四話 赤い目の骸骨
動く骸骨を見つけてしまった。
暗くて遠くてよく見えないが、あいつが執事が言っていた魔物だろう。
兵たちは、探索者達は何をしているのだろうか、もしかしたらこの骸骨以外にもいて、それに取り掛かっているのかもしれない。
とにかく、逃げよう。
しろ、逃げるよ。
しろとともに音を立てないように下がっていく。
「助けて」
今にも折れてしまいそうな声が聞こえた。
骸骨の後ろには腰が抜けたように座り込んでいる少年がいた。
骸骨はその少年に、近づいていく。
「助けて、おねーちゃん」
骸骨がこちらを向いた。
吸い込まれそうな赤い目が見えた。
「ガルゥ」
乗れ、しろがそう言った気がした。
しろに乗るのと同時に、骸骨はすごい勢いで、こちらに向かって赤い目をひからせ走って来た。
街灯の無い細い道をしろは、風を切る速度で走る。
うそでしょ。
しろはすごい速さで走っている、だが、骸骨はそれの上を行くらしい。
差が少しずつ縮まっていく。
あの骸骨には勝てない。
リアは直感でそう感じた。
探索ギルドに飛び込もう、擦り付けれるかもしれない。
割と悪い考えでしろに道を変えてもらう。
しかしこのままでは捕まる。
精霊に頼むか。
大地の精霊たちよ。
地面が盛り上がり壁が出来た。
骸骨の姿が壁で見えなくなった。
こんなものでは止められないだろう。
骸骨が壁を、人外の跳躍で飛び越す。
風の精霊たちよ。
空中にいた骸骨が、横に凄いスピードで吹き飛ぶ。
さすがに、これは効いてほしい。
「trooooooru]
後ろで骨のこすれるような声がした。
しろ、あれ無理だ、探索ギルドに飛び込むよ、それまでいける?
「ワン」
しろ、それは、犬だ。
まあ何とかいけるか。
大通りに飛び出る。
人がたくさんいる、擦り付けられるかもしれない、いや無理だろう、魔物は魔力の多い者を狙うはず。
屋台を踏み潰し、時に店の中を、屋根の上を不規則に走っていく。
骸骨は人を飛ばし、赤い目に殺意を浮かばせ、真っ直ぐ矢のように走って来る。
あそこだ、しろッ、つっこめ!。
木の壁を体当たりで壊し、カウンターの後ろにすぐさま隠れる。
探索者たちは何事かと武器を取った、次に来た骸骨を見てすぐさま戦闘態勢に入る。
「おうおう、何事だ」
「どうやら、少々厄介そうですね」
探索者たちが口々に言う。
骸骨は、大柄な男を標的に、一瞬にして距離を詰める。
大柄の男は剣を横に振る。
骸骨はそれを紙一重で避け、大柄の男の腰に刺してあったナイフを抜き取る。
「くそッ、マジかッ」
近距離で戦う骸骨達に、魔法使い達はなかなか手を出せない。
「下がれ、一撃で終わらせる」
「わーってる、だがこいつ異様にすばしこい」
骸骨は、振られた剣をかがむように避け、突き出された槍をナイフで横にはじき、ハンマーを当たりそうなギリギリで避け続ける。
「おい、こいつやベーぞ」
「強化魔法願うッ」
「今やってる!」
骸骨は反転して、強化魔法のために詠唱中の魔法使い達に向かう。
前衛役が壁になるが、その間をすり抜けるようにして骸骨は進む。
骸骨にテーブルが投げつけられた。
骸骨は、地面につきそうなほどになりながら下に避けた。
骸骨が見上げるとそこには、大量の魔方陣が囲むようにあった。
最後のあがきと骸骨はナイフを投げた。
魔方陣から魔法が出るのと、ナイフがカウンターを貫通して、リアの横に刺さるのはほぼ同時だった。