5ショートストーリーズ2 その4【死んでみた】
死後の世界はどうなってる? 探究心の強い俺は、とりあえず死んでみた。
とりあえず、死んでみた。
いろんな奴が死後の世界を、いろんな風に説明するが、どれが本
当か、今の俺には全く想像出来なかったからだ。
あの世というものがあってだな、天国というモノがありまして、
地獄があるんじゃが、冥界が存在してね、ソウルソサエティこそ
真実よ、って、おい! もう何が何やら。
それじゃ、自分で体験するしかない。当たり前の結論だ。
特に今の生活に我慢ならないとか、そんな理由じゃない。俺は単
に探究心が強いだけなのだ。
しかし、どうやって死のうか。
う~む、小一時間考えたところで腹が減った。3分間待ってカップ
ラーメンを食った。
ああ、体が温まって満足した。単純に血糖値が上がったせいなの
だろうが、これが天国に行った気分なんだろう。
よし、じゃホントの天国に行く準備を。
ここでハタ、と俺は考えた。
聞いた話の中で、自殺した者は天界には行けない、というのがあ
ったな。自縛霊となって現世に留まるとかなんとか。
もしそれが本当だったら? ダメだダメだ、自殺はいけない。現
世はもう、知ってる訳だから。俺は現世以外の世界が知りたいのだ。
と言う訳で、俺は自分の寿命が尽きるのを待つ事にした。
その間に就職もして彼女も作り、結婚し子供も出来た。死のうと
してからいつしか60年の月日が過ぎていた。
その日、ベッドの周りには嫁を始め、子供、孫、ひ孫までいた。
「おっきいじいちゃん!」
「じいじ、死なないで!」
「お父さん!」
「あなた!」
お前たち、何をそう騒いでいるんだ。やっと俺は望み通りに…
そう、死後の世界を知る為に、俺はとりあえず死んでみた。
ああ、そういうことか。死んでみて分った。生きてるってのは奇
跡なんだな。死人に口なしってのは、上手く出来ているもんだ。
死後の世界がハッキリと解明されていないのは、神様の思し召し。
お前たち、とりあえず、生きてみろ。
やっぱり生きてて なんぼでしょうね。