表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女様かと思ったら、パーティーメンバーのお母さん(しかも伝説の魔女)でした ~  作者: さかーん
聖女の娘は最強魔女!? そして母は…魔王になった件について
75/83

第75話 魔王軍の連携訓練と、世界を分かつ壁

 一夜明け、魔王城(仮)では、俺による第二回作戦会議が開かれていた。

「…というわけで、リリアを直接ぶん殴って連れ戻すとか、地下トンネルを掘って潜入するといった脳筋プランは却下だ」

 俺は、ザラキアスとゴウガの提案を一蹴した。

「俺たちの目的は、リリアとの対話だ。セラフィーナの洗脳を解き、真実を伝える。そのための作戦を立てる」


 俺がそう宣言すると、なぜかザラキアスとゴウガは、互いの目を見つめ、深く頷き合った。

「さすがはカイト殿。我らの物理的な戦闘能力だけでなく、対話という、より高次元の戦術を見据えておられるとは」

「うむ。カイト殿の知略、尊敬する」

「お前らのせいで、俺の胃に穴が開きそうなんだが…」

 俺の『調停の権能』による、奇妙な友情はまだ続いているらしい。


「連携が重要になる。まずは、お前らのコンビネーション技を完成させるぞ」

 俺は、庭(元・地獄のジオラマ、現・イングリッシュガーデン)に二人を連れ出した。

「いいか、ザラキアスが『闇の渦』で敵の動きを封じ、そこにゴウガが、このデカい岩を投げ込む。完璧な作戦だ」

「おお! 我が混沌と、ゴウガ殿の破壊が融合する…! なんという甘美な響き!」

「任せろ」


 そして、訓練は始まった。

 ザラキアスが高らかに詠唱し、空間にバスケットボールサイズの黒い渦を生み出す。

「今だ、ゴウガ殿!」

 ゴウガが、軽自動車ほどの大きさの岩を、唸りを上げて投げ込む。

 …タイミングも、コントロールも、完璧だった。


 岩は、見事に『闇の渦』に吸い込まれ―――そして、渦の明後日の方向から、とんでもない勢いで射出され、エレノアが丹精込めて育てていた、巨大なカボチャ畑を完全に更地にした。

「「あ…」」


 空気が、凍る。

 やがて、家からエレノアがひょっこり顔を出した。

「あら、すごい音。…まあ、カボチャが全部、ペーストになったのね。これで、今夜はポタージュが作れるわ。ありがとう、二人とも」

 聖母か、この人は。

 ザラキアスとゴウガは、そのあまりの慈悲深さに、感涙しながら抱き合っていた。


 そんな、いつも通りのアホな日常が、突如として終わりを告げる。

 空が、おかしい。

 晴れていたはずの空が、まるで巨大な紫色のガラスに覆われたかのように、急速に色を変えていく。

 遥か遠く、地平線の彼方から、天を突くほどの巨大な、光の壁が出現し、ゆっくりと、だが確実に、こちらへ向かって迫ってきていた。


「…これは」

 エレノアの表情から、笑みが消える。

「『神離の結界』…。内と外を、因果律レベルで切り離す、古代の封印術。セラフィーナ、いえ、〝神の使い〟は、私たちをこの土地ごと、世界から消し去るつもりだわ」

 もはや、戦争ですらない。ただの一方的な、世界の理からの「削除」。


 絶望的な光景を前に、誰もが言葉を失う。

 だが、その時、俺の内に眠る『調停の権能』が、うずくように反応した。

 あの巨大な結界。それは、あまりにも一方的で、調和を欠いた、歪んだ力だ。俺の力は、その「歪み」を、明確に感じ取っていた。

 結界そのものを、壊すことはできない。だが、その力の流れに、ほんの少しだけ、干渉できるかもしれない。


「…なあ、お前ら」

 俺は、目の前にそびえ立つ、絶望の壁を見上げながら、言った。

「新しい作戦を思いついた。リリアと話すのは、後回しだ」

 俺は、決意を固めて、振り返る。

「ちょっと、あの壁と、話し合いをしてくる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ