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闇ギルド構成員

 上手く辺境伯からの追手をミリオネックの兵に押し付ける事に成功した。

慌てる必要は無くなったところで、検問所から最寄りのフランツという街にやって来たんだが……


「入場料は1人100マネーだ」


 チッ、金取るのかよクソガ!

拒めば街に入れないんで渋々銀貨を2枚渡す。

プラーガだと1テルで銅貨1枚だった事から、1マネーで銅貨1枚だと予想し銀貨2枚渡したらビンゴだった。


「よし、通っていいぞ」


「ありがとう御座います」

(へいへい、ご苦労なこった)


 でまぁ入場料を取られた理由なんだが、単純に身分証となる物を持ってなかったからに他ならない。

要は犯罪者などは身分証を持たないから、出入りする度に金を取られるのは割に合わないって事で、犯罪者の出入りを牽制する狙いがあるんだと。


「ごめんなさい、トウヤさん。私が居るせいで余計にお金が掛かってしまって……」


「気にすんなって。魔物の素材を売ったお陰で懐には余裕が有るからよ」


 とは言ったものの、やはり毎度毎度入場料を取られるのは性に合わない。

そんな訳で冒険者ギルドでギルドカードを作る事にした。

フォルネの場合戦闘は行えないが、やはり身分証が有った方が便利って事で、フォルネのギルドカードも一緒に作っちまおう。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


「冒険者の登録を行いたい。俺と連れの2人だ」


「はい、畏まりました。こちらにお名前を記入して下さい」


 昼飯時って事もあり、冒険者ギルドはスッカスカだったのは有り難かった。

お陰で変な奴に絡まれる事もなく、待たされる事もなかったしな。

高ランクの魔物を持ち込むと目立つだろうから、今後も利用する時は時間帯を気にする事にしよう。


「はい、出来ました。こちらがギルドカードになります。身分証にもなりますので、無くされないように気を付けて下さい。もし紛失した場合は再発行出来ますが、手続き料をお支払い頂きますので注意して下さい。そらからランクの説明は必要ですか?」


 ああ、ギルドのランクか……いや、必要無いな、どうせ依頼を受ける事はねぇんだし。


「いや、ランクの事はまたの機会にする。手続きありがとよ」

「ありがとう御座います」


 ギルドカードが手に入ったところで、早速魔物を売り払う事にする。

余計な荷物は持ち歩きたくないしな。

殆どゴブリンとかだが、一応金には成るだろ。


「銀貨4枚に銅貨20枚か。それなりだな」


 路銀としてはまずまずか。


「トウヤさんは直ぐに稼いでしまいますものね」


「今更ゴブリン共には遅れをとらねぇさ」


 もし今後も金で困ったら、フォルネが宿で休んでる間に街の外へ()()()に行けばいいか。

一先ず今日のところはこの街で1泊するとして、何か商売で儲けられる方法を考えよう。

それが出来りゃあ態々魔物狩りに行かなくてすむしな。

 そんな事を首尾よく見付けた宿で寛ぎながら考えてたのだが、まさかその日の内に情況が一変するとは思わなかった。


「なんだか外が騒がしいな?」


 横で寝てるフォルネはぐっすりとお休み中で起きる気配が無いが、俺は妙に表でドタドタの走り回る足音に目が覚めちまった。

 一応言っとくが、フォルネとは何もないからな? フォルネが1人は嫌だって言った結果だから、余計な詮索はNGだ。


「火事だぁーっ! 早く消し止めろぉ!」


 火事だと? 慌てて木窓を勢いよく開け放つと、数ヵ所の建物が炎に包まれてるのが見える。

その瞬間、最も想像したくないケースを想像しちまった。


あの野郎(レイドレック)、まさか本気で攻め込むつもりか!?」


 同時に複数の建物が炎上してる時点で、何者かが意図的に行ってるのは明白だ。

これを行って得をする人物と言えば、俺の知る限りじゃ1人だけだ。

 この街に火の手が上がれば、検問所へ増援を出す余裕は無くなる。

その間に検問所が夜襲されれば……



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「検問所が陥落する……というのか?」


「ハッ! 本日の昼間にプラーガ帝国から侵略行為を受け、それを撃退したのは良かったのですが、恐らくそれを行ったのは検問所の防衛力を試すためではないか……とのオズワルド様の見解です」


 ミリオネックの検問所は、その呼び名とは似つかない砦のような造りになっており、簡単に落ちる事はない。

だが予想外の力がそこへ加われば、戦況は分からなくなる。

それこそ()()のような存在が現れれば……。

 因みに、オズワルドとは検問所でトウヤとやり取りした魔術師の爺さんである。


「やむ終えん、私自ら追い払ってくるとしよう。これから直ちに検問所へと向かう。その間ここフランツは空ける事になるが、暫くの間は頼む」


「ハッ! 恐らく闇ギルドの仕業だと思われますので、この機会に根絶やしにしてやります」


「ハハ、頼もしいな。では行ってくる。後は頼むぞ、セリオス」


「畏まりました。我らが勇者トモノリ様」


 トモノリと呼ばれた男は、街の事をセリオスという部下に任せると、急ぎ単身で検問所へと向かった。


 そもそもこのトモノリという人物はプラーガ帝国が召喚した勇者であり、現皇帝の横暴に耐えかねてミリオネックに亡命したのである。

 当然その事実はプラーガ帝国でも把握しており、辺境伯であるレイドレックも例外ではない。

 つまり、勇者トモノリは見事に()()()()()()しまったのだ。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「この家はもうダメだぁ! 周りを壊せぇ!」


 マズイな……このままじゃこの宿もヤバいかもしれねぇ。

フォルネを起こして一旦外に……っ!


「誰だ!?」


 不意に人の気配を感じとった俺は咄嗟に剣を構える。

すると入口に1人の少年がクツクツと笑いながらこちらを眺めてるのに気付く。


「クックックッ、中々良い反応するねぇ君。大抵の奴は気付かない筈なのに。それとも単に感が鋭いだけ?」


「ふん、どうだろうな……」


 コイツはただ者じゃねぇ、俺の本能がそう訴えてくる。

それこそあのブラックウルフとは比較にならないレベルでだ。


「俺に何の用だ?」


 油断なく切っ先をソイツに向けるが、全く意に介す素振りを見せない。

それどころか用心深く一歩一歩近付いて来やがる。


「止まれ。それ以上近付くならテメェの命は無いと思えよ?」


「何をそんなに警戒してるのさ? 見ての通り僕は丸腰なんだけど?」


 俺の警告に従ってピタリと歩を止めたところは称賛してやるよ。

何せそれ以上来たら一気に心臓目掛けてブッ刺すつもりだったからな。


「ぬかせ。武器が無くたって闘いようはあるだろうが。それとテメェ、俺の質問にまだ答えてねぇぜ?」


「あぁ~はいはい分かったよ。僕の目的でしょ? それはある人に頼まれたからここに来たんだよ。でもクライアントの名前は明かさないよ?」


「成る程。今のでだいたい分かった」


 コイツの言うある人に合致する名前って言えばレイドレックしか居ねぇ。

街に火を付けたのは本気で攻め込むつもりか、それとも()()()が本命なのか、何れにしろ目の前のコイツは生かしておく訳にはいかねぇ。

 って訳で、やる事ぁ1つだ。


名前:ベルン   種族:魔族 

レベル:40   職種:闇ギルド構成員

HP:655   MP:863

 力:426   体力:425

知力:699   精神:778

敏速:780    運:37

【スキル】短剣Lv5 格闘Lv3 飛翔転移(ポータルジャンプ)

【魔法】土魔法Lv4


 まさに暗殺者って感じだな。

だが素早さは俺の方が上回ってるから油断しなきゃ大丈夫だ。


「テメェの目的は分かったが、俺としても「はいそうですか」と頷く訳にぁ行かねぇんだがな……」

(時間を稼ぎつつ……ドロー!)


「それは困ったね、僕としては是非とも頷いてほしいとこだよ」


 ケッ、余裕ブッこいてられるのも今の内だ。

何せコイツの生命線とも言えるスキルを奪えたんだからなぁ!


 NEW→飛翔転移(ポータルジャンプ)


 多分このスキルは、瞬時に特定の場所に移動出来るスキルと見た。

こんなものを持ってんなら強がるのも無理は無いってもんだ。

 だがこれからは俺が有効利用してやんよ!


「交渉は決裂だなぁ!」


 一気にクソガキの懐に飛び込むが、それでもコイツは余裕の表情だ。

 だがその方が都合が良い。

坊や良い子だ寝んねしなってな!


「フッ、無駄だよ。いくら速くたって僕には傷1つ付ガハァ!?」


 恐らく転移しようとしたのであろうクソガキは、俺の剣を土手っ腹にまともに食らい、その場に倒れ込む。


「おい、傷1つ……何だって? まさか傷1つ付けられないとか思ってやがったのか?」


「ゴフッ……そ、そんなバカな! 何故発動しない……」


 やっぱりそうだ。恐らく瞬時に相手の背後に回ったり出来るんだろう。

 だが今回は相手が悪かったな。


「さて、ベルンとかいうクソガキ。テメェに選択肢を与えてやる。俺の質問に答えたら黙って解放してやろう」


「………………」


「答えたくないならそれでもいい。テメェの寿命が縮まるだけだ。それと……」


 ドスッ!


「――ギャッ!」


 モソモソと口元が動いてるのが気になったんで、足を突き刺して強引に黙らせた。


「詠唱も禁止だ。どうしても詠唱したいってんなら質問が終わった後に念仏でも唱えな」


「……分かった」


「よし、なら質問だ。クライアントは誰だ? それと本当の目的も言え」


 ドクドクと流血してる状態じゃ時間稼ぎは悪手でしかない。

そう考えてかクソガキは直ぐに口を開いた。


「レイドレックという辺境伯で、目的は2つ。街に火を付けて勇者トモノリを誘い出す事と、その隙にフォルテという女を連れ戻す事さ」


 勇者だと? まさかこの街に勇者様が居たとは思わなかったな。

だがソイツが誘い出されたって事は……


「レイドレックはこの街を本気で落とすつもりなのさ、別動隊を使ってね。僕は先発隊としての依頼を受けたって訳。質問はこれで全部かい?」


 ヨロヨロと起き上がったクソガキは、直ぐにでも外へ飛び出しそうだ。


「ああ終わりだ」


「じゃあ「()()()な」


 聞きたい事も聞けたしって事で、一気に心臓を突いてやった。


「ガハッ!?」


「約束通り()()してやったぜ。精々あの世で達者でな」


 倒れたソイツは今度こそ起き上がる事はなかった。

 悪く思うなよ。

生きるか死ぬかの状況で、手心を加えるつもりはないんでな。


「くそっ、こっちも火事だ! 早く脱出させろぉ!」


 どうやらこの宿も着火されたみたいだな。

だが俺としちゃその方が都合が良い。

俺はいまだにグッスリな()()()を抱き抱えると、そのまま窓から飛び降りた。


名前:海原豆矢 レベル:25

HP:328  MP:144

 力:483  体力:362

知力:156  精神:248

敏速:1057   運:20 

【スキル】加速Lv2 隠密Lv2 剣Lv5 短剣Lv2 弓Lv8 盾Lv3 身体強化Lv3 相互言語 MPドレイン 鑑定 飛翔転移 アビリティドロー

【魔法】風魔法Lv3 火魔法Lv1

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