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第34話 狙われたお宝と、監視作戦開始!

「サイラスが次に狙いそうな場所……時空関連のアーティファクトがあって、なおかつ厳重な警備が敷かれている場所……か」


 エレノアさんの店の工房で、俺たちは街の地図を広げ、頭を突き合わせていた。ただの窃盗事件の捜査が、いつの間にかプロの暗殺ギルド員との知恵比べ、そして先読み合戦へと発展している。……俺の異世界ライフ、ハードモードすぎやしませんかね?


「まず考えられるのは、市立博物館の地下にある『封印されし宝物庫』ですわね」

 エレノアさんが、地図上の一点を指差す。

「あそこには、古代文明の遺物が多数保管されており、中には時空に干渉する力を持つとされる品も……。警備も、物理的な罠に加え、高位の魔術師による結界が何重にも張られています。サイラスにとっては、格好の『挑戦』かもしれませんわ」


「へぇー、博物館ねぇ。忍び込むの、大変そうだけど、お宝はありそう!」

 リリアが、少しだけ目を輝かせる。……君は、完全に冒険気分だな!


「次に、個人のコレクションですが……『ヴァレリウス卿』の屋敷も怪しいですわね」

 エレノラさんが、別の場所を指す。

「あの偏屈な貴族か……」

 俺は顔をしかめる。ヴァレリウス卿は、危険な魔道具を蒐集するのが趣味で、そのセキュリティの高さを自慢していることで有名だ。侵入者には容赦しない、とも聞く。

「彼のコレクションの中にも、いくつか曰く付きの古代遺物があるはずです。自慢の『侵入不可能な宝物庫』は、サイラスのような男の攻略意欲を刺激するかもしれません」


「あとは……最近、再発見された、街の地下に広がる『旧水道遺跡』の一部、かしら」

 エレノラさんが、地図の別のエリアを示す。

「あそこは、古代の祭祀場か何かだったという説もあって、未発見の遺物が眠っている可能性が指摘されていますわ。公式な調査はまだですが、裏の情報網では、すでにいくつか『お宝』が見つかったという噂も……。警備は手薄ですが、内部構造が複雑で、不安定な場所も多い。隠密行動には向いているかもしれません」


 博物館、貴族の屋敷、地下遺跡……。どれも、いかにもな場所だ。


「……候補がいくつか挙がりましたけれど、全てを同時に監視するのは不可能ですわね」

 エレノラさんは、うーん、と少し考える。

「どうするの、母さん?」

「優先順位をつけましょう。ヴァレリウス卿の屋敷は、警備が厳重すぎて、我々が下手に近づけば逆に怪しまれます。ここは一旦保留し、別の方法で情報を探ることにします」

「じゃあ、博物館と地下遺跡?」

「ええ。この二つに絞って、監視体制を敷きましょう」


 エレノラさんの目が、俺たちに向けられる。……役割分担の時間だ。


「まず、博物館。ここはわたくしが担当します。わたくしの魔法ならば、外部からでもある程度、宝物庫周辺の魔力の流れや、侵入者の気配を探ることが可能ですわ」

 遠隔監視、ということか。さすがエレノラさんだ。


「そして、リリアとカイトさんには……」

 来た!


「旧水道遺跡の方をお願いしたいのです」

「やった! 遺跡探検!」

 リリアが、ぱっと顔を輝かせる。

「えっ!? あ、あの地下遺跡に、俺とリリアだけで……ですか?」

 俺は、思わず聞き返す。警備は手薄かもしれないが、不安定で、何があるかわからない場所だぞ!?


「ええ。リリアの戦闘能力と、カイトさんの……その、妙な『勘』があれば、二人でも十分対応できるでしょう。それに、万が一サイラスが現れたとしても、あなたたち二人なら、すぐに撤退することも可能なはず」

 エレノラさんは、にっこり微笑む。……俺のヘタレ具合を計算に入れた上での判断か! ありがたいような、情けないような……!

「目的は、あくまで『監視』と『情報収集』です。決して、無理に戦闘を仕掛けたり、深入りしたりしないこと。いいですわね?」

「「はい!」」

 俺とリリアは、(俺は若干引きつりながらも)返事をした。


 こうして、俺たちの監視作戦の役割分担が決まった。

 エレノラさんは博物館の遠隔監視。

 俺とリリアは、旧水道遺跡の巡回・監視。


「では、早速準備を始めましょう。サイラスがいつ動くか分かりませんから」

 エレオノラさんの言葉に、俺たちは頷く。


 ついに、影の実行犯『サイラス』を捕捉するための、具体的な行動が始まる。

 相手は、隠密と罠解除の達人。俺たちのような素人同然のチームで、本当に太刀打ちできるのだろうか?


 俺は、リリアと一緒に、旧水道遺跡へ向かうための準備(松明やロープ、非常食、そして大量の胃薬)を始めながら、これから始まるであろう、危険な『待ち伏せ』に、期待よりも遥かに大きな不安を感じていた。


(……どうか、何も起こりませんように……!)


 神頼み(どの神だ?)しかできないのが、今の俺の現実だった。

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