表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/29

再会

再会 ――十月二十一日(土)十六時二十五分――


 指定場所である朽ち果てた建物の前に、一人の女性が立っていた。

 スラリと伸びた長い手足、大人びた端正な顔立ち……。

 畑中香澄だった。

 香澄は、用心のために左右を見回した。生垣の外側から敷地内を遠巻きに見つめている、数人の男たちの姿が見えた。男たちは、香澄の視線を感じたのか、怯えたように物陰に隠れた。

 香澄は、小さく深呼吸をし、男たちを無視して敷地内に入った。そのまま、建物内に足を踏み入れると、足音を忍ばせながら、廊下を進む。

 香澄は、廊下の突き当たりまで進むと、僅かに開いたドアから部屋の中に目を凝らす。

 少しずつ、暗闇に目が慣れてくる。

 まるで倉庫のような、広々とした空間だった。その奥に、高校の制服らしい服装に身を包んだ人物が、後ろ手に縛られた状態で座り込んでいた。

 香澄は、縛られたまま俯いている人物の顔を、細部まで確認する。


 石塚紗季に間違いなかった。


 十年近くの月日がたっているが、当時の面影がそのまま残っていた。紗季の横には、一人の長身の人物が佇んでいた。

 人物の顔は、闇に紛れているため、判別できない。その人物は香澄に気づくこともなく、紗季に話しかけた。

「できの悪いミステリー小説みたいなこんな作戦が、ここまで上手くいくとは思わなかったよ」

 高揚しているのか、やや早口だ。

「あの監禁写真が自作自演の写真だとも知らずに、のこのことやってくるなんて……。笑っちゃうね。外には、何人か見届け人もいるみたいだし、最高の見世物にしないと」

 紗季が、ほんの少し顔を上げた。

 香澄は腕時計を見る。時計の長針と短針は、ちょうどライブ配信がはじまる十六時二十五分を指していた。

 時計の秒針に急かされるように、香澄は二人がいる部屋の中に足を踏み入れた。そのとき、右足の爪先が、床に転がっていたコーヒーの空き缶に触れた。空き缶が床を勢いよく転がり、大きな音がガランと室内に響いた。

 その音に、紗季の前に立っている人物が、振り向きながら叫んだ。

「誰!」

 九年前とはずいぶんと雰囲気が変わってしまっていたが、見覚えのある顔だった。いや、忘れようとしても、忘れられるはずがない。小学校低学年までの幼い時期を共に過ごした妹、その人だった。

 香澄は、思わず呟いた。

「葵……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ