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追跡

剣Lv3→剣Lv3


 昨日の冒険者からもキッチリとドローしもいたんだが、変化は無しっと。

 恐らくレベルが上がるにつれて、上昇しにくくなるんだろうな。


 しかしドロー出来たっつー事は、何かやってると考えて間違いない。

 同じ宿に泊まってるって事も分かってるし、警戒しとかないとな。

念のためフォルネには、俺が呼びに行くまで部屋から出ないように言っておいた。

もし冒険者達がフォルネの顔を知ってたらまずいからだ。


 まずは自室を出て1階の食堂を確認してみたが、見知らぬ2人が朝食を摂ってるだけで、昨日の冒険者達は見当たらない。

 まだ部屋に居るかもしれないって事で、厨房のおっさんに聞いてみた。


「お前さんが言ってんのは、3人組の男の冒険者の事か? それなら少し前に出てったぞ」


 どうやらもう既に宿には居ないようだ。

それならフォルネを部屋から出しても大丈夫だろう。


「フォルネは朝飯を食っててくれ。俺は野暮用で出掛けて来る」


「どちらに行かれるのですか?」


 さて、何と言って誤魔化すか。

もしもあの冒険者達を追うと言ったら、絶対反対されそうだしな。

 だったら昨日戦闘で倒したゴブリンや狼共の素材を取ってくる事にするか。


「あぁ、昨日倒した奴等の素材を回収しにな。だからフォルネは部屋で待っててくれ」


「わかりました。出来るだけ早く戻って下さいね?」


「おう」


 結局騙す形で出て来ちまったな。

すまねぇフォルネ、やっぱ俺は悪党だわ……。






 昨日見かけた3人組を追って村を出た俺は、盗賊のアジトがある方角に向けて進んだ。

俺の考えが正しければ、間違いなくあの盗賊共と関係があるはずだ。

 そして小走りで進む事数分、あの3人組を発見する事が出来た。

俺が居るのも気付かずに、呑気に歩いてやがる。

 さて、あんまし時間をかけすぎると、フォルネを心配させちまうからな。

()()に入らせてもおうか。


「おいお前ら、ちょっといいか?」


「だ、誰だ!?」


 驚いて振り向く3人組。

どうやら俺の存在にまったく気付かなかったようだ。

 だがそれはそれで存在感が薄いみたいで、ちょいショックだが。


「ちぃとばかし聞きたいんだが、お前さんらはこの先にある盗賊のアジトに向かってんのか?」


「……だったら何だって言うんだ?」


「アジトに居た盗賊共は討伐されたぞ。数日前に冒険者パーティがやって来て、盗賊狩りを行ったらしい」


 さぁどうでるかな?


「そ、それは本当か!?」


「ああ、間違いない。俺はこれから金目の物が残ってないか見に行くところだぜ」


 あっさり食い付いてきたな。

思いっきり盗賊共と関係ありますって言ってるようなものなんだが。


「おいどうする?」

「どうするったって、手掛かりも無しに帰れるかよ」

「そうだな。一応エンドリューが生きてるかどうかの確認はしなきゃならねぇしな」


 コイツらは素人の集まりなんだろうか?

小声で話してるつもりらしいが、思いっきりこっちまで聞こえてきてるんだが。


 それにしてもエンドリューか。

あの盗賊共のボスの可能性が高いと思ったが、これであのボスはエンドリュー本人って事がほぼ確実になったな。

 コイツらは何者かに依頼されて来たって事か?

出来れば背後に居る奴の正体まで分かれば助かるんだがな。


「――俺達も盗賊の討伐に向かうところだったんだが、無駄足になったな」


「あ、ああ、まさか先を越されるとはな」


「ま、まずいよなぁ折角依頼を受けてきたのによぉ」


 下手くそな芝居だなぁ……。

とはいえ、俺としちゃそっちの方が有り難いがな。

だが口は災いの元になるんだぜ?

その依頼とやらに突っ込ませてもらうぜ。


「依頼? そんな依頼は出て無かったと思うが?」


「っ! い、いや、緊急依頼だったんだ! 辺境伯の依頼でよぉ!」

「お、おい!」


 明らかに言ってはいけない情報を話してしまい、仲間に慌てて止められるも後の祭だ。

フォルネを拐わせた奴の背後には辺境伯が居るのが確実となった。

 しかし辺境伯かぁ。

面倒くさい奴が出てきたもんだ。


 そんな事を考えてたら、冒険者達が得物を抜いてきやがった。


「この話を聴かれちまったら生かしておく訳にはいかねぇ。悪く思わねぇでくれよ?」


「これはお前が首を突っ込んでくるから悪いんだぜ?」


 辺境伯となれば自分達の命も危ういって事なんだろうが、コイツらには荒事は向かねぇな。

こんなに口が軽い奴等なら、辺境伯としても扱いにくいだろう。

 で、最後には力任せと来たもんだ。

 だが俺は簡単に命をくれてやる程のバカじゃねぇ。

それにまともに()()()()()()奴等に負けるつもりもねぇ!


「なんだ?1対3でやるってのか?バカめ!この状況で挑んでく……


 と、言ってる奴を首をはねる。

それを見て硬直してる残り2人。

 だが残念な事に硬直してる隙はないんだぜ?


 俺は更に近くの冒険者を袈裟斬りにする。

速すぎて理解が追い付かないようで、最後の1人は今だに硬直している。

 俺は袈裟斬りにした冒険者の止めを刺してから、最後の1人と対峙する。


「で、言い残す事はあるか?」


 俺が切っ先を突き付けると、その冒険者は武器を棄てて土下座をし出した。


「た、頼む、見逃してくれ!」


 先に手を出しておいて今更だよなぁ。

自分が不利になったら下手に出るとかよぉ。

だが折角の機会だ、存分に情報収集しようじゃないか。


「俺の質問に答えろ。盗賊のボスはエンドリューで間違いないか?」


「あ、ああそうだ。エンドリューはレイドレック辺境伯の部下だ」


 中々協力的じゃないの。

聞いてもいない事をペラペラと喋ってくれるとは。


「そのエンドリューのところに貴族の女が居たはずだ。その女はどういう経緯で連れてこられた?」


「ああ、フォルネーティスって女が居たな。あの女は売られて来たらしい。その女をエンドリューの慰安婦として辺境伯が連れて来たんだ」


 やはりフォルネは売られたか。

100%と決まった訳じゃないが、恐らく家族に売られた線で間違いなさそうだな。


「お前以外にこの事を知ってる奴はいるか?」


「もう俺以外に知ってる奴は辺境伯しかいねぇよ。な、なぁもういいよな?」


 何がもういいのか知らんが、もう用済みなのは確かだな。


「ああ、いいぜ。あばよ」


「じ、じゃあ――えぐっぉ!?」


 バカが、命狙われたまま生かして帰すかよ。

さて、最後に残った冒険者もキッチリと止めをさしておいたし、コイツらは放置しといても問題ないな。

どうせ魔物の餌になるだけだ。

 しかしフォルネにはどこまで話したらいいんだろうな。

自分が本当に売られたのかどうかを知りたがってたが……。

 まぁいい。

取り敢えずフォルネのところに戻ろう。


 普通ならこれで問題なかった。

目撃者がいない以上、豆矢に繋がる情報は存在しない。

 だがこの時、上空から1羽のカラスがこの一部始終を見ていた事に豆矢が気付かなかったのが唯一の失敗だった。






「ただいま」


「あ、お帰りなさい。怪我とかはされてませんか?」


「ああ、大丈夫だ」


 さて、帰ってきたが、やっぱ今話すのは難しいな。

いっそ実家に連れてって両親に吐かせるか?

うーん、分かんねぇ……。

 だがとりあえずモルネデートの街に行って情報収集した方がいいか……。


「フォルネ、今からモルネデートに向かうから準備してくれ」


「モルネデートにですか? 私の準備は問題ないですが……」


「真相を調べるには行くしかないだろう?」


 ここでその必要はありませんって言ってくれれば有り難かったが、そうはならないらしい。


「分かりました。宜しくお願いします」


 既に豆矢とフォルネの準備は整っており、すぐに村を発つ事が出来た。


 確か村の入口に居た爺さんが、モルネデートへは丸1日かかるって言ってたっけな。

今からモルネデートに着くのは夜になる可能性もあるか。


「フォルネ、ちょっと走るから抱かせてくれ」


「はい、走るんで――ええ!?」


 困惑するフォルネをよそに、豆矢はフォルネを抱っこ――所謂お姫様抱っこをして、走り出した。


「しっかり掴まっててくれよ」


「は、はい。って、あのぉこれって……」


「今からだと夜になる可能性が高い。だから少し走る事にした」


 何かを言いかけたフォルネに被せるように理由を説明した豆矢だが、フォルネの顔は真っ赤に染まっていた。

 今も豆矢は馬車では出せない速度で走行中なのだが、フォルネは恥ずかしさのあまり気付いてない様子だ。

 稀にすれ違う商人や冒険者がいたが、そんな事は気にもとめず、可能な限り走り続けて夕方にはモルネデートの街に着いたのだった。


「トウヤさん、宿屋に着いたらまたお説教です!」


「マジかよ……」


 つーか俺は何か悪い事したか?

あ、一応日本でやった事はノーカンだかんな?


「なぁフォルネ、何を怒ってるんだ?」


「……あのですね、街道でお姫様抱っこされて走ってたら誰だって恥ずかしいでしょう!?」


 ああ、その事か。

時間が無かったししゃーねぇよな?

 と、言いたいところだが、言っても納得しなさそうだしなぁ。


「まぁ、あれだ。フォルネが落ち込んでるように見えたんでな。気晴らしにでもなるかと思ってな」


「え……落ち込んでるように?」


 これは間違っちゃいない。

フォルネの奴は自分が家族に売られたって事は薄々気付いてる。

 ただ受け入れられないだけだ。


「まぁ……そうだな。あー、これは俺の独り言だが、辛い事をいつまでも引き摺ってる必要はないって思うわけよ。あまりにも辛い事なら忘れたっていいんじゃねぇかってな」


「トウヤさん……」


 ま、俺の場合は日本でやった悪事の数々は、綺麗サッパリ忘れるつもりだけどな。


「ありがとうございます、トウヤさん」


 よし、これでなんとか説教は免れ「でも恥ずかしい思いをした事には代わり無いので、やっぱりお説教です!」


「マジかよ……」


 結局お姫様抱っこの件は許されず、宿屋に着いてからフォルネによって1時間程の説教タイムが始まったのだった。


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