無装の俺②
成人の義を終えてから丁度2週間が立った。
そして周りからの俺への態度は成人の義が始まる前からと比べると180度変わった。
以前までは俺への態度は貴族では無いにしろ父親がこの国で5本の指に入ると言われるほどの実力者だったため見かけたら挨拶をされて小話をするくらいだったのに今ではこちらから挨拶しても無視をする。
この村は住人が100人もいない。
だから全員が顔見知りで噂の伝達速度ははやい。
人から人へ、また人へと続いていく。
この世界では心武で人を見る。
心武の能力が高かったら多少の犯罪だったら無罪にされ、能力が低かったら少し法に触れたらあっという間に投獄へ連行される。
だから心武を持たない俺への扱いは想像がつくだろう。
2週間前まで付き合っていた彼女が、親友だったアイツが、虐められてるのを止めてやったアイツが、兄が、妹が、家族が、町人が、大人が、子供が、全てが俺を白い目で見る。
それが嫌で嫌でたまらなくて俺は1週間自分の部屋に閉じこもっている。
そんなある日の夜。
俺は親父、ガイア・アルファに呼び出された。
「やっと来たか。この馬車に乗れ。」
親父は俺を窓も無い馬車に乗せ自分も一緒に乗った。
どれくらいだっのだろうか。
長いこと馬車に揺られ辿りついたのは地面に物凄い深い亀裂が入った荒地だった。
「親父、ここはどこだ?」
「地獄の裂け目と言えば聞いたことがあるだろう。」
地獄の裂け目って確か俺の住んでた村から少し離れた場所にある入った者は誰も出てこれないと言う噂がある場所じゃないか。
何で親父が俺をこんな所に連れてくるんだよ。
「あぁ、残念だ。」
えっ?
親父は独りでに言い出した。
「優秀な次男を不慮の事故で亡くすなんて。」
親父の次男と言えば俺だ。
「あんなに成人の義を楽しみにしていたのに。それを受ける前に死んでしまうとは。」
わざとらしく親父は続ける。
「本当に悲しいな。なぁ、ジオン。」
おい、まて、まさか親父は俺を殺す気なのか?
「何もしらないまま死ぬのはさすがに酷だろう。冥土の土産だ。聞かしてやろう。お前見たいな欠陥品が家の家名を名乗ると他の奴らから舐められるんだ。」
そう言い放った瞬間、親父は俺を地獄の裂け目に突き落とした。
俺の頭の中に強い憎しみが生まれる。
「ガイアァァァ!!!!覚えとけよぉぉぉ!!!!絶対にお前を殺す!!!」
俺は力を振り絞りながら精一杯に叫ぶ。
しかし重力には逆らえず俺は裂け目の奥へと落ちていく。
ジオンが叫んでいるのを聞いてガイアはボソリと一言言った。
「戦争でお前と同じような事を言う輩を何度も見たが、俺はこうして今まで生きている。」