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お題小説集  作者: 人鳥
2/5

月の裏

お題:タイトル固定『月の裏』


自分が運営しているコミュではありませんが、埋もれていたので。


この物語は、事実とフィクションを織り交ぜたものです。

「月って実は怖いものなんだ。知ってた?」

 突然、クラスメイトの一人がそんなことを言った。

「は? 月は月だろ。それともあれか? 月の魔力的な話か?」

 満月とか。

「違うよ。月にはある生き物が棲んでるんだ」

「はあ? だったらとっくに見つかって話題沸騰だろうよ。それに月は惑星じゃない」

「表面にいるんだよ。でも見えない。だから見つからないんだ」

 自信満々に言っているけれど、これはきっとこいつの妄想だろう。

「宇宙で起こるあれやこれやの出来事。それはその生物の仕業さ。月の満ち欠けもね」

「いやいやいや、宇宙で起こるアレコレは置いておくとしてもだ、月の満ち欠けは関係ないだろ」

「違うよ。その生き物が食べたら月は欠ける。で、新月になったら少しずつ吐き出すんだ」

 無茶だろ……。

「しかもその生き物には角があって、その角からはビームが出るんだよ」

「は?」

 角?

 ビーム?

 ありえねえ。

「信じてないな?」

「当たり前だろ。大体、それが事実だとしてもだ、それを証明する証拠でもあるのかよ」

 聞くと、そいつは大きなため息をついた。まるでぼくを馬鹿にしたようなため息だった。

「証拠証拠って、そんなものがないと信じられない? 大体、証拠があるなら今頃世界中の人がその存在を知ってるはずさ。でも知らない。なら、証拠はないとみるが論理的思考さ」

「論理的思考をする人間が、お前みたいな話をするとは思えないけどな」

「論理的と現実的は違うのさ。君は奇跡は信じないタイプだね」

「ああ。基本的に認めない。ただ、信じてもいいかと思うこともある」

「あっそう。じゃあ、今回も信じてみなよ。そうしないと、その生き物が襲ってくるぜ?」

「ばかばかしい。あるわけないだろ、そんなこと」

 誇大妄想もいいところだ。

「あっそ」

 残念そうにそいつが言って、その日は別れた。


 夜。

 なんとなくあいつが言っていたことを思い出して月を見上げる。今日の月は三日月だった。

「今は食べてる最中かはいている最中か」

 心底どっちでもいい。

 そんな生き物、いるわけがないのだから。

「ばかばかしいにもほどがあるな」

 でも、僕はなにも知らなかった。

 それだけの話だった。

 

 息苦しさを感じて目をあけると、僕のベッドの上に大きなシカがいた。

「……………………」

 シカ。

 シカ。

 シカ?

 なんでこんなところに?

 ていうか、なんでシカ?

 シカは僕に気付くと、その角を僕に向けた。

 僕はというと、怖さで体が竦んでいて声も出ない。

 シカは僕に角を向けたまま微動だにしない。でも、確かな変化はあった。というのも、僕の顔の前から何か熱を感じたのだ。

『その生き物には角があって、その角からはビームが出るんだよ』

 友達の言葉を思い出す。でも、それを言うならその生き物は月の生き物だろ? どうしてこんなところにいるんだよ。

 ああ、でも襲ってくるとか何とか言ってたか。

 っていうか、こいつどういう構造だよ。

 シカはじっと上目づかいに僕を見つめてくる。

「…………信じるよ。こうして出てきたんだから、僕はお前の存在を全面的に信じるよ」

 だから早くどっかに行ってくれ。

 けれど、シカは動かず、じっと僕を見つめている。

 僕としてもこれ以上かける言葉も見つからず黙っていた。やがて、シカが動き出し、ふつうにドアから出て行った。

「……………」

 何だったんだ?

 よくわからない。


 翌日、昨夜あったことをそいつに話をした。

「え? 信じてなかったんじゃないの? どういう吹き回しさ」

「だから襲ってきた」

 自分で言っていてあほらしくなってくる。

「へえ? でもぼくは見えない存在だって言ったのに。どうして見えたんだろうね?」

「知るかよ」

「見えるんだったら今頃発見されてるよね」

 なんだこいつ、昨日信じてもらえなかったから、今度は僕を同じ目にあわせる気か?

「知らんつってんだろ」

「どこに棲んでるのかな?」

「知らねぇつってんだろ。普段見つからずに僕に見えたんなら、あれだ、月の裏側にでも棲んでんじゃねえの?」

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