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大脱出

「出てきたぞ! 弓隊構え!」


 うぉ!? 追っ手がダンジョンの出口に待ち構えてやがった!

ここで死んだら間抜け過ぎる。


「フォルネ、しっかり掴まってろ!」


「はい!」


 心なしか嬉しそうに反応するが何か良い事でも有ったか?

まぁいい、さっさとトンズラするぜ!


 飛来する弓矢を回避して街道の有る方角へひた走る。

この森の中で魔物とかち合うのも面倒だからな。

今は追っ手を引き離す事に専念するぜ。


「くそっ! 奴等を逃がすな! ルドム様の弔い合戦だぁ!!」


「「「オオッ!!」」」


 あの爺の部下共か。

上司思いの部下に恵まれて良かったな、爺さんよ。

 だがそのお陰で俺は迷惑してるって事を覚えとけよ!


 そう豆矢は愚痴りながら走り続けた。

やがてミリオネックとプラーガ帝国を繋ぐ街道が、姿を現した。

ここを西に向かって行くと、ミリオネックの領土に入る。


「豆矢さん、あれを!」


 前方を指して声をあげるフォルネにつられ、豆矢も前方を見ると、そこには森から出て来た者達を一網打尽にするかのような陣容を整えたプラーガ帝国の兵士共。

さらに先頭に立っているのは、あの糞忌々しい辺境伯だった。


「くそっ!」


 俺は慌てて引き返した。

今の俺はフォルネを両手で抱えてるので、まともにレイドレックと闘うのは避けたい。

というか、両手がフリーでも闘いたくねぇ!


 だがこのまま引き返すだけだと、今度はダンジョン入口で待ち構えてた連中にかち合う。

やむを得ず俺は、森の中をミリオネックに向けて走る事を選択した。






 あれからどれくらい走ったか分かんねぇが、既に日がだいぶ落ちてきた時間帯だ。

俺とフォルネは、一晩明かせる場所を探して歩いている。


 しかしあの辺境伯、たかが男女2人のためにどこまで追ってくる気だ?

こんなん辺境伯がやる事じゃねぇだろう!


 はぁ、愚痴ってもしゃーねーか。


「あれは……豆矢さん、あそこに洞穴があります。あそこなら良さそうじゃないですか?」


 洞穴かぁ……まぁ外敵から身を隠すのには最適だが、洞穴ん中に魔物が居ないとも限らねぇしな。


「とりあえず見てみるか」


 更に近付いてよく見てみる。

洞穴は、人が3人くらい並んで歩けるくらいの広さだった。

これで入口をカモフラージュすれば見つかり難いだろう。


 だが洞穴は奥へと続いており、何者かが意図的に掘ったと考えるのが妥当だ。

とは言え、奥まで行ってご挨拶するつもりはない。

ここに居るのは一晩だけで、魔物と共同生活するつもりはない。


「折角だし、ここで一晩明かそう」


「はい」


 フォルネも了承してくれたので、この洞穴で1泊する事に決まった。






 そして次の日になるのだが、俺はビシッ、ビシッ、という何かが打ち付けられる音で目を覚ました。


「ん……何の音だぁ?」


 驚いて変な声が出ちまったが、これを見て驚かない奴はいないだろうから勘弁してほしい。

 何故かってーと、寝る前に張った結界にビッシビシと鞭みたいなのを打ち付ける化け物がいるんだよ。

しかも見た目が気持ち悪ぃ。

特に触手をウネウネさせてるところとかな。


 そうだ! フォルネは!?

俺は急いでフォルネの安否を確認する。


「……う……んくぅ……」


 ふぅ……なんか妙に色っぽい寝息を立ててるが、無事だったので安心した。

結界石を使ってるから無事なのは分かりきってる筈だったんだけどな。


 でもってこの化け物は……。


名前:デッドメイプルツリー 

種族:プラント      

HP:510 MP:752

 力:455 体力:384

知力:665 精神:345

敏速:83        

スキル:MPドレイン   

魔法:土魔法Lv3    


 そこそこ強そうだが、結界の中にいる俺とフォルネには無意味だな。

って事で……。


「ドロー!」


 NEW→MPドレイン


 こいつは役に立ちそうなスキルだな。

MPが無くなりかけたら使えばいいか。


「燃えちまえ、ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール!」


「プシューーーーゥゥゥ」


 相手が植物って事もあり、火魔法で焼きつくしてやった。

こっちは結界の中だから無敵状態だな。

しっかし、俺が知ってる植物は動いたりしないんだが、さすがは異世界ってとこか。


「ん……トウヤ……さん?」


 フォルネが目を覚ましたらしい。

もうあの化け物は燃えカスになったから、ギリギリ目にする事はなかったって事だ。


「おはよう、フォルネ」


「おはようございます、トウヤさん。あら? 何か焼けてる匂いがするんですが、朝食を作ってらしたのですか?」


 うげぇ! 冗談キツイぜ。

アレを食べるとか正気じゃねぇよ。

まぁフォルネは見てないから知らないだろうけどな。


「いや、()()を燃やしてただけだ」


「そうでしたか。香ばしい匂いがしたのでてっきり料理をなさってるものと……」


 ん? 言われてみりゃ確かに香ばしい匂いがする……。

いやいや、それでもあの化け物を食う気にはなれねぇ。

食わねぇぞ、絶対に!






「で、表には追手が彷徨いてる……と」


 ()()()で朝食を済ませてから表に出ようとするが、外には追手が居やがった。


 洞穴の入口はカモフラージュしてるから見つかりにくい為、連中はまだこちらに気付かないでいるが。


「こりゃ強行突破するしかねぇな……」


 何故俺達がこの辺りにいると分かるのか不明だが、今はここから脱出するのが先決だ。


「ファイヤーボール! ファイヤーボール! ファイヤーボール!」


「うわっ! 何だ!?」

「くそ! 近くにいるぞ、探せ!」


 目眩ましに追手の密集してるところへファイヤーボールを叩き込む。


「こいつも俺の奢りだ、受け取れ! ウィンドカッター!」


 ついでに近くの巨木を根元から切断し、なぎ倒してやる。


「こっちに倒れるぞ、避けろ!」

「おわぁぁぁ!」


 よし、敵が混乱してる内にずらかるぜ。


 俺は毎度の如くフォルネをお姫様抱っこすると、街道の有る方向に走り出した。

なんだか最近、こうして走り回るのが板に付いてきた感じがするのは、気のせいじゃないよな絶対。






 街道が見えてきたが、同時に絶望も見えてきた感じだ。


「くそっ! また先回りされてやがる!」


 そう吐き捨てるが、可能性は予測してた。

 何故だか知らないが、連中は俺とフォルネの居場所を分かってるようだからな。

 だが連中も俺のスピードにはついて来れないのは救いだ。

まずはこのまま街道に出て、ヤツラを撹乱してやるか。

そしたらそのままミリオネックまで一直線って訳だ。


「フォルネ、ちょいと激しい展開が予想されるが、しっかり掴まってろよ」


「はい、トーヤさん!」


 フォルネによる期待の眼差しを受けながら、俺は待ち構えてるプラーガ帝国の連中に向かって、ファイヤーボールを叩き込む。


「ファイヤーボール!」


 発射された火の玉は敵の前列に着弾し、砂埃が舞い上がる。


「ぐおぉ!? 何だ、何が起こった!?」

「何者かがファイヤーボールを放ったようだ!」

「も、森だ! 森の中から飛んできたぞ!」


 どうやら森の中から放たれたのがバレてるようなので、もう2発叩き込み、街道へと飛び出す。

     

「ゴホッゴホッ、や、奴だ! 逃亡者が居たぞ!」


 視界がハッキリするのと同時に、俺達に向かって矢を放とうとしてくる。

さすがに一斉に放たれるとマズイってんで、使えそうな魔法を探ってみたところ、ウィンドカーテンというこの状況にピッタリな魔法を見つけた。


「ウィンドカーテン!」


 振り向き様にウィンドカーテンを発動する。

 この魔法は、飛来する物を風でシャットアウトするというこの状況に大変便利な魔法だ。

 ウィンドカーテンを発動した後に弓矢が飛んでくるが、全ての矢が地面に落下した。


「くそぅ、防がれたか! おい、馬に乗れる奴は急いで奴を追え!」


 まーだ追ってく来る気かよ……。

 仕方ねぇ、馬より速い俺に付いて来れるもんなら付いて来やがれ!


「トーヤさん、このまま行くと、ミリオネックの領内に入ります」


「分かってるさ」


 プラーガの連中は、小隊を組んで俺達を追走してきてるな。

 だが、このまますんなりミリオネックに入れるかどうか分からねぇ以上、追い付かれる訳にはいかねぇ。

最悪挟まれて終わり……なんて展開になる可能性も…………まてよ? プラーガの連中は端からみると、たった2人の人間を捕まえるために兵を動員したようには見えない。

もっと大掛かりな事をやろうとしてるように見えるんじゃねぇか?

 おーし、コレは使えるぜ!


「ト、トーヤさん? このままだと、不審者としてミリオネック側に捕らえられる可能性が有ります! 追手が私達を犯罪者としての引き渡しを要求したら、ミリオネックは断らないのでは?」


「まぁ……な」


 金払って引き渡しを要求したら、あっさりと応じる可能性は充分有り得る。

 だが俺とて伊達に口がある訳じゃねぇ。

上手くミリオネックの連中を唆せばいい。


「なーに、俺に考えがある」


 失敗したらかなりマズイ事になるが、不思議と失敗する感じがしない。

 俺は自分の感覚を信じ、ミリオネックに向けて走り続けた。

 



「遠くに見えるのがミリオネックの検問所だな」


 もう少しでミリオネック領内に入り込む事が出来る。

そうすりゃ連中も追っては来れない。


「でもどうやって入るんです? 怪しまれたらその場で捕まってしまいますよ?」


 確かにそうだ。

向こうにとっちゃ、俺達2人は見知らぬ相手になるよな。

顔見知りなら多少は融通がきくかもしれんが。

 だがそこがポイントだ。

初見の相手となりゃ最初のアプローチは限定されてくる。

そこで如何に相手を丸め込む事が出来るかがキーとなるだろう。


「なぁフォルネ、ミリオネックの連中は、金にうるさいんだったよな?」


「はい。個人差は有ると思いますが、概ね金銭のやり取りにはシビアだと聞いてます」


 この事はイグリーシアに来た当初、女神に教えられたんだよな。

確か俺にピッタリだとか言われた気がするが、まぁそれはいい。

 それよりも、使えるポイントとしては()()が大きいな。

要は俺とフォルネを助けないと、ミリオネックにとって金銭的にダメージになるって思わせれば良いわけだ。


「……よっと。考えが纏まったぜ」


 俺はフォルネを下ろすと、ミリオネックの検問所に向けて歩き出す。

さすがにお姫様抱っこしたままじゃ、まともな人種に見られないだろうしな。

 念のため何度か後ろを振り返るが、まだ追っ手は来ていない。

 そして俺とフォルネは、堂々とミリオネックの検問所へとやって来た。

  

名前:海原豆矢 レベル:18

HP:298  MP:138

 力:463  体力:342

知力:102  精神:222

敏速:958   運:20 

【スキル】加速Lv2 隠密Lv2 剣Lv5 短剣Lv2 弓Lv8 盾Lv3 身体強化Lv3 相互言語 MPドレイン 鑑定

【魔法】風魔法Lv3 火魔法Lv1

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