桜の願い3
渚合同魔術研究チーム------通称 魔研は王の使命を帯び総勢15人で活動している。 魔術師は渚国に多くはない。魔術師に適している人材が少ないからだ。それに加え、魔術師という職業も気味悪いと考えられていた。
そして俺はその15人のうち最年少の魔術師の1人だった。父は早くに病気で死に、俺は無理やり次の魔術師に決められた。当然技術もスタミナも足りなかったが、頭脳だけは他の魔術師でも認められ、魔研に参加していた。だが今 その頭の中は、新たな魔術師のことでいっぱいだった。
門兵に魔術師の札をみせ、さっさと門をくぐる。
渚城。土や石で堅固に築かれた城である。少し小ぶりで質素であるが、無駄がない。城本体までの
これまた長い石畳の道は、人がたくさん歩いている。
城はいくつかの館に別れており、例えば財政館とか、取締館、そして 奥に王の住まいがある。魔術館もそのうちの1つであった。
おれは急いで魔術館のもとへと走る。魔術館のドアを開けると、そこはいつもの机や積み上がった紙があり、いつも通り騒がしかった。そして…真後ろから声がした。
「はじめまして。」
驚いて振り返ると…素晴らしい美女がいた。反射的に手を差し出す。
「はじめまして。来栖だ。」
もちろん見つめっぱなしである。
「椿です。昨日よりここに組まれました。」
鮮やかな赤色の髪に、大きな翡翠の目。プルンとした唇。間違いなく、リンのいう通りの人物であった。年は俺やリンと同じくらいだ。彼女を例えるならば、リンと反対のベクトルで美しい。綺麗、美女、という言葉が似合う。ああ、松村さん、リン、ありがとう…
「私、門をくぐってから、ずっとあなたの後ろにいました。」
椿はほほえみながらいう。なんでも、理太郎が並んでいた2.3個後ろにならんでいたそうだ。
「おれ、気づかなかったよ…」
俺はあたまをすこしかきながらいった。
椿はまばたきすると、
「ほら、このようにすれば目立ちませんし。」
といって、頭をさらりとなでた。すると、赤髪が黒髪になり、短くなる。上級魔術師は、簡単に自分の外見をかえることができるのだ。とすると、若くして椿は上級魔術師ということになる。
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