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辺境伯

 俺とフォルネは衛兵に連行され、街の中央にあるレイドレック辺境伯って奴のところに向かっている。

途中、衛兵を振り切って逃走する事も考えたが、まだ俺の事がバレてない可能性もあるため、一応様子を伺うって事で大人しくしている。


 横に並んで歩いてるフォルネの顔は不安一色のようだが、今は仕方ない。        

とりあえず辺境伯とやらとご対面して、鑑定スキルをかけてやろうと考えた。

勿論アビリティドローもかけるつもりだ。


「よし、止まれ」


 レイドレックが居るであろう邸宅の前で暫く待たされると、中から別の衛兵が出て来て俺達に付いて来るよう告げた。

 そのまま黙って付いて行くと、1階のコンサートホールのようなロビーに通され、2階からガッチリとした屈強そうな男が姿を現した。


「ほぉ、貴様がフォルネの連れだという男か」


 偉そうな振る舞いを見ると、コイツがレイドレック辺境伯だな。


名前:レイドレック 種族:魔族 

レベル:45    職種:辺境伯

HP:1243   MP:432

 力:767    体力:865

知力:627    精神:667

敏速:495     運:21

【スキル】槍Lv5 剣Lv4 体術Lv2

 【魔法】風魔法Lv3 土魔法Lv2 光魔法Lv2


 ああもう、絶対闘いたくねぇ奴じゃねぇかよコレ!

ただじゃ帰れそうにねぇし、今の内にドローしておくか。

実際に魔法の方が厄介だろうからな、風魔法をいただくぜ!


 NEW→風魔法Lv3


 よし、ドロー完了。

やばくなったらトンズラ1択だ。


「フォルネに何の用なんだ?」


 コイツがどうやってフォルネの居場所を突き止めたのかが気になる。

偶然ならまだいいが、別の手段が有るなら対処しなきゃならねぇ。

 上手く聞き出せればいいが……。


「用もなにも、この娘は俺が買い取ったのだ。何をしようと俺の自由だろう?」


 あの冒険者達が言ってた通りだな。

コイツがルディアンガルフ家からフォルネを買い取って、エンドリューの元に送ったんだろう。

 だが理由は不明だが、エンドリューは盗賊の頭としてあの場に居た。

つまり、フォルネは盗賊に捕まっていたので、盗賊を壊滅させた俺のものって事になる。


「だがフォルネは盗賊に捕まっていたぞ? そしてその盗賊を蹴散らしたのは俺だ。だからフォルネはおれのもの……って事になるが?」


 盗賊を蹴散らしたと言った時、明らかに目線が鋭くなったな。

まるで獲物に認定せれてしまったような、そんな感じだ。


「そうか……つまり、俺の部下を殺したのは貴様で間違いないのだな?」


 コイツがどこまで知ってるのかしらんが、あの盗賊共が壊滅したのを知ってるっぽいな。

そしてどうやらそれをやったのが俺だという事もバレてるらしい。

だがハイそうですかと認める訳にゃいかねぇ。


「知らんな。俺が殺したのは盗賊達だ。テメェの部下なんぞに会った覚えはない」


「貴様! レイドレック様に何て――「口を挟むな!」し、失礼しました!」


 俺の言葉遣いが気に入らなかったレイドレックの部下が割って入って来ようとしたが、レイドレックに止められ引き下がった。


「エンドリューを知らぬと言うのだな?奴には盗賊達の(まと)め役を命じていたのだ。つまり、貴様が壊滅させた盗賊の頭がエンドリューという事だ」


 さっきから何かを探るように情報を小出しにして来るが、何を探ってるのかが分かんねぇな。

それが分かれば上手く交渉する事も可能か?

 ……いや、あまり楽観視は出来ない。

自分の部下を殺した奴を生かしておくほどの間抜けには感じられない。


「それが何だってんだ? だいたい貴族が盗賊の真似事をしてる方がおかしいだろうが」


 そう、コイツはさっき、エンドリューに()()()と言った。

という事は、盗賊達を使って何かをやってたって事になる。

そいつが分かれば、弱味につけこむ事も可能かも知れねぇ。


「フ、盗賊の真似事か……。だが、その真似事こそが()()()()()()()のだよ」


 盗賊と同じ様な事をする必要も、場合よってはあるって言いたいのか?

だが盗賊って言や他人から金品を巻き上げる連中だ。

そんな連中を自国に匿うメリットは無い。

 寧ろ盗賊やるなら他でやれって――ん? もしかしてコイツ、盗賊に他国の人間を襲撃させてるんじゃないか?

それに一般人に紛れ込むなら兵士よりも盗賊の方が自然に振る舞える事を考えれば、密偵として潜り込ませる事も可能かも知れねぇ。

 それなら自国で()()価値はあるかもな。

盗賊としても金さえ貰えれば、商人を襲撃したりする必要は無いだろうしな。


「だがテメェ等の事は俺には関係ねぇな。そもそもエンドリューとか言う奴もよ、強ければ死ななかったかもなぁ!」


 なんか俺が悪役っぽい気もするが、気にしても仕方ないな。


「貴族ぁ! よくもエンドリュー様を!」


 近くにいた兵士が俺に斬りかかって来た。

恐らくエンドリューの部下だったんだろう。

だが雑魚1人に殺される程、俺の命は安くはねぇぜ?


「へっ、遅ぇんだよ!」


 ズバンッ!


「アギャァァァァッ! う、腕がぁぁぁ!!」


 ばか正直に正面から斬りかかって来た奴の腕を、逆に切り落としてやった。

正面からなら避けるのは簡単だ。


「ト、トウヤさん!」


 フォルネの安全を確保するため、素早く自分の方に引き寄せる。

 そして一連の流れを見て、他の兵士達も得物を抜きやがった。


「中々の腕前だな。その細身の身体で大したものだ。さぞ鍛練を積んだのだろう」


 買い被り過ぎだな。

そもそも俺のステータスの大部分は、他人や魔物からの()()()()()だからな。

 まぁ死にそうになった事もあったが……。


 この時、俺の脳裏に浮かんだのは、1匹の名も無きブラックウルフだったであろう事は、間違いなかった。


「問答はそろそろ飽きてきたのでな、最後の質問にしよう」


 コイツの質問が終われば一斉に斬りかかってくるつもりか、周りの兵士達からは殺気が感じられるようになった。


「貴様の目的は何だ? 何故我々の邪魔をする?」


 ん? 何を言ってんだコイツは?

俺は邪魔するつもりなんざ無いんだが、寧ろテメェ等が邪魔するなと言いたい。


「邪魔した覚えはねぇよ。偶然見つけた洞窟に盗賊とフォルネを見つけただけだ。だから盗賊を蹴散らしフォルネを手に入れた……それだけだ」


 俺は無意識にフォルネの手を強く握っていた事に気付いたが、今はそんな事を気にしてる隙はない。


「……ほぅ……つまり、誰かの(めい)で動いていた訳ではないと言うのだな?」


 ああ、成る程な。

コイツは俺の背後関係を探ってたんだな。

 だが生憎と俺は1匹狼なんでね、背後には何も無いし見つからないだろう。


「そうさ。テメェ等貴族に関わるなんざ御免だね」


 質疑応答の間にも、アビリディドローで周りの兵士達から()()を集めた結果……、


 剣Lv3→剣Lv5


 ここへ来て嬉しい誤算だぜ!

剣のレベルがそれなりの奴が多かったのも有るが、それよりもやっぱ()()()()()()って事が重要だろう。

 何せ悪事を働いてる奴からしかドロー出来ないんだからな。

さて、そんな事より俺とフォルネを囲むように動いてきたな。

って事は……


「そうか……ならば、話は終わ――む?」


 レイドレックの奴は、俺に掌を向けながら戸惑っている。

それを見た兵士達はアレ? 

って顔をしてるな。

 だが原因なら分かる。

使える筈の魔法が使えないのが原因だろう。

どんな魔法を使おうとしたかは不明だがな。

 そして俺はその隙にトンズラさせてもらいますぜ!


「あーばよ、とっつぁぁぁん!」


 俺はフォルネをお姫様抱っこし、レイドレックに別れを告げると、兵士達を飛び越えて来た道を戻った。


「ハ! な、何をしている! さっさと奴を追わんか!」


 呆気にとられてたレイドレックは豆矢に逃げられた事に気付き、慌てて部下達に後を追わせた。






「悪いなフォルネ。もう暫くこのままで我慢してくれ」


「は、はい!」


 レイドレックの邸宅から脱出した俺達は、そのまま外壁を飛び越え、街の外へ飛び出した。

 宿に多少の荷物は有ったが、気にしてる隙はないし気にする必要もない。

有るのはルディアンガルフ家に侵入した時に被った覆面だけだ。

バレたところでかまいやしねぇ。

 後ろから追っ手が迫ってない事を確認した俺は、近くの茂みに入り込んでからフォルネを降ろした。


「へっ、日本のマッポ(おまわり)より遅ぇぜ!」


 あんな鎧をガチャガチャやってるバカ貴族の兵士共に捕まるかってーの。


「あの……トウヤさん、いったいどちらに向かってるの?」


「このまま森の中を移動してミリオネックに入る。街道からだと検問所に出ちまうからな」


 森の魔物か検問所の兵士かで比べたら、魔物の方が遥かに楽だ。

暫くは森の中を歩く事になるがやむを得ない。

時折後ろを振り返るが追っ手の姿は見えないので、完全に巻いたと思っていいだろう。

 さすがにあの化け物(レイドレック)とまともに闘うのは御免だ。

俺が奴に勝ってるところなんざ敏速くらいだからな。

後は地道にドローしていくか……ん?


「ガウガウ……」

「ギャギャギャ」


 離れた所で2匹のゴブリンがこちらを指して笑ってやがる。

俺とフォルネを鴨だとでも思ってるんだろうか?


「トウヤさん、ゴブリンが……」


「心配無い。軽く蹴散らしてやる」


 向こうは俺達を鴨だと認識してるようだが、俺から見ても連中(ゴブリン)は鴨に見えるんだよな。

だから身の程ってやつを教えてやらねぇとな!


 力:367→力:412


 はい、ゴチになりましたっと。

力をドローした後、ゴブリンに2匹を斬り倒した。

以前よりも剣のレベルが上がってるし、ゴブリン程度なら苦戦しない。

それ以上なら注意が必要だがな。




 それから暫く歩き続けて日が暮れてきたところで野宿をする事になった。

森の中とはいえ奥深くに入り込んでないのだが、それなりの数の魔物に遭遇してたので、結界石を使って休む。

 フォルネは先に寝てしまったので俺も寝ようと思ったが、その前にステータスを確認した。


名前:海原豆矢(うなばらとうや) レベル:15

HP:266 MP:132 

 力:445 体力:330 

知力:75  精神:213 

敏速:901  運:20  

【スキル】剣Lv5 短剣Lv2 弓Lv2 隠密Lv2 加速Lv2 身体強化Lv3 相互言語

 【魔法】風魔法Lv3 火魔法Lv1


 今日は力と精神を重点的に強化した。

それからHPもな。

それでたった今気付いて驚いてるんだが、MPの数値が上昇してるんだよな。

 これは多分精神を上げたからだと思われる。

これは正直有り難いな。

明日からは試しに知力も上げてみる事にしよう。


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