでわかったようだ。

さっきの将棋会館での出来事といい本当に顔が広いな~。


「お久しぶりです。テーブル席でお願いします。」


カウンターから見て一番奥のテーブルに私たちは案内され席に着いた。


「夜、緊張眠れなくて急いで道場に向かったので実は今日、なにも食べてないんですよ。」


「そうだってんだね。今日はごちそうするよ。なんでも好きなものを頼んでね。」


「わーい!! ありがとうございます。では、もう、店員さんを呼んでいいですか?島崎さんは決まりましたか?」


「うん。このお店では大体決まったのを食べているから。あの、決まりました。」


 島崎さんが店員さんを呼んだ。


「ご注文をどうぞ。」


はい。私は、きのこたっぷり親子ハンバーグとバターライスセットでソースは果物のうまみたっぷりのデミグラスソースをお願いします。」


「僕は優しさに溢れたふわふわハンバーグ。ソースはなしでお願いします。」


「承りました。少々お待ちください。」


 店員さんが厨房へ戻っていく。


「青葉さんって前から思っていたのだけれど大食いだよね。」


「確かに、クラスの女子で給食をお代わりするのは私くらいなので平均よりは食べれる方かもしれません。大食い大会に出られるほどではないですけど。がっつり食べないと元気が出ないです!」


「予選お疲れさま。どういった内容だったの?」


 島崎さんに将棋の内容を問われる。


「えっと、どちらも居飛車対振り飛車の対抗系でした。1局目は相手の方が穴熊でこちらが急戦でした。猛攻撃で受け間違えてくれたので勝てました。2局目は逆で相手方の猛攻を受け切る展開で、なんとか受け切ることができました。」


「青葉さんと相手の対局者の実力差はどう? 次、戦っても勝てる自信ある? 正直に答えて欲しいな。」


 鋭く、ストレートな質問に少し悩む。


「うーん……。ギリギリ一手差で勝てる気がします。次、対局しても。」


 難しいところだが彼女たちは相沢さんよりは強くないと感じた。だから次も勝てると思った。

相沢さんと夏休みに対局したときは私よりも明確に強かった。

でも、島崎さんと特訓していくうちに、3回に1回は相沢さんにも勝てるようになり

だいぶん、差が縮まったと思う。


「そっか、なら決勝トーナメントも大丈夫だね。」


「決勝トーナメントも精一杯戦います。」


私に聞きたいことはひと段落したようだ。

なら、私も島崎さんに聞いてみよう。


「あの、大丈夫でしたか?」


「え、ああ。氷見君とのことだよね。大丈夫だよ。ちょっとアタリがきついけど、いい子だよ。」


「どのような関係なんですか?」


「氷見君は僕の兄弟子の弟子なんだ。兄弟子といっても18歳の時に師匠が亡くなったから

本当にお世話になったんだ。」


「そうなんです。師匠さんと兄弟子さんは何という方なんですか?」


「兄弟子は黒羽二冠だよ。」


「えー!! 今、雪野将王とタイトル戦中の190cm近い長身で棋士らしからぬ筋肉質のワイルド系イケメンですよね黒羽二冠って。」


「うん。雪野と黒羽先生の将王戦はこれまで2勝2敗でどれも名局ばかりで目が離せないよ。でも、青葉さんずいぶん詳しいんだね。」


「はい。将棋生活で見て格好いいなぁと思っていたので。」


「師匠は由利将司六段といって誰からも誠実で親切な人格者だったよ。」


「素晴らしい師匠さんだったんですね。」


「うん。僕は由利先生の弟子になれて誇りに思っているよ。由利先生の人柄を表す黒羽先生との師弟愛エピソードがあるんだ。

由利先生が小学校に将棋の指導に行った際に黒羽先生と出会った。」


 島崎さんが由利先生の人柄に関する逸話を話し始めた。


「何度か指導に行っているうちに黒羽先生から弟子入りしたいと言われてネット指導していたらしい。奨励会入会時、黒羽先生の実家は地方で金銭的にも厳しくて反対されていたんだけど由利先生が移動費や奨励会でかかる全費用を負担することで奨励会に入会できたという話があるんだ。」


「すごいですね。なかなかマネできないですよ。私財を負担して面倒を見るなんて

由利先生と黒羽先生は強い絆で結ばれていたんですね。」


「僕もこのエピソードを知ったときは驚いたよ。」


「由利先生と島崎さんの師弟愛エピソードありますか?」


「由利先生とは小学校5年生の頃に先生の将棋教室に通い始めたことがきっかけなんだ。

僕の指導時間は20時までなんだけど、白熱しだすと22時、23時になってよく母が迎えに来ていたよ。」


「指導熱心な方だったんですね。」


「うん。将棋が大好きな子どもが大好きだったよ。」


「お待たせしました。きのこたっぷり親子ハンバーグとバターライスセット。ソースは果物のうまみたっぷりのデミグラスソースと優しさに溢れたふわふわハンバーグ。ソースはなしです。」


テーブルに料理が運ばれる。


「ごゆっくりどうぞ。」


 と言って店員さんが戻っていく。


 ついにハンバーグが来た!! 楽しみだなぁ。


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