第1話 僕
白澤孝治十六歳。彼から物語は始まる。
僕の名前は白澤孝治。都内の高校に通う二年生。学校ではいつも独り。今まで一度もクラスメートと話した事が無い。
僕は昼休み、人が大勢いる中の食事は嫌なので、いつも屋上に行って食べている。
昼食を済ませて帰って来ると、僕の机の上にはいつもゴミが散らかっている。
クラスメートは目で笑う。
仕方無く片付ける。
机の上には落書きだらけ。
下駄箱のサンダルもたまに無くなっている。
そんな毎日の繰り返し。
もう慣れた。
小学生の頃からそうだったから。
今まで友達すら出来た事の無い僕。
でももう諦めてる。
僕に友達は不似合いだって事くらい解ってる。
好きな女の子も出来た事が無い。
どうせ出来ても気持ちを伝えられずに終るから。
それに、僕なんかに好きになられたら迷惑だろうから。
だから僕は恋をしない。
多分一生出来ないだろう。
僕の父は厳格で恐い人だった。
中学の時、授業が嫌で休んだ日も、ベッドから無理矢理引きずりだして学校に連れて行かされた。
でも僕は知っている。
父さんは僕の為じゃ無くて、自分の為に必死で僕を学校に行かせてた事。
教育委員の息子が不登校なんて知れたら、自分の立場は悪くなるし、恥をかくからだ。
母さんは僕に甘かった。
一人っ子のせいかも知れないけど、昔から僕の言う事は何でも聞いてくれた。
小学生の頃は、それを利用して、欲しい物を沢山買って貰った。
母さんは僕が学校を休みたいと言うと、父さんには内緒にして、学校を休ませてくれた。
僕にとって都合の良い母さんだったけれど、やっぱり母さんも父さんと同じだと思った。
俺に嫌われたら家を出なくてはいけなくなる。
僕と母さんは血が繋がっていない。
本当の母さんは僕が三歳の時に肺癌で死んだそうだ。
結局母さんも自分の立場を守りたかっただけなんだ。
二人が死んだのは今から二年前。
父方のお祖父さんを車で連れて、家まで来る途中だった。
居眠り運転の大型トラックと正面衝突。
車は大破し、父と母と祖父が死んだ。
僕は不思議と葬式でも涙を流さなかった。
葬式に、父と母の悪口を言う親戚の叔母さんを目にした。
僕はそれから人間が良く解らなくなった。
父と母が生きている時には散々良い事を良い、褒めていたのを、死んだら直ぐに態度を変えて悪口を言う姿勢。
人間の黒い部分を見てしまった。
父と母の死後、俺は母方のお祖父さんの家に引き取られる事になった。
父方は僕みたいな重荷はいらなかったらしい。
母方のお祖父さんお祖母さんはとても優しい人だった。
僕はこの二人に会っていなかったらきっと気がおかしくなっていたと思う。二人のお陰で僕は優しくなれた。
次回は初めてクラスメートに連れられて夜の街に向かう。そこで待っていた孝治の試練とは…!?




