三話 噂
噂は怖いものだ。
平民の噂がメイドに伝わり、メイドから執事へ伝わり、執事から私へ伝わった。
噂の内容は、何でも、出るらしい、骸骨のお化けが。
大体スケルトン辺りの魔物だろうと執事は言っていた。
それとくれぐれも探しに行かないように、と。
ついでに私の放浪癖は貴族の中で有名だと。
なんでも、執事やら召使やら兄やらが、私の放浪を止めようと何度も策を練ったが、すべて失敗に終わっている事が噂になっているそうだ。
3階の窓から飛び降りて脱走したとか、門番を宙返りで避けて行ったとか。
その他にも私の噂には続きがあり、誘拐しようとした人と友達になっただとか、国王とまぶだちになったとか果てがないらしい。
どこから洩れたのか非常に気になる。
私は意思があるものならなんでもいけるらしい。
今では私が街道を歩くたびに挨拶が飛ぶ。
「ようリア様元気か」
「・・・・・・」
「今日はずいぶんと早いのね」
「・・・・・・」
「リアねーちゃん、今日あそぼうよっ!」
「・・・・・・」
どんなに無視しても能力が勝手に発揮され、適当な答えが返されているらしい。
我ながら能力がおそろしい。
ちび狼のしろは、この数年間で異様に成長し私の背を超えた、私は小さいが。
もうちび狼と呼べなくなってしまったのが残念だ。
「グワォン」
「・・・・・・」
よしよし、かわいい奴だ。
頭を撫でると、喜びが漠然と伝わってくる。
よし、今日は貴族の図書館に行こう。
特に意味の無い目的だが無いよりはましだろう。
しろに乗せてもらい、目的地に連れて行ってもらう。
こっちの方が早い。
しろの背中はほんのり温かく、風を切りながら走るのが気持ちよかった。
図書館に着き、入り、本を物色していく。
「おや、リア様、何の本をお探しですか」
図書係の爺さんが話かけてきた。
名前なんだっけ、知り合い多すぎて覚えられない。
「・・・・・・」
特に無いです、面白い本を探しに着ました。
「ふむ、そうですか、これなんてどうですかな」
えっと、狼の飼い方ex―――。
これ読んだことある、次。
「・・・ではこれはどうですかな」
・・・アメンボが太平洋を渡る日?、次で。
「ふむ・・・これは―――」
次。
―――。
―――。
知らないうちにこんな時間になってしまった。
送っていきましょうかという言葉をがん無視する。
しろいくよ。
暖炉のそばで丸まっていたしろが、伸びをしてから向かってきた。
「ありがとう」
たのしかったと爺さんに告げ外に出る。
アメンボ書きました。