たぬき
むかしむかし、故郷を離れ日本中を旅している男がいました。
半年ほど旅を楽しんだある日、今日は野宿かな?なんて考えながら夜露を凌げそうだと神社の境内に入ったところ、すでに先客がいるようです。
横おじゃましますね。と声を掛け顔を見ると、なんと幼なじみの彼ではないですか。
嬉しくなった男は、荷物の中から酒を取り出すと、久しぶりに一杯やるか?と彼に差し出した。
久しぶりの再開を楽しみながら束の間の宴を楽しんでいると、草陰から酒瓶をぶら下げた一匹のタヌキがやってきた。
聞くと、あまりにも楽しそうなので、思わずやって来てしまったとのこと。
僕も一緒に混ぜて欲しいと酒瓶を差し出してきた。
上機嫌の二人は迷うこと無くタヌキを招き入れた。
二人と一匹はこの不思議な出逢いを思う存分楽しんだ。
酔いも大分回って来た頃、男はタヌキに聞いてみた。
しかし何故そんなに簡単に人間に近づいた?取って喰われるかもしれないのに。
するとタヌキは答えた。
それは気の置けない二人が呑んでいたからです。
男は聞き返した。
何故、気の置けない二人が呑んでいたら平気なんだい?
タヌキは答えた。
だって私は他抜きですから。