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49:51

作者: ちょめ介

はい、なんといってもちょめ介です。


何を思いついたのか、おかしな短編を投稿させていただきました。


本短編から何かを推測するのもよいでしょうし、ただ流し読みをして頂いても構いません。


他の小説とは関係がないのかって?


…さあ?




そうして、世界は反転した。




―――




突然に【それ】は姿を現した。


なんの前触れもなく出現し、そして予定されていたかのように世界中へと蔓延していった。


【それ】は、まさに理想的な物質だった。


目に見えぬ、触れぬ粒子状物質でありながら、ある一定以上まで凝集すると発光して分子と同等の性質を持ち、あらゆる物質への干渉を可能とした。


扱う事が不可能だった大多数の人類は【それ】にある程度の法則性を見出し、外部の機器によって自由に扱う事が出来るようになった。


質量を持たず、大気にほぼ無尽蔵に存在する【それ】は既存の科学法則など意にも介さず、利用性が確立した後急激に、社会へと認知され、そして普及していった。


しかし、一部の人類は【それ】を呼吸するかのようにその身だけで自在に扱うことができた。


だが、後天的に創り出された技術は、先天的な才能にまで比肩した。


明確な方向性の違いを見せた両者は、決して交わることはなく、しかし、だからこそ決して争いは起きなかった。


そして【それ】は、技術によってあらゆる燃料の代替として取って代わった。


火力発電、水力発電、風力発電、地熱発電、原子力発電などの発電効率を圧倒的に凌駕した【それ】による電力供給は、以前の数十倍もの電力を生み出した。


環境を汚染せず人類に害を及ぼさない万能物質であった【それ】は、科学技術の殆どを影へと追いやり、もはや必要が無くなった技術は姿を消した。


【それ】は、人類の夢の具現だった。


人類の宝の象徴であり、人類の願いが叶ったものだった。


そして…【それ】は結局、人類にとっての最大の脅威になった。




―――




【それ】が姿を現し、人類のあらゆる生活の根幹へとなってから、数百年もの月日が流れた。


大多数の人類により、通信、交通、文化、学業、すべての源泉とも言えるようなった【それ】は、全ての人類の生活に欠かせない物になっていた。


既に科学技術は過去の遺物となり、大気汚染、環境汚染を広げた張本人であるこれは、もはや一部の文献にのみ記されているだけだった。


そんなある日、一部の人類が一斉に蜂起した。


彼らは、大多数の人類に【それ】は神聖なものであると言った。


『自由に扱う事も出来ぬ、外部ツールに頼ることでしか自在に扱う事の出来ない者たちに【それ】を扱う資格はない』


『自由に扱う事の出来る我らこそが【それ】に選ばれた選民である』


だからこそ、彼らは【それ】を無下に扱う大多数の人類に敵意を持ったのだった。


もちろん、大多数の人類は反発した。


『【それ】は人類全員の物であり、一部が独占してよい物ではない』


『それでも、お前たちが独占を望むのならば我々は抵抗をしよう』


『我々には技術がある』


『技術を用いて【それ】を支配しよう』


『お前たちが神聖としている【それ】を隷属し【それ】を蹂躙し、征服をしよう』




―――




戦いは熾烈を極めた。


あらゆる人類が【それ】を使用した、全人類を巻き込んだ、大戦争。


その戦争は、一部の人類の有利に進んでいた。


彼らは【それ】に愛されていた。


【それ】に意思があったかのように、両者が敵対した途端に一部の人類に味方した。


局地戦では、大多数の人類を明らかに引き離した。


数人が一つの街を殲滅するほどの、天災が意思を持って襲ってきたかのような、圧倒的な戦果。


しかし、それに対抗するかのように、大多数の人類は【それ】を支配した。


【それ】の意思を無視したかのような、一方的な隷属。


それが為か、元々あった【それ】の特性は変質し、一部の人類とは全く違う【それ】と成った。


局地防衛に特化した大多数の人類の【それ】は、圧倒的な火力こそ持たなかったが、一部の人類の【それ】による攻撃の殆どを減衰させた。


攻撃を加える一部の人類に、防御に徹する大多数の人類。


それを打破するかのように、大多数の人類は過去の技術を掘り起こした。




―――




十数年続いたその戦争は、両陣営を疲弊させた。


もはや、一部の人類は数も少なくなり、限界を迎えようとしていた。


しかし、疲弊しながらも大多数の人類は【それ】を隷属し続けた。


掘り起こした過去の技術を【それ】と融合させ、新しい物を創り出した。


それを掲げながら大多数の人類は、一部の人類に言った。


『これを使えば、お前たちは滅びる』


『我々も只では済むまいが、数の少ないお前たちは確実に滅びるだろう』


『今なら間に合うだろう。投降し、支配下に加われ』


もはやどちらが正義とも悪とも言えなくなったその戦争は、もはやどちらかが滅びるまでは終息することが出来なかった。


『使えばいい。使って我々を滅ぼせばいい』


『だが、我々は滅びない』


『我々は【それ】に愛されている。お前たちのように隷属などせず、支配などせず、征服もしない』


『例え我々が消えようとも【それ】と共にお前たちを殲滅するだろう』


そして人類は…滅びた。




―――




大多数の人類が創り出した【それ】を用いた兵器。


彼らの創り出した技術による【それ】をただ単に圧縮させる技術。


一部の人類との戦闘中にその兵器は使用された。


兵器の直撃を被った一部の人類がそれに耐えられるハズもなく、骨の欠片も残さずに消滅した。


大多数の人類は、自らの創り出した【それ】を隷属させた技術により、ほぼ無傷でいることが出来た。


この結果に、大多数の人類は歓喜した。


これで戦争が終わる。


一部の人類を殲滅し、我々は再び栄えるだろう。


その兵器は次々と生産され、続々と実践に投入された。


試作段階ですら半径3kmを消し炭にしたその兵器は、一部の人類に圧倒的な戦果を齎す。


既に、結果は目に見えていた。


全世界で使用された兵器により、一部の人類は加速度的に数を減らし、もはや虫の息だった。


あと少し、ほんの僅かの攻撃でも、一部の人類は絶滅の危機に瀕していた。


しかし、ある日、突然に。


大多数の人類が一斉に、まるで毒でも浴びたかのように一斉に、死亡した。


大多数の人類は困惑した。


何故?どうして?


彼らには分からなかったが、原因は明白だった。


過去の技術との融合による【それ】の使用は、確実に科学技術の側面も含んでいる。


既に専門とする者など居ないその技術の、記載されない危険性を知る者など居るはずがない。


その兵器は、かつて発電でも使用されていた技術を応用したものだ。


もはや知る者はいないが、それは兵器としても用いられていた技術であった。


【それ】による、大規模範囲の汚染。


元々【それ】の性質は広く認知されていたが、自らの体への影響は詳しく調査されていなかった。


影響がなかったのだから当然だ。


あらゆる性質を持った【それ】は、濃度の変化に伴って生物の構造にも変化を与えた。


過去の技術との融合によって【それ】にそのような性質が与えられたのか。


はたまた【それ】の意思によって引き起こされたのか、誰にも分かるはずがなかった。


しかし確実に【それ】によって、世界は蝕まれていった。


汚染が広がり、徐々に失われていく生命。


元々【それ】の扱いに長けており、生き残っていた一部の人類は更に【それ】の扱いに穎脱していった。


大多数の人類が、高濃度に汚染されたその場所に耐えられるハズが無かった。


しかし、その中でも更に一部の物はそれに適応し、生き延びていく。


【それ】による汚染は、なぜか動物への影響は薄かった。


それを確認した大多数の人類は、過去の技術を使用した。


動物との融合。


【それ】を触媒とした結果、恙なく成功した。


体の一部に動物の因子を残した人類は、しかしそれによる為か【それ】には見放され、代わりに動物に近い体へと変化させた。




―――




そして、世界は新生した。


反転した世界は、なぜ発生したのか。


誰が発生させたのか、今となっては知る者はいない。


変革者も順応者も共に去った。


彼らの墓標に綴られた葛藤と苦闘は、新たな抗争の声に掻き消されていく。


彼らの成した行動は、世界に大きな影響を与えた。


そして、忘れぬ者は、その世界で何を成して行くのか…

ちなみに、中ほどの1行と最後辺りの数行は ACV 公式設定資料集 ―the FACT- より引用させていただきました。


ACVはゲーム中で明かされる情報もそう多くなく、あの人物がどういった意図で活動していたのかが不明瞭なことも多いです。


興味深い情報も中々に多く、読んでいて飽きが来ません。


ACに興味がある方もない方も、ぜひとも購入してみてはいかがでしょうか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「それ」というのは果たして魔力か某粒子か はたまた両方の性質をもった未知なる物質か。 どうして「それ」は現れたのか。 なぜ「それ」を扱える「一部の」人類ができたのか。 謎は深まるばかりですね…
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