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生まれ変わった青葉将棋道場

 

 7月22日。夏休み真っただ中。


蜜柑みかん、道場に行くのは良いけど宿題は早めにすましなさよ。」


「大丈夫!お母さん。お盆休みまでには終わらせるよ。」


勢いよくドアを開けてレッツゴー!!

朝ご飯兼昼ご飯を食べて自転車で私の将棋道場に直行!


 今年の始めに将棋道場を経営しているおじいちゃんが大腿骨を骨折して、エレベーターのない雑居ビルの中にある

 青葉将棋道場あおばしょうぎどうしょうに行けなくなってしまった。

一時は道場を閉めることになったけど、私はお父さんとお母さんに頼み込んで3か月間だけ後継者探しの猶予をもらった。


 紆余曲折あり子どもの頃、あお将棋道場に通っていた

元奨励会三段の島崎杏介しまざききょうすけさんが席主、店長みたいなもの。になり青葉将棋道場は無くならずに済んだ。


 ちなみに私は席主代理になった。



 今日は新生青葉将棋道場の開店前に今後について島崎さんと話し合い。


「おはようございまーす!」


「青葉さん。おはようございます。」


 島崎さんが席主になって2ヵ月その間、様々な改革を行った。

まず、青葉将棋道場のHP、SNSを開設。

 将棋盤と駒を新調、汚れていた壁紙を花柄の壁紙に綺麗に張り替えた。

コンセプトは『老若男女が楽しめる将棋道場』


 2つ目は将棋教室の開設。

土日曜日の開店前の朝にこども教室を金曜日の閉店後に大人教室を始めた。


 旧道場は良くも悪くもおじさま御用達の泥臭い見た目で一見様、特に女性は入りづらい雰囲気だった

が新生道場は一転してファンシーな雰囲気なった。


「8月7日にある商店街祭りはどうします? いつもは縁台将棋をしてますけど」


「プラスアルファが欲しいな。将棋に興味がない、ルールが分からない人でも楽しめる何かが」


 うーんと考える島崎さん。

一見さんにもとっつきやすくてなおかつ将棋と親和性が高いものか……

私もいい案がないかと思考を巡らす。

将棋といったらボードゲーム。

ボードゲームで大抵の人がルールを知っているのは……


「いっそ将棋とは別のボードゲームで遊ぶとか!オセロとかいいかもです」


「それはいい考えだね。オセロなら誰でもできるし考え方、戦い方で将棋好きになれるか分かったりする。」


「駒の動かし方とか基本的なルールが知ってないと何をしているかわかない上に、ルールを少し覚えたくらいじゃ全然勝てないですからね。」


「将棋は達成感を得るのに時間がかかるからな~。サッカーやテニスは例え負けても得点やセットを取って努力の結果が目に見えるけど将棋はそうじゃないからね。負けたら何も残らない……」


 島崎さんは目を伏せて言う。

完全に趣味で将棋を楽しんでいる私と違って将棋にすべてを捧げてきた島崎さんが言うと重みがある。


「出し物も決まったことだし商店街祭り向けてエンジン全開でましょう!!」


 雰囲気を変えようと片手を上にあげて大きな声で言う。

私には棋士になれなかった絶望は到底分からない。

(負けたら何も残らない)の返答を知らないのだ。


「……そうだね。絶対に成功させないとね。」


よーし、一人でも多く青葉将棋道場の常連になってもらえるように頑張るぞー!


「青葉さん、あと」


ウキウキとした気分でいると、島崎さん声をかけられる。


「まだ、予定だけど8月の最後の日曜日に棋士の雪野ゆきの将王しょうおうを招いてイベント開きたいと思っているんだ。」


「えー!!雪野将王ってイケメン棋士ですよね。友達なんですか。」


「奨励会の同期でね。この前、久しぶりに連絡して飲みに行ったときに道場の席主になったことや

道場でイベントをやりたいって話したら協力してくれるって。」


「すごいです。青葉将棋道場に現役のタイトル保持者が来るなんて!道場始まって以来もビッグイベントですよ!」


「青葉さん、僕はこの1ヵ月の成果で1年先、10年年先の若葉将棋道場の未来が決まる。そんな気持ちでいるんだ。だから全力で取り組んでいく。」


 目を煌かせて語る姿に私は島崎さんに出会い席主になってくれたことを神に感謝した。



「私もそんな気がします1年先、10年先も青葉将棋道場が元気に続いていくよう一緒に頑張りましょう!」


 私は“何かが始まる”予感に胸躍らせた。

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