三十個ある神器の三十番と契約しました
「なあなあフユ、聞いたか? サウージュで石の槍が人を認めたらしい」
そう茶髪の黄色っぽい目でちょっとチャラい俺の親友、ヨニチが興奮気味に銀髪白目の俺、フユに話す。
何やら隣の街、サウージュで石の杖に認められたものが出たらしい。
石の槍とはこの世界に三十個あると言われている、神が誕生させたと言う魂の宿った武器、神器の一つで、その神器に認められ、契約たものは、その能力を使えるようになる。
そして神器は、普通の剣や魔法を圧倒的に凌駕する力を持つ。そのため認められた人が出た場合、国がその人物に多額の資金を注ぎ込み、強化するのだ。
「へえ」
冒険者をしていると言うのに俺はあまり神器に興味がない。
普通冒険者ならば、ヨニチのように神器の話になると皆興奮する。
活発に活動しているほとんどの冒険者が神器目当てと言っても過言では無い。
子供の頃は昔は強く憧れたものだが、今も憧れはあるが、昔ほどではなく、稼げればそれでよかった。
「相変わらず興味が無いんだな」
そっけない態度をとってしまったフユにヨニチはやれやれと俺をジト目で見てくる。
「興味がないわけじゃないが、とにかく俺は稼げればいいの。ほら薬草取りに行くぞ」
俺はヨニチに一番簡単な依頼、薬草取りの仕事の依頼を受ける。
別にここら辺の魔物なら倒せるのだが今日は気分ではなかった。
「明日はゴブリン討伐だからな」
「はいはい、分かったよ」
そうして俺たちは、薬草採取の依頼を受ける。
♢♢
「いいなー俺も神器欲しい!」
ヨニチはいつもこの言葉を三回は言っている。
いい加減この言葉を言うのは辞めてほしい。
「よし、じゃあゴブリン討伐の依頼を受けるか」
そうして、ヨニチは魔物討伐では特に簡単と言われている、ゴブリン討伐の依頼を取ろうとする。
「!?」
その時、横に新しく依頼が貼られる。
バシュッ
俺はその依頼を確認した瞬間一瞬で取り、背中に隠す。
「え、お前何取ってんの?」
ヨニチが俺の行動について言及する。
「なんでも無いなんでも無い! ごめん、やっぱり俺用事できたから今日は無理、じゃあ!」
そう言い俺は走ってカウンターまで行く。
「おい! フユ!」
ヨニチにそう言われるが、無視して、俺は依頼を受け、すぐに準備をする。
ラッキーまさか異変の依頼を受けれるとは。
異変の依頼とは、近くの森の異変を調べると言う、依頼。
この依頼は報酬がゴブリン討伐とは比にならないほど高く、その割には危険度は少ない。
何故こんなに高いかと言うと、もしかしたら、街を揺るがすほどの危険である可能性があるからだ。だがそんなの自分が生きているうちに二度しか聞いたことがない。
だから冒険者はこの依頼が有るとよほど余裕のある物や強い冒険者以外は見た瞬間に取るものである。
なぜ隠したかと言うと、二人で行ってしまうと報酬も半分になるのだ。
すぐに用意をした俺は駆け足で、森に向かった。
「ここか?」
森に向かうと、異変はすぐに分かる、木が何本も根から綺麗に引っこ抜かれて奥に伸びており、道のようになっている。
なんだよこれ、どんなやつが通ったらこんなことになるんだよ。
その異様な光景に、フユは少しビビる、だが、金のためだ、仕方がないと割り切って奥に進む。
ドッドッドッドッ
心音がうるさい、やはり緊張する。もしこれをしたのが魔物ならあった瞬間終了だ。
だが異変の調査で魔物の出る確率はだいたい1割もない、不要な緊張だと言い聞かせる。
「ふぅ、大丈夫っ!?」
そう言い聞かせようとした時遠くに何か生き物が見える。
魔物? まさか!
俺はここを通った魔物かと身構える。
だが
「なんだ、オークかよ」
ビビって損した。
魔物がオークだったことでフユは一安心する。オークレベルの魔物であれば、フユでも難なく倒せるのだ。
その時声が聞こえてオークがこちらに気がつく。
「ブオオオオオオオオ!!」
オークは斧を持ち上げこちらに猛スピードで走ってくる。
「速!?」
俺はなんとかオークを交わす。
おかしい、普通よりオークのスピードが速い。て言ってもリーダーじゃないし。
オークには一帯をまとめるリーダーがいる。それなら普通のオークよりも強くてもおかしくないが、体格が普通のオークなので、その可能性はない。
そしてオークは再度こちらを向き、斬りかかってくる。
その攻撃すら交わすのがギリギリだ。
逃げるか?
俺は逃げようかと考える。普通のオークがこれだけ強いとなると、それだけで異変だ。何より命が危ない。
俺はオークの攻撃を何度か交わし、タイミングを見て、全力で逃げる。
だが、
「いっっ!!!!?」
フユは隙が生まれる体勢になりそうなのを見てから逃げた、だが逃げようと走り出した瞬間に背中に強い衝撃が走る。
「は?」
どんだけ無理やり動かしたらあの状況からこんなに早く近づいて来れるんだよ。
そう思うが頭を切り替え、状況を分析する。
背中から血は流れているだろうが、まだ動けないほどではない。逃げるのは無理だ、戦う? 冗談だろ。
だが助かるためには戦うしかない。フユは剣を持つ。
交わして斬る、それだけを考えろ。
パワーでは勝てるはずがないので、カウンターを狙う。
「ふぅぅぅぅ」
深呼吸をし、集中する。
「ブオオオオ!!」
雄叫びを上げ、再びオークが斬りかかって来る。
「っ!」
それを俺はギリギリで交わし、オークの腕に剣を振る。そして絶望する。
硬すぎるのだ、剣が少しも通らない。
「ぐはっ!!!!」
そして、その間にオークが俺の腹を斬る。
「はあ、はあ」
なんとか後ろに全力で蹴ったが、傷は少し深く、もう立てない、力が入らない。
なんなんだよこのオークなんで俺がこんな事に。
俺は稼げればよかっただけじゃないか、他の冒険者みたく神器目的じゃない、安全な、確実にこなせる依頼だけをやってきたつもりだ。今回だって普通は何もないお得な依頼な筈なのに。
文句がどんどん出て来る。
オークがこちらに近づいて来る。
なんとか助かる方法は無いか? いや、もう無いか。
あのスピード、普通にやっても逃げきれないのに怪我をしてたら確実に逃げられないだろう。もう交わす力もない。フユは助かる方法がないことを悟る。
俺が神器を持ってたら違ったか? こんなのどんなに強い力でもキツいだろ。
たとえ神器を持ったとしてもこんな理不尽な強さ、火の打ちどころのない強さには、勝てる気がしない。
「ブルルルルルル」
俺の目の前にオークが立ち斧を上げる。
俺は死ぬと思い目をつぶる。
すると、
ドオオオオオオン
木が横から飛んできてオークが数十メートルほど吹き飛ばされる。
そして、
「お前、それは神器を舐めすぎじゃないか?」
「は?」
なんで、声が?
知らない少女の声が聞こえる、
俺が周りを見ると、長く綺麗な銀髪を後ろで三つ編みにした小柄な少女が、綺麗に根っこから抜いた木を後ろに浮かせ、立っている。
その記憶を最後に、俺は気を失う。
♢♢
「んん……んん!?」
何、この状況!?
起きた瞬間俺は混乱する。
俺の唇に少女の唇が当たっている。キスをしているようだ。
「んん! んんん!」
何してんの? 離れてくんないし。
俺が離そうと押しても全然動かない。
「ぷはっ……やっと起きたか」
そして、そこから二十秒ほど経つとようやく少女が離れ、話しかけて来る。
やっと離れてくれた……てか俺助った? えっと、確か、この少女が助けてくれて、取り敢えずお礼言わないと。
そして俺は起き上がり、口を開ける。
「えっと、て、あれ?」
おかしい、声が高い、て言うかなんで、こんな服を着ているんだ?
俺は今、何故か白いワンピースを着ている。
フユがこの状況に混乱していると。
「ああ、私が君の姿を女性のものに変えさせてもらったんだ、服もね。大丈夫、元に戻すこともできるから」
俺の混乱を察して、少女が話してくれる。
「は? そんなの出来る魔法なんて聞いたことがないんだけど? どう言うこと?」
だが、いまの説明ではさらに混乱を招くだけだ。
「ああ、すまんすまん、自己紹介からするべきかもね」
さらに混乱した事にも気づいた少女が、そう言い立ち上がる。
「私は三十番目の神器、操りの杖、ハルだ!」
ドヤ顔で少女が言う。
そしてフユはさらに混乱する。
は? 神器? そんなわけ……けど俺の体は変わってるし、神器は人になれるって言うし、まさか本当に? けど操りの杖なんて聞いたことがない……てことはまだ見つかってないやつ!?
神器にはもう見つかっているもの、存在は確認されていないが、どこにあるか分かっているもの、名前は知られているが、存在が確認されていないもの、そもそも名前すら出ていないものがある。
そして見つかっていたり、存在が分かっているものは18個、名前だけ知られているものは5個、名前すら知られていないものは残りの7個だ。
なので操りの杖はまだ見つかっていない事になる。
「な、なんで神器がここに?」
一旦俺は心を落ち着かせて神器の少女ハルに聞く。
「ふふふ、そんなのたまたま来ただけだ。適当に魔物を強化して遊んでたら君に襲いかかってしまったようだ。すまなかった」
じゃあ俺が襲われたのこの人のせいかよ。お礼言わなくてよかったのか。まあ助かったならいいか。神器に会えたし。
俺だって神器への憧れはある。だが俺と契約をしろとは言わない。神器はもう少し戦いが好きな、神器を追い求めるようなやつが持つべきだ。
「あと、お前と契約させてもらったから、これからよろしく」
「……………………!?」
理解できない時間があり、数秒すると理解し、何度目かわからない混乱が訪れる。
は? 契約? 俺が? なんで?
「もっと喜べばいいじゃないか! これで君は皆に喋れば英雄の仲間入りだ」
自信満々にハルが言う。
だが俺は喜びよりも疑問が勝っている。
「なんで俺なんですか? 別に強くもないし、めちゃくちゃ強くなりたいなんて思ってないし」
それが気になって仕方がない、神器は戦いを好むものが多い。戦うために作られたのだから当然だ。
俺は戦いよりも稼げればいいやつなのに、なんで。
「それは君が可愛くなりそうだからだよ。だから私の目は正しかった、こんなにも可愛くなるなんて。試しに見てみるといい」
は? それだけの理由? おかしいだろ。
意味がわからなかった、そんな理由で契約するなんて。
そしてハルは何処からともなく水を操ってきて、地面を同じく操って抉り、水溜りを作る。
そして、一応気になるので見てみる事にする。
「うわ、まじか」
水溜まりに見えたのは銀髪でロングの美少女、フユが女性になったらこうなるみたいな感じだ。
俺は服装も相まって今更少し恥ずかしく感じる。
「いい子がやっと見つかったよ、それに才能も有りそうだし」
「才能?」
俺に才能なんかあるんだろうか。
フユは自分に才能があるなんて思ったことはない。弱くわないが、普通くらいだった。
「そうだ、君の魔力量は元々かなり多いようだ、剣士をしていたから気づかなかったようだが。それに私と契約した事によりその魔力量が10倍に増えている」
「10倍って」
魔力とは魔法を使うために必要な力であり、生まれた時にどれだけ持っているかで魔法使いになれるかが決まる。伸ばすことも出来るが、元から多い人の方がかなり有利だ。
俺は親が剣士だったので剣士にしたが、魔法使いの方が才能があったらしい。
「今、魔力量だけで言ったらSランクレベルだ」
「まじかよ」
Sランクとは冒険者の最上位ランクのことだ。Sランクとなると、みんなに名前が知れ渡り、有名人になる。それほど強いと言うわけだ。
Sランクの魔法使は相当な魔力量を保有している。それと同じ魔力量となれば相当だ。
「私がこれから鍛えてやる、可愛くもしてやる」
可愛くわなりたくないんだが、
だが、神器と契約し、鍛えてもらうことも出来るらしい。
それは俺でも嬉しいし興奮する。
俺だって興味がないわけではないのだ。
しかも誰も知らない神器だと思うと、ロマンも感じる。
「あ、流石に戻してくださいよ」
流石にこのまま家に帰るわけにはいかない。
「分かってる分かってる」
ならいいけど、
「よし、じゃあ杖の姿になるから持ち帰ってくれ」
そうしてハルは光だし、治ると杖の姿に戻る。
「すごい杖だな」
杖は木で出来ていて、長さは一メートルほど、そして先端が異様に木の根が捩れている。
「カッコいいじゃろう!」
自慢げなハルの声が杖から聞こえて来る。
杖の状態でも喋れるのか。
「そうだな、喋れるぞ」
「うわ!?」
突然心をよんだだろうハルにフユは驚く。
考えていること読めんの?
俺がそう聞く。
「そりゃもう契約したんだ、私たちは一進一退、お互い考えることもやろうと思えば分かる」
まじか、
隠し事とか出来ないじゃん。まあいいか、
「じゃあもう今日は帰りますよ」
そして切り上げ帰る準備をする。
「いつ体治してくれるんですか?」
俺が聞くと、
「街が見えたら変えてやる」
ならいいか、
俺は安心する。
「ふふふ」
笑いが漏れてくる。
俺は興奮している、お金も大量に入るし、神器とまで契約できたのだ、普通の人なら、もっと飛んで喜ぶものだろう。
これからはもっと強くなる。冒険をするのも有なのかもしれない。
俺はこれからしたい事を街が見えるまで考えていた。




