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7.衛星ムワ

 クラリス・ルナはソル星系第3惑星テラのジャポニカの宙港を離陸した。

 レオンは、真横に見える衛星ムワを見つめて、

「アルテミス、やっぱり衛星ムワに寄りたい」

「私の母のお墓参りですね」

「オレの恋人の墓参りだ」

 クラリス・ルナは機首を衛星ムワに向けた。

 アルテミスはクラリス・ルナを衛星ムワの都市バーデンから20km離れた連邦軍の工場があった場所に着陸させた。都市からかなり離れているので、着陸の許可は取っていない。おそらく申請しても却下されるだろう。

 連邦軍の工場があった場所は、覆っていたドームが壊れは廃墟になっていた。

 呼吸のための酸素の供給も途絶えている。

 ボディスーツを着て降り立ってみると、マリア・オーランドが眠る公園も花や草木はなく、岩場になっていた。二人で歩いた場所は見る影もない。

 彼女を弔った場所に来ると、レオンとアルテミスは跪いた。

「マリア、あれから5年経ったけど、オレは元気で暮らしています。言われた通り、人助けをしている。まあオレなりの人助けだけど・・・。あなたのおかげでアルテミスに出会えたことに感謝している。これからもアルテミスといっしょに生きていくよ。あなたは安らかに眠ってください」

 レオンがそうつぶやくと立ち上がった。そばにいたアルテミスが腕をからめ、黙って寄り添ってくれた。

 しばらく黙祷をして佇んだあと、敬礼をしてその場を去った。

 

 衛星ムワを離陸したとたんに、アルテミスが警告した。

「前方より、連邦軍の巡洋艦が接近してきます」

 そして、その連邦軍の巡洋艦から通信が入った。

「不審船に告ぐ。帰艦は連邦軍の施設に不法侵入している。すみやかに停船しなさい」

 レオンはこの警告を無視した。連邦軍の施設?廃墟じゃないか。廃墟にしたのは、お前たちだろう。

 アルテミスに跳躍の準備をさせた。クラリス・ルナは停止せずに跳躍ができる。このまま振り切ろうとしたとき、いきなり連邦軍の巡洋艦から20インチのレーザー砲が発射された。

 何をしやがる!アルテミスはクラリス・ルナを反転させた。

「アルテミス、偽装を解け!」

 クラリス・ルナは偽装を解き漆黒のキャプテン・ジョーカーの姿を見せた。

「お前は、キャプテン・ジョーカー!」

 連邦軍の巡洋艦は不審船の正体に気づいた。連邦警察が指名手配をして追っている宙賊だ。

 連邦軍と連邦警察は情報をある程度共有している。宙賊は連邦警察が取り締まることになっているが、キャプテン・ジョーカーにはいつも逃げられている。連邦軍は星間戦争の仲裁が主な任務だから、宙賊を取り締まるのは越権行為だが、こいつを捕まえれば、連邦警察に大きな貸しができる。

「キャプテン・ジョーカー、繰り返す。砲撃されたくなければ停船しろ」

「こちらキャプテン・ジョーカー。いきなり砲撃とは、最近の連邦軍は礼儀を知らないようだな。死にたいのか」

「何だと?」

 生意気な宙賊だ。こちらは最新型の軍艦だぞ。敵うとでも思っているのか?

「本当に連邦軍か?どこの所属だ?」

「銀河連邦軍第三部隊だ!」

 そうか5年前マリア・オーランドを殺した部隊か。オレに牙を剥いた奴は許さない。

 アルテミスは防衛軍のネットワークに侵入して確認した。

「銀河連邦軍第三部隊で間違いありません。司令官はガートランド少将。この巡洋艦は最新型で、強力なシールドと20インチレーザー砲を搭載しています」

「ガートランド?」

「はい。1年前に特殊部隊の隊長から、連邦軍銀河第三部隊の司令官に異動しています」

「そうか。借りを返す必要があるな」


 その最新型の巡洋艦の正面に方向転換させた。

「アルテミス、操舵を渡せ」

 クラリス・ルナが停船しないとみると、最新型の巡洋艦からはさらに2発の20インチのレーザー砲が発射された。威嚇などではない。撃墜を目的とした砲撃だ。

 レオンはレーザー砲をひらりと避けると、巡洋艦に照準を合わせた。まず。25インチのレーザー砲を発射してシールドの一部を破損した。その破損したところに狙いを定めて1発のミサイルを発射した。ミサイルは巡洋艦のシールドの破損個所をすり抜けて、巡洋艦に命中した。

 巡洋艦は大破し、その場に停止した。

「馬鹿な!最新型のシールドだぞ!」

 巡洋艦の乗組員は慌てた。すぐに連邦軍の基地に向かって、救援要請を発信した。

「キャプテン・ジョーカー!銀河連邦軍を敵に回すつもりか!」

「逆だ。連邦軍がオレを敵に回したんだ」

 レオンはそう言うと、巡洋艦に向けて3発のミサイルを発射した。

 そしてまぶしい閃光ととも巡洋艦を消滅させた。


 ソル星系第5惑星ジュピテルの第3衛星ガニメデに連邦軍の基地があった。

 その基地に衛星モワの周回軌道にある偵察衛星からの映像が届いた。衛星モワの警備にあたっていた最新型の巡洋艦が不審船によって消滅させられていた。

 基地は大騒ぎとなった。

「最新型の巡洋艦だぞ。不審船1隻にやられるはずがない!」

「不審船はどこに行った!」

「見つけたぞ!第6惑星サテル付近を巡行速度で航行中」

「戦闘準備!追撃するぞ」

 出撃の指令は発せられた。連邦軍の基地から駆逐艦4隻、巡洋艦3隻に続いて大型戦艦も出撃した。合計8隻からなる艦隊だ。

 ガートランド少将は、衛星モワからの映像を凝視していた。この不審船は5年前に連邦軍の新型艦として極秘に建造されたEX-009とよく似ていた。ガートランド少将はあの時一度しか外観を見ていないが、もしこの不審船がそうなら、乗っているのはNo.6に違いない。あの時、彼の死体は見当たらなかった。そして新型艦も消えていた。

 最近噂に聞く『キャプテン・ジョーカー』がNo.6であるなら、数々の事件も納得がいく。彼は、常人離れした知性と感覚を持っていた。特務工作員の時代はエースと活躍した。しかし、彼はなんの感情も持たない殺人マシーンのように任務を遂行した。どんな任務も完璧にこなした。それが逆に特殊部隊の上層部から危険視されていた。ガートランド少将としては、手塩にかけて育てた部下だったが、その能力の高さは確かに特務部隊にとっても脅威だった。しかし、彼の処分に向かった5名の優秀な兵士は返り討ちにあった。彼は新型艦とともに宇宙に消えた。

 5隻の艦隊の出撃は、仲間を撃破されての怒りの行動ではあるが、たかが不審船1隻の追撃に大げさだった。

 しかし、ガートランド少将は相手がNo.6ならば、決して大げさではないと考えていた。出撃を申請してきた戦闘艦に許可を出した。このくらいの勢力で当たらなければ、No.6を倒すことはできないだろう。さらに仮想敵艦として撃墜の許可も出している。つまり捕らえる必要ななく、艦ごと撃墜してもよいということだ。

 最新型の巡洋艦の仇は自分がという猛者が次々と出撃した。


 第6惑星サテル付近のクラリス・ルナは、偽装をせずキャプテン・ジョーカーの姿でゆっくりと航行していた。

 アルテミスは付近を探知していた。

「約1万km先に連邦軍の艦隊を探知しました。全部で8隻です」

「やっと追いかけてきたか。しかしずいぶんたくさん出てきたな」

「第3衛星ガニメデに駐留する連邦軍の基地の約2割の戦力です。大型戦艦1隻、巡洋艦3隻、駆逐艦4隻です。大型戦艦はこちらの1.5倍はありそうです」

「アルテミス、あの部隊はマリア・オーランドを殺害した奴らだ。手加減は無用だ」

 レーザー砲の射程距離は、通常は約500kmだ。

 レオンは一気に距離を縮め、連邦軍の艦隊の1500kmに近づいた。

 そして、一番前にいた足の速い駆逐艦に向かって照準をあわせ、25インチのレーザー砲を発射した。

 狙われた駆逐艦はシールドを打ち破られ、レーザー砲に貫かれて大破した。

 連邦軍の艦隊は驚愕した。

「距離は1500km以上あるぞ。照準器には映るはずがない」

「巡洋艦クラスなのに25インチ砲が撃てるのか?」

「いや、ふつうの25インチ砲なら、シールドがはじくはずだ」

 続けて、レオンは、さらにもう1隻の駆逐艦を25インチ砲で大破させた。

「どうなっているんだ!」

 連邦軍の艦隊は隊列を崩して散り散りになり、戦闘は各艦の艦長の指揮に委ねられた。まとまっていると狙い撃ちされやすい。

「あと6隻だな」

 レオンは、アルテミスに向かって、

「全艦撃破する。アルテミスやれるよな?」

「もちろんです」

 クラリス・ルナは機首を残りの連邦軍の艦隊に向けた。


「操舵をまわせ。オレが操縦する。アルテミスは駆逐艦2隻のAIをハッキングして、戦闘不能にしてくれ」

「レオン、わかったわ」

 アルテミスはクラリス・ルナの操舵だけでなく、ありとあらゆるものに干渉できるAIだ。宙賊船ではその船のAIのハッキングは成功していた。おそらく連邦軍の軍艦のAIでもできるはず。

 クラリス・ルナの操縦していたレオンは、光速跳躍を使って連邦軍のすぐそばに跳躍した。

 跳躍したのは1500kmだ。

 連邦軍の艦隊は驚きを隠せない。

「なぜこんな近距離を跳躍できるんだ!」

「全艦攻撃体勢に入れ!」

 大型戦艦の指揮官が全艦に命令した。しかし、クラリス・ルナが跳躍したのは、2隻の巡洋艦の間だった。どちらも味方の艦が邪魔になり、レーザー砲が撃てない。外せば味方の艦に当たってしまう。

 レオンは25インチ砲で、両脇の巡洋艦のシールドに穴を開けた。その開いた穴めがけて、ミサイルを3発ずつ発射した。2隻の巡洋艦はどちらも轟音を立てて大破した。戦闘不能だ。

「あと4隻」


 そこに残り1隻の巡洋艦があらわれて、至近距離でクラリス・ルナめがけて20インチのレーザー砲を発射した。

 しかし、クラリス・ルナはひらりとかわした。

 レオンは方向転換すると、巡洋艦は無視して戦艦に向かった。

「この野郎、逃げるな」

 巡洋艦がクラリス・ルナを追おうとすると、そこへ2隻の駆逐艦が現れ、巡洋艦に向かって砲撃を開始した。

「何をする!味方の艦だぞ」

「それが、搭載されているAIが言うことを聞かないのです。避けてください!」

「馬鹿な!」

 巡洋艦は2隻の駆逐艦のレーザー砲を受けて大破した。さらに2隻の駆逐艦はお互いに撃ちあいを行い、どちらも大破した。

「あとは戦艦だけだな」

 レオンはクラリス・ルナを1隻の戦艦の正面に配置した。距離は2kmもない。

「ここで、クラルス・ルナの最高の性能をみせてやる」

 戦艦は正面のクラリス・ルナに向かって25インチのレーザー砲を3発発射した。しかし、レオンは避けなかった。クラルス・ルナのシールドは頑強で、すべてのレーザ砲を正面から受けたが、すべてはじき返した。

「そんな馬鹿な!25インチのレーザー砲をしかもこんな近距離で受けて、破れないシールドがあるなんて!」

「連邦軍の装備では歯が立たないというのか!」

「おあいにくさま」

 レオンは戦艦に向かって収束率をあげた25インチのレーザー砲を発射した。眩い光線が戦艦のシールドを破り、推進機関を貫いた。戦艦はその場で停止した。


 レオンは、クラルス・ルナを戦艦の艦橋のすぐそばまで近づけた。この距離では戦艦はレーザー砲を撃つことはできない。戦艦の艦橋の艦長以下乗務員たちの顔はひきつっていた。レオンは、アルテミスに戦艦の艦橋のモニターにつないでもらった。モニターには、髑髏の仮面をつけたキャプテン・ジョーカーが大きく映し出された。

「今後、死にたくなければキャプテン・ジョーカーには一切関わるな。なお、貴艦にはこれ以上攻撃はしない。その代わり大破した船から生き残った奴を救出してやれ」

 映像はそこでプツリと終わった。

 クラルス・ルナは戦艦から離れると、巡行速度を保ったまま光速跳躍を行い、そして消えた。

「俺たちは悪夢を見ていたのだろうか」

 連邦軍銀河第三部隊から出撃した艦隊は壊滅的な損害を被った。8隻の軍艦がすべて大破した。大型戦艦は回収艇を出して、大破した艦から生き残った兵士を回収してまわった。

「こちらガニメデ基地。戦況はどうだ?」

 大型戦艦の艦長は呆然としたまま、

「こちらは全滅。不審艦は戦線を離脱。追跡不能」

 とだけ連絡をいれた


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