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不可思議なる夢~一生醒めたくない程の~

作者: 高島啓市監修小林摩也

花蜜が余りに芳ばしく魅力的なる故に蜜を吸いたい衝動にかられる蝶、然しその花びらには甘いワナが。何と強酸を出して普通の蝶や蜂では受精出来なくさせていたのだ。

その花びらから出される酸に対抗出来る唯一の蝶がいる。然しその相性にはまだ気付かずにいる両者であった。両者の距離およそ千五百キロ、気付かない訳である。然し同経同緯度内遠くて近いそんな間柄でもあった。その蝶は飢えている訳では無く不思議と花々に導かれて様々な花蜜を吸える立場にありながらそれ等を邪険視していた。志が高かったのか自らの好みに合う花蜜とは何か常に彷徨しながら考えているような一寸ぜい度な蝶であった。

その蝶がまだいも虫だった頃、枯木の中に閉じ込もって中々外には出られないでいた。然しそれでも時は巡って来る。そう、蝶へと変態する時が。その過程に於いて様々な虫食いに襲われながらも命からがら草木の枝にたどり着きようやくさなぎへと変化をし始めるのである。その間瞬間的に虫にとりての人生が頭をよぎった。自らの出自について一切知らない不幸なその虫は完全にさなぎと成り、蝶への変態の時を待った。そしてさなぎ体から不可思議な色をした蝶が誕生したのである。そのまがまがしき輝きは周囲を驚かせ、あっという間に噂と成り尾ひれのついたその蝶にとりては迷惑千万なる程のものと成るのである。

然しその蝶は唯生存するだけでは満足出来ぬ程の一種野望を秘めていた。どう説明すれば良いのだろう。それはその蝶自身にもよく分かってはいなかった。その蝶にはやがて自傷癖が身に付いてしまう事となる。成虫し蝶と成りし後も不安の種尽きず自らの羽をむしり取るような有り様と成り果てるとは周囲には予測済みの事ではあったがその蝶自身にとりては周囲の目等どうでも良く唯ひたすら自らの安寧を願っていただけやもしれぬ。然し、むしり取りし後からも又再び羽がはえてくるのにはいささか参った蝶であった。然し、既にその蝶には飛翔能力が奪われていようとは蝶自身気付いてはいなかったのである。花蜜には相変わらず様々な蝶、蜂等が立ち寄っては駆逐されと1人気取っていたのだが時は残酷にも過ぎて行く。そう、老いという名の滅びへの道筋が……故にありとあらゆる手段を尽くし自らに合う蝶や蜂はないものかと捜し始めるべく更なる芳香を漂わせるのだがせいぜい周囲数百m程の空間しか満たせないものであった。

故にぴたりと合う花と蝶の出会いの芽は奪われてしまった。蝶には飛翔力が、花には芳香力がそれぞれ弱まりし故致し方無き事のようにも写った。毒には毒でとばかり花は最期の力を振りしぼり一匹の蜂をつかまえたかに見えたが、やはり受精には成功したものの蜂はすべからく命を絶たれてしまったのである。花にしてみれば受精しさえすれば問題無い。そう遠くできらびやかな羽で唱う蝶などどこ吹く風よと許りに。そしてその季節も終わりを告げ花は見事種を付け後世へと脈を継いだのである。蝶のその後はどうなったのか、誰も知る者等居なかった。


本作は自分にとっての2009年度より書き始めた実質処女作となる。続編も書き貯めてあるゆえ本作に対してのみの感想は余計である。本作のupを促してくれた一女に感謝。

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