異世界編プロットプロローグ
風が透き通る大きな草原、そこに住むエルフの住人たち。
狩を終え家族の元に帰る者、日が暮れるまで草原を駆け巡る子供達、夫と子供の帰りを待ち家事をする主婦、全て当たり前の日常だった…その日までは。
僕もその日ただ当たり前の様に1日を過ごしていた。
一日中遊び、夕日が見えれば家に帰宅した。
家に帰れば母が夕食の準備をしていた、そして僕を見つけた母は僕の名前を呼び「おかえりなさいミネ」と言った。
僕が家に着いてたから数分後に父も家に帰宅した、僕は飛びつく様に抱きつくと、父も優しく抱き返してくれた。その時の感触は今でも覚えてる。
その日の夜、全ては変わった。
異変は子供の僕ですらわかった、煙だ目の前を覆う大きな煙。
僕は恐怖のあまり、身体が動かなかった、逃げなければ命がなくなることなんて分かってた筈なのに。
止まっていた僕の前に父が僕の部屋に入ってきた、父は僕がまだ生きている事を確認すると僕を抱え家から脱出した。
「父さんこれはいったい何があったの?、なんで家が燃えてるの?」
僕は父さんに抱きつきながら、自分の今疑問に思ってる事を聞いた、だが父さんは答えなかった。
父さんと一緒に外に出た僕は、言葉を失った。
あれは今なら言える、あれは地獄なのだろうそれ以外に表現できるものか。
数時間前までそこにあった光景が全て炎に包まれていた、朝から夕方まで遊んだ仲間たちが全て血を流し倒れていた。
吐き気が僕を襲う、こんな地獄があって良いのか。
僕はその時何度も父さんに何で、何でと聞いてた。
だが父さんは何も答えはしない、その父さんは僕を普段抱きしめる時に出さない様な力を出し僕を抱えていた、そして抱えたまま集落から外れた東の方角に向かって走っていた。
父さんは僕を抱えた状態でも馬以上に早く走っていた、道中何かに隠れる様に茂みに隠れたりしながら、兎に角東の方角に向かっていた。
そうして日が見えるぐらいの時に父さんと僕はとある洞窟の前に辿り着いた。
そして洞窟に辿り着いた時、父さんは倒れた、脇腹から血が出ていた。
父さんは微かな声で僕にこう伝えた「中にカミイズナと言う人か、タロウ姫という人物がいる筈だ、そのどちらかに伝えてくれ、不肖の弟子が来ましたと」
父さんはそう言うと動かなくなった。
僕は訳もわからず、父さんを起こそうと身体を揺すったが父さんは起きる気配はなかった。
僕は不安ながらも父さんが伝えた言葉を頼りに洞窟の中に入っていた。
洞窟の中は明らかに人工的に作られた中身だった、その洞窟の奥に不似合いな扉があった、僕はその扉を開けた。
………………………………………………
「またあの夢かあの地獄からもう50年か、まだあの地獄から俺は抜け出せていないのか、俺は心の何処かで復讐を果たしたいのか」