悲報
闇ギルドの構成員を狩り尽くすべく、領主の邸の奥へと向かう。
奴等の目的は、ここの勇者が留守の間に関係者を皆殺しにする事だと言っていた。
だが俺としちゃあそうなっては困るんだ。
プラーガの辺境伯と敵対しちまった以上、向こうににゃ渡れねぇ。
「キャーーーッ!」
「こっちか!?」
女の悲鳴が聴こえた通路を睨む。
恐らく給士をやってるやつが構成員とばったり会っちまったんだろう。
素早く声のする方へ向かうと、案の定メイド服を着た女が尻餅ついて壁に寄り掛かっていた。
「悪く思うなよ。領主の関係者は皆殺しにしろと言われてるのでな」
「ひっ!?」
ダガーを突き付けて、ベラベラと口上を述べてる隙があるなら周囲を警戒すべきだがな。
敏速1077→敏速1112
さてと、ステータスごっつぉさん。
グサッ!
「ぐあっ!? な、なん……だ?」
隠密スキルで隙だらけの背後をとると、ナイフで一突きだ。
「隙だらけだアホが」
仕留めた構成員を雑に転がすと成り行きで助けたメイドを起こし、領主が居る部屋を確認する。
その際に驚いたのが、この街の領主は勇者だっつぅ話だ。
その勇者は街から出撃しちまったから代理のやつが残ってるらしいんだが、構成員の本命は多分そいつなんだろうな。
代理のやつがどれ程強いのか知らねぇが、暗殺が得意そうな闇ギルド相手じゃ部が悪いだろう。
「急ぐか」
ここが落とされちゃレイドレックの野郎が進攻して来やがるから、それだけは阻止しなきゃならねぇ!
俺はメイドに何処かに隠れてるように指示すると、通路の先にあった階段を駆け上がる。
上がった先にある正面の扉が開いてるのが見えたのでそっと覗くと、血塗れで倒れてる男の給士を放置して、構成員2人が室内を物色中だった。
先を急ぎたいところだが、コイツらに背後から襲われると癪だってんで、ここでキッチリと仕留める。
敏速1112→敏速1196
「背中ががら空きだぜ!」
「ん? ゲハァ!?」
「な!? クソゥ! 騎士連中と遭遇しなきゃ安全だと思ったのに、話が違うじゃないか!」
何言ってやがんだコイツは……。
つまりアレか? 騎士と戦うのは他の連中に任せて、自分らは楽して小銭拾おうってか?
道理でコイツら2人は他の連中よりも弱いと思ったぜ。
「残念だったな、テメェのちんけな罪を数えながら死ね!」
「ギャァァァッ!」
俺のスピードには全く反応出来ず、震える手で構えたダガーは微動だにせずに、ソイツの心臓へとナイフが吸い込まれていった。
「!!」
直後、別の気配が迫ってるのを感じ取り、扉の陰に身を隠す。
すると、たった今仕留めた奴等と同じ黒装束のような格好の男2人が入って来た。
危ねぇ危ねぇ、もう少しで仕留めるところをバッタリ遭遇するところだったぜ。
「コイツら、部屋を調べたらすぐ来いと言っておいたのに、この様とはな……」
2階に複数の部屋があるらしく、手分けして住人を捜してたって事みたいだな。
この2人は仲間の亡骸を見て呆れてるようだが、俺に背中を向けてる時点でほぼコイツらの負けなんだよなぁ。
敏速1196→敏速1286
っと、ステータスも貰ったし……
ドスッ!
「グボォ!」
「な! 隠密スキルか!」
片方の構成員に剣を生やすともう1人は隠密スキルに気付いたらしく、注意深く俺から距離をとった。
「よく気付いたな。けど無駄だぜ」
MP126→MP116
「何を言って……ギエェェェ!?」
使ったのは飛翔転移。
後ろに転移して斬っただけだ。
さて状況整理だが、この2人がここへ合流しに来たって事は2階は全て捜索されたと見たほうがいい。
領主の代理が居るのは4階だ。
3階を無視して4階へ上がるか。
例の如く隠密スキルを使用して近くの階段から3階をスルーして4階へと上がった。
すると、一本通路の突き当たりにある扉が半開きになってるのが目に止まる。
「あそこか……」
慎重に奥の部屋まで来ると、そっと中の様子を窺う。
どうやら間に合ったらしく、代理らしき騎士が数名の騎士に守られるように壁を背にしていた。
いや、追い詰められてると言った方がいいなこの場合は。
一応無事が確認されたところで、人数の把握といこうか。
まず代理側の方は、代理本人を含めて5人。
構成員側は6人という微妙な数だ。
そんな状況下だが、俺は俺でやるべき事をやっておくかな。
知力172→知力448
今回は知力をガッツリいただいたぜ!
……しかし何だって連中は仕掛けていかないんだ? 早くしねぇと勇者が戻って来るかもしれないってのに。
まさか何かを待ってやがるのか? だとしたらいったい……
あ! そういう事か!
直感だが、コイツらは他の構成員が来るのを待ってやがるんだな。
数が拮抗してるから間違いねぇぜ。
ならこっちから攻めるべきだな。
「ウィンドカッター!」
扉の陰から飛び出した俺は、視界に捉えてた1人の構成員に向かってウィンドカッターを放つ。
騎士達と構成員が一斉にこちらを向くのと同時に、風の刃を放たれた男は胴体を切り刻まれて即死した。
「クソッ、新手か!」
仲間を殺られた怒りを俺に向けつつも、俺と騎士達の両方を警戒し出したようだ。
「そこの騎士さん達よ、援護させてもらうぜ」
「ありがとう! どなたかは存じぬが感謝するぞ!」
先程まで苦しい表情を見せてた代理と思われる男は、血色が戻ったように表情は明るい。
更に騎士達の方もこれで形勢逆転と言わんばかりに剣を構え直す。
一方の構成員共は増援が来ないどころか、新手として出てきた俺に脅威を感じてるようだ。
「いくぜ!」
俺はわざと大声を出して短剣を向ける。
すると当然連中の注意が俺に向き、騎士達が動く隙を与える事になった。
「かかれぇぇぇ!」
4人の騎士が一斉に背後から襲いかかり、慌ててその対処に追われるところを、俺が斬り込んで行く。
キィィィン!
「ク、ク、クソォォォ!」
チッ、ギリギリ防がれたか……。
だが俺の方が力も短剣も上だと見え、数度打ち合った後にダガーを弾き飛ばした。
「終わりだ!」
回避出来ないように、加速で一気に心臓を突き刺す。
「ガハァ!」
よし、後4人だ!
騎士達を見ると、1人が床で踞ってる以外は善戦してるようだ。
「くぅぅ、これ以上は無理か。退くぞ!」
残った4人は出口のある俺の方へと突撃してきた。
だが撤退は予め予想してたんで、先頭の男にファイヤーボールを撃ち込み怯ませる。
至近距離まで迫ってたのもあって上手く命中してくれた。
「ゲホッゲホッ! おのれぇ……ギャッ!」
怯んでた連中全員を俺と騎士達が討ち取ってミッションクリアーってやつだ。
出来れば全員仕留めて経験値を独り占めしたかったんだが、ステータスをドロー出来たしよしとするか。
「助太刀感謝する。私は勇者様の留守中この街を任されているセリオスという者だ。貴殿は冒険者なのか?」
「まぁな。連中がこの邸に入り込んでるのを見てここまで来たって訳さ。因みに俺はトウヤってもんだ」
話ながら身分証代わりのギルドカードを見せる。
1度も依頼をこなしてないんで、Gランクという三下もいいところのランクだけどな。
そしてGランクなのを知ったセリオスは信じられないといった表情でギルドカードと俺を交互に見てきたが、事実なんだなこれが。
ま、もし今後金に困るような事が出てきたら依頼を受ける可能性もあるが、少なくとも今はない。
「訳あって今まで冒険者としてまともに活動をしてなかったんでね、ランクはGのままなのさ」
「す、すまない! 顔に出てしまってたようだが、余計な詮索はすべきではなかったな、失礼した」
慌ててギルドカードを返してきた。
相手の詮索は何処の世界も御法度なんだな。
「そんじゃこの邸に潜んでるのが残ってる可能性もありますんで、掃討作戦といきますか」
結果3人の構成員が残ってたが、2人は始末して1人はわざと逃がした。
まだ街に居る構成員共を引き上げさせるためだ。
頭とベルンってクソガキを始末した事を伝えたら顔を真っ青にしてやがったから、この街には二度と近付かないかもなぁ。
因みにこの3人からもキッチリとドローしといたぜ。
短剣をドローしたから変わんなかったけどな。
短剣Lv4→短剣Lv4
目的を果たした俺は領主の邸から出ると、フォルネを預けてる広場へと舞い戻った。
ただし、街の状況確認のためセリオスと護衛数名も付いてきたけどな。
「セリオス様、ご無事でしたか!?」
「ロゼか、心配をかけてすまなかった。早速だが状況はどうなっている?」
「はい。家屋に火を付けた連中の殆どは何処かへと去って行ったようで、今は出火も収まり落ち着きを取り戻しつつあります」
ロゼの言葉に表情を緩めたセリオスは、改めて俺に向き直ると頭を下げてきた。
「トウヤ殿、感謝致します。貴殿が居なければ我々は生きてはいなかっただろう」
利害が一致した結果だが、他人から感謝されるのも悪い気分じゃない。
ロゼの傍らでスヤスヤと寝息を立ててるフォルネを見てそう考えてたが、そんな思考が吹っ飛ぶ報告が直後に舞い込んでくる。
それは勇者と共に検問所へと出撃した数名の騎士達が戻って来た事で発覚した。
「セ、セリオス様、大変で御座います!」
「何事だ!?」
再び表情を引き締めたセリオスが、息を切らしつつ走って来たであろう騎士が呼吸を整えるのを待つ。
「トモノリ様がプラーガ帝国の勇者と戦い、討ち死に致しました!」
「んな! 何……だと……」
信じられない報告に、俺を含むその場の全員が言葉を失った。
名前:海原豆矢 レベル:27
HP:338 MP:346
力:485 体力:366
知力:448 精神:258
敏速:1286 運:20
【スキル】加速Lv2 隠密Lv3 剣Lv5 短剣Lv4 弓Lv8 盾Lv3 身体強化Lv3 相互言語 MPドレイン 鑑定 飛翔転移 アビリティドロー
【魔法】風魔法Lv3 火魔法Lv1