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結論から言ってそれでも嫁は別れようとはしない。
もう弁護士か裁判になるしかないとは思う。
こんな非情な真似をしてまで俺を依り代にする気かあの女。
そう考えながら俺達は居酒屋を出た。
アイツらは既に居なくなっていた。
「住山さん」
「...ああ」
「私の家だったらいつでも貸します」
「ありがとうな。墨田さん」
「だから...負けないで下さい。私は住山さんに負けてほしくないです」
墨田さんは潤んだ瞳を向けてくる。
俺は「...」となりながら「負けないよ」と返事をした。
それから俺は「...もう負けない。奴らにこうなった以上は決めたよ。あの嫁は絶対に許さない」と言いながら歯を食いしばる。
するとその言葉を聞いた墨田さんが俺に近付いて来た。
「...その。またキスしても良いですか?」
「え。あ、ああ」
俺は墨田さんを見る。
すると墨田さんは首に手を回してきた。
それからキスを交わす。
俺は「...」となりながら墨田さんから離れた。
墨田さんは俺にハグをして来る。
「私、本気で貴方が好きです」
「...ああ」
「だからこそお付き合いしたいです」
「...」
「この戦いは険しいかも知れません。だけど私は貴方が好きだから。住山さんに加担します。だから勝ちましょう」
その言葉を発してから墨田さんは俺から離れる。
それから墨田さんは俺をまた見てきた。
俺は「...後悔しない様な人生にしたい」と話す。
そして俺は墨田さんを見る。
「何かあったら協力を求めるかもしれない」
「分かりました。その時は私...住山さんを助けます」
「本当にすまないな」
「私は住山さんが好きなので問題ありません」
それから墨田さんは「行きましょうか」と笑みを浮かべる。
そして帰宅していると街頭の下に誰か立っているのに...って。
ゆかりかよ。
そう考えながら「何をしている」とゆかりに告げる。
するとゆかりは「私が何をしようが勝手だよね」と言う。
「...なんの用だと聞いている」
「最低な真似だね。盗撮なんて」
「それはおま...」
そこまで言った時。
墨田さんが「貴方の方が最低ですよ。ゆかりさん」と話してから眉を顰めた。
その言葉にゆかりは「?」となって墨田さんを見る。
眉を顰めている。
「住山さんは証拠を残そうとしただけ。貴方は住山さん以外の他人の竿を舐めたクズです。気持ちが悪い!」
「...貴方は私の夫を寝取ったでしょう。同類だけど」
ゆかりは怒り混じりに墨田さんに掴みかかろうとする。
俺はその手をバシッと払い除けた。
苦痛に顔を歪めたゆかり。
それから俺を睨んできてから「何をするの」と言った。
俺は「お前の事は心底愛していた」と切り出す。
そして俺は「どうしてお前はそんなクズなんだ」と話した。
ゆかりは「仕方がないでしょう」と切り出す。
「仕方がない...だと」
「貴方に私の寂しさは理解出来ない」
「寂しさだと」
そう言うとゆかりは「貴方は仕事だからって私を毎回放置した」と言いながら「私は寂しい」と涙を流す。
「セックスも何もない」とも。
俺はその言葉に「...」と黙る。
すると墨田さんが「で?」と言葉を発した。
「は?」
「貴方のそれは確かに弱さかも知れません。でもそれは言い訳です。それだったら夫婦で相談するべきだった。それを出せなかったのは勇気ではない。貴方は迷惑な事ばかりをし始めている。今直ぐに彼と別れて下さい」
「黙れ!」
そしてゆかりは墨田さんに掴みかかる。
まさかの行動に俺は「お前!」と言ってから「警察呼ぶぞ。マジふざけんな!」と言う。
ゆかりは「警察って。これぐらいで警察なんか相手にしない!」と言う。
墨田さんを見る。
そんな墨田さんは冷静な感じだった。
「貴方は間違いなく間違いを犯した。彼と一緒に居るには説明が足りない。私は貴方に夫婦として居る資格は無いと思います」
「...」
ゆかりは墨田さんから離れる。
それから「そこまで言うんだったら別れてやるわよ」と言い出した。
まさかの展開にゆかりを見る。
ゆかりは「私は絶対に貴方達を認めない」と言いながら俺達を睨む。
俺は「出て行け」と言ってからゆかりを見た。
「私が居なくなったからって後悔しないでね」
「後悔なんざするか。せいせいするわ。ふざけるなよ」
「...イライラする」
「全てお前が導いた過ちだ。反省しろ。お前が全て悪い」
そして俺はこの日。
ゆかりを捨てた。
それから自宅からゆかりの荷物を放り出した。
離婚届を提出しに向かって受理された。
時間がかかったなマジに。
☆
ゆかりを捨て俺は自宅でのんびり...とはいかなかった。
自宅に何故か梶原が居る。
梶原は「愛の巣です」とニコニコしながら料理を作る。
因みに家財道具は俺が揃えた。
つまり俺に所有権があり。
奴の分は少ししかなかったので直ぐに追い出せた。
良かったと思う。
こうなるのに時間がかかったが。
「梶原。俺達は結婚してないんだが...」
「いえいえ。将来的には結婚しますし」
「あのな...」
「嫌ですか?家事が出来ますよ私。それに先輩と今直ぐに子作りもなんなら」
「しない。ふざけんな」
それから俺は立ち上がる。
そして梶原を手伝う。
梶原は「エヘッ。私達は本当に新婚さんみたいですね」と喜ぶ。
俺は苦笑いで梶原を見ると口に何か詰め込まれた。
それは里芋の煮っころがしだった。
「えへへ。美味しいですか?」
「全く。火傷したらどうすんだ」
「私の吐息で冷ましましたから♡」
「梶原...」
ドン引きだ。
コイツという奴は全く。
だけどようやっとだな...こんな平穏は。
そう考えながら俺は窓を見てから外を見る。
この先もこのまま幸せに暮らせれば良いんだが。