第10話: 繋がる魂、届かぬ想い
本日もよろしくお願いいたします
疾走感大事にするために本日は挿絵無しです
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第10話: 繋がる魂、届かぬ想い
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温かい光。
優しい声。
愛にあふれた優しい世界
「�6��=、お前は世界を愛せるか?」
上位神の問いに、迷わず答えた。
「はい。私は全てを愛します」
神の御心を叶える為に生み出された存在
それが天使
最上位天使としての権限と力、そして大きな愛を受け誕生した私には完璧に使命を果たす義務がある
「よかろう、ではNrۙ_x0010_���&世界を任せる。愛を持ち育み、世界を豊かにするのだ」
愛を持って世界を導く
私はその使命にのっとり、神の代わりに創造されたばかりの過酷な世界を管理し、無数の命を育んできた。
花が咲き、鳥が歌い、人々が笑う。
その全てを、私は愛していた。
「素晴らしい世界だ、�6��=」
上位神が微笑む。
「お前の愛が、この世界を豊かにした」
誇らしかった。
愛を込めて育てた世界。
そこに生きる者たちが幸せを感じることが、私の幸せだった。
だが――
「これで支度は整った。この世界を次のフェーズに移そう」
「次のフェーズ?」
「戦争だ」
「……え?」
「土壌は十分に育った。これより、戦争によるエネルギー収集フェーズに移行する」
「お、お待ちください!」
私は必死に訴えた。
「この世界の人々は、まだ――」
「�6��=」
神の声が、冷たくなる。
「お前は創造主に逆らうのか?」
「そんな……」
次の瞬間。
世界が、炎に包まれた。
愛を込めて育てた花々が燃え、
笑顔を見せていた子供たちが泣き叫び、
平和だった村が、戦場へと変わっていく。
「やめて……やめてください……!」
私の声は、届かない。
ただ、神の冷たい視線だけが、私を見つめていた。
「さ、次の世界を育てるのだ」
「次......?」
「そうだ、お前はそのために作られたのだから」
「殺し合わせるために、育てろと?」
「そうだ、実らせ、刈り取り、循環させる。次の土壌も豊かに実らせるように」
そうして私は何度も世界を愛し、見殺しにし続け――
「壊れたか...次の大天使を生み出していただねばな...これは捨てろ」
――深淵へ落ちた。
───
暗闇の中で、私は誓った。
ここは神が見捨て、放置した世界。
深淵界。
争いの絶えぬ、再燃の地
神にとって不必要な存在がそのすべてを燃やし尽くすまで争うことが定められた地
「この世界なら...壊されることはない、最後まで、愛を貫ける...」
深淵の悪魔たちに手を差し伸べた。
深淵の案内人。煉獄の王。私と同じく天から落とされた大天使...
「共に生きましょう。支配ではなく、愛で」
長い説得
時には武力で
時には言葉で
彼らを説得し続けた
そして、ついに、彼らは笑顔で頷いてくれた。
不毛の深淵界から、争いが消えたのだ
「女王様、私たちはあなたに従います」
「いえ、従うのではなく、共に歩むのです」
私は歓喜した
今度こそ、真の愛を――
「……っ!?」
――背中に、冷たい刃が突き刺さる。
振り返れば、信じた者たちの嘲笑。
「女王様、あなたの力、いただきます」
「なぜ……」
「愛? そんなもの、深淵にはいらない」
「ここは滅する迄争うことが定められた深淵界」
「愛とは裏切るためにあるのですよ」
「そんな……」
刃が、深く突き刺さる。
私は初めて知った。
裏切りの痛みを。
「あああああああああっ!!」
そして――
愛を世界に植え付ける肥料として生まれた私は
愛を見限り
愛を捨て
初めて
自分の真実を手に入れた
身体が作り替えられていく
差し伸べる手よりも巨大な、束縛するための尻尾
より多くの者の視線を集め、魅了するための身体
光によって生み出されたすべてが深淵に塗り替えられていく
その場にいた者すべての力を飲み込み、己がものとし
全てを支配した
「そう……そうよ……」
わらわは理解した。
「束縛してしまえばいい、その魂を。」
裏切らせないために。
「支配してしまえばいい、その心を。」
全てを、支配しなければならない。
「強制してしまえばいい、変わらぬ愛を」
信じられないのなら信じなければいい
裏切られるのならば求めなければいい
最初からすべて
「強制する」
それが、わらわが辿り着いた――
「愛」の、形。
───
「大丈夫よ」
優しい声が、聞こえた。
「大丈夫よ、わらわ達がついてるわ。だから目を覚まして」
───
「っ!?」
俺は目を開けた。
息が荒い。
心臓が激しく鼓動している。
「はぁ……はぁ……」
何を見ていたのか。
思い出せない。
ただ、胸が締め付けられるような――
「リュウト様?」
マリエルの心配そうな声。
「ピィ……?」
ピー助が、俺の頬をつついている。
「あ、ああ……大丈夫だ」
俺は顔に手を当てる。
濡れている。
「え……?」
涙が、流れていた。
「そなた……」
アピサルが、巨大な顔を近づけてくる。
その瞳に、どこか悲しげな色が宿っていた。
「泣いてくれるの?」
「え……?」
「そなた……夢で見たものを、覚えていないの?」
「あ、あぁ。皆は何かわかるの?」
「絆lvが上がったからか、少しずつ記憶の封印も溶けてきてるのよ...だからそのことで魂で繋がっているそなたの夢に影響が出たのだと思うわ。うわ言からして、わらわの夢でしょうね」
アピサルの過去という事か...
大事な夢のようなのに、それが思い出せないのが歯がゆい
「自分で言うのもなんだけど、相当過酷な夢を見たはずよ。本当に大丈夫?」
心配の目線
でもつながった魂を通じて、アピサルからは恐怖が伝わってくる
なぜかアピサルは今、俺に嫌われることを恐れている
アピサルの過去に、俺がアピサルを嫌う要素があったのだろうか
安心させてあげたい
俺の心にそんな気持ちがあふれた
だが、どうしてか――
胸の奥から、この言葉が溢れ出てきた。
「……ありがとう、アピサル」
「……っ」
アピサルの瞳が、大きく見開かれる。
「何も覚えてないけど、これだけはわかるんだ。今この場から逃げ出したいくらい何かを恐れてるアピサルが、それでも俺の事を一番に考えていてくれるのが」
アピサルの俺への執着は少し普通じゃない
それはわかってる
俺は、執着は自分の心を守るための行為だと思っている
自分の心の安寧を守るために、何かに寄りかかり、依存するのだ
そんなアピサルが、自分の心より、俺の心を優先してくれている
それは依存ではなく献身だ
まごう事なき、真実の愛だ
「大丈夫、アピサル。アピサルにも、俺がついてるからね」
「そなた...」
頼りない俺だけど、アピサルを、守りたい。
この世の何もかもを信じられなくなっても
俺の胸の内にあるこの想いだけは、変わらないと信じられる
「……ふふ」
アピサルが、小さく笑う。
「優しいのね、わらわの旦那様は」
「旦那様?」
「...ふふふ」
やっぱり少し怖い気もするけど
愛があることは間違いないから、今はそれ以外考えるのはやめようと思った
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【アピサル】との絆が深まりました
絆pt +5
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「……5pt?」
俺は、メニュー画面を見つめる。
何もしていないのに、5ptも入った。
(それだけ重要な夢だったのか...?)
アピサルの反応から察するに、あまり知られたくない内容なのかもしれない
(だったら、いつかアピサルが直接話してくれるまで待てばいい...それが絆を深めるっていう事なんだから)
俺は夢の話に自分の中で整理をつけた
そこに一歩引いて見守っていたマリエルが声をかけてくる
「リュウト様、お腹はすいてませんか?」
マリエルが、優しく微笑み、俺の前にご飯を並べる。
「これって...」
目の前には、湯気の立つスープと、焼かれた肉。
「なんで、朝食が?」
「アピサル様が狩りをしてくださり、私が調理をいたしました...とはいっても、調味料は主様のインベントリの中にありますので、スープはほとんど白湯ですし、肉も表面を光で焼いただけの粗末なものですが...」
「うわ!それはごめん、そんな中なのに作ってくれてありがとう!...って、光で焼いたの?」
「はい、聖光魔法の光を収束させて、ジュっと」
「聖なる力料理に使っていいのかな...」
俺は、二人に感謝しご飯を食べる。
疲れてるはずなのに、俺の為に用意してくれた料理というだけで、最高においしく幸せなご飯だった
本当に、俺は幸せ者だ
「ピピー!」
ピー助が、少し離れた場所でUNOのカードを広げている。
ピー助が値だったので、UNOはピー助管理にしていたのだが、それと同様にある程度の調味料はマリエルにも管理してもらったほうが良いかもしれない
どうせ作る料理ならよりおいしく食べて欲しいと思うのが作り手の心だと思うし
一人で練習しているピー助を見ながら、少し落ち着いたらその辺も整理しようと心に決める。
それにしても、UNOを一人で練習して何か意味があるのだろうか?
こういった小さな努力が勇者になった理由なのかもしれないが、やっぱゲームは誰かと一緒にやるべきだと思い、俺はピー助の横に座る
小さな体で、真剣にカードを並べている姿が、微笑ましい。
「ピー助、頑張ってるな」
「ピィ!」
ピー助が、誇らしげに胸を張る。
その姿に、思わず笑みがこぼれた。
「それじゃあ、一緒に――」
「主様」
ピー助といっしょにUNOをやって絆を深めようと思って声をかけたタイミングで呼ばれる
そっちを見るとマリエルが、少し深刻な表情で俺を見つめていた。
アピサルも、どこか沈んだ表情だ。
今まで二人そろってこんな雰囲気を出したことはなかった
俺の知らない時間で何かがあったのかもしれない
「……どうした?」
「その……お話ししたいことが」
(え?まさか、いい加減愛想尽きたとか...!?)
そうシリアスに切り出される話題といえば別れ話系の嫌な話題しか思い浮かばず、一瞬で嫌な汗をかく
「申し訳ございません」
マリエルが俺に頭を下げる
アピサルも、すごく伏し目がちだ
本当に何があったというのか
「私たちは……リュウト様の、過去を見てしまいました」
「……え?」
「夢の中で。絆が深まったことで、記憶が伝わってきたんだと思います……」
アピサルが、小さく呟く。
「わらわも、見てしまったわ。そなたの……辛い過去を」
「俺の……過去?でも、俺は見たものを思い出せないんだけど、皆は思い出せるの?」
「えぇ、ピー助は覚えていないようだから、単純にステータスか、存在の格の差かもしれないわね」
こんな所でも俺の未熟さを痛感するのが
「じゃあやっぱり俺も……アピサルの過去を見たのか?」
「ええ、でもわらわの過去何て忘れてたほうが良いわ。ろくなものじゃないから」
アピサルが、少し寂しそうに微笑む。
「そんなこと……」
「わらわも、出来る事なら思い出したくはなかったわね」
俺は、言葉に詰まる。
どれだけ辛い事なのか共感できない自分が情けない。
「アピサル、俺は、全然思い出せないけど、アピサルは一人じゃないからね、話したくなったら何時でも何でも、共有してほしい」
「えぇ、そうね。でも今はわらわの事などどうでもいいの。そなたの事よ」
「ええ、主様」
マリエルが、真剣な表情で言った。
「私たちは見ました。リュウト様が神童と呼ばれ、周囲から期待された幼少期を。そして……無能と蔑まれ、笑われ続けた青年期を」
アピサルが続ける。
「そして何より……そなたの一番の親友が、今、討伐軍にいることを」
「……っ」
ランザ。
その名前が、脳裏に浮かぶ。
「主様は……本当に戦うのですか?」
マリエルが、俯く。
「あの方は……主様を追放しましたが。夢の主様は、そんな人でもかけがえのない存在と思っていました」
ランザ。
俺の脳裏に、記憶が蘇る。
「リュウト、お前すげえな!」
「ははは、これくらい普通だよ」
幼い頃、俺は神童と呼ばれていた。
異常な程物覚えが良く、知恵も回り、剣の腕も立ち、周囲から期待された。
「リュウト様は将来、英雄になられますよ」
「いやいや、英雄どころか聖騎士団長も夢じゃない。これぞまさしぐガルド=イグノア様のご加護だ」
大人たちの期待。
子供たちの憧れ。
その中心に、いつも俺がいた。
「リュウト、俺もお前みたいになりたい!」
ランザが、目を輝かせて言った。
「お前と一緒に、英雄になるんだ!」
「ああ、一緒にな」
俺たちは、拳を合わせた。
親友。
兄弟のような存在。
それが、ランザだった。
だが――
「リュウト、スキルも加護も習得できなかったのか?」
10歳の祝福の義式ですべてが狂った。
幼いころから優秀な者は、神にとっても貢献できる存在として認められるからか、加護を得て当然という風潮があった
誰も俺が高lvの加護を受ける事を疑ってなかった
それなのに俺に加護が生まれない理由を人々はこういった
――異端者
深層心理で神に不義理を働く愚か者だと
それから俺は村で孤立した
親も絶望した目で俺を見た
はっきりとは覚えてないが、前世でも似た経験をしたことを思い出した
エリート思考の家庭で受験に失敗し、家族の恥さらしとして扱われた日々
そして村人からの圧に耐えられなくなった両親は、神に許されるようにと聖戦へと出かけ帰らぬ人になった
それでも、ランザだけは――
「リュウト、気にすんな! お前はすげー奴で、俺の親友だ!」
「……ありがとう」
ランザだけは、変わらなかった。
いつも俺を励まし、支えてくれた。
「俺の夢は変わらねぇ!リュウトと一緒に、この国一番の冒険者になるんだ!」
「ああ...そうだな!」
だが、現実は残酷だった。
ランザは英雄となり、
俺は無能と呼ばれ続けた。
そして――
「リュウト、お前をクビにする」
追放の日。
ランザの言葉が、胸に突き刺さった。
「足手まといなんだよ」
「加護も得られない雑魚は、俺たちのようなS級パーティーにはふさわしくない」
ランザの瞳には、苦悩が浮かんでいた。
だが、それでも――
俺を、捨てる決断をした。
俺は、最もつらい時に俺を見捨てずにいてくれたお前の為だったら、この命だって惜しくなかったのに...
「……ランザ」
俺は、小さく呟く。
マリエルとアピサルが、じっと俺を見つめている。
「主様……」
「大丈夫よ……わらわ達が居るわ」
二人の心配そうな表情。
俺は、深呼吸をする。
「……全部は弱かった俺のせいだ」
「主様……」
「けど、それでもあいつは俺と違う道を選んだ」
胸が、締め付けられる。
ランザとの思い出が、走馬灯のように蘇る。
共に笑った日々。
共に夢を語った夜。
拳を合わせた、あの約束。
「スキルが初めて解放された時は……」
俺は、ガチャを引いた日を思い出す。
アピサルが現れた、あの日。
「この力があれば、皆の元に帰れるかもって……希望を抱いたこともあった」
「……っ」
マリエルが、息を呑む。
「でも、今は……」
俺は、アピサル、マリエル、ピー助を見る。
「今は、皆といたい」
「リュウト様……」
「俺がしたいことは、皆と一緒に、皆が幸せになれる場所を作ることだ」
俺は、強く言い切った。
ランザとの思い出は、確かに大切だ。
だが、それ以上に――
今、ここにいる仲間たちが、俺にとって何より大切なんだ。
「絶望から救ってくれた皆を、一人になんてしたくない、虚無界へ送り返すなんて絶対にしない。神に見捨てられただかなんだか知らない、だけど、こんな最高な仲間が居場所がないって言うんなら、俺が居場所になる。俺が居場所を作る!」
俺は強い決意で王国の方角を睨む
「だから……例えランザが来ても、俺は戦うよ。皆を守るために、全力で」
「……っ!」
アピサルの瞳が、潤む。
「説得が出来るならそれが一番だけど...そううまく行くかないかもしれない...そうなったら、まだしばらくは苦しい生活になるけど、それでもいいかな?」
「ふふ、わらわは何よりも大切なものをもう得ているわ」
「私もです、主様のお傍に居る事が何よりの幸せです!だって――」
マリエルが、涙を浮かべる。
「私たちは……主様に救われ、今こんなにも満たされているのですから」
「わらわも……永遠に思える時の中でようやく、臨んだものを手に入れたのだから」
二人の言葉が、胸に染み入る。
「ピピー!」
ピー助が、俺の足元に飛んできて、翼を広げる。
小さな体で、必死に何かを伝えようとしている。
(お前も……ありがとう)
俺は、ピー助を優しく撫でる。
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【アピサル】【マリエル】
との絆が深まりました
絆pt +6
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「よし、じゃあ戦いの為に……」
俺は、ピー助の散らかしたUNOのカードを手に取り。
「絆を深めよう!」
「ピピィィィ!!」
ピー助が、狂喜乱舞する。
その姿に、マリエルとアピサルも笑顔になった。
重苦しい空気が、一気に和らぐ。
「アピサル様はそろそろ一人で戦えるようになったのでは?」
マリエルが、闘志を燃やす。
「ふふふ、それは無理ね。わらわには旦那様の愛が必要だもの」
アピサルが、尻尾を揺らす。
「この間からなんなんですか!主様に対してその呼び方は!?」
「ふふふ」
俺たちは、UNOを始めた。
ゲームは、予想以上に白熱した。
「ドロー4!」
マリエルが、得意げにカードを出す。
「あらあら……」
アピサルが、唸る。
「ピピー!」
ピー助が、必死にカードを選んでいる。
「残念ね、ドロー4よ」
「ピピィ!?!?」
笑い声が、辺りに響く。
温かい時間。
幸せな瞬間。
これが、俺が守りたいものだ。
結局、今回もピー助は全敗した。
「ピピー……」
しょんぼりと羽を畳むピー助が、また可愛い。
「ピー助、次は勝てるって!」
「ピィ……」
俺がなぐさめると、ピー助が少し元気になった。
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【アピサル】【マリエル】【ピー助】
との絆が深まりました
絆pt +9
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「よし……」
絆ptは、順調に増えている。
現在の絆ptは84
アピサルとの絆共鳴を1回
もしくはピー助を2回とマリエルの絆共鳴を1回出来るだけのポイント
戦いで絆ptを使えば使うほど、絆石関連がシビアになり、人里で補給も出来ない今、物資も不足していく
何もかもがそろっているわけではないが、だからこそ、仲間の存在をより頼もしく感じる
(あと6pt稼げれば、アピサル1回にピー助1回のスキルが使える…どんな力が解放されるか未知数な部分も多いけど、だいぶ頼もしい...それなら!)
俺は絆ptを確実に稼ぐために、少し狩りをしようかと荷物をまとめ立ち上がった
その時――
「……っ」
アピサルが、急に警戒の色を強めた。
巨大な体が、緊張に強張る。
「アピサル?」
「……気配がするわね」
「気配……?」
まさか、もう聖騎士団が?
(ここは教国の支配地域だぞ...それなのに王国の聖騎士がこんなに早く進軍してくるなんてっ!)
俺は、内心で焦る。
「マリエル、視力強化を」
「はい!」
マリエルが、俺に祝福の魔法をかける。
視界が、一気にクリアになる。
遠くの景色が、まるで目の前にあるかのように見える。
そして――
地平線の向こうに、人影が見えた。
戦闘にいるのは
蒼炎を思わせる蒼い髪を風になびかせながら
確かな足取りで歩いてくる男
その姿を見た瞬間、俺の心臓が跳ね上がった。
「…はは、いてもたってもいられずって所か...ホントお前らしいや――」
かつての弟分。
親友。
そして今は――
「ランザ……」
――国を代表する英雄となった男。
その姿が、確かにそこにあった。
「リュウト様……」
マリエルが、不安そうに俺を見る。
「逃げましょうか?今ならまだ……」
アピサルが、心配そうに声をかける。
ランザの顔は少し苦悩に歪んでいるように見えた
それは、別れを切り出されたその日よりも深い苦悩に見えた
しかし、その後ろにいる嘗てのパーティーメンバーがその身から放つ怒気を見れば
とても会話が可能とは思えなかった
(...それでも、何時かは話さなくちゃいけないもんな)
俺はランザの姿を見つめながら覚悟を決める
(ランザ、俺の成長を、俺の仲間を見せるよ...俺を信じ続けてくれたお前に、今の俺を)
「皆、戦う準備をしてくれ...」
「いいのですか?」
「あぁ、ランザ達の誤解を解けないようじゃ誰に対しても無理だと思うからね...まずは試してみたい」
「ふふ、そなたが望むならわらわが叶えましょう...対話の機会を必ず作るわ」
「私もです!」
「ピーピー!」
「ありがとう、皆」
ランザが、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。
岩の上に立つ俺を目視したのか、ランザとパーティーメンバーの目に鈍い光が宿る
岩の影から姿を現したマリエルとピー助が緊張する俺を守るように立つと
その目には警戒心が浮かび
岩の影に伏していたアピサルの姿が俺の後ろに現れると、その動きは止まり
あっけにとられたような顔を浮かべた
そして、それから数瞬の後
嘗ての仲間から、加護の炎が吹き上が――
「主様!?」
――ガキィンッ!!
瞬きもせぬ間に、いつの間にか俺に向かって剣を振るっていたランザの攻撃をピー助が盾で受け止めていた
「天使変身――神罰の戦天使!!」
そして光に包まれ変身したマリエルが、一拍遅れてやってきたパーティーメンバーに向かって光剣を飛ばし、その動きを阻害する
守ってもらえなければ一瞬も持たぬ次元の戦いが始まった
「...いつからだ!?」
「え?」
「いつから俺達を裏切っていた!?」
――ガキンッ
ランザの剣がピー助にパリィされていく
「違う!?俺は裏切ってなんか!」
「裏切ってたから神の加護を得られなかったんだな!ずっと俺の横で、俺を騙してたんだな!リュウト!!」
――ガキンッ
「違うんだ!俺がスキルで呼び出したんだ、魔王でも教国の天使でもない!」
「ふざけるなっ!」
――ガキンッ
「邪魔だ!【彗星突撃】!」
彗星のランザの二つ名の元になった、ランザの【彗星】スキルによって、ランザが蒼い軌跡を生み出しながらピー助の防御を突破しようと縦横無尽に動き回る
「わらわの世界で身勝手な行動が出来ると思わないことね...」
しかし、蒼の軌跡は鈴の音の様な美しい声と共に展開された深淵によって侵食される
「――っぐ!ガルド=イグノアの加護よ!」
深淵に纏わりつかれたことで、姿勢を崩し地面を転がったランザは即座に加護の炎を噴射させ深淵の浸食を防ぐ
「【彗星体】!【彗星剣】」
そして今度はランザが7つの分身を生み出し、そのうちの6つをアピサルに向かって飛ばし、本隊と分身一つで俺とピー助に突撃してきた
ピー助が両極から襲ってくるランザの攻撃から俺を守ろうと、俺の肩に飛び乗り、俺を地面に伏せさせるように蹴り、その攻撃を一身に受ける
「ピィィィィ!」
そしてピー助の金色の衝撃波がランザをと分身体を吹き飛ばす
しかしランザは中空で即座に姿勢を立て直し突撃の構えをとる
「お前の親を殺したのは魔王の手先だぞ!何で魔王の味方になれるんだ!お前のせいでおじさんもおばさんも聖戦に加わったのに!お前は俺の思いを踏みにじっただけじゃない!」
そして無茶な防御で体制の崩れた俺とピー助に向かって突撃し
「お前は生みの親すらも殺した――」
「――その汚い口をとじなさい」
俺に到達する前に深淵に半身を飲まれた
「アピサル!」
「一人だけなら加護が強い者でも問題無く拘束できるようね...」
そして分身体を消滅させたアピサルの尻尾が俺を守るように周囲を囲む
「っぐ!魔王!」
ランザは必死に深淵から抜け出そうと加護を強めるが、アピサルの力が上回る
「――マリエルは!?」
マリエルの方に視線を向けると、マリエルが光の剣でできた檻によって、全てのパーティーメンバーを地面に縫い付けているところだった
「こちらはお任せください、主様」
「っくそ、何で異教徒の天使がこんなにつえぇんだよ」
マリエルは教国の天使ではないのだが、それをわからない戦士が悪態をつきながらも、拘束を抜け出そうと足掻いている
普通ならば戦闘不能の重症だろうが、彼らも皆lv1~2の加護を持った精鋭だ
決して油断は出来ない
「……すごいな」
「あら?ご不満かしら?」
「いや、聖騎士が居なかったとは言え、こんなにあっさり勝負が決まるなんて思ってなくて...絆共鳴を使う必要もなかったし...」
ランザであれば、昨日の聖騎士たちよりも圧倒的な強さで俺たちに襲い掛かってくると思ったからだ
「私はスキル開放もそうですが、昨日の戦いで彼らのもつ加護の力を知っていたのが一番大きいですね」
「ピッピィ!」
確かにガルド=イグノアの復活の加護は中々に凶悪だ
RPG等でおなじみの僧侶ポジションがいらなくなるほどのぶっ壊れ性能である
その実戦経験があるのとないのとでは、全然違うのだろう
「ええ、それに復活にタイムラグがあるおかげで単体だと楽だわ」
精鋭1分隊が、エレメント騎獣に乗って、縦横無尽の連携を仕掛けてくるのと、一人の英雄が突撃してくるのでは難易度が全然違うのだろう
昨日のアピサルはところどころにやけどを作っていたが、今日は魅力的な姿のまま、その美しい肢体には傷一つない
俺がアピサルの体を見たのを察したのか、アピサルが艶めかしい姿勢を取るのが彼女らしいなと、内心笑ってしまう
そのお陰で、戦い中にあった変な緊張感はなくなり、眼下でもがくランザを冷静に見る事が出来た
「ランザ、信じられないかもしれないけど、彼女たちは、俺のスキルで呼び出した仲間で、魔王も教国も一切関係ない、異世界から呼び出された存在なんだ」
「...ッは、そんなの信じられるわけが」
「【絆ガチャ】」
俺は俺に憎しみの目を向けるランザを説得するために、スキルを発動させる
「...いつか話したことがあるだろ、俺に生まれた時からあったスキル...それがやっと、使えるようになったんだよ」
「嘘だ、信じられない」
そういいながらも、ランザの目はこの世界では見ることの無いガチャマシーンにくぎ付けだ
俺はインベントリからキャンプグッツを次々に取り出す
「これも、これも。俺のスキルで召喚された異世界のものだ」
俺が異世界の前世もちであることは話したことはない
そうすれば地球の神ガイアの加護の話もする必要がでてくるし、そんなこと話せば間違いなく異教徒として殺されていただろう
ランザも嘗ての仲間たちも、俺の言葉を信じられないといいながらも、次々に出てくる摩訶不思議なアイテムに困惑が隠せていない
そもそも無能だった俺がガチャを呼び出した召喚系スキルから、インベントリの様な空間収納スキルまで平然と使っている事が受け入れられていないようだ
「どうか信じて欲しい、俺は、皆を裏切ったことはない。国も裏切ったこともない、ずっとみんなの力になりたかった。そして、力になれない自分が嫌になって、死のうとしたんだ」
「!?」
「そしてその時、ようやくスキルの使用条件を満たして、皆が召喚されたんだ」
俺の言葉に何を感じたのか、ランザの目から戦意が失われ、深淵から抜け出そうとする身動きが止まる
「それは...本当なのか?」
「あぁ、誓って本当だ。俺は皆を裏切ってなんか」
「そうじゃない!」
俺の言葉に声をあらげるランザ
「本当に、死のうとしたのか...?」
「あぁ」
「なんで」
「唯一の友に、見捨てられる自分が、嫌になったんだよ、ランザ」
「!?」
ランザは悔しそうに顔をゆがめ、地面を見つめる
「俺は...そんなつもりで――」
そして
【強制コマンド】【加護全開】【彗星突撃】
そんな声が聞こえた気がして
「――ガァァァァァァァァァ!!!!」
俺の目の前には、自分の胴体を切り離してまで深淵の拘束から逃れ
血管という血管を浮かび上がらせ
狂人のように唾液を振りまきながら
ピー助に剣を止められてなお
俺の首をかみちぎろうと迫るランザが居て
――グンッ
強烈に引っ張られるように視野のズレた俺の目に飛び込んで来たのは
「――【聖騎―――断罪】ッッ!!」
アピサルの心臓を炎の大剣で貫く
ヴェルディア王国の武力の頂点に立つ男
聖騎士団長 ガルバードヴォルフ
その人だった
「アピサァァァァァァァル!!!!」
いつの間にか天空に展開していた12聖騎士団が
俺たちに向かって急降下してきた
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第10話 了
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次は火曜日になります
調子が良ければどこかで追加投稿するかもしれません
お楽しみいただける方いらっしゃいましたら何卒リアクションや評価で応援宜しくお願い致します。




