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翌日になり俺は大欠伸をしながらネカフェで目覚める。
それから起き上がり俺は鞄を持ち一旦自宅に帰ろうとネカフェを出ると...墨田さんがやって来た。
は?
「おはようございます」
「な、なんでこの場所が分かったんだ?」
「はい。この街にネカフェってあまりないんで」
「...ああ。まあ大手が経営しているネカフェしか...にしても何故この時間が?」
「待ってました。向かいのカフェで」
「あ、ああ。ストーカーみたいな事をするな君は。おっさんなんかストーカーしても楽しくないだろ」
「...本当にすいません。昨日の事をお聞きしたくて」
そう墨田さんは言う。
それから「?」となる俺に対して「昨日、居酒屋の近くで女性2人に囲まれていましたね」と墨田さんは切り出す。
ああ、あの喧嘩か...。
考えながら肩をすくめる。
「あれは嫁と後輩。喧嘩していたのはな。...仕事の関係で折り合いがつかなかったんだ」
「嘘は吐かなくて大丈夫です。...聴いちゃいましたから」
「...」
「...喧嘩の理由は浮気ですよね。奥様の」
「そこまでバレるともう隠しようが無いな。その通りだ。恥ずかしい限りだが」
「...」
すると墨田さんが俺の顔をまじまじと見た。
鎖骨が見える。
女性の鎖骨がだ。
これはいかん。
変な妄想をしてしまう。
考えながら「どうしたんだ」と墨田さんに聞く。
墨田さんは「あ、すいません」と覗き込むのを止める。
「あの。今日は空いてますか?」
「空いてますかってのは?」
「はい。また缶ビールで乾杯しませんか?」
「...い、いや。君からは恩を既に貰ったんだが」
「私は住山さんと一緒が楽しいんです」
「俺なんかと一緒で?」
「住山さんは不思議な人です。恩人です。だから一緒に飲み交わしたいのもあるんです」
「...」
女性と2人きりでしかも相手は女子大生。
倫理的に良いのかこれ。
そう考えながらも、まあ外でしかも多少飲み交わす程度だしな、と思いながら「分かった」と返事をした。
墨田さんは「ありがとうございます」とニコッとした。
それから「あの場所で待ちます」と話した。
☆
俺は墨田さんと約束を交わしてから一旦家に帰宅する。
相変わらず嫁は居ない。
まあどうでも良いんだが。
そう考えつつ俺は髭を整えてからスーツに着替えドアを閉めてから家を出た。
会社に向かう為に歩いていると「先輩」と声がした。
心臓が跳ね上がる感覚がした。
「お、おはよう。梶原」
「はい。おはようございます。...あ、先輩。はいどうぞ」
梶原は何故か弁当箱を取り出した。
俺に渡し...は?
まさかの展開に俺は「オイ待て。梶原。どういう事だ」と言ってから梶原を見る。
梶原は「何って愛妻弁当です」と「?」を浮かべた感じ...は?!
「梶原!俺達は夫婦ではない!?」
「良いじゃないですか。どうせ破綻してますよね?関係。私は言いましたけどなんでもしますよ。先輩を愛してますから」
「梶原...」
俺は額に手を添える。
それから、仕方がない、と考えながら弁当を受け取る。
そして俺は「梶原。こういう事はしなくて良いから。...でないと周りにドン引きされるし」と話す。
梶原は「私はドン引きされようが構いませんよ。...いずれにせよ先輩の夫婦関係は破綻していますし。私は嫌じゃないですから」と言う。
それからウインクした。
「男の人の弁当なんて初めて創りました。弁当箱を買って...ガッツリ系ですけどね」
「本当にお前という馬鹿は...弁当箱まで買ったのか」
「お金は要りませんよ?私が好きでやってますから。先輩の為に」
「...」
俺は彼女に「...すまないな」と言う。
すると彼女は「本当に私が好き勝手にやっているだけです。だから問題はありません」と笑みを浮かべた。
俺はその顔を見つつ「...」と無言になった。
そして俺達は歩き出して会社に向かった。
☆
「住山」
「ああ。佐藤」
同期の佐藤光良が来た。
俺を見ながら笑みを浮かべている。
眼鏡に少し控えめに固めた髪。
スーツがビシッと毎回決まっている。
一人暮らしだとは前々から聞いているんだが...。
「どうした?浮かない顔をして」
「ああ。...いや。なんでもない。...飯食いに行くか」
「そうだな」
それから佐藤と一緒に屋上に向かう。
するとレインが届いた。
メッセージがだ。
それは梶原からだった。
(お弁当の感想、後で聞かせて下さい)
そう書かれていた。
俺は苦笑いを浮かべながらハッとする。
アイツが作った弁当だと悟られるのはまずい。
ゆかりの事は佐藤も知っている。
だからこそ。
俺はそう考えながら居たのだが。
「そういえばお前の奥さん...」
と佐藤が切り出した。
俺は「?」を浮かべて佐藤を見る。
すると佐藤は「...お前の奥さん浮気したみたいだな」とゆっくり切り出した。
オイ待て。
なんで知っている。
「...お前の奥さんと梶原。んでお前が言い争っているのを聞いたんだよ」
「あー。あの場所にお前まで居たんだな」
「まあ...偶然通りかかってな。すまんが聞いてしまった。それで浮気なんだなって」
「...」
「ゆかりさんとは別れないのか」
「相手が同意しなくてな。まあ最終的には協議離婚とかそれ以外の選択になるかもな」
「...そうなんだな」
「ああ」
それから俺は苦笑いしながら弁当箱を取り出す。
そして開けてみる。
そこには手紙が添えられていた。
俺は開けて読んでみる。
(先輩。一生懸命に愛情込めました。宜しくです)
そう書かれていた。
ゆかりもこんな感じなら良かったんだが。
世の中上手くいかないな。
考えながら俺は弁当を食べ始めた。
因みにこの弁当の事は佐藤に説明はした。
佐藤は「...そうなんだな」と納得していた。