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第9話:カレーとUNOと

お待たせしました

挿絵が入っておりますが、いつもの水彩画風とは違いイラスト風になっています

キャライメージが崩れる!という意見ありましたら別場所に載せなおしますので教えていただけた幸いです

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 第9話:カレーとUNOと

 ━━━━━━━━━━━━━━━



「じゃ、まずは腹ごしらえだな!」


「ピッピィ!」



 俺は、戦の為に皆の腹を満たすため、食材をインベントリから取り出した

 一番うれしそうなピー助を見て、俺はインベントリの中からピー助が一番喜びそうなご飯は何か物色していく


 アピサルが地面に体を横たえながら、俺の様子を優しい目で見つめてくるのを感じる。

 深淵の支配者であったアピサル。しかし、そんな彼女も今は戦や征服より、こういった日常こそを尊いものと感じてくれているのがわかる



(何でもないことだけど...だからこそ、うれしいな)



 聖騎士団との戦いは、想像以上に俺たちを消耗させていた。

 正直半日くらい横になっていたいところだけど、次の戦いを考えたら、少しでも絆ptを稼いでおくべきだった。


 戦いの為の準備とはいえ、絆ptを稼ぐというのは、皆と楽しい時間を共有し、思い出を作るという幸せな時間


 俺は、皆と過ごすこの何でもない時間で、精神的な疲労が癒えていくのを感じる



(これまでじゃ考えられなかったことだな)



 敗戦後直後に、とても幸せを感じる。



「さて、今日は豪華に行くぞ」



 俺はガチャで引いた食材を次々と取り出していく。

 魚沼産のブランド米。和牛バラ肉。高級野菜セット、香辛料そして...



「主様、今日は何を?」



 マリエルが興味深そうに覗き込む。

 俺はそんなマリエルに満面の笑みでアイテムを見せつける



「カレーだ!」


「カレー……ですか?」


「ああ。俺の前世にあった国民食だ!」


「ピピィ!?」



 カレーと聞いてピー助が大興奮している

 以前食べたカレー味のカップ麺を思い出したらしい

 レトルトカレーの袋ごと食べるのではと思えるほど、熱い視線を送りながら、その小さな体を目一杯使って、嬉しさを全身で表現している。



「ピー助、落ち着け。まだできてないぞ」


「ピピー……」



 しょんぼりと羽を畳むピー助が可愛い。

 その小さな姿に、思わず頬が緩む。



(本当に...お前は俺の癒しだよ)


「主様」



 マリエルが真剣な表情で言った。



「このように開けた場所で香辛料を多用すると、魔物を引き寄せる可能性があるかと」


「あ……」



 確かにその通りだ。

 戦闘後の気の緩みからか、そこまで頭が回っていなかった。

 俺は自分の浅はかさに、内心で舌打ちをする。



(まだまだ甘いな、俺は)


「ピッ!?」



 ピー助が絶望した顔でこちらを見ている



「よろしければ私が結界をはり、ご飯の後に浄化をかけますが...」


「いいのか?」


「はい、その程度であれば戦闘に支障が出る事もないと思います」


「わかった、ありがとう、マリエル」


「ピッピィ♪」



 マリエルは本当に頼りになる。

 居たらないところばかりの俺を嫌な顔一つせずに支え続けてくれる

 それが、どれほど有難いことか。


 俺はポータブル電源を取り出し、炊飯器を繋ぐ

 起動電力が足りるか不安だったが、問題なく使えてホッとした


 いつも通りの焚火をしては、敵が来た場合のリスクが大きい

 焚火の量や、熱の残り方等で、策定範囲が絞れてしまうからだ



「ねぇ」



 米を研ぎ終わり、炊飯スイッチを入れた所で

 アピサルが巨大な顔を近づけてきた。

 全長30mを超す深淵女王が、どこか子供っぽい表情で俺を見つめている。

 その巨大な瞳には、期待と、少しの不安が混じっていた。



「わらわとの絆共鳴も解放されたのよね?」


「あぁ、そうだ。ピー助との絆共鳴のおかげで、アピサルと初共闘ボーナスが入ったからね」


「次の戦いで使えるのかしら?わらわの力がそなたの役に立つのならとてもうれしいのだけど」


「あー……それなんだけど」



 俺は絆共鳴のコストを話す。

 アピサルとの共鳴は70pt。


 現在の絆ptは31。

 全然足りない。



「まだptが足りないんだ。正直わからないな」


「…わらわは、また役に立てないのね...」



 アピサルの表情が、ほんの少し曇った。

 その巨大な瞳に、深い寂しさが滲む。

 悪魔の姿であることを忘れそうになる程純粋な悲しみ。


 胸が締め付けられる。



「でも、すごく強いアピサルの力を借りるっていう切り札を手に入れたのはすごく心強いんだ。大事な場面では必ず使うから。アピサルの力を使って、アピサルと一緒に戦いたい...だから、たくさん絆ptを稼ごう」


「…そうね」



 アピサルは小さく頷いたが、その表情はまだどこか寂しそうだった。

 アピサルはその体躯と実力の差から、マリエル達と違って一緒に出来ない事が多い

 その事実は俺の想像以上にアピサルの心を締め付けているのだろう


 俺は料理の手を止める



「アピサル、もうちょっと顔をこっちによせて」


「?」



 初めてのオーダーに戸惑うアピサルだが、俺の目の前に顔を持ってきてくれた

 俺は、アピサルの綺麗な鼻筋を両手で包み込む



「いつもありがとう、アピサル...俺は、アピサルが大好きだからな」


「!?!?」



 ビクッ、と震えたアピサルだが、俺が包み込んだ鼻の位置を動かさないようにか、代わりに息を止め、大きな瞳をさらに大きく見開く



「な、何を!?」


「どうしても、言っておきたかったんだ」



 俺はアピサルの瞳をまっすぐ見上げる



「マリエルも、ピー助ももちろんだけど、俺がピンチになったときに、自分の傷なんてお構いなしに助けに来てくれて、ありがとう、アピサル...」


「ふふふ、そなたといると、感情の整理が追い付かなくて、大変だわ」



挿絵(By みてみん)



 アピサルの微笑みには、先ほどまであった悲壮感はどこにもなかった


 ━━━━━━━━━━━━━━━

【アピサル】との絆が深まりました

 絆pt +3

 ━━━━━━━━━━━━━━━





 和牛は一口大にカット。脂の乗った霜降り肉が、包丁の下で美しく切り分けられていく。

 高級野菜セットに入ってた立派な野菜から、玉ねぎ、人参、じゃがいもを取り出し、丁寧に切り分けていく。



「主様、お手伝いします」


「助かる。玉ねぎをみじん切りにしてくれるか?」


「はい!」



 クッカーセットによって、調理器具が増え、二人で同時に料理が出来るのがうれしい

 マリエルが渡した包丁を器用に扱う。

 その手つきは、まるで何年も料理をしてきたかのように滑らかだ。



「マリエル、料理上手いな」


「天界にいた頃、よく料理をしていましたので」


「へぇ...天界でも料理するんだ」


「ええ。神々に捧げる供物を作るのも、私たち天使の役目でしたから」



 マリエルが少し懐かしそうに微笑む。

 その表情に、ほんの少しだけ寂しさが混じっているように見えた。



(マリエルにも色々あったんだろうな...)



 炊飯器から炊きあがったご飯を取り出し、そこに刻んだ野菜とレトルトカレーを入れる

 火を使わないで調理するために、炊飯器で煮込む作戦だ


 本当に炊飯器は優秀である



 玉ねぎを飴色になるまでじっくりと炒めたいところだが、立派な玉ねぎだから、炊飯器でも十分甘みが出てくれるだろう

 上質すぎて少しもったいなくも感じるが、和牛も投入。


 中に入った具材だけで、美味しさが確信出来るラインナップだ


 ローズマリー、タイム、オレガノ、サフラン、ナツメグを多めに加え、最後に薄力粉を取り出す



「そちらは?」


「…流石に二袋じゃ足りないからな、かさましだ」



 茶色いカレーなのに、取り出した白い粉を疑問を想うマリエル。

 本来なら昔カレーといわれる、昔懐かしい味を再現しようとしない限り入れないのだが、元気を出すためには一口分でも多く作りたい


 アピサルの食事量を考えると、どう考えても足りないのだが



(いつか絶対アピサルにも腹いっぱいたべさせるんだ)


「主様、どうかされましたか?」


「いや、なんでもないよ」


「......」


 マリエルが少し首を傾げるが、それ以上は聞いてこなかった。



「主様」


「どうした?」


「マリエルは今、とても幸せでございます」


「どうしたの突然」


「どうしても、言っておきたかったんです...だって――」



 それは先ほど俺がアピサルに言った言葉

 なぜかすごくドキッとした



「――その...えっと」



 何時もはきはき喋る彼女らしくなく言葉に詰まるマリエル



「っその!深夜の戦闘で、主様を失うのではという恐怖に駆られました。アピサル様もそうだとは思うのですが、私も、とても...怖かったんです。こんなにも親身に、身近にいてくださる主様という存在は、私の中でどうしようもないくらい大きな存在になっていたんだと実感しました...」



 マリエルが真剣な表情でこちらに目を向ける




「私も......」



 マリエルは、目を少しうるませたあと、目をつぶり、顔を伏せる



「マリエル?」



 そして、頬を赤らめながら顔を上げ



「私も、主様をお慕いしておりますので」



 そういいながら微笑んだマリエルは、天使以前に、かわいい一人の女の子だった。



挿絵(By みてみん)



「...だから、どうしても言っておきたかったんです」



 マリエルは顔を真っ赤に死ながら、再び野菜を切り出す

 そしてチラリと、少し離れた場所から、こちらをほほえましそうに見つめるアピサルを見る



「あの、別に主様とどうこうなりたいとか、そんな不敬なことを考えているわけではないのです、ただ、このあふれんばかりの気持ちをお伝えしたいだけでして、あの、その、私はお傍に居られるだけで、この上なく幸せですので」


「...ありがとう、マリエル。俺にとってもマリエルはかけがえのない存在だよ。こんな情けない俺をいつも支えてくれてありがとう」


「――はい!これからも全力でお支えいたします」



 それからマリエルと幸せな気持ちでご飯を作り続けた



 ━━━━━━━━━━━━━━━

【マリエル】

 との絆が深まりました

 絆pt +3

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 煮込むこと30分。

 炊飯器から湯気が上がる。

 カレーの芳醇な香りが、辺り一面に広がった。

 和牛の旨味が溶け込んだ、深いコク。

 複数の香辛料が織りなす、複雑な香り。



「ピピピピピピーッッ!!!」



 ピー助が完全に理性を失っている。

 小さな体を目一杯使って、跳ね回る姿が微笑ましい。



「落ち着けって。もうすぐだから」



 俺はアルミホイルで作った即席器にご飯を盛り、カレーをかける。

 湯気が立ち上り、食欲をそそる香りが鼻腔をくすぐる。



「できたぞ!さぁ食べよう!」


「「「いただきます!(ピー)」」」



 全員で手を合わせ、カレーを口に運ぶ。



「……っ!!」



 口の中に広がる、深いコクと複雑な香辛料の調和。

 和牛の旨味が溶け込んだルーが、米と絡み合う。

 薄力粉で作った昔ながらのとろみが、どこか懐かしい。

 サフランの香りが鼻を抜け、ナツメグの甘さが後を追う。

 ローズマリーとタイムが、肉の旨味を引き立てている。



「うまい……!」



 思わず声が出た。



「ピピーッ!ピピピーッ!」



 ピー助が感動のあまり、翼をばたつかせる。

 小さな体を震わせながら、必死にカレーを食べている。

 その姿が、あまりにも可愛らしくて、俺は思わず笑ってしまった。



「主様と作った料理...とても美味しい……です……」



 マリエルが幸せそうに目を細める。

 その表情は、まるで天界の祝福を受けたかのように穏やかだった。



「……これは...いつか口いっぱいに頬張ってみたいわね」



 アピサルも、小さく呟いた。

 巨大な体に似合わず、丁寧にカレーを味わっている。

 その仕草は、どこか上品で、女王らしさを感じさせた。

 この瞬間。

 戦闘も、追放も、討伐軍も、全て忘れられる。

 ただ、仲間と美味いものを食べる。

 それだけで、十分幸せだった。



「主様」



 マリエルが、ふと俺を見つめる。



「どうした?」


「こうやって...皆で食事をするのって、とても幸せですね」


「...そうだな」



 俺は、皆を見渡す。

 アピサル、マリエル、ピー助。

 皆が、幸せそうに食事をしている。



「これが...俺が守りたいものだ」



 ━━━━━━━━━━━━━━━

【アピサル】【マリエル】【ピー助】

 との絆が深まりました

 絆pt +9

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 食後、マリエルが浄化の魔法で匂いを消してくれた。

 聖光が周囲を包み、カレーの香りが跡形もなく消えていく。



「これで、魔物に気づかれる心配はありませんね」


「ありがとう、マリエル」


「いえ。これくらいは当然です」



 マリエルが微笑む。



(今の絆ptは43か...絆石を稼ぐ以外に絆共鳴で使用する用途も増えた...沢山稼げる方法があればいいんだけど...そうだ)



 俺はアイテムボックスから、あるものを取り出す。



「UNO、やろうか?」


「ウノ......?わらわは知らないわね」



 アピサルが首を傾げる。



「カードゲームだ。簡単で面白いぞ」



 俺はルールを説明する。

 数字か色を合わせてカードを出していくこと。

 特殊カードの効果。

 最後の1枚になったら「UNO」と宣言すること。



「ふふ...女王たるわらわがカード遊戯をする日が来るなんてね」


「俺と遊んでくれますか?女王様?」


「ふふ……いいわ、わらわを楽しませてごらんなさい」



 アピサルが腕を組み、下唇に指を当てながら、悪戯っぽく微笑む

 そのあまりの妖艶さに俺の心拍数が一気に上昇する



「主様!誘惑スキルにかかっていませんか!?今浄化を――」



 マリエルが焦った様子で、俺を抱きかかえ、魔法を発動させようとする

 その声に我に返った俺は、慌てて弁解する



「だ、大丈夫だよマリエル、ありがとう」


「本当ですか?」



 一度食らった魅了魔法の凶悪さは身に染みてわかっている

 今のは単純に俺がドキドキしただけだ



「あぁ、ほんとうだ」


「ですが...」


「うふふ、本気のわらわの魅力はこんなものではないわよ」


「...っく、定期的にアピサル様を悪魔として滅したい気持ちに駆られます!」


「うふふ」



 マリエルとアピサルは基本仲が良いというか、お互いを認め合ってる気がするけど、たまにこうやって争うのを見ると、やっぱり天使と悪魔なんだなってじっかんする



「ピィ~」



 ピー助は初日に巻き込まれた喧嘩を思い出したのか、俺の足に隠れ振るえている。



「アピサル、マリエル、もうその辺にして遊ぼう」



 俺はこれ以上じゃれ合いが激化しないように平静を装い、カードを配りだした

 だが、カードに問題が発生した。



「……わらわには、小さすぎるわね」



 アピサルの巨大な爪では、カードを掴めない。

 カードを掴もうとするたびに、爪がカードをすり抜けてしまう。



「あ……」



 その表情が、見る見る曇っていく。



「……わらわは、参加できそうにないわね」



 声が小さくなる。

 誰よりも大きな深淵女王が、まるで疎外感を感じた子供のように、寂しそうに俯く。


 その巨体が、急に小さく見えた。

 放っておけるわけがない。



「なら、俺とチームになろう」


「…そなた、と?」



 アピサルが顔を上げる。

 その瞳に、ほんの少しだけ希望の光が宿った。



「ああ。俺たちで協力してプレイする。それなら問題ないだろ?」


「……本当にいいのかしら?」


「当たり前だろ。皆で一緒にやりたいんだ」



 アピサルの瞳が、ぱっと輝いた。



「…ふふ、ありがとう」



 嬉しそうに尻尾を揺らすアピサルが、とても可愛らしい。

 俺はアピサルが地面に押し付けるようにしてくれた胸に寄りかかる。

 柔らかくて、温かい。

 ほのかに甘い香りがする。



(…これ、めっちゃ気持ちいいな...堕落してしまいそうだ)


「アピサル様、ずるいです……」



 マリエルが少し頬を膨らませる。

 その表情も、また可愛らしい。



「じゃあ、始めるぞ」



 ゲームは開始された。



「ピピー!」



 ピー助が黄色の7を出す。



「では、黄色の3です」



 マリエルがカードを置く。



「俺たちはどうする?」



 手札を確認し、上を見る

 黄色の5、赤のリバース、青のスキップ、緑の3。



「どれを出すか、アピサル、意見くれ」


「……そうね」



 アピサルが尻尾の先端を器用に使い、黄色の5を指差す。



「これを早く使うべきでしょうね」


「わかった。じゃあ黄色の5だな!」



 カードを置く。



「ピピ!」



 ピー助が赤の5を出す。



「んん~~パスです!」



 マリエルが悔しそうに山札から1枚引く



「あ!出せました!!」



 そして出したカードが



「げ!?ドロー2か!?」


「天使には罰が必要でしょうね...」



 俺たちはカードを引く

 手元に来たのはドロー4と黄色の3



「お!?」


「...ふふふ、わらわ達は運が良いわね」



 アピサルが嬉しそうに鼻を鳴らす。

 その仕草が、またたまらなく可愛い。


 ゲームは白熱した。


 マリエルにドロー4で襲撃を仕掛けようとリバースを出したら、危険を察知したマリエルがさらにリバースを発動


 次のターンでマリエルが「ドロー2」を出し、俺とアピサルが仕方なく「ドロー4」を展開。

 ドローカードコンボの直撃はピー助に向かいピー助が撃沈


 そして最後は3の同時出しでフィニッシュした



「わらわに負けはあり得ないのよ」


「ははは、さすが女王様」


「む~!悔しいです!」



 得意げなアピサルが、可愛い

 そしてマリエルも、いつもの主人と天使というよりは、素直な女の子としてのリアクションが増えて、とても可愛い



「ピィィィ!?!?」



 そしていつも通りピー助は癒しだ


 アピサルが嬉しそうに尻尾を揺らした尻尾が、地面を叩いて小さな地震を起こした。



「これは、もう一回やるべきだわ」



 マリエルが闘志を燃やす。



「今度こそ勝って見せます!」


「ピピー!」



 ピー助も負けじと翼を広げる。

 その後も何ゲームか続けたが、俺とアピサルのチームが連勝。

 マリエルは2勝したものの、俺たちには及ばなかった。

 そして……



「……ピピー」



 ピー助は全敗した。



「ピピー……」



 ピー助が哀愁漂う表情で俯く。

 その姿が、妙に可笑しくて、愛おしい。



 ━━━━━━━━━━━━━━━

【アピサル】【マリエル】【ピー助】

 との絆が深まりました

 絆pt +18

 ━━━━━━━━━━━━━━━




「……よし」



 長い事ゲームを行ったおかげか、絆ptがいつもの会話より多く入ってる

 少しずつだが、確実に絆は深まっている。

 アピサルとの絆共鳴まで、あと6pt。

 あと少しでたまる。



「楽しかったな」


「そうね。わらわ、こういうのは初めてで新鮮だったわ」



 アピサルが嬉しそうに微笑む。



「深淵界では...こういう遊びはなかったのか?」


「わらわの僕たちは皆魅了されていたから、勝負事なんて起きなかったわ」



 その言葉に、少しだけ寂しさが混じっていた。



「…そっか」


「でも、今は違う。そなたたちがおる」



 アピサルが俺を見つめる。

 その瞳には、確かな温かさが宿っていた。



「ああ。これからも、一緒に遊ぼうな」


「ええ、ガチャでまた新しい遊び道具を引き当てて頂戴」


「さて、寝るか」


「はい!おやすみなさいまで主様」


「ピピー……」



 夜の静寂が、優しく俺たちを包み込む。

 明日からまた、過酷な日々が待っているだろう。

 だが、今は――

 この温かさを、胸に刻む。







 その頃。

 魔王討伐軍。



「おいランザどういうことだ!?」



 戦準備をしていたランザの元に、ただならぬ勢いで冒険者が迫る。

 リュウトを襲い生き残った冒険者

 ランザと同じ加護lv3を宿す英雄級の一人


 その表情は、疲労の色が濃く、装備も激戦の痕がのこっていた。



「テメェの所の無能が裏切ったぞ」


「……は?」



 ランザの表情が固まる。

 時が止まったかのように、その場の空気が凍りついた。



「よりによって、あの糞教国に堕ちて、魔王まで配下に置いてやがった!」


「何冗談を――」


「冗談じゃねぇ!現にディオン様がやられたんだぞ…!」


「嘘だろ……」



 ランザの脳内は状況を整理する事が出来なかった

 兄貴分として背中を追いかけ、親友として長い時を過ごした無能者


 魔王討伐に参加しては確実に死ぬと思い、パーティーメンバーからの追放案を受け入れ、追い出した男、それが



「裏切り?魔王?」



 その事実にパーティーメンバーが声をあらげる



「あの糞野郎!俺たちの名に泥を塗りやがって…!」


「どこまで足を引っ張れば気が済むの!?」


「追放ではなく、処刑すべきでした!」



 ランザが、苦悩の表情で呟く。

 リュウトの顔が脳裏に浮かぶ。

 いつも一歩引いて、皆を支えてくれた男。

 無能だと笑われても、文句一つ言わなかった友。

 優しくて、誠実で、誰よりも仲間想いだった親友。



「……俺が、追放したから、か?」



 ランザの拳が、震える。



「ランザ、こんな状況になって迄あの異端者の肩もつんじゃねぇ」


「だけど……!」



 ランザは、地面を強く殴りつけた。

 ガンッ!

 鈍い音が響く。

 拳から血が滲むが、加護の炎がその傷を瞬く間に癒す

 しかし、ランザの心の痛みまでは消えなかった。



「……行くぞ」



 ランザは、立てかけてあった剣を手に取る。



「おい、勝手にどこ行こうってんだ!?」


「決まってんだろ。リュウトを...」



 ランザの瞳に、強い決意が宿る。



「あいつを……連れ戻す」


「でも、聖騎士団が――」


「関係ない!」



 ランザが遮る。



「リュウトは...パーティーメンバーじゃなくなったとしても、俺の...親友だ」



 その言葉に、メンバーたちが顔を見合わせる。



「…俺達もついていくぜ、だが、ランザ俺たちはあいつを連れ戻すために行くんじゃねぇ、あいつを――」



 その場にいる全員とランザの視線がぶつかる



「――殺すために行くんだ」


「...それは」


「神を裏ぎっただけじゃなく、魔王と手を組んだ。どうあがいても殺すしかねぇ...わかってんだろ」


「...」



 ランザは歩き出すことでその返答とした


 その足取りは重く、しかし、確かな意志に満ちていた。

 夜の闇の中、ランザたちは灰の平原へと向かって歩き出す。

 リュウトを探し――




 ――各々の望みを叶えるために




 ━━━━━━━━━━━━━━━

 第9話 了

 ━━━━━━━━━━━━━━━


次は金曜日20時になります

モチベに直結しますので、是非コメントやリアクション頂けましたら幸いです

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