無装の俺③
俺はもう死んだな。
このままじゃ確実に転落死する。
しかしそれを防ぐ方法もない。
もう何十秒も俺は落ち続けている。
本当はここに底なんてないんじゃないだろうか。
何で俺は心武を手に出来なかったのだろうか。
俺が何か悪いことしたか?
でも、俺は親父を、ガイアに必ず復讐してやる。
その為には生き残らないと行けない。
今なら、神でも悪魔でも縋る。
誰か俺を助けてくれ。
「誰か...。」
ガクッ。
そんな音と共に俺は落ちるのが止まった。
決して底についたのではない。
俺は今、空中に浮いているのだ。
「カカカ、お主か?儂を呼んだのは。」
そこに現れたのは黒髪の女性。
高そうなドレスを着て若い見た目に合わないジジくさい喋り方をしている。
「じゃから儂を呼んだのはお主かと聞いとるのじゃ。」
「えっと、どちら様で。」
次の瞬間身の毛もよだつ圧迫感が俺を襲った。
「ぬ、お主。儂を知らぬのか?かつて神と対峙して引き分けまで持ち込んだこの儂を。」
神と引き分け?
そもそも神なんているのかよ。
俺の家は神なんか信じるより己の力を鍛えた方がいいと言う教訓があり俺もそれに従ってきた。
しかし今の状況では何も言ってられない。
今は生き残ることだけを考えるべきだ。
「ならば自己紹介しよう。儂は絶望王ピアディス・ホープ。儂の願いを叶えてくれるのならばお主の願いも儂が叶えよう。」
そう、絶望王ピアディス・ホープは言った。
みため20代中盤のようで喋り方には妙な貫禄がある。
「どうじゃ?なかなか魅力的な提案だと思うんじゃが?」
「あぁ、受けよう。」
俺は即答した。
俺は絶対に生き残る。
そして復讐するんだ。
ガイアに、俺を白い目で見てきた奴らを。
「おぉ!では儂の願いを言おう。今の世で王と言ったら誰の事じゃ?」
「えっと、魔王イクリプス、人王サーガ、獣王シシライ、竜王ヘル、鬼王ムメイ、法王カムイ、剣王ガイアくらいだ。」
そう、俺の父親、ガイアは剣王と呼ばれるほどの剣の実力者だ。
少し前までは誇りだったが今では忌々しい。
「何?たったの7人しかいないのか?多少は減っていると思ったがまさかここまでになってるとは。」