第三話 記憶の行く末
エンリル「で、ここからが本題。君の記憶の話。」
シヴァ「このコーダーを埋めるにはそれぞれ代償が必要だった。」
エンリル「そうそう。シヴァさんだったら、右腕とか、俺だったら、友人とかね。まあ俺の場合はもとから失ってたんだ。だから実質、俺はあの時はなにも失ってないんだけどね。」
天城「じゃあ俺が選んだ代償って、、、」
シヴァ「ああ。記憶だ。」
天城「やっぱり...」
天城「代償か...」
シヴァ「コーダーは“人間という生物を一時的でも超えてしまうような力だ。対価なしでは成立しない。」
基地内全体で赤い警告灯が点滅した。
エンリル「シヴァさん天城君を安全なところへ!これくらいなら、俺とメルクリウスでやれる!」
シヴァ「ああ。天城!行くぞ!」
天城は走りながら、ふと疑問が胸をよぎった。
天城「メルクリウスさんって…?」
シヴァ「エンリルの相棒だ。
ただし――普通の人間じゃない」
天城「普通じゃない……?」
シヴァ「コーダーの“初期型”を埋め込まれた実験体だ。
成功例は……彼だけだった」
天城「……!」
その瞬間、背後で金属音が響いた。
メルクリウス「エンリル、右から来るぞ!」
エンリル「分かってる!」
振り返ると、フードやコートで身を包む青年――メルクリウスがメックへむけて照準をすでに合わせていた。
腕から湧くように出る粒子を集め、関節部を切り裂いた。
天城「……速い……!」
シヴァ「彼は“人間の限界を超えた人間”だ。
代償を払って力を得た俺たちとは違う。
彼は――生まれた時から代償を背負っている」
天城「生まれた時から……?」
シヴァ「そうだ。だからエンリルは、彼を“相棒”と呼ぶ。
同じ痛みを知っているからだ」
天城は胸が締めつけられるような感覚に襲われた。
自分は記憶を代償にした。
エンリルは友人を失った。
シヴァは右腕を捧げた。
そしてメルクリウスは――
生まれた瞬間から、選ぶことすら許されずに代償を背負った。
天城「……俺だけが、何も知らないんだな」
シヴァ「だからこそ、思い出す必要がある。
君が何を選び、何を捨てたのかを」
その時、メルクリウスの声が響いた。
メルクリウス「シヴァ!天城を急げ!
こいつら、天城の位置を“固定”して追ってきてる!」
エンリル「天城君、聞こえる?
君のコーダーが“起きかけてる”んだよ。
だから敵が寄ってくる」
天城「俺の……せいで……?」
エンリル「違う。
“君の力が必要だから”敵が焦ってるんだ」
メルクリウス「エンリル、来るぞ!」
エンリル「おうよ!」
二人が並んで構えた瞬間、天城の腕の紋様が強く脈打った。
天城「……っ!」
シヴァ「天城、急ぐぞ!」




