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勇者VS勇者

「オズワルド、無事か!?」


 勇者トモノリの言葉に、検問所を脱出したばかりであろうオズワルドが振り返る。


「おお、勇者トモノリ! ……残念ながらご覧の通りの有り様です」


 前方に目をやると、大勢のプラーガ兵達が検問所を占拠し、ミリオネックの国旗も燃やされてしまった後だった。


「まさかこんなに早く落ちてしまうとは……」


「勇者トモノリ。その事でご報告が有ります」


「ん? どういう事だ?」


「少々お耳を拝借しますぞ」


 項垂れてたトモノリに近付くと耳元で何かを(ささや)く。

 と、思われたその時!





 ドスッ!


「カハッ! オ、オズワルド……貴様ぁ!」


 脇腹を庇いながら二歩三歩とさがり、深々と突き刺さった刃物を投げ捨てオズワルドを睨み付ける。


「ヘッヘッヘッヘッ! まさかこんなに上手くいくとはなぁ」


 オズワルドだと思われたその人物は、徐々に変化を解いていく。

顔のシワが無くなり、曲がった背筋も伸びたその姿は、かの老人とは似ても似つかない若々しい男であった。


「ガフッ……お、お前は!?」 


「おーおー、まだ喋れるのか。ま、その根性を称えて教えてやる。俺の名は村上悟(むらかみさとる)。お前と同じくプラーガ帝国に召喚された勇者ってやつさ」


 吐血しながらも相手を睨み付けるトモノリであったが、徐々に視界がボヤけつつあった。

このままではやられる! そう思ったトモノリは、一気に討ち取るべく勇者のスキルを開放する。


「いくぞ! 限界突破(オーバードライブ)発動!」


 トモノリを包み込んだこの赤いオーラは身体能力を極限まで高めるもので、普段の3倍近くのステータスになるのだ。


「でぇやぁぁぁぁぁ!」


 その羽上がったステータスによる剣撃がサトルを襲う。

それを辛うじて受け止められると正面から向き合う形になった。


「くっ! やるなぁ。さすがに勇者なだけはあるぜ」


「まだまだぁぁぁ!」


 ブゥン!


「チッ! まだ動くつもりかよ!」


 やっとの思いで捌くサトルとは対称的に、トモノリは怒涛の勢いで剣を振るう。

打ち合う度にサトルの腕には切り傷が増えていき、ついには足を滑らせ転倒してしまう。


「チッ、やべぇ!」


「そこだぁぁぁ!」


 キィン!


「んな!? 剣が!」


 無理な姿勢で払おうとしたサトルの剣を、遠くへ弾き飛ばす事に成功する。

勝機と見たトモノリは、ここぞとばかりに斬りかかろうとするのであったが……


「これでぇぇぇ……ぐ!? がはぁ!」


 あと一歩のところで吐血し、片膝を着いてしまった。


「ふぅ……漸く効果が切れたか。ちぃとばかし冷りとしたぜ」


 額を拭いゆっくりと起き上がると、慎重にトモノリへと近付いていく。


「……お前、まさか!」


「ああ、知ってるぜ? お前の限界突破(オーバードライブ)()()()ステータスを3倍近く高めるんだろ? つまり、今の深傷を負ってる状態から3倍って事だよなぁ!?」


 そう、これこそが限界突破(オーバードライブ)の欠点で、今のトモノリはサトルの不意打ちにより深傷を負ってるため、思った程の効果は得られないのだ。

 そしてもう1つ。

限界突破(オーバードライブ)の持続効果は10分間であるため、それを過ぎると10分のクールタイムが必要となる。


「訓練施設じゃ他国に寝返った奴の情報はぜ~んぶ公開されてんだよ、知らなかったか? まぁ知らねぇよなぁ、マジもんで信頼された奴にしか公開されねぇんだからよ」


「つ、つまりお前は……こ、心を、売り渡して……」


「あん? 何勘違いしてやがる? 俺からすりゃプラーガだろうが何だろうが関係ねぇよ。俺はやりたいようにやってるだけさ。ま、ムンゾヴァイスにとっちゃ俺みたいな人間の方が都合が良いんだろ」


 現にプラーガ帝国の皇帝ムンゾヴァイスは、召喚した勇者を必ずしも戦闘に用いる訳ではなく、武具やアイテム、建築物等の多方面に渡り協力させてたりするのだ。

 つまり、真面目なトモノリよりも不真面目なサトルの方が上手く使役出来ると思い、サトルに対して様々な情報を与えたと考えられる。


「つー訳で、ジ・エンドだなぁ!」


 ザシュ!


「ゴフッ! く……そぉ……」


 満身創痍のトモノリはそのまま心臓を一突きにされ、悔しさを滲ませたがらその場に倒れ込むと、2度と目を開ける事はなかった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 ここにも居やがる! ドロー!


 短剣Lv3→Lv3


 人の多くが集まってそうな場所に向かってるんだが、その途中で見かけた闇ギルドらしき奴等に片っ端からドローをかけてるのが現状だ。

 短剣レベルが3から全然上がらなくなったのは、どうせ経験値が足りないとかだろうし、後は地道に手に入れるしかねぇか。


「動くな」


「っ!」


 クソッ、気配を消してた奴に背後を取られたか……。


「貴様だな? 先程から妙なスキルで仲間のステータスをダウンさせてる者は」


 どうやらバレちまってるらしいな。

フォルネを抱えた状態じゃあまともに戦えねぇ。

だが一思いに殺さねぇのは、俺のアビリティドローが気になってるって事か。


「そうだ……と言ったらどうなんだ?」


「当然我々の役に立ってもらう。それに貴様は腕も良さそうだし、我らの一員として加わるならば歓迎しようじゃないか。勿論、抱えてる女の命も保証しよう」


 で、いつの間にか周りを囲まれてると……。

嫌になるくらいの手際の良さだなこりゃ。

それにそこそこの評価を貰っちまったし、いっその事鞍替えするのも有りか? いや、ないな。

 恐らくコイツらは、俺にレアなスキルが有ると考えてんだろう。

すぐに仕留めなかったのはそれを探るためか。


「ま、答えは決まってるんだけどな」


「ほぅ……。ならば聞かせてもらおう。我々に従うか、この状況で足掻くか……」


「そりゃ勿論……」


 俺は早速入手したスキルを使用する。


飛翔転移(ポータルジャンプ)!」

 MP144→MP134


「な! ど、どこに消えた!?」


 このスキルは好きな場所へと瞬時に移動出来るらしく、移動先をイメージしたら、背後の男の更に背後へと移動出来る事が分かった。

つまり……


「後ろだよバカが!」


「グ!? ギェェェッ!」


 剣だと至近距離で振り難いんで、ナイフで首をグサリだ。


「な! こ、こいつ!」

「チッ! 構わねぇ殺っちまえ!」


 動き出した連中の相手をしてやりたいところだが、さすがに1対6は厳しいぜ。

って事で……


「あばよっ!」

 MP134→MP124




 とりあえず戦線離脱って感じで、飛翔転移(ポータルジャンプ)で人の多い所に移動した。

というかこのスキル、ちゃっかりMPを消費すんのな……。

 っと、そうだそうだ、そんな事より今だ今。

街の広場に飛んできたが、闇ギルドの連中があちこちに潜んででとても気が休まらねぇ。

つーかここにゃ騎士団とか居ねぇのかよ!


「皆さん、周囲には闇ギルドの構成員が動いてるため非常に危険です! この広場では我々がお守りしますので、安心して下さい」


 なんだ居るじゃねぇか。

ここならフォルネを任せておけそうだし少しの間見ててもらうため、近くに居た女騎士に頼んでみる。


「すまないがこの女性を頼めないか?」


「私か? 構わないが、貴方はどうなさるので?」


 どうするって? んなもん決まってら。

折角ステータスアップするチャンスだしな、どんどん構成員を狩っていくぜ。

ついでにレベルも上がれば万々歳だ。


「ネズミを狩ってくるのさ。そうしなきゃ寝不足で死にそうになる」


「下手をすると事実に成りかねんが、大丈夫なのか?」


 勿論死ぬつもりは無い。

闇ギルドの連中には精々俺の糧になってもらおう。

なので俺は力強く頷いた。


「分かった。だが気を付けてくれ、連中は相当数の構成員を投入したらしくてな、総勢で50人以上は居ると見ていい」


「マジか……だが既に数人殺ったから、50を切ってるだろうな」


 実際は数人どころじゃなく20人は殺ったと思うがな。


「フフ、それは頼もしい。良ければ名前を教えてくれないか?」


「ああ。俺はトウヤ。こっちはフォルネだ」


「トウヤか。私はロゼだ。こちらの女性……フォルネと言ったか? 彼女の事はまかせておけ」


 ロゼという騎士に眠り姫(フォルネ)を預けると、さっそく狩に出掛ける。




「お、いたいた、さっきの連中だ」


 俺を捜すのは既に諦めたのか、連中は真っ直ぐにある方向へ向かっていた。

隠密スキルを使用して後を追うと、やがて一際目立つ豪勢な建物が目に留まる。

 宝石を散りばめたように見える如何にも貴族が好みそうな外装からして、恐らくは領主の邸と判断してよさそうだな。


「もうすぐ勇者の邸に着く。勇者トモノリは同じく勇者であるサトルが誘い出して相手をしてる筈だ。我々の目的は邸に居る連中を皆殺しにし、ミリオネックの連中の士気を下げる事だ」


 そういう事かよ。

これだけ大掛かりにやるって事は相当金もかかってる筈だ。

レイドレックめ、形振り構わねぇつもりか。


「お頭、ベルンのやつが合流してませんぜ、もしかして殺られたんじゃねぇですかぃ?」


 ベルン? 確か俺が殺したクソガキがベルンって名前だったな。


「あの小僧は弱くはない。どうせ何処かで道草を食ってるんだろう。それよりもこっちだ。入口の兵士を仕留めたら一気に入り込むぞ!」


 頭と呼ばれてる奴が物陰で合図を送ると、2人の構成員が見張りの兵士を死角から殺害し、死体を物陰まで引きずっていく。


「よし、いけ!」


 そのまま中で散開したようなので、俺も続いて入り込む。

まずはこちらに気付いてない構成員にドローを仕掛け、得意武器のLvを奪う。


 短剣Lv3→短剣Lv3


 チッ、まだ上がんねぇのかよ。

 だったら……


「テメェはもう用済みだ」


「!? グホォ!」


 隠密スキルにより俺に気付かなかった構成員は、突然現れた剣を捌くことが出来ずにその場で崩れ落ちた。


「な、なんだ! 何が起こってる!?」


 散開しようとした数人がこちらに気付くが、既にソイツらはドロー済みだ。


 短剣Lv3→短剣Lv4

 剣Lv5→剣Lv5  


 よし、短剣が上がったな。

ちょいと短剣も試してみるか。


「くたばれぇ!」


 構成員が手にしてたであろう得物を素早く拾い上げると、そのまま突っ込んでいく。


 ザシュ! 


「ギャッ!」


 ザシュ! 


「グハァッ!」


 キィィィン!


「うくく……き、貴様ぁ!」


 2人までは上手く仕留めたが、最後の3人目で防がれちまった。

だがスキルを奪った影響が色濃く現れてるようで、受け止めるのが精一杯といった感じだ。

お? よく見たらコイツ、頭と呼ばれてる奴じゃないか?


「よう、さっきぶりだなぁ?」


「くぅ……ぬん!」


 鍔迫り合いを止め、互いに飛び退き大きく距離をとると、再び短剣を構えて対峙した。

 

「貴様……何故我々の邪魔をする? 貴様はここの領主の関係者か?」


「いんや、関係はねぇな。ただ……」


「ただ?」


「ここがプラーガの手に落ちると俺が困るのさぁ! フャイヤーボール!」


 頭に向かって駆け出すと同時に、フャイヤーボールを足元に投げつける。


「くそっ! どこだ!?」


 バカが! 俺を見失った時点でテメェのまけだ!


 ザクッ!


「ガヒュ……」


 爆炎で見えなくなってる隙に頭の首に深々と短剣を突き立てる。

喉笛を切られて声を出す事が出来ずにいた頭は、断末魔を上げる事叶わずそのまま動かなくなった。


「さぁて、頭を失ったコイツらは統率が乱れるだろうから、後はじっくりと残党狩りを始めるとするか」


 先行して入り込んだであろう構成員を追って、邸の奥へと足を踏み入れて行った。

 

名前:海原豆矢 レベル:27

HP:338  MP:148

 力:485  体力:366

知力:172  精神:258

敏速:1077   運:20 

【スキル】加速Lv2 隠密Lv2 剣Lv5 短剣Lv4 弓Lv8 盾Lv3 身体強化Lv3 相互言語 MPドレイン 鑑定 飛翔転移 アビリティドロー

【魔法】風魔法Lv3 火魔法Lv1

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