VS盗賊
翌朝、昨日と同じように、結界の外に魔物がいないか確認する。
するとやはり昨日と同じように、狼が8匹程いた。
しかし、昨日と違って狼しか居らず、結界の外からこちらを伺っている。
「狼からのアビリティドローは、敏速の数値が一番高かったはずだ」
狼からは敏速を奪う事に決定し、そこにいる前頭から敏速を奪った。
してその結果が……
敏速:185→敏速:562
とまぁかなり効果的に上昇したはずだ。
これで強過ぎる魔物が出て来ても、逃げ切れる可能性が高くなったな。
だがこれだけ上がると、ちょいと試してみたるなるもので、丁度そこに遅くなった狼達が居ることから、早さ比べをする事にした。
「Ready…・Goーーっ!」のかけ声と共に一気に走る。
結果は直ぐにわかった。
数秒程で、後ろの狼達は見えなくなった。
「差が有り過ぎて、逆にわからんな……」
かなり離れてしまったが、狼なら鼻を効かせて追って来るかもしれねぇな。
まぁ無理に構う必要はない。
狼は放っておいて、先に進――ん?
かなり前方で、何かが動くのが目に留まる。
「あれは……人か?」
少しずつ慎重に接近してみると、身なりからして盗賊だろうと推測する。
俺は隠密スキルを使用しつつ接近すると、盗賊達の反対側へと回り込んだ。
何故反対側に回ったかってぇと、まさかの狼がトロくさい動きで追って来やがったからだ。
因みに隠密スキルの存在には、昨日の夜に気付いた。
「もうすぐアジトだなぁ。早いとこ一杯やりたいぜ」
「おう、戦利品もたんまりと手に入ったしな」
会話から察するに、こいつらの仕事が上手くいって、金か物が大量に手に入った……って事のようだ。
重そうな袋を担いだ5人組の――恐らくは盗賊であろう者達は、アジトに帰る途中のようだ。
盗賊だとは思うが、もしかしたら悪人面なだけで、実は傭兵団という可能性も捨てきれない為、念のためアビリティドローをかけてみる。
(とりあえず1人にかけてみるか。剣のスキルとか持ってれば、欲しいところだが……)
剣を所持してる奴を視界に収めつつ……
(アビリティドロー!)
【スキル】剣Lv1
よし、上手くいった。
しかし剣スキルを持ってはいたが、予想通りレベルは低い。
所詮は盗賊って事だな。
とか思ってるうちに、俺を追ってきた狼が盗賊達に襲いかかったようだ。
「ち、グリーンウルフ共か。さっさとかたずけるぞ」
「「「「おう」」」」
「あん? コイツら動きがトロいなぁ?」
「何か知らねぇけど、弱ってんのか?」
「それならそれで楽出来――「ガブゥッ!」ギャアアァァ!」
「おいブライアン!? この野郎!」
(上手く剣を振れずに、狼――もといグリーンウルフに噛み付かれてやがる。なら今のうちに……アビリティドロー!)
【スキル】剣Lv1→剣Lv2
「な、何だ? 急に剣が振れなくな――「グルルガァ!」グアァ! イデエェェェ!」
「テッド!? おい、どうしたってんだ!?」
なんだか地獄絵図になってきたな。
アビリティドローが効果を発揮するって事は、間違いなく犯罪者な訳なので、まぁ同情は出来ねぇな。
グリーンウルフが3匹殺られたところで、残りの3人にもアビリティドローを当てる。
【スキル】剣Lv2→剣Lv2
弓Lv2
ん? 剣のレベルが上がんねぇな?
この盗賊達だと能力が低いから上がらないのか、もしくは小数点以下で増えてるのか、いまいち判断に困る。
もうちょいサンプルを増やす必要があるな。
暫くして盗賊共とグリーンウルフの戦闘は終了した。
一応盗賊共が生き残ったようだが、ある者は手を、ある者は足を、食い千切られるという惨状がそこにあった。
アビリティドローで動きが遅くなったとはいえ、グリーンウルフに満身創痍とはねぇ。
もしかして、武器が使えなければまともに闘えんのかコイツら……。
今のコイツらに俺が負ける事はあり得ないので、アジトの場所を聞き出すべく、俺は盗賊共
の前に姿を表した。
「よぅ盗賊共、ちょいとアジトの場所を教えてくんねぇか?」
「だ、誰だテメェ!?」
「誰だっていいだろ? それよりさっさとアジトの場所を教えな」
ザシュッ!
「ギャアアァァ!!」
「な!?」「ひぃ!?」
最初から素直に話すとは、これっぽっちも思ってないので、一番近くに居た奴を斬り殺す。
これで少しは話す気になるだろう。
「ほら、さっさと教えろよ」
「ふ、ふざけんな! 何でテメェなん「ズバンッ!!」
反抗した男の首を斬り落とした。
どうせこの場を見られた以上、コイツらを生かしておく訳にはいかねぇしな。
「わ、わかった、教える」
「テッド、テメェ裏切る気か!?」
「るせぇ! 俺はこんな所で死にたくねぇ!」
2人死んだのに、まだ反対する奴がいるとは……。
仕方ないので、反対してるもう1人も斬り捨ててから、もう一度聞いた。
「教えてくれるよな?」
「も、勿論教える!」
残った2人は、盗賊共のアジトの場所を聞き出した後、キチンと処理した。
しかし小悪党だった俺が、とうとう殺人までしちまうとはな。
だがこれは必要な事だ。
コイツらみたいな存在を始末しなければ、俺が女神に粛清せれる事になる。
恨むなら罪人の自分達と、俺にスキルを寄越した女神を恨むんだな。
盗賊共にアジトの場所を聞き出して、アジトが有るであろう所を目指す。
何故アジトに行こうとしてるかというと、アジトには大量の盗賊共が居ると予測できるからだ。
あ、奴らが持っていた荷物はそのまま置いてきたぜ?
持ってきても、結局は街まで運ばないと売却出来ないからな。
帰りに回収すりゃいいし。
そして情報通り、アジトらしき洞窟が見えてきた。
見張りが入口に1人立っているのも確認出来た。
だが間違えても、正面から突っ込むような馬鹿な事はしない。
いくら俺が強くなったとはいえ、多勢に無勢だと間違いなく死ぬ。
だから素早く見張りを仕留めて、アジト内への侵入を試みる。
因みに今の俺のステータスはコレだ。
名前:海原豆矢 レベル:8
HP:112 MP:48
力:184 体力:313
知力:63 精神:44
敏速:567 運:20
【スキル】相互言語 剣Lv2 弓Lv2 身体強化Lv3
敏速を見てわかる通り、ヤバくなったら即撤退が可能だ。
という訳で……隠密を使用し、見張りに接近すると……
「むぐっ!?」
ザシュッ!
口を塞いで心臓を一突きし、見張りは亡骸へと変わる。
それを近くの茂みに隠し、アジト内部へ侵入を開始する。
一応仕留める直前にアビリティドローで剣スキルを奪ったが、やはり上がらなかったか‥‥。
少し進んだ所の右手側に小部屋がある。
中を覗いて見ると……臭っ! 凄い悪臭が――どうやら便所のようだ。
しっかしこんな所に住むとか、気が狂いそうにならないのかと不思議でならない。
もしかしたら、この世界には糞尿を水で流すって概念がないのかもしれん。
気を取り直して先に進むと、今度は左右に道が分かれた。
左側は明るいが、右側は暗い……って事は、盗賊共は左側に居ると思っていいな。
右側は賊を片付けてから捜索するとして、まずは左側に進む事にした。
「……は……か……」「お……な……つら」
先に進む事に少しずつ明るさが増していき、微かな話し声が聴こえてくるようになった。
盗賊の数によっては闘わずに退却する事も視野に入れ、更に奥へと進む。
そして再び分かれ道が出現し、左側からは話し声、右側からは何も聴こえず、正面には扉が設置されていた。
正面、そして扉とくれば、大体想像するのはボスキャラだと俺は思う訳だがどうだろう?
多分正面は、盗賊共の親玉の部屋だと当たりをつけられる。
左側は他の手下が雑魚寝出来る場所。
そして右側は……捕虜? かどうかは不明だが、捕らえた奴を閉じ込める場所があるのは間違いな恐らくだが。
「まずは雑魚共の排除だな」
左側をそっと覗きこむと、中には10人の盗賊共が、酒盛りをしていた。
「ちょいと小便してくるぜ」
「おうぅ」
おう …1人こっちに来るな。
小便って事は、入口側の筈
だ。
俺は素早く正面の扉側の影に隠れた。
左側から出てきた盗賊は、予想通り入口に向かって行く。
俺はこっそりと後をつけ……
(アビリティドロー!)
【スキル】剣Lv2→剣Lv3
(よしゃ!)
派手なリアクションは出来ないので、小さくガッツポーズをする。
そしてすぐさま盗賊に近付き、そのまま口を塞いだ。
「っ! ふぐぐぐっ!」
ザシュッ!
入口の奴と同じ手口で仕留めると、再び奥へ戻った。
これで残りは9人……とボスだな。
さっきの奴が戻らないと、何人かで様子を見に行くはずだ。
様子を見にきた奴を始末したら、素早く残りを片付けてやる。
「おい、ワッツの奴が戻って来ぇ。お前ら様子を見てこいや」
「しゃーねぇな、おぅ、行くぞ」「うっす」
予想通りの展開だ。
このまま入口付近まで行ったところで、さっきと同じように……
「おい新入り。お前は便所見てこい。俺は捕まえた女の様子を見てくる」
「へい、わかりやした」
チッ、まずいな……二手に分かれやがった!
しかも女が捕まってるのは厄介だ。
だが悩んでる暇はねぇ。
俺は小走りで新入りの後をつけ仕留めた。
きっちりとアビリティドローも使用したぜ?
力:184→力:217
まあまあか。
これで後8人さ内1人は、お楽しみ中だろうな。
捕まってる女も助けてやりてぇが、今はタイミングが悪い。
血飛沫を見て、悲鳴をあげられちゃたまんねぇ。
愚図ってると他の賊共が出てきちまう。
俺は奇襲を行うべく、左側の中にいる賊共全員にアビリティドローをかけていく。
【スキル】 剣Lv3→剣Lv3
弓Lv2→弓Lv2
(NEW)短剣Lv2
全員の得意な武器レベルを頂戴したんだが、成果は短剣だけと、結果はいまいちだな。
しゃーない、気を取り直して行くか。
仲間の事など微塵も気にしてなさそうな、酒盛り中の盗賊共。
さっそく先手必勝と言わんばかりに、近くの盗賊から斬り伏せていく。
「ん? 戻ったのk『ズシャッ!』
「な、何『ズバッ!!』
「何だテメェは!?」
ザシュッ!
「ギャアアァァ!!ゴイヅゥゥゥ!」
瞬く間に3人を戦闘不能にしたところで、ようやく他の盗賊共も武器を手に取る。
「くそッ、侵入者だ!」
「この野郎!」
だが……
「っ! くそっ、飲み過ぎたか!」
「っ! ちくしょう、狙いが定まらねぇ!」
思ったより効果的だったようで、全く使い物にならない盗賊共。
俺の相手にはならず、簡単にケリがついてしまった。
「な、なんだこりぁ!?」
っと、そとへさきほど女の様子を見に行った奴が戻ってきたが……。
おいおい、敵を目の前にして余裕だな。
勿論遠慮なく首をはねた。
後は正面の扉の向こうにいる親玉だけだ!