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1.宇宙義賊

 銀河連邦暦795年。宇宙全体の人類の人口は5000億人に到達していた。

 陽子エンジンの発明により、星間をまたぐ光速跳躍航行が可能となっていた。

 人類の多くは惑星テラから、銀河星雲内の他の生存可能な惑星に移住していた。

 惑星間には航路が設置され、数多くの宇宙船が行き来をしていた。

 その貿易船や客船を襲って、金品を奪う輩は『宙賊』と呼ばれていた。


 ライア星系第3惑星リメダル付近から緊急救難信号が発信された。

「こちら観光客船ヒルデガルド。いま宙賊の襲撃に合い防戦中。付近の連邦警察に救援を乞う。繰り返す、いま宙賊の襲撃に合い防戦中」

 ライア星系はリゾート星が多く点在し、富裕層がバカンスのために訪れる宙域となっている。そのため、連邦警察もライア星系には、それなりに配置されていて、比較的に安全な宙域になっていた。

「こちらライア星系連邦警察。至急救助に向かう。そちらの現在位置の座標を送信願いたい」

「こちらヒルデガルト、いま座標を送った。よろしく頼む」 

「連邦警察は40分程度で到着予定。それまで持ちこたえてくれ」

「なるべく早く・・・・」

 そこで通信が途絶えた。

 ライア星系連邦警察の副司令官であるエドガーは、

「この宙域で宙賊だと?なめた真似しやがって」 

 すぐさま、高速巡洋艦と駆逐艦の2隻の編成で、第3惑星リメダルへ向かった。


 観光客船ヒルデガルドには、約200名の観光客が乗船していた。

 宙賊からの襲撃を受けると、艦長は、

「皆様ご安心ください。このような事態に備えて、この船には最新式の防御シールドと艦載機が2機搭載されています」

 とアナウンスを行った。

 ヒルデガルドは、すぐさま防御シールドを張った。

 宙賊といえば、普通5万トンクラスの巡洋艦級中型船1隻が母船となり、搭載した戦闘機で獲物の船を襲い、金品を奪って、逃走するのが相場である。

 しかし、現れた宙賊船は10万トンクラスの戦艦級大型船だった。ヒルデガルドよりも一回り大きい。続いて、2万トンクラスの駆逐艦級が3隻現れ、合計4隻からなる大部隊の宙賊だった。

 宙賊は「シスコファミリー」と名乗り、観光客船ヒルデガルドに停船を命じた。

 ヒルデガルドが防御シールドを張ったまま逃げようとすると、いきなり戦艦級の大型の宙賊船から25インチのレーザー砲が発射された。

 ヒルデガルドはかろうじて防御シールドで防御したが、大きく揺れビリビリと爆音が響いた。

 続けざまに、25インチのレーザー砲が発射され、ヒルデガルドの防御シールドの一部が破壊された。もう一発レーザー砲を浴びると、ヒルデガルドは大破する可能性がある。

 宙賊を迎撃するために、艦載機2機が後部カタパルトから発進した。

 ところが、宙賊船からは戦闘機約20機が応戦してきた。20対2では相手にならない。ヒルデガルドの艦載機は2機ともあっと言う間に撃墜された。


 ヒルデガルドは宙賊の指示に従うしかなく停船した。

 戦艦級の大型の宙賊船はヒルデガルドに横付けしてブリッジを接続した。そこから、ビーム銃を構えた宙賊が20名ほどヒルデガルドに乗り込んできた。

「客をホールへ集めろ」

 と、宙賊の頭領らしい髭面のいかつい顔をした男が指示した。艦長は宙賊の指示通りに乗船客をホールに集めた。

「お客さまに乱暴はしないでください」

 乗船客も皆ホールに集められると、これからどうなるか恐怖と不安に駆られた。

 宙賊たちは、大きな袋を手にして、

「おとなしく言うことを聞けば、命まで取りはしない。この袋の中に金や貴重品を入れるんだ」

 そのとき、乗務員の一人が宙賊に向かって、ビーム銃を発射した。たちまち宙賊たちは、その乗務員に向かって、ビーム銃を乱射した。乗客たちの悲鳴が聞こえた。乗務員はバッタリと倒れた。

 恐怖に慄いた乗船客たちはそれぞれ財布に指輪や時計、ネックレスなどを袋に投げ込んだ。

 宙賊の頭領はにんまりした。さすが高級観光船に乗る乗客だ。投げ込まれたのは高価に品ばかりだ。これでしばらく遊んで暮らせる。


 そのとき、窓の外をまばゆい光線がきらめいた。

「何が起きた?」

 宙賊の頭領が船外を見ると、仲間の駆逐艦級の1隻が砲撃を受け、大破していた。

「連邦警察か?それにしては早すぎる・・・」

 先ほどのヒルデガルドと連邦警察との通信は傍受していたので、あと30分はかかるはずだった。

「頭領、あれを!」

 部下の宙賊が指さしたほうに、漆黒の船が1隻現れた。それほど大きくはない。

 せいぜい5万トンの巡洋艦クラスの船だ。船首に大鎌を持った骸骨の不気味なマークがあった。

 頭領はそれを見ると顔色を変え、大声で部下に叫んだ。

「全員、艦に戻れ!急いで離脱しろ!」

「頭領、あれはどこの船です?」

「知らないのか!あれはキャプテン・ジョーカー、死神だ」

 宙賊たちは奪った品物の袋を抱えて、急いで宙賊船に戻った。頭領が乗る戦艦級の大型船がヒルデガルドから離れて移動を始めると、駆逐艦級の宙賊船がさらに1隻大破させられ、残りの1隻もすでに逃走していた。


「緊急発進しろ、あいつに狙われて生き残った宙賊はいない。早く逃げるんだ」

 逃走した駆逐艦は、すでにこの場から遠くに離脱して逃げようとしていたが、キャプテン・ジョーカーは執拗に追撃していた。そしてその駆逐艦もキャプテン・ジョーカーの砲撃を受け大破した。

「光速跳躍の準備はまだか?」

「あと1分で跳躍可能になります」

 キャプテン・ジョーカーの船が、駆逐艦の宙賊船が大破した場所からまっすぐこちらに向かって来ている。

 この距離なら追いつかれる前に跳躍できる。光速跳躍は何光年か先へ移動できる。跳躍さえしてしまえば、どこへ跳躍したかはわからない。宙賊の頭領は安堵のため息を漏らした。

 ところが、気が付くと船の真横にキャプテン・ジョーカーがいた。

 宙賊の頭領は悲鳴を上げた。どこから現れやがった!

 キャプテン・ジョーカーから直接宙賊船のモニターに通告が入った。

「こちらキャプテン・ジョーカー。残念だったな。奪った金品を船外に放り出せ」

 宙賊が奪った袋を小型艇に詰めて船外に放り出すと、キャプテン・ジョーカーは宙賊船に砲撃を浴びせた。

 その後、戦艦級の宙賊船は、推進機関にまともに砲撃を受け、まぶしい閃光を上げて大破した。


 観光客船ヒルデガルドに、キャプテン・ジョーカーから通信が入った。

「宙賊はキャプテン・ジョーカーが全滅させた。謝礼として、金品の一部をいただく」

 キャプテン・ジョーカー、一部の金品を奪い金品の残りをヒルデガルドに返却した。

 ヒルデガルドの船長は、

「今回の救援に心から感謝する」

 と、返信した。それしか言いようがない。

 再度、キャプテン・ジョーカーから

「貴船の今後の航海の無事を祈る」

 と返信があった。そして、忽然と姿を消した。


 ライア星系連邦警察のエドガー副司令官が現場に到着すると、そこには観光客船ヒルデガルドと大破した宙賊船が4隻漂っていた。

「何が起こったんだ?」

 エドガー副司令官が観光客船ヒルデガルドに乗り込むと、ちょうど殺された乗務員の宇宙葬を行っているところだった。

 宇宙葬が終わると、エドガー副司令官は艦長と会談をした

「状況を教えていただけませんか?」

「キャプテン・ジョーカーですよ」

「あいつが?」

「彼が宙賊を全滅させ、私たちを助けてくれました。残念ながらパイロット2名と乗務員が1名宙賊に射殺されてしまいましたが、お客様には死傷者はありません」

 そういうと船長は、一部始終をエドガー副司令官に説明した。

「キャプテン・ジョーカーに謝礼を支払ったのですか?」

「ええ、もし彼が現れなければ、この船は宇宙の藻屑となりそうでしたから」

「違法な謝礼ですよね?」

「そうかもしれませんが、彼のおかけで我々は助かりましたよ。今回は保険も効きますし、実質的な損害はないと思います」

 暗に連邦警察が遅いと、皮肉交じりに言っているようにも聞こえたが仕方ない。

 エドガー副司令官もキャプテン・ジョーカーの噂は聞いていた。

 宇宙義賊と呼ばれ、宙賊を退治し、奪われた金品の一部を謝礼としてかすめ取っていく奴だ。

 傭兵を雇っていたとしてもどのみち出費となる。そのためキャプテン・ジョーカーに謝礼を支払っても被害者から訴えられることはない。さらに、傭兵よりも鮮やかに宙賊を退治していく。

 連邦警察にとっては、謝礼という名目でも金品を強奪したことに変わりはないのだから、結局宙賊と同じように取り締まる対象となる。

 とはいっても連邦警察が到着する40分の間に、4隻の宙賊船を沈め、金品を奪い返し、さっさと姿を消すとは、鮮やかな手口としかいいようがない。これじゃあ捕まえるのは並大抵ではない。

 エドガー副司令官は大破した宙賊船に生き残っていた宙賊を捕縛した。


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