マミヤ君と幼馴染
4月10日、今日は市内一斉に高校の入学式がある。空は晴れ花は咲き、これから始まる新生活の門出としては最高の日和だといえるだろう。
俺が思うにこういった日は新しい未来がいっぱいに広がり、友達ができるのかとか新しい環境になじめるのだろうかとか、不安と希望に満ちるものであり、そんな初々しい顔が拝める珍しい日だと思うのだ。思うのだが、
「……………」
チラと横を見ると怒気を隠そうとしない幼馴染が横にいる。今日は晴天なのに、この周りだけは暗雲が立ちこんでいる。
「今日から高校生か~。が、頑張るぞぉ~?」
「……………」
いつもなら何を頑張るの?とか聞いてくるのに、今日はその気配が全く無い。どうすりゃいいんだよ。
俺の幼馴染ことカナタは幼稚園のころからの仲であり、今まで辛苦を供にしてきたこともある。他から見たら腐れ縁とも称されそうだが、今日からは別々の学校に通うことにきまっていてカナタは道内屈指の進学校に、俺は市内ではソコソコ頭のよい部類の高校になる。俺も頭は悪くないほうであるがカナタは別格で、比べてしまうと俺が霞んでしまう。
「マミヤ、どうして陽日にこなかったの?」
マミヤというのは俺のことで、陽日というのはカナタが通う高校のことだ。どうやらカナタは俺が陽日にいかなかったことを怒っているらしい。
「学力が足らないんだよ、純粋にな。それに入っても楽しくなさそう」
高校見学のときに陽日にも行ったが、なんとうかガリ勉の園だった。みんな真剣に授業を聞いていて、その目は血走り熱意の量が半端なかった。案内してくれた先生も、ビシッとしたスーツに黒縁のメガネでいかにもお堅く仕事ができるビジネスマンみたいな人で息ぐるしかったのを覚えている。その点俺の通う高校は緩いのだ、授業中寝ているやつもいれば真剣なやつもいたし案内してくれた先生もジャージだった。それにすこし気になることもあった。
「一緒の学校に通うって約束した」
一息つきながら返答し、内心嘆息した。
「わりぃ、いつの約束だよ」
カナタはどうでもいい約束をずっと覚えている。幼稚園のときにした中学校を卒業したらアメリカに旅行に行くという約束も、いつか大きい雪だるまを作る約束も、タイムカプセルを埋めたことだって忘れなかった。決まって忘れるのは俺のほうで、その度機嫌が悪くなったり泣いたりする。
今回も例に漏れず交わした約束を俺が忘れていたのだろう。念のため言うが俺は約束は守るタチなのだがそこは幼稚園だの大昔だのの約束を引っ張ってこられても忘れているからしょうがないのだ。
俺の返事を聞いたのか聞いてないのか、カナタは恨めしそうな顔を崩すことは無かった。
「私、こっちだから」
一瞥もくれずに別方向へ歩きだすカナタを俺はぼんやりとみていた。ああなっては一筋縄でいかないことはこれまでの経験でわかっていたし、解決方法もわかっていた。
とりあえずカナタのことは帰ってから何とかしようと思い俺も歩き出す。俺がこれから通うのは青雲商業高等学校という商業系でありながら結構進学率も高い。そしてその学校には少し変わった部活がある、名をトンファー部という。高校見学のときにチラとみえたその名前に俺は少し興味を惹かれていたんだ。
幼馴染の次回登場はずっとあとになります。
それにしても意外におおくの文字を打ち込めるのですね、次からはもっとちゃんとした文章を書きたいとおもいます。