ボディーガードは魔界の住人
〜プロローグ〜
ここは魔界と人間界を繋ぐ中間地点。"亜空間"
魔界と人間界の均衡を保つ為の場所。
普段は平和なこの場所だが、ある力を巡って妖怪達が暴れ始めていると言う噂が瞬く間に広まった。
更にその力を持っている者が人間界にいるとの情報が入った。
その人間自身は力がまだ使えないでいる為、力が発揮されてしまう前に殺そうと目論んでいる。
力を得る為にはその人間を殺し、心の臓を食べる必要がある。
今までは人間界に干渉して来なかったはずの妖怪達が人間界に脅威を見せ始めたのだ。
亜空間。
躯斬「雲花、葉山龍と言う男の所にクレナをボディーガードとして連れて行け」
雲花「承知しました躯斬様」
<躯斬>(年齢不詳)
亜空間にて世界の均衡を保つ為に働く
雲花の直属の上司的な存在
<雲花>(年齢不詳)
魔界と人間界の均衡を保つ為に任務を遂行する係
<霧覇>(72歳)
かなりふざけた性格だが身体能力は普通の人間と比べて桁違いに強い
妖怪との遭遇により龍と春樹の師匠になる
<葉山龍>(14歳)
葉山道場の1人息子
短気単純
愛想が悪い
母親を早くに亡くしている
トレーニングはしてないが格闘センスはピカイチ
特殊な力を持つことで妖怪達に命を狙われる
<葉山蓮>(33歳)
龍の父親
明るく話しやすい
春樹を息子のように可愛がっている
<五十嵐春樹>(14歳)
龍とは別の学校だが何かにつけて龍に戦いを挑んでは負けている
おちゃらけた性格
葉山道場で日々トレーニングに励む
蓮を親父さんと呼ぶほど慕っている
両親はいるが春樹に関心がない上に仕事でほとんど家にいない
<魔界名・クレナ><人間界名・水野花澄>
魔界の住人であるがその能力と信頼性を買われ、葉山龍のボディーガードとなる
<天道凛>(14歳)
葉山龍の幼馴染
気が強い
面倒見が良い
フレンドリー
魔界の中で人間界に案内されるのは信頼されたごく一部の妖怪だけである。
第一話 転校生
先生「みんなに転校生を紹介する
水野花澄さんだ」
水野「よろしくお願いします」
先生「席は葉山の隣りだ」
水野「葉山君、よろしくね」
龍「・・・ああ」
凛「ちょっと龍!せっかく水野さんが声かけてくれたんだからもっと愛想しなさいよ!」
龍「はいはい」
凛「もう!ごめんね水野さん、こいつこう言う奴なのよ」
水野「ううん、いいのよ、ありがとう・・えーと」
凛「私は凛!よろしくね」
水野「こちらこそよろしくね」
第二話 妖怪との遭遇
春樹「龍!今日とゆう今日はお前に勝つ!!」
龍「春樹、お前も懲りない奴だな」
春樹「うっせー!勝負しろぉ!」
15分後。
春樹「あーくそ、何でトレーニングもろくにしてねー奴に勝てねーんだ!」
床に倒れたまま春樹が言うと龍は
「知るかよ」と返した。
次の瞬間。
妖怪「あらら〜こーんなとこにいた」
話しかけてきたのはどうみても人間じゃない生き物。
春樹「おいおい、何だこいつは!」
春樹もすぐに体制を整えた。
妖怪「葉山龍とか言うのはお前だな」
龍「あぁ・・・そうだけど?」
と龍は汗を垂らしながら返答した。
春樹「龍!何かこいつヤばくね!?」
龍「そんなもん見れば分かる!どうやら俺に用があるらしい、春樹は先に帰ってろ」
春樹「ばか、そんな事言ってる場合じゃねーだろ」
妖怪「何だぁ?お前も邪魔すんなら殺しちまうぜ〜?」
龍は春樹の前に立った。
龍「おい、何か武器になるもん探せ」
春樹にそう言うとその妖怪に一歩近く。
春樹「分かった、死ぬなよ?」
龍「ああ」
とは言えこれは洒落にならないな。
妖怪が龍に襲いかかる。
その攻撃を間一髪で避けてパンチを腹に食らわした。
妖怪「へへへ、人間にしちゃーやるなと言いたいとこだが全然効かねーなぁ笑」
俺はみぞおちを殴られて膝をついた。
冷や汗がダラダラと流れる。
龍「ぐぅ!!」
まじかよ、化けもんだコイツ・・・ダメだ殺される。
もう一度殴りかかろうとする妖怪の背後から春樹が鉄パイプで攻撃した。
妖怪「いてぇなぁ、てめーさっきの」
春樹「わりー遅くなった、生きてっか?」
龍「あぁ、なんとかな」
今度は春樹が龍の前に立った。
龍の空手が全く効かない。半端じゃねー。
こんなもんで対抗できんのか分かんねーけどやらなきゃこっちがやられる。
春樹は鉄パイプで妖怪に攻撃しようとした。が、妖怪が振り上げた腕で飛ばされてしまった。
妖怪「ざんねんでしたぁ〜」
春樹「この!!」
パンチを繰り出すもあっさりと避けられ殴れた。
春樹「ぐぁ・・」
妖怪「だから邪魔すんなって言ったろ〜」
龍「春樹に何しやがる!てめぇふざけんなよ!」
そう叫んだ瞬間、龍の体が光を帯びた。
妖怪「何ぃ!?」
もう一度奴にパンチを喰らわすと今度は妖怪が膝をつく。
妖怪「まだ力使えないんじゃなかったのかよ」
龍「?何の話だ?」
妖怪「ぐおっ」
後ろから春樹が鉄パイプで妖怪の頭を殴った。
妖怪「人間なんかに・・・」
そう言い残して妖怪は倒れた。
2人は地面に倒れながら話す。
春樹「何なんだよこいつ」
龍「俺が知るかよ」
春樹「龍を狙ってたな」
龍「あぁ、一体何がどうなってるんだ?」
少し休んだ後、2人は肩を組みながら歩いた。
少し離れた木の後ろ。
霧覇「ふむ、葉山龍、なかなかやるのう」
クレナ「葉山龍、やっぱり特別な力があるって言うのは本当みたいね」
第三話 ボディーガード
しばらく歩いていると目の前に1人の女が立っていた。
雲花「君が葉山龍君ね」
おいおい、今度は何だよ。
龍「だったら?」
春樹「誰このコ、てか可愛くね?」
龍「お前なぁ、この状態でよくそんなこと言ってられるな」
春樹「ははは、つい」
龍「で、あんたは何の用?俺ら今それどころじゃないんだけど」
雲花「もう妖怪がここまで来たのね」
龍「あんた何か知ってるのか?」
雲花「とりあえず、ここじゃまずいわ、場所を変えましょう
傷も手当てしなくちゃだしね」
春樹「え、君が手当てしてくれるの?」
龍「春樹、お前はちょっと黙ってろ」
雲花「とにかく、2人を連れていくわ」
その女が手をかざすと歪みのようなものが現れた。
さっきの妖怪と言い何なんだよ。
春樹「何だこりゃあ!?」
龍「あんた何者だ?」
2人の体がふわりと浮く。
雲花「説明は後、とにかく"霧覇"のところへ連れて行くわ」
一瞬のうちに3人の体は歪みへと吸い込まれた。
目を開けると布団の中だった。
龍「どこだ、ここは・・・」
龍は意識がはっきりしないまま聞いた。
霧覇「ほっほっほ、ワシの家じゃよ」
春樹「え、誰このおじいさん!?」
雲花「この人は霧覇よ、あ、ついでに私は雲花って言うの
よろしくね」
龍「あんた何者だ?普通の人間じゃないよな?」
雲花「まぁまぁ、落ち着いて聞いて
ちゃんと説明するからさ」
龍「はー、分かったよ」
体の傷は治療されてるし危害を加えて来る素振りもない。とりあえずさっきの妖怪とは無関係なようだ。
ひとまず安心か。
雲花「ザックリ言うとさっきの妖怪は魔界から来た悪い奴ってとこかしらね
それで襲われた理由だけど
葉山龍君、君の体にはもの凄い力が眠っているの
その力を奴らは狙ってるのよ
力が目覚めたら君に勝てなくなり奴らは力を得られない
だから、力が目覚めてしまう前に君を殺して力を得ようって企んでるのよ」
そこまで聞くと春樹が質問した。
春樹「ちょっといい?雲花ちゃん、龍を殺しただけでそんな簡単に力なんて得られるもんなの?」
雲花「いや、心臓を食べないと得られないよ」
俺と春樹はゾクリと寒気を感じた。
龍「で?その話が全部本当だとして
あんたとこのじーさんは何者なんだ?」
雲花「霧覇は人間が妖怪に対抗できる力を持った凄い人なのよ
それと私だけど魔界と人間界の間にある亜空間から来たの
魔界と人間界の均衡を保つ為の仕事を任されていてね
君の力に気付くまでは妖怪達は人間界に干渉しなかった
でも力の存在を知った奴らは人間界で君の命を狙いに来た」
龍「って事はこれからも俺は命狙われ続けるって訳か
洒落にならない事態だな」
雲花「そう!そこで龍君!君にボディーガードを紹介するよ」
雲花は得意げに龍を指差した。
龍「ボディーガード、だと?」
霧覇「ほっほっほ、クレナ、もう入って来て良いぞ」
ずっと黙っていた霧覇が口を開いた。
ガラッと扉が開き、その先にいたのは・・・。
龍「え?・・・お前」
春樹「龍、この可愛い子ちゃん知ってんの?」
龍「あぁ、今日転校してきた女だ、俺の隣の席にいる」
雲花「人間界での名前は水野花澄、魔界での本名はクレナ」
春樹「え!?ってことはこのコも妖怪なの?」
霧覇「そうじゃよ」
龍「ちょっと待て、さっき妖怪が俺の力狙ってるって言ったばかりだろ?」
雲花「安心して、クレナは心配いらないから
妖怪に対抗できるのは特殊な力を持った人間か妖怪だけ
妖怪の中にも危害を加えずに手を貸してくれる妖怪はいるの
安全だと判断されたごく僅かだけどね
今回、快くこの任務を受けてくれたのよ」
クレナ「ごめんね、本当は早く助けてあげたかったんだけど」
霧覇「あの妖怪くらいの力なら2人で何とかするじゃろうとワシが止めたんじゃ
もし死にそうになった時の為にわしとクレナが待機してたしのう」
龍「何とかできる訳ないだろ!あんな化けもん相手に!俺も春樹も殺されかけたんだぞ!」
霧覇「じゃが現に死んでおらんじゃろ
お前さん、途中で力が解放されたんじゃないか?」
春樹「そう言えば、俺がやられそうになった時、龍の体が光って
そんで攻撃したら奴が倒れて・・・」
霧覇「春樹君じゃったか?それは君を守ろうとして咄嗟に力が出たんじゃろう
自覚はないようじゃが」
春樹は龍の方をチラッと見た。
龍「別に俺はそんなつもりじゃ・・・」
龍は少し照れ臭そうに頭をガシガシ掻きながら言った。
春樹は龍を横目で見るとフッと笑った。
霧覇「龍君、君はひとまずは毎週休みはここで修行してもらう」
龍「あ?なに勝手に」
霧覇「クレナにはボディーガードとして君の側についていてもらう
しかし、彼女にも魔界での生活がある
時間を作って来てくれたのじゃ感謝せい
つまり、しばらくの間はボディーガードとして人間界にいるが君の力が妖怪に対抗できるくらいになったら魔界へ戻ると言う訳じゃ」
春樹「こんな可愛い子にそんな危険な事させるの?
どう見たって普通の女の子だけど・・・」
霧覇「大丈夫じゃよ、クレナはその危険な魔界から来たんじゃから
姿は限りなく人間に近い姿に変化させておるがの」
どう見ても強そうに見えないが・・・。
龍「こんな小さくて華奢な女にボディーガードやらせんのかよ・・・」
霧覇「そう思うのなら1日も早くお前さんが強くなって彼女を魔界へ返してやればよい」
龍「う・・・あーもう、分かったよ!!」
霧覇「ただし、修行はかなりキツいから覚悟しておくんじゃぞ」
龍「ああ」
春樹「よし、分かった!!」
龍「春樹?」
春樹「じーさん、俺も明日から修行させてくれ!」
龍「おい、何でお前まで」
霧覇「わしは構わん」
春樹「男としてこんな可愛い子達を危ない目に合わすのは性に合わないからな
それにお前を倒すのは俺だからな?
その前に訳の分からん奴らに殺られたりしたら困る」
春樹は自分を指差しながら言った。
龍「春樹、お前・・・」
霧覇「決まりじゃな、とは言えお主らの生活があるのも分かるからのう
本来なら毎日修行させたいが周りに怪しまれて騒ぎにでもなっては困る
ひとまず休みの日だけでよい、修行しに来なさい」
龍「ああ、分かった」
ふむ、意外と素直じゃな。
2人は雲花の力で自宅へと戻った。
第四話 日常と修行 前編
休み時間、俺はいつものように屋上にいた。
クレナ「ボディーガードって言っても四六時中付け回したりはしないから安心してね
何かあったらすぐ飛んで来て必ず守るから」
龍「色々悪いな」
俺なんかの為に・・・。
龍はクレナの腕を掴んだ。
クレナ「へ?」
龍「こんな細い体なのにボディーガードなんて」
顔を真っ赤にして俯いてるクレナに気付くとパッと手を離した。
龍「っと悪い!」
僅かに龍の顔まで赤くなる。
クレナ「う、ううん、あ!私そろそろ教室戻るね!」
龍「あ、ああ」
クレナは扉を閉めると龍に掴まれた自分の手首をもう片方の手でぎゅっと掴んだ。
クレナ「びっくりした」
パタパタと足音が小さくなっていく。
龍は自身の手を見つめた。
龍「あいつの腕強く握ったら折れそうなくらい細かったな」
帰る途中、凛に呼び止められた。
凛「龍ー!帰ろ!」
龍「凛、もう子どもじゃないんだからお前も一人で帰れよ」
凛「いいじゃない幼馴染なんだから、って龍!?ちょっと!」
俺は凛の不意を突いて逃げた。狙われるのは俺1人で充分だ。
凛の目が届かないよう木が沢山生えてる人目のつかない場所へと向かった。
しかししばらく歩いてると目の前に凛が仁王立ちで立っていた。
先回りしたらしい。
龍「!」
凛「もう!何で逃げるのよ!」
こいつ俺の気も知らないで・・・。
龍「いいから先に帰れって」
凛「あのねぇ!・・・きゃあ!?」
龍「!こんな時に・・・」
龍は咄嗟に凛を庇う。
風が一瞬騒いだその直後、目の前に妖怪が現れた。
妖怪「ターゲットみーつけた♪」
ちょっと待て、この前の奴よりデカい・・・。
凛「ちょっと龍!何なのこいつ!?」
凛は完全に青ざめている。
せめて凛だけは逃がさないと。
龍「説明は後だ!とにかく逃げるぞ!」
凛は頷いた。
逃げようとした瞬間、その妖怪の動きが止まった。
妖怪「ぐわぁ!!」
妖怪は唸りを上げたと同時に倒れた。
龍「!?」
その背後にクレナが立っていた。
凛「え?水野さん!?」
クレナ「龍君、天道さん、大丈夫?」
龍「あぁ、クレナのおかげで助かったよ」
やっぱクレナは強いんだな・・・何したか全然分からなかった。気付いたら目の前に妖怪が倒れてた。
凛「ちょっと、クレナって?さっきの化けものは何なの?ターゲットって言ってたけどどう言う事ー!?」
俺は一通りの状況を凛に説明した。
あの妖怪を見た後じゃ嘘つきようがない。
凛「だいたい分かったけど、まだ信じられないわ」
龍「俺も信じられなかったよ」
凛「水野さんが人間じゃなかったなんて・・・」
クレナ「天道さん、私の事も怖い?」
そう言うクレナは少し切なそうな表情にも見えた。
凛「ううん、クレナさんは怖いって感じしない」
凛はふるふると首を横に振った。
それを聞いたクレナは安堵した様子だった。
凛「だって私も龍もクレナさんがいなかったら今頃殺されてたもの!ありがとうクレナさん」
クレナは優しく微笑んだ。
凛「ねぇクレナさん」
クレナ「何?」
凛「クレナさんはどうしてボディーガードを引き受けてくれたの?」
龍「それは俺も気になってた」
クレナ「そんな深い意味はないよ?単純に人間界を見てみたかったの
私は力には興味なかったし人間界に危害を加えようとも思ってなかったから」
凛「そのボディーガードの相手がよりによって龍なんて不運よねー」
凛はチラッと龍を見た。
龍「お前なー」
クレナ「私は」
龍「ん?」
クレナ「龍君に会えて良かったなって思ってるよ」
ふわっと笑いながらクレナは言った。
龍「ドキッ」
ん?ドキッ?
クレナ「じゃあ私は帰るね!」
そう言うとクレナは姿を消した。
それから学校帰りは凛が待ち伏せするようになった。
まぁ今に始まった事ではないが・・・。
クレナは凛に気を使ってか1人で帰っていた。
第五話 日常と修行 後編
今日は妖怪に出会してから初めての休日。
これから休日は泊まり込み。いよいよ修行スタートだ。
霧覇「手加減はせんからそのつもりでのう」
龍「はいはい」
春樹「ま、龍はともかく、俺は葉山道場で鍛えてるんだ、問題ないだろ」
龍「どうだか」
クレナ「2人とも頑張ってー!」
「「おう!」」と2人は返事をした。
丸二日間、一通りの修行メニューを終えた二人は・・・。
春樹「龍、俺しにそーだわ」
龍「同感だ、こんなの続けられる訳ないだろ」
春樹「俺もそう思う」
霧覇「ほっほっほ、辞めるのは勝手じゃが"クレナにだけ"戦わせっぱなしで良いのかのぉ?」
霧覇はニヤニヤしながら言い放つ。
龍「クソじじー」
霧覇「ま、今回はこれで終わりじゃ
茶でも飲んで行きさない」
春樹「何だよ霧覇のじいちゃん気が効くじゃんか」
するとクレナがタオルを持って走ってきた。
クレナ「はい」
龍「おー」
春樹「ありがとー!クレナちゃん優しい〜こう言うのもいいな龍」
龍「まぁな」
春樹「ったく素直じゃねーなぁお前は!」
と春樹は肘で龍の肩をぐりぐりと突いた後、肩を組みながら歩き始めた。
龍は嫌がっているが本気で拒絶はしていない様子だ。
クレナ「ふふ、仲良いなぁ二人とも」
その後、お茶を飲みながら話をした。
クレナがお茶を入れてきてくれた。
霧覇「うむ、ありがとうクレナ」
龍「おー」
春樹「クレナちゃんありがとう!はぁ癒されるわぁ〜」
龍「つかじじいがお茶入れて来るんじゃなかったのかよ」
クレナ「私がやるって言ったからいいんだよー」
霧覇「ほっほっほ、それじゃあ、わしの入れた茶が飲みたかったかのぉ?」
とまたもやニヤニヤした表情で言った。
龍「ほんっとにムカつくじじいだな」
春樹「まぁまぁ!俺もクレナちゃんが入れてくれたお茶が良いな〜」
ははは、霧覇のじいちゃん龍を煽るの上手いな。
おもしれーわ。
俺達3人は一緒に家の近くまで帰った。
第六話 告白
2か月後。
龍の奴、あれは絶対クレナちゃんの事好きだな。
だってクレナちゃんと話してる時、明らかに表情優しくなってるし。
何となくだけどクレナちゃんも龍に好意持ってる感じするんだよなぁ。
なんて事を考えながら1人で歩いていると公園の近くを通った時に見えたのはクレナちゃんだ。
クレナちゃんがブランコに乗りながら俯いてるように見えた俺は話しかけた。
春樹「よ!」
クレナ「春樹君」
前にクレナちゃんは帰りに用があるから1人で帰ってるって龍から聞いてたけど
春樹「用があるって感じには見えないよなぁ」
クレナ「あの、龍君には・・・」
春樹「大丈夫、言わないよ」
クレナ「ありがとう」
春樹「・・・クレナちゃんは龍が好きなんだね」
クレナ「・・・うん」
ったく罪な男だぜ。あのバカ。
河原で寝転がってると春樹が話しかけてきた。
春樹「今日はいい天気だなぁ・・・」
龍「・・・」
チラッ。
春樹「クレナちゃん可愛いよなぁ」
龍「あぁ・・・!?」
春樹「何だ、やっぱお前クレナちゃんに惚れたんか?」
龍「別に」
龍はふいっと顔をそらす。
春樹「あ!クレナちゃんだ!」
龍の耳がピクッと反応する。
春樹「うっそー」
んべぇっと両手の人差し指で口を開きながら舌を出す春樹。
龍「春樹の分際で俺をおちょくるなんて100万年早い!」
龍は春樹にヘッドロックをかける。
春樹「いだだだ!つか、普通に帰り道クレナちゃんと帰ればいいのに
」
龍「俺もそのつもりでいたんだけど、俺や凛に気を使って先帰っちまうんだ」
春樹「ふーん、じゃあクレナちゃんの事は誰が気使ってあげればいいんだろうなぁ」
龍「!」
春樹「それは俺の役目じゃないよな?」
龍「あぁ、分かってるよ」
あれ、大人しくなっちゃった?ま、たまにはいい薬だろ。
次の日。
凛「龍!帰ろ!」
龍「凛、今日は1人で帰れ、クレナと2人で話したい事がある」
凛「え・・・それって私がいたらまずい話?」
龍「あぁ」
凛「わ、分かったわよ」
そんな顔されたら何も言い返せないじゃない・・・。
クレナが校門のところで待っていた。
俺はすぐにクレナのところへ駆け寄った。
クレナは凛に会釈をして歩き始めた。
龍、あんな顔もするのね。
初めて見た。龍のあんな優しい顔・・・。
小さい頃からずっと一緒にいたのに知らない表情。
なんか悔しいな。
龍君の話ってなんだろ・・・。
クレナ「それで話ってなに?」
龍「あのさ、俺・・・」
少し俯き加減で話す龍。
クレナはカバンを持つ手にぎゅっと力が入った。
龍「俺、クレナが好きだ」
クレナ「え?・・・」
じっとクレナを見つめる。
クレナ「な、何言ってるの!龍君は天道さんが好きなんだよね?二股はダメだよも〜」
龍「凛は幼馴染でそれ以上の感情はない
俺が好きなのはお前だけだ」
龍は真っ直ぐクレナを見た。
クレナ「ドキッ」
龍「クレナはどうなんだ?」
クレナ「私も、好きだよ」
龍「ずっと気を使ってくれてたんだよな
ごめんな」
龍はそっとクレナを抱き締めた。
クレナ「ううん、龍君、大好きだよ」
龍「あぁ、俺もだ」
涙が滲んだ。龍君の腕の中は暖かった。
第七話 新しい仲間
1か月後。
霧覇「今日は新しい仲間を紹介しよう
おいで」
矢野「矢野遊馬です、よろしく」
霧覇「これからは時々彼に君達の修行の相手をしてもらう
妖怪と実戦できる良い機会じゃろうと思って連れて来たんじゃ
実戦に勝る修行はないからの」
春樹「って事はこいつも妖怪なのか!?」
霧覇「そうじゃよ、本名はコウガじゃ
安心せい、コウガ君は君達に危害を加えるような事はせん
クレナと境遇はちと違うがな
コウガ君、死なない程度に鍛えてやっておくれ」
コウガ「分かりました」
霧覇「じゃあさっそくよろしく頼んだぞ」
コウガ「はい」
霧覇「よし、そこまで!」
龍「もう立てん!!」
春樹「俺も!」
クレナがいつものようにタオルを渡してくれた。
龍「おー・・・さんきゅ」
春樹「ありがとうクレナちゃん、ニヤニヤ」
コウガ「ありがとう」
龍「何ヘラヘラしてんだ春樹?」
春樹「いやー?龍も成長したなぁと思ってさ」
龍「何の話だ?」
春樹「さーねぇ♪」
龍「それにしてもやっぱり妖怪って力凄いんだな
あれでかなり力抑えてるんだろ?」
コウガ「まぁね、でも、俺に勝てないと彼女には勝てないよ?」
龍「え、クレナって魔界の中でもそんな強いのか?」
コウガ「クレナちゃんとは今日初めて会ったけどあの妖力は魔界の中でもかなり上の方だね」
春樹「龍、気をつけないとクレナちゃんにふざけたことしたらぶっ殺されんぞ」
こそっと春樹が言う。
龍「そ、そうだな」
ガラッと戸が開いた。
お茶を入れていたクレナが戻って来たのだ。
霧覇「うむ、ありがとう」
龍「いつも悪いな」
春樹「クレナちゃんありがとう〜」
コウガ「ありがとう」
龍「コウガは何でまた人間界に?」
コウガ「魔界で瀕死の状態になってね
人間に危害を加えないのと修行を手伝うと言う条件で人間界で回復を待ってから魔界へ戻る事になったんだ」
龍「体はもう大丈夫なのか?」
コウガ「ああ、もうへーきさ、実は言うと亜空間に足を運んだ時に雲花達に傷を治療してもらってね
だから人間界に来る前にほとんど傷は治っていたんだ」
龍「そうか、それなら良かった」
コウガ「心配してくれてありがとう」
春樹「俺と龍がさっさと強くなんねーと、2人が魔界へ帰れねぇ訳だ」
!そうだクレナは俺が力が使えるようになったら
魔界へ帰っちまうんだ。
霧覇「龍の力はだいぶ強くなってきておる
少しずつ能力が開花しているようじゃ
これならあと3か月もすれば妖怪に対抗できる力が付き、クレナとコウガは無事魔界へ帰れる」
3か月・・・そしたらクレナと離れ離れになる。
クレナ「・・・」
その日の帰り道。
コウガと春樹と別れた後、俺はクレナと二人きりになった。
クレナ「じゃあ私も」
と帰ろうとするクレナの腕を引っ張った。
クレナ「龍君?」
龍「行くな」
クレナ「え?」
龍「ずっとここにいろ」
クレナ「・・・私もここにいたい」
クレナはポロポロと涙を流した。
龍は泣いているクレナを抱きしめた。
第八話 力の暴走
修行があと1か月くらいで終わると言う時だった。
体育の授業中。
遠目からクレナの様子を見ていた。
あーやって見てると普通の女の子なんだけどな。
だが走っている途中、クレナの様子に違和感を覚えた。
次の瞬間、クレナが倒れた。
凛「水野さん!?大丈夫?」
クラスメイト「大丈夫か水野?」
みんなが心配そうにしている。
先生がクレナを抱き抱えようと肩に手が触れた瞬間。龍はクレナに駆け寄り、バシッとその手を振り払った。
龍「触るな!!」
先生「葉山、先生に向かって・・う・・・」
俺は今までにないくらいの形相で睨んだ。
クレナは苦しそうにしている。
龍「凛、何があった?」
凛「分からないわ、急にフラついたと思ったらそのまま」
龍「とにかく、俺は霧覇の所へ行って来る」
凛「じゃあ私も行くわ」
龍「あぁ」
途中、春樹にも遭遇した。
春樹「龍!クレナちゃんどうした!?」
龍「俺にも分からない、とりあえず霧覇の所へ行かないと」
春樹「分かった!俺も行こう」
パタパタ。
霧覇の家に着くとガラッと勢いよく扉を開けた。
龍「霧覇!!」
霧覇「龍君、どうしたんじゃ・・・クレナ、まさかこんな早く・・・」
龍「おい、それってどう言う事だよ!」
霧覇「とにかく、クレナをベッドに運ぶのが先じゃ
話はそれからしよう」
凛が冷やしたタオルをクレナの頭の上に置く。
いつの間にか来てた浮花も布団をクレナにかけた。
コウガも上記を察知してか来ていた。
霧覇「龍君」
龍「あぁ」
じーさんは俺だけを別の部屋に呼んだ。
龍「どう言う事だよ!霧覇は何か知ってるんだろ?」
霧覇「まぁ、落ち着いて聞きなさい」
霧覇はいつものふざけたトーンではなく静かに諭すような話し方で言った。
それが事の重大さを余計に感じさせた。
霧覇「単刀直入に言おう
今、クレナを助ける方法は一つ
クレナを魔界へ連れて行く事じゃ」
龍「あんな状態でか!?」
霧覇「クレナは魔界の中でもかなり妖力が高い
その為、人間界にいる間は力を抑えながら生活してきた
ある程度の期間は平気なはずじゃった
しかし期間さえ待たずしてこうなってしまうとは思わなかったのじゃ
例えるなら強力なバネを押さえつけているよう状態に近い
少しでも押さえている力を弱めたらどうなるか、分かるじゃろう?」
龍「そんなヤバい状態なのかよ、何で俺に何も言ってくれなかったんだ・・・ずっとそばにいたのに」
霧覇「お前さんに心配かけたくなかったんじゃろ
それくらい分かってやりなさい
それに、そうまでしてお前さんのそばにいたかったんじゃないかね?」
龍「う・・・」
霧覇「このまま放っておけば抑えていた力が暴走するか
もしくはそのまま自滅するか・・・」
龍「そんな事させてたまるか!今すぐ俺かわクレナを魔界へ連れて」
霧覇「分かっておるのか?もう二度と人間界へは戻れないかもしれぬぞ」
龍「それでも俺はクレナと魔界へ行く!」
霧覇「クレナは魔界へ行かせる事は反対するじゃろうな
お前さんと一緒にいたい気持ちは押し殺して」
龍「クレナがじゃないんだ、俺があいつじゃなきゃダメなんだ」
霧覇「お前さんも言うようになったじゃないか」
廊下を歩いていた凛はその話を聞いてしまった。
凛「龍・・・」
クレナは意識が一時的に戻っていたが相変わらず苦しそうだ。
龍「クレナ、今からお前を魔界へ連れて行く」
クレナ「だめだよ・・・もう人間界に」
龍「それでもいい!」
クレナ「でも・・・」
龍「あのな、お前まさか俺を捨てる気じゃないだろうな?」
クレナ「捨てるなんて人聞き悪い・・・」
龍「俺のこと大好きだって言っただろ!」
コウガ「龍君、相当切羽詰まってますね」
春樹「龍の奴もうヤケだな、あんな取り乱す龍、初めて見たぜ」
龍「俺はお前の事を思い出になんかできない
それでもそんな状態で一人で魔界へ行くって言うんなら俺が人間界で暴れる!」
クレナ「ちょっと何でそうなるの・・・」
春樹「龍、お前駄々っ子みたいだぞ」
龍「うるせぇ!」
クレナ「分かった、じゃあ龍君、私を魔界へ連れてって」
龍「ああ」
俺はクレナを抱き抱えた。
龍「春樹、親父にはテキトーに話しといてくれ」
春樹「ああ、分かってる、龍!俺はお前みたいに力がねぇ、悔しいがお前がクレナちゃんを守ってやれよ」
龍「分かってるよ」
霧覇「ほっほっほ、魔界でも守ってもらうのはお前さんの方じゃがのう」
龍「くそじじー」
コウガ「龍君、俺も後から魔界へ向かうよ、会ったらまたよろしく」
龍「あぁ、また会おう、凛、またな」
凛「龍!!」
二人はパシュと歪みの中へと消えた。
番外編 酔っ払いクレナ
飲み物を取りに行ってた俺が部屋のドアを開けると・・・。
クレナ「あ、りゅーくん〜!」
顔が真っ赤になっているクレナ。
龍「?クレナ酔ってるのか?」
クレナ「わたし酔ってないよ〜」
春樹「すまん、まさかウイスキーボンボンで酔うとは思わなくて」
コウガ「食べたいと言われるとつい沢山与えてしまう俺の悪い癖が」
龍「お前らなー・・・」
クレナ「りゅーくん!!」
龍「ビクッ!な、何だ?」
クレナのやつ何か怒ってないか?
春樹「酔うと本性出るからなぁ〜たまにはクレナちゃんに怒られろー笑」
龍「あのなぁ」
クレナ「りゅーくん!!」
龍「ど、どうした?」
まぁ酔っ払って普段言えないでいる事言ってもらうのもいいか。
クレナは自分の気持ち押し込めるとこあるからな。
クレナ「何でりゅーくんはそんなにーカッコいいんですか!」
ペシペシとクレナは机を叩く。
龍「え?」
コウガ「クスッ、どうやら普段我慢してたのはそっちだったみたいだね」
雲花「なーんだ!私はてっきりボロクソに言われるもんだと思ってたけどねぇ笑」
龍「おい、お前らさっきから言いたい放題」
クレナ「よそ見しないでってばー!」
龍「わ、悪かったよ」
春樹「龍のこんなタジタジなとこ初めて見た」
クレナ「ちゃんと答えてください」
龍「って言われてもなぁ・・・」
クレナ「りゅーくんは私がどれくらい好きか分かってないんですよー」
龍「・・・どれくらい好き?」
一瞬考えると急にまじトーンで言った。
クレナ「ふぇ?こんっくらい!!」
両手を思いっきり広げている姿が可愛い過ぎるんだよ。
春樹「あのーちょいちょい、俺らもいるんだけど
な!コウガ」
コウガ「見ているこっちが恥ずかしくなりますね笑」
雲花「ほんとだよ」
春樹「よっし雲花ちゃん、コウガ君、追加の買い出しに行こうか〜!」
コウガ「ですね笑」
雲花「行こいこ!」
龍「おい、お前らどこへ」
バタンとドアが閉まった。
龍「行っちまった・・・」
龍「クレナ、水飲むか?クレナ?」
クレナ「すぴー」
龍「って寝てんのかよ!はぁ、全く人の気も知らないで・・・」
番外編 酔っ払い龍
春樹「どんな人でも酔う酒?」
コウガ「魔界でも酔わないでいられる妖怪はごく僅かなんだ」
春樹「龍がトイレから帰ってきたら内緒で飲ませようぜ」
クレナ「えー龍君大丈夫かな」
コウガ「体に害のあるものは入ってから大丈夫だよ」
春樹「クレナちゃんも見てみたくない?酔っ払い龍」
雲花「そうそう、酔うと本音出るって言うし知りたくない?」
クレナ「う、ちょっと見てみたいかも」
春樹「でしょでしょ〜」
コウガ「龍君、これ飲んでみない?」
龍「ん?変わった瓶だな」
コウガ「魔界の飲み物なんだけど、美味しいよ、
飲んでみない?」
龍「ああ」
コウガ、ナイス‼︎
クレナ「ドキドキ」
ゴクゴクっとコップの酒を飲み干した。
龍「・・・」
クレナ「龍君・・・大丈夫?」
クレナは龍の顔を心配そうに覗き込む。
ぎゅっ
龍「クレナ」
クレナ「え!?」
龍「大好きー」
こ、これが酔っ払い龍君?か、可愛い・・・。
春樹「これは・・・」
雲花「あらま」
春樹「うわぁ・・・龍ってこう言うタイプだったのか」
コウガ「クス、龍君可愛いですね」
クレナ「龍君・・・あの、あんまくっ付かれると私やばいんだけど・・・」
龍「んー、何がー?」
クレナ「何するか分かんないよ私」
龍「んー?俺クレナなら何されてもいいー」
プツン。
一同「あ、ヤバいな」
春樹「てゆうかクレナちゃんもちょっと酔ってる?」
クレナ「・・・」
グイッと龍の手を取るとお姫様抱っこした。
龍「うわ!?」
スタスタ。
そのままベッドへと龍を横たわらせる。
クレナ「優しくするから」
龍「クレナ・・・」
コウガ「ていっ!」
クレナ「グフッ」
コウガが背後からクレナのクビにチョップをすると意識を失った。
龍は横になったのもありすぐに寝てしまった。
コウガ「ふぅ、危なかった」
春樹「さすがコウガだ・・・」
雲花「これ以上は2人きりの時にしてもらわないとね」
春樹「まぁ飲ませた俺らも悪いしな
雲花ちゃん、コウガ、どっか飲み行くか」
雲花「そうだねぇ」
コウガ「そうしよう」
クレナ「う・・・あれ、私どしたんだっけ
何か後ろから衝撃くらったような・・・」
龍「すやすや」
クレナ「龍君の寝顔可愛いな、しばらく見てよ」
龍「ん・・・あれ、そうか、俺あの後すぐ潰れたんだった」
思い出した、俺、クレナに抱きついてそんで・・・その後から記憶ないけど
クレナ「龍君おはよう」
ぱちっと目が合う。
龍「お、おはよ
あのさ、俺、あの後クレナになんかした?」
クレナ「覚えてないの?」
って私も記憶ないけどね。でも面白いからちょっとからかっちゃお。
龍「お、覚えてない・・・」
クレナ「フフ♪龍君、可愛いかったなぁ」
龍「ガ〜ン・・・」
クレナ「って嘘うそ!実は私も・・・龍君?」
ガシッとクレナの腕を掴む。
龍「同じ事して」
クレナ「続き?」
龍「いや、最初から」
クレナはクスッと笑うと龍にキスをした。
第九話 魔界へ
龍「ここが魔界・・・」
魔界へ着いた瞬間クレナの体が宙に浮いた。
龍「クレナ!?」
クレナの体が光に包まれた。眩しくて直視できない。
その光が外側へと放出された。
その衝撃で俺は数メートル飛ばされた。
龍「うわ!!・・・凄い、これがクレナの抑えてた力」
光が消えるとゆっくりとクレナは目を開けた。
クレナ「龍君、ありがとう、もう大丈夫だよ」
龍「これがクレナの本当の姿なのか?」
クレナ「うん、嫌いになった?」
龍「いや、驚いたけどそれはない」
クレナ「良かった・・・!」
龍「?」
クレナは空を見上げた。
クレナ「何か来る」
龍「え?」
遠くの方からこちらへ近づいてくる。
クレナは俺を庇うように前に立った。
妖怪「おやおやー?何で妖怪と人間が仲良く一緒にいるんだー?へへへ」
いやデカ過ぎるだろ・・・人間界にいた妖怪とは桁が違う。
クレナ「龍君、下がってて」
龍「大丈夫なのか?」
クレナ「問題ない」
妖怪「へへへ、2人まとめて食ってやるぜ」
クレナが技を繰り出そうと構える。
妖怪「おらあぁ!へへ、あれ!?ぐあぁ!!」
妖怪がドサッと倒れた。
な、何だ?クレナ今何したんだ?全然見えなかった・・・。
クレナ「じゃあ龍君、今から修行始めようか」
龍「え、修行?」
クレナ「そうだよー!私がそばに居ない状況だってこれから出てくるだろうし
いざという時に戦えるくらいの力は身につけとかなきゃ!」
そうだよな、霧覇の修行受けたって言ってもここ魔界では通用しないんだよな。
龍「確かに・・・よし、クレナ頼む」
クレナ「OK!」
これは俺的にラッキーかも。
修行はずっと霧覇相手だったし・・・。
クレナなら優しく手取り足取り教えてくれるはず。
数分後の俺はこんな妄想をしてた事を後悔する事になる。
クレナ「ちょっと龍君、そんなんでへばってたら修行になんないよ、さぁ立って!」
霧覇よりハードだった。
龍「クレナ、少し休ませてくれ」
地面に大の字になってゼェゼェしていると。
クレナ「何言ってんの!まだ始まったばっかなんだから」
この体勢は・・・。
龍「ピンク」
クレナ「ニコッ」
龍「あ・・・」
クレナ「まだ、力残ってるみたいだね」
龍「お前がそんな短いスカート履いてるから」
クレナ「問答無用!!」
龍「うわあぁあ!!」
番外編 コウガの日常
コウガが散歩をしていると捨て猫が箱に入れられていた。
子猫「にゃあ」
コウガ「おいで」
コウガは子猫を抱っこするとある場所へと連れて行った。
コウガ「霧覇さん、いつもすみません」
霧覇「良いんじゃよ」
霧覇は子猫を優しく撫でた。
霧覇「お前さん、コウガ君に見つけてもらえて良かったのう」
コウガ「お世話大変じゃないですか?」
霧覇「いや、ここは放っておいても栄養が取れるような場所じゃからな
怪我をしているコ以外はほったらかしじゃから手間は掛からんよ
場所だけ提供してるだけに過ぎん
それでも強く生きておる
このコ達の生命力には驚かされるばかりじゃ」
コウガ「そうですね」
霧覇「コウガ君はあのコ達の救世主じゃな」
コウガ「そう言われると照れますね」
霧覇「コウガ君、君にも救世主はおるのじゃろ?」
コウガ「分かるんですか?」
霧覇「伊達に年は取っておらんからのう」
コウガ「ははは、ええ、いますよ
でも、勝手に負傷して勝手に人間界へと来て
彼女を魔界に置いてけぼりにしてしまった
もう愛想を尽かされてるかもしれないですがね」
霧覇「ほっほっほ、若いのう
大丈夫じゃよ、救世主はいかなる時もその相手に光を指すものじゃ」
コウガ「!そう思う事にします」
こうしてコウガの1日は終わった。
番外編 春樹の日常
俺は毎日のように道場へと通い、特訓をしている。
何でそんなに必死に鍛えてるかって?
ふはは、龍に勝つために決まってるじゃないか。
龍の奴、ろくに修行もしないであんなに強いとか腹立つぜ。
そう俺はまだ龍に一度も勝てていないのだ。
・・・やばいな俺。
このまま龍の背中を追っかけて人生終わるんだろうか。
俺だって可愛い彼女作って遊びたいしイチャイチャだってしたい!!
なんて歩きながら考え事をしているとコウガに会った。
春樹「よう」
コウガ「やぁ」
春樹「コウガ〜ちょっと付き合ってくれよ」
コウガ「?もちろん」
コウガって修行の時以外は穏やかだし全然妖怪って感じしないよなぁ
本当に魔界から来たのか?
むしろ龍のが魔界だろ。
同時刻。
龍「へくしっ」
クレナ「大丈夫?風邪引いちゃった?」
龍「いや、違うと思う」
春樹「てなわけなんだ、俺このまま恋も知らないまま龍を追っかけて人生終わんじゃないかってさ」
コウガ「そんな落ち込まなくても大丈夫さ
まだまだこれからだよ
ある日ひょっこり現れるかもしれないよ」
春樹「そうかなぁ、コウガは魔界で彼女とかいたのか?」
コウガ「まぁね、でも勝手に負傷したあげく何も言えずに人間界に来て愛想尽かされてるかもしれない」
春樹「コウガは大丈夫だろ〜
むしろ、コウガの心配してると思うぜ?」
コウガ「そうかな?」
春樹「だってさ、俺だったらコウガの事絶対嫌いになったりしねーもん!」
コウガ「!ありがとう」
春樹君は優しい人だな。
そんな風に言ってくれる人に出会えて良かった。
大丈夫、春樹、君ならきっと素敵な人と巡り会えるさ。
春樹「で、コウガはその子とどこまでいったんだ?」
コウガ「え、何が?」
春樹「いや、だからあんな事とかこんな事とか・・・」
コウガ「あんな事やこんな事って?」
春樹「お前、分かってて言ってるだろ」
コウガは顔を真っ赤にしている春樹を見てニヤニヤしている。
コウガ「さて、どうかな?」
第十話 実戦
それから2週間。
龍君の飲み込みの速さには驚かされる。回復力も高いし。
たった2週間で最初の倍くらいの力にまで上達してる。まだ力の解放がされてないところを差し引いてもまだまだパワーアップできる。
そろそろ他の妖怪と戦わせてみよう。
クレナ「龍君、今日は私以外の妖怪と直接戦ってもらうよ」
龍「え?何で他の妖怪と・・・」
クレナ「戦い方にも色んなパターンがあるから、私だけだと偏っちゃうからさ」
クレナはその辺にいた妖怪に話しかけた。
クレナ「ねぇ、あなたちょっといい?」
妖怪「ああ?何だお前」
クレナ「彼の修行を手伝って欲しいんだけど」
妖怪「やなこった!何で俺がそんな事しなくちゃならねーんだ」
クレナ「ニコッ」
ドカッバキッ!!
妖怪「はい、やらせていただきます」
クレナ「さぁやってみよー!」
クレナって結構荒いよな・・・。怒らせないようにしよう、うん。
妖怪「ま、参った、俺の負けだ」
先に根を上げたのはなんと妖怪の方だった。
俺、初めて妖怪に勝てたのか。
妖怪「後は殺すなり好きにしろ」
クレナ「修行付き合ってくれた相手にそんな事しないよ
それより、今困ってる事何かある?力になるわ」
妖怪「・・・羅鬼族って知ってるか?」
クレナ「羅鬼族、聞いた事ある、確か色んな妖怪を捕まえては奴隷にしてるとか」
いかにもヤバそうな感じの奴らだな・・・。
妖怪「あぁ、仲間が捕まってるんだが、助け出したいんだ
だが今の俺の力じゃ犬死にするだけだ」
クレナ「そいつらの居場所は分かる?」
妖怪「あぁ、向こうの方にデカい岩があるだろう
その辺りだ」
クレナ「顔が分かるものは何かある?」
妖怪「いや・・・だが左目がなくて赤い色の体をしてるクリュウって名だ」
クレナ「分かった、行って来るわ」
妖怪「あんた、1人で行く気かい?俺も一緒に」
クレナ「だめ、あなたは龍君とここにいて
人質に取られでもしたら身動き取れなくなる
この場所なら敵があなた達に近づいて来たら察知できるからこの場所から動かないで」
クレナ、やっぱお前は凄い。
妖怪「わ、分かった、なぁ、名前聞いてもいいかい?」
クレナ「クレナよ、こっちは龍君
あなたの名前も聞いてなかったわね」
クガ「俺はクガだ」
クレナ「ニコッ、じゃあクガ、龍君、行って来るわ」
龍「クレナ、大丈夫なのか?」
龍は心配そうにクレナを見つめる。
クレナ「大丈夫、問題ないよ」
クレナはもの凄い足の速さで目的地へと向かって行った。
クガ「あんた、クレナとどう言う関係なんだ?龍と言ったな、人間だろう?」
龍「いや、話すとすげー長くなるんだが」
俺はひと通り説明をした。話して良かったのか分からないけど。
クガ「ほう、なるほど」
龍「今は俺の力じゃあいつの足元にも及ばないけど
すぐに追い付いてクレナを守れるくらいに強くなりたいんだ」
クガ「それで修行か」
龍「あー、修行の始まりはクレナに言いくるめられただけなんだけど」
クガ「ははは、いい女じゃねーか」
向こうの方からクレナがドードンを支えながら歩いて来るのが見えた。
龍「クレナ!!」
クガ「クリュウ!」
クリュウ「よぉクガ」
クガ「良かった・・・助けに行けなくてすまねぇ」
クリュウ「何言ってんだよ、あの状況じゃ助けたくても助けられねぇよ
お嬢さん、助かったよ、ありがとう」
クガ「俺からも礼を言わせてくれ」
クレナ「私はただ無理矢理修行させちゃったからその借りを返しただけだよ」
2人は肩を組みながら帰って行った。
龍「クレナ」
クレナ「何?」
龍「俺、もっと強くなるよ
守るのはやっぱり俺がいい
危ない場所へクレナ1人で行かせるのはこれっきりにしたい」
クレナ「待ってる」
俺、絶対お前より強くなるから。
番外編 春樹の嫉妬
くじ引きで追加の買い出し係がクレナと雲花と春樹になったのだが。
龍「いてっ!!」
コウガ「大丈夫?」
龍「や、目にゴミが」
ゴシゴシ。
コウガ「掻いちゃだめだよ」
龍「って言われてもなぁ・・・」
コウガ「ちょっと見せて、じっとしててね」
龍「ん」
コウガ「あ、だめだよ動いちゃ」
龍「わ、悪い」
コウガ「はい、取れたよ」
龍「さんきゅー」
ガラッ。
春樹「何してんだお前ら・・・」
そう、この時まだコウガが俺の頬に手を添えたままでちょうど目と目が合ってる時に春樹が扉を開けてしまったのだ。
龍は目のゴミがようやく取れて涙目になっている。
クレナと雲花は顔が心なしか赤い。
龍「何って目にゴミが」
コウガは誤解された状況を把握したらしくニヤニヤしながら話しかけてきた。
コウガ「クスッ、何してたか知りたいですか?」
龍「?」
春樹「え、いや、まぁ・・・」
コウガはクスッと笑うと龍の方を見る。
コウガ「龍君、痛かった?」
龍「?痛くはなかった、コウガ優しいから」
一同「・・・・」
春樹「な、なななお前、クレナちゃんと言う彼女がい ながら何を」
龍「何言ってんだお前・・・目にゴミ入ったからコウガに見てもらってただけだろ」
春樹「目?ゴミ?なーんだ!びっくりしたじゃねーか!なぁみんな!」
雲花「そうだよねぇ!あぁびっくりした!」
クレナ「でも今の絵図ちょっとドキドキしちゃった」
コウガ「そう来たか」
龍「なぁコウガ何の話だ?」
コウガは龍の頭をポンポンすると。
コウガ「俺と龍君は仲良しだって話だよ」
春樹「おま、ずるいぞコウガ!」
龍「だから何なんだお前はさっきから」
春樹「うるせぇ!2人でイチャイチャしやがって俺も混ぜろ!」
龍「なに子どもみたいな事言ってんだよ」
コウガ「まぁまぁ!」
春樹「だいたいコウガが誤解を招くような言い方するから」
龍「コウガに当たるなよ」
春樹「何でお前は俺の味方してくんねーんだよ!」
雲花「あらあら、何かもうごちゃごちゃね」
クレナ「ふふふ、でも3人とも楽しそう、ほんと無邪気で可愛いなぁ」
第十一話 訪問者
龍君とクレナが魔界へ行ってから1週間。
俺は遅れて魔界へ向かった。
着いてすぐにセイラがいる村へ向かった。
セイラ「コウガ様!」
1人の女性が駆け寄ってきた。
コウガ「セイラ、待っていてくれたのか」
セイラ「コウガ様はきっと戻って来て下さると信じておりました」
"コウガの事心配して待っててくれてるって!大丈夫だ"
春樹君ありがとう。
ぎゅっ。
セイラ「コウガ様?」
コウガ「ずっと会いたかった」
セイラ「私もです、コウガ様」
コウガ「セイラ変わりはないか?」
その質問にセイラの表情がわずかに曇った。
コウガ「セイラ?」
セイラ「コウガ様はクレナと言う妖怪をご存知ですか?」
コウガ「あぁ、知り合いだが」
セイラ「夜叉と名乗る男が訪ねて来たのですが
クレナを探していると」
コウガ「何故クレナちゃんを・・・」
セイラ「理由は分かりませんがかなりの力の持ち主かと
それにあの男は恐らく冥界の者です」
コウガ「まずいな早く知らせないと」
セイラ「私も探しますわ」
コウガ「ありがとう、だが無茶はしないと約束してくれ」
セイラ「それはこちらのセリフですわ」
クガ「いやーまさかクリュウとまた酒を飲める日が来るとはな!」
クリュウ「あぁ、これもクレナと龍と言う人間のおかげだな」
妖怪2人が話しているのを見つけた。
セイラはかなり遠くからでも会話を聞き取れるほど耳がいい。
コウガ「その話、詳しく聞かせてくれ」
コウガ「その2人が今どこにいるか知っているか?」
クガ「さぁ、分からねぇけど、探すなら俺達も手伝うぜ
助けてもらった恩もあるからな」
コウガ「すまない」
龍君、クレナちゃん、俺らがたどり着くまで無事でいてくれ・・・。
それにしても夜叉とは一体何者なんだ?
第十二話 連れ去られたクレナ
それからほどなくして龍とクレナの元へとたどり着いた。
コウガ「龍君!クレナちゃん!」
龍「コウガ!久しぶりだな、血相変えてどしたんだ?」
コウガ「二人とも、夜叉と言う男を知ってますか?」
龍「夜叉?さぁ、クレナ知ってるか?」
クレナ「聞いた事ないな」
コウガ「クレナを探してると彼女に聞いたんだ」
セイラ「ええ、クレナを知らないかと私の所へ直接尋ねて来られました」
クレナ「そうだったの・・何かされなかった?」
セイラ「大丈夫ですわ」
クレナ「ホッ、良かった・・・」
龍「ってことはクレナが狙われてるって事だよな?」
コウガ「何者なのか何が目的なのかだけでも分かればいいんだけど」
龍「そうだな・・・まぁ考えられるのはクレナに惚れた野朗かクレナの力を狙ってるかの二択だな」
クレナ「前者は無いと思うけど・・・」
龍「いや、クレナは可愛いんだからいつ狙われてもおかしくない」
クレナ「ちょ、ちょっと真顔で何言ってるのもう」
コウガ「ゴホン!」
クレナ&龍「「あ」」
コウガ「まぁとにかくクレナちゃんは狙われてるのは確かなんだから用心するように」
クレナ「うん」
龍「でも、クレナ相手じゃそいつも太刀打ちできないんじゃないか?」
コウガ「それは分からないけど、どんな相手かも分からない以上油断は禁物だよ
要人に越した事はないしね」
龍「そうだな」
クリュウ「あのー俺らも一応いるんだが」
コウガ「クガとドードンも2人を探すの手伝ってくれたんだ7
クレナ「そうだったんだ!ありがとうクガ!ドードン!」
クガ「いやぁ、それほどでも///」
クガは照れた様子だ。
龍「何赤くなってんだ」
龍はちょっとムッとした。
クガ「いやーはは」
夜叉「やっと見つけた」
背後から現れたのは黒いマントを付けた男。
一同「!?」
コウガ「気配に誰一人気付かなかった・・・?」
夜叉「クレナ、探したぞ」
じゃあこいつが夜叉?
龍「誰だ!?クレナに何の用だ?」
夜叉「冥界から来た夜叉、訳など答えてやる義理はない」
夜叉はクレナに近付く。
夜叉「一緒に来てもらう」
クレナは冷や汗をかいていた。
クレナがこんな動揺するなんて・・・こいつ相当ヤバいって事だよな。
・・・大人しく付いていけばみんなに危害は加わらない、か。
クレナ「分かった」
クレナは夜叉へと近付いた。
ザッ。
龍とコウガがクレナの前に立った。
クガとドードンはセイラを庇うように立った。
クレナ「みんな!?」
龍「クレナをこのまま黙って連れてかせる訳にはいかないな」
コウガ「同感だ」
夜叉「フン、貴様らに用はない」
一瞬のうちに龍とコウガに拳を突き出すと2人はその場に崩れ落ちて蹲った。
クレナ「龍君!!」
セイラ「コウガ様!」
龍「ぐっ・・・こいつめちゃ強ぇ」
コウガ「・・・うっ・・」
2人にとどめを刺そうと近いた時。
クレナは2人の前に立った。
クレナ「待って!2人には手を出さないで」
夜叉はクレナに近付いた。クレナも腹に攻撃を食らった。
クレナ「つぅ・・・」
ガクッと膝をついた。
クレナがこんな簡単に・・・。
夜叉「ほう、今ので倒れないとはさすがだな、だが少し眠っててもらう」
夜叉はクレナを気絶させた。
クレナ「う・・・ドサッ」
クレナは夜叉に担がれた。
龍「クレナ!!」
夜叉クレナを担ぐとすぐに姿を消した。
第十三話 武装強化
龍「クレナ、今行く!!」
コウガ「龍君、今は夜叉がどんな奴か探らないと」
龍「そんな悠長な事言ってるひま・・」
焦る龍をコウガが止める。
コウガ「龍君!!」
ガシッと龍の肩を掴む。
コウガ「奴はクレナをいとも簡単に連れ去れるだけの力を持ってる
今君が無茶をして君の身に何かあれば彼女は責任を感じて自害するかもしれないぞ」
龍「悪い・・・取り乱した」
コウガ「誰だって大事な人を連れ去られたら冷静ではいられない
だが奴はクレナをあの場で殺さずに連れて行った
すぐに彼女が殺される可能性は低い
俺達で必ず彼女を救いに行こう、君は1人じゃない」
龍「あぁ、悪い」
コウガが冷静で助かった・・・。
龍君にはああ言ったけど、夜叉の目的が分からない以上時間をかけるのは危険だ。
コウガ「冥界への案内は雲花に頼むとしても
何か策を練ってから乗り込もう」
龍「なぁコウガ、俺の力が目覚めたら勝てないか?」
コウガ「その力がどれくらいなのか皆目検討がつかない
それにいつ何をきっかけに発動するかも分からないからな・・・」
龍「そうだよな・・・」
クレナがヤバいって時に何やってんだ俺は・・・。
コウガ「龍君、あまり自分を責めないで、彼女が悲しむ」
龍「ああ・・・」
コウガ「とにかく雲花に会おう」
龍「あぁ」
雲花「久しぶりだね」
龍「雲花!冥界へ案内してくれ!
俺の力じゃ助け出す事もできないんだ」
雲花「冥界へは行けるよ
でも、今のままじゃ連れてけない
殺されに行くようなものだよ
私だって二人を死なせたくないんだよ」
龍「それでも、クレナは今も捕まったままどんな目に合ってるかも分からないんだ」
コウガ「雲花ちゃん、夜叉の狙い、何か知らない?」
雲花の顔が一瞬曇った。
コウガ「知ってるんだね?」
龍「雲花!教えてくれ!」
雲花「私も詳しくは知らないよ
ただ奴らは妖力を奪い取り冥界の力に変えれるんだ
だからより強い妖力を持つ妖怪を連れ去っては
食い物にしてるって話だよ」
龍「じゃあ今すぐ冥界へ案内しろ」
コウガ「龍君」
龍「止めても無駄だコウガ
このまま見す見すクレナがやられんの待ってるくらいなら死んだ方がマシだ」
コウガ「なら俺も行く
セイラ帰って来たばかりなのにすまない」
セイラ「私は大丈夫ですわ」
コウガ「セイラありがとう」
雲花「まぁちょっと待ってよ
その力の変換ができるのは満月の夜だけなんだ」
コウガ「次の満月は明日か」
雲花「そう、それまでに少しでも武力を身につけとくの」
龍「そんな都合良く明日までにそんな力付けれる訳が」
雲花「武力に長けてる私の知り合いがいる
その子の所へ案内するよ」
サリア「雲花、あんたが来るなんて珍しいね、どうしたのさ?」
雲花「サリア、明日の夜までにこの子達に武器をお願い
」
雲花「あんたの頼みじゃ断れないね、分かったよ」
コウガには攻撃から身を守る剣を、
龍にはパワーが倍になるネックレスを渡した。
サリア「龍君、君のそのネックレスは確かに力が倍になる
でもその分体にかかる負担も倍になるからね
使った後はしばらく立つこともできないよ」
龍「ああ、分かった」
サリア「コウガ君、君のは副作用はないけどその剣がどこまで相手の攻撃を受け切れるかは分からないからね」
コウガ「うん、ありがとう、助かるよ」
雲花「サリア、ありがとう」
サリア「なにか事情があるんだろう?」
雲花は頷いた。
サリア「訳は聞かないよ
説明してる時間も惜しいだろ?明日まで予行練習でもしときな」
龍「恩にきる」
サリア「せっかく私がプレゼントしてやったんだ
必ず生きて戻って来なよ」
龍「あぁ・・・なるべくそうする」
雲花「じゃあ明日また迎えに来るよ」
龍「あぁ、頼む」
2人はセイラとクガとドードンと共に修行をしに行った。
サリア「雲花」
雲花「何?」
サリア「あの子達は大丈夫だよ
龍って子、何か特殊な力で守られてるね
必ず生きて戻って来るよ」
雲花「サリアの感は当たるから少し安心したよ」
サリア「あはは、それは良かった」
雲花「サリア」
サリア「なんだい?」
雲花「ありがとう」
サリア「クス、どういたしまして
ところで久しぶりに飲んでかないかい?」
雲花「じゃあ一杯だけもらうよ」
サリア「そうこなくっちゃ」
第十四話 Death or Glory
次の日。
コウガ「じゃあセイラ行って来る」
セイラ「お気をつけて」
コウガ「クガ、クリュウ、セイラを頼む」
クガ「分かってるよコウガの兄貴!」
クリュウ「けど俺らなんかにセイラを任せて良かったのか?」
コウガ「君達はセイラを傷付けたりしないだろ?
その辺は信頼してる
セイラは心配か?」
セイラ「いいえ、コウガ様が信頼してる方達ですから何も心配ありません」
クガ「いやまぁそう言われると照れちまうぜ」
はははとクガは頭をかく。
クリュウ「クガはこう見えて照れ屋なんだ」
クガ「クリュウ、余計なこと言うなよ」
雲花「そろそろ時間だよ」
龍「ああ」
コウガ「頼む」
満月を眺めながら夜叉が言う。
夜叉「いよいよだな、満月の夜を待っていた」
クレナ「どう言う事?」
夜叉「ククク、まぁどうせ死ぬんだ教えてやろう
俺は、お前達の妖力を冥界の力に変える事ができるのさ
冥界の中でも限られた人しかできんがな
お前ほどの妖力を奪い取れば俺は更にパワーアップできると言う訳だ」
クレナ「私なんかよりあなたの方が」
夜叉「念には念をと言うやつだ
現に今までも何人もの妖怪の力を奪ってきたんだ」
クレナ「な・・・」
夜叉「いい面だ、今お前の力を奪ってやる」
クレナの顎をクイっと上げる。
その瞬間2人の目の前に歪みが現れた。
そして龍は夜叉の腕を強く掴んだ。
龍「俺の女に触るな!!」
クレナ「龍君・・・」
夜叉「また貴様か、邪魔だ」
クレナ「龍君!!」
クレナは夜叉に掴まれたままだ。
俺は夜叉に吹き飛ばされた。
龍「ぐあ!!」
だが前よりも痛みは少ない。このネックレスのおかげか。
夜叉「貴様、前より防御力が増したか?」
龍にもう一度攻撃をしようと力を放つ。
バチバチ!!
コウガが剣を盾にして龍の前に立っていた。
コウガ「龍君、大丈夫?」
龍「あぁ・・・」
夜叉「貴様も小賢しい真似を」
一瞬でコウガに近付くと拳を直接繰り出した。
コウガ「クッ・・・」
コウガは剣を振るうより早く投げ飛ばされた。
龍「コウガ!!」
クレナ「コウガ君!」
剣で衝撃波は防げても、直接的な攻撃は相手のスピードを超えない限り防げない上に攻撃を当てる事さえできない。
剣もいつまで持つか分からない。
龍「コウガに何する!」
夜叉「フン、馬鹿が、大人しく魔界にいれば死なずに済んだものを」
龍「!!」
衝撃波を食らったと思ったその時、コウガが剣を俺の前に投げた。
龍「コウガ!お前・・・」
剣が夜叉の衝撃波を防いだがヒビが入ってしまった。
夜叉「雑魚が」
夜叉はコウガに向けて衝撃波を打った。
コウガは今、防御できない。
コウガ「!!」
コウガの周りが煙に覆われた。
煙が消えるとコウガが横たわっているが息はしているようだ。
龍「コウガ!!」
コウガ「ケホッ」
クレナ「ほっ・・・コウガ君息してる」
夜叉「クレナ、時間だ」
クレナ「きゃあ!」
夜叉はクレナを突き飛ばすとクレナに向けて攻撃を放つ。
妖力を冥界の力に変える衝撃波だ。
クレナは目をぎゅっとつむる。
龍「うああぁ!!」
龍はクレナを庇って攻撃を受けた。
クレナ「龍君!」
龍「くぅ・・・」
クレナ「龍君、もういいよ!死んじゃうよ・・・」
龍「お前は・・・いつも俺がピンチの時、守ってくれてただろ
お前がピンチの時くらい俺に守らせろ」
クレナ「龍君・・・」
次の瞬間、龍の体が光に包まれた。
夜叉「何だ!?」
龍「うおぉ!ざけんじゃねぇー!!」
龍は夜叉の攻撃を跳ね返した。
ドオォン!!
夜叉「人間の中に不思議な力を持つ奴がいる"とは聞いていたがここまでの力とは・・・」
クレナ「龍、君?」
龍の体は光に包まれたままだ。
夜叉「そのままお前の力もろとも吸収してやる
逃げるなら今のうちだぞ」
龍「逃げない、こいつは俺が守る!!」
第十五話 覚醒
夜叉と龍の攻防が始まった。
龍「はああ!!」
夜叉「フン、人間にしてはと褒めてやりたいところだが」
龍「クッ・・・」
まだ力は夜叉の方が上。
ここでやらないでどこで本領発揮する気だ。
惚れた女の1人も守れないでコウガをあんな目に合わせられて・・・俺は何の為に魔界まで来たんだ。
キイィン!!
ネックレスが光り輝く。まるで龍の心と連動しているかのように。
夜叉「何!?」
龍「俺はお前を倒してクレナとコウガを連れて魔界へ帰る!!」
夜叉「できるものか!」
夜叉は龍に殴りかかる。それと同時に龍も拳を突き出す。
互いの拳と拳がぶつかり合う。
夜叉が衝撃波を繰り出すと龍も衝撃波を繰り出した。
夜叉「フン、人間め・・・」
衝撃波が消えるとバタッと夜叉が倒れた。
パリィンとネックレスが切れ、龍の体から光が消えた。
龍「う・・・」
クレナ「龍君!コウガ君!」
龍「コウガ大丈夫か?」
コウガ「あぁ、なんとかね」
クレナ「龍君もコウガ君も良かったぁ・・・」
クレナはしゃがみ込んで泣いている。
コウガ「そんな泣かないでよ」
龍「全く子どもみたいな泣き方するんだな」
クレナ「だって2人とも無茶するんだもん
こんなボロボロになってまで・・・
でも、ありがとう」
龍とコウガは目を合わせてニカッと笑った。
龍「そう言えば何で急に覚醒したんだろう」
クレナ「ねー!」
それは愛の力ってやつだよ。
クレナ「さ、魔界へ帰ろう」
龍「それなんだがクレナ」
クレナ「うん?」
龍「悪い、体に力入らなくてさ」
龍もコウガも横たわったまま喋っていた。
コウガ「実は俺も・・・」
2人がこちらをじっと見る。
クレナは涙を拭った。
クレナ「任せて!」
クレナは2人を担いで歪みへと入り魔界へと戻って行った。
龍「何てカッコ悪い救出劇だ」
コウガ「だね」
クレナ「そんな事ないよ、龍君もコウガ君もすっごくカッコ良かったよ!」
龍「まぁクレナがそう言うんならいいか」
コウガ「クスッ、そうだね」
クガ「あ、兄貴達が帰って来たぜ!!」
クリュウ「良かった」
セイラ「よくぞご無事で・・・」
コウガはセイラに引き渡し、セイラの家で休養を取った。
雲花は任務に戻った。
クガとクリュウは自分達の村へと帰って行った。
第十六話 エピローグ
2人きりになるとぎゅっとクレナを抱きしめた。
クレナ「龍君?」
龍「クレナが無事でほんとに良かった
お前がが死んだらって気が気じゃなかった」
クレナ「龍君・・・私も怖かったよ
私を庇って龍君が死んじゃうんじゃないかって」
龍「ああ」
クレナ「龍君、私、これから修行する!
冥界だろーとなんだろーと敵が現れたらやっつけれるくらい強くならなくっちゃ!」
龍「クレナ、お前ってほんと・・・
俺もやる、力を完全に自分のものにしたいしな」
クレナ「じゃあ一緒に修行スタートだね!」
ガッツポーズをするクレナ。
龍「その前に」
クレナ「?」
龍「キスしよ」
クレナ「!うん!」
これからもよろしくな。
番外編 カップルで買い物
コウガ×セイラ
セイラ「コウガ様!これどうでしょう?」
コウガ「うん、いいんじゃない?」
セイラ「じゃあこれはどうかしら?」
コウガ「いいと思うよ」
セイラ「コウガ様、適当過ぎません?」
コウガ「ごめんごめん、だってセイラ何着ても似合うからさ」
セイラ「・・・」
コウガ「だからセイラが着たいと思うものを着るのが一番だよ」
セイラ「コウガ様はずる過ぎます」
むくれてるセイラ可愛いな。
コウガ「で、どれにするの?」
ニヤニヤしてる俺を横目で見ながら答える。
セイラ「これとこれで迷ってます」
コウガ「じゃあ両方買えばいいんじゃない?」
セイラ「え」
コウガ「両方見たいし、ね」
セイラ「コウガ様、私に甘過ぎません?」
コウガ「そう?嫌?」
セイラ「嫌という訳じゃないですけど」
コウガ「ならいいじゃん♪」
コウガ様は本当に狡い。
龍×クレナ
クレナ「ねぇねぇ龍君、これどうかなぁ?」
龍「ああ、いいんじゃないか?」
クレナ「龍君はどんなのがいいと思う?」
龍「そうだな、これとか」
クレナ「ちょっと〜こんなヒラッヒラなの着れないよー」
龍「む、クレナが何がいいって聞くから」
クレナ「・・・似合わなくても笑わない?」
龍「笑わないよ」
つか絶対似合うし絶対可愛いし。
クレナ「約束だからね?」
カーテンに隠れて顔だけ出しながら言うなよ可愛いな。
クレナは半ば渋々着替え始めた。
クレナ「ど、どうかな?」
龍「!!」
クレナ「ちょっと龍君ちゃんと見てよ〜
やっぱり変・・・?」
龍「じゃなくて可愛い過ぎだろ」(最近バグり中)
顔を手で隠しながら言う。
クレナ「な、何言ってるのもー!」
龍「てことでこれ買おう」
クレナ「まぁ龍君が喜んでくれるならいっか」
他の野朗に見せたくないが・・・。
龍「じゃああとこれで」
クレナ「それはだめ!ほとんど下着じゃない」
龍「やっぱりだめか」
クレナ「龍君って意外と変態だよね」
番外編 バレンタイン
コウガ&セイラ
セイラ「コウガ様、バレンタインとやらを作ってみました」
コウガ「あぁ、あり・・・」
な、なんだこの箱から見えるドス黒いオーラは?
セイラ「どうなさいました?」
コウガ「いや、ありがとうセイラ、開けていいかな?」
セイラ「もちろんです」
パカッ。
箱の中にチョコレート?らしきドロドロした黒い物体。
セイラはニコニコしながら俺が食べるのを待っている。
ぱくっと食べた瞬間コウガは気を失った。
セイラ「きゃあコウガ様大丈夫ですか⁈」
コウガ「う、うーん・・・」
龍&クレナ
クレナ「はい、バレンタインのチョコ!」
龍「ん?あぁ、今日はバレンタインか、
さんきゅー、食べていいか?」
クレナ「もちろん!」
パカッ。
チョコレートの周りには訳の分からない花が飾られている。
龍「待て、この植物はなんだクレナ」
クレナ「え、魔界に生えてる花だよ!食べれるんだよ〜」
ニッコニコで言われると何も言えない。
龍「ドキドキ・・・ぱくっ、美味い・・・」
クレナ「でしょでしょ!」
龍「魔界にも色んな食べ物があるんだな」
クレナ「あるよー!デッカい恐竜の肉の丸焼きとか全長300メートルある魚のステーキとか!」
龍「クレナってほんと見かけによらずダイナミックだよな」
クレナ「え、そう?」
春樹の場合。
俺にバレンタインなんてねーよ!嫌がらせか!
コウガも龍も今頃イチャイチャよろしくやってんだろなぁ・・・。
「あの・・」
春樹「ん?」
あれ、この子、隣のクラスの子か。メガネかけてて
大人しい感じの。そんな子が俺にバレンタインを?
「これバレンタインの・・いらなかったら捨てて!」
俺は気付いていた。後ろの方でクラスの連中がコソコソ話してるのを。
ああ、そう言う事ね。かわいそうに、わざわざ俺にバレンタイン渡させるなんて。
手だってこんなに震えてんじゃんか。
春樹「ありがとう」
その子はホッとした様子だった。
俺は小声でこそっと喋った。
春樹「大丈夫か?」
「え」
びっくりした顔をしている。
春樹「あいつらに付き合わされてるんだろう?」
「あ・・・」
悟られている事に気づいた。
春樹「ゲームかなんか?」
「う、うん、ごめんなさい・・・」
春樹「俺は大丈夫だよ」
「ありがとう・・・」
春樹「そうだ、ちょっと公園付き合ってくれる?」
「え、うん」
公園のベンチにて。
春樹「箱開けていいかな?」
「ど、どうぞ」
春樹「うわ、うんまそ!ひょっとして作ってくれたの?」
コクっと頷く。
ゲームとは言えこんなちゃんと作ってくれたんだ。
春樹「うん、うまい!」
「本当?」
春樹「うん、すっごく
いやぁ俺手作りチョコもらったの初めてだよ
凛ちゃんからはもらった事あるけどいつも市販のだったけなー」
「え、ごめん初めてが私なんかのチョコで・・・」
春樹「そんな事ないよ
初めてもらった手作りチョコが君からので良かったよ」
「///」
俯いて固まってしまった。
春樹「ごめん、俺なんか変なこと言った?」
「ううん、ただそう言ってもらえたのが嬉しくて」
う、可愛い・・。
春樹「えと、名前なんだっけ?」
「赤坂らん」
春樹「よし、らんちゃんね!」
らん「あの」
春樹「何?」
らん「怒ってないの?ゲームのターゲットにされて」
春樹「んー利用してるのは許せないけど
でも、そのおかげで俺はらんちゃんと話せたし
結果オーライって感じかな」
らん「五十嵐君って優しいんだね」
春樹「そう?そう言われると照れちゃうな〜」
らん「私も、良かった」
春樹「え、何が?」
らん「相手が五十嵐君で」
ニコッと笑う姿を初めて見た。
春樹「ドキッ、ありがとう」
別れた後。
俺は両手で顔を覆った。
分かってる、ゲームで仕方なく渡しただけだって分かってるけど・・めちゃ可愛いかったあぁ‼︎
背後から龍が腕組みをしながら春樹を見ていた。
たまたま近くを通りがかっただけだったのだが。
龍「・・・」
春樹「はっ・・・」
龍「俺は何も見てない」
春樹はバシバシッと恥ずかしさを紛らわそうと龍を叩いた。
番外編 ホワイトデー
コウガ&セイラ
コウガ「セイラ、はい、ホワイトデーのお返し」
コウガは顔が隠れるほど両手いっぱいにお菓子の箱を持っている。
セイラ「ありがとうございます、どれが私のですか?」
コウガ「?全部君にだよ」
セイラ「私を太らせる気ですかコウガ様」
コウガ「太ったセイラもきっと可愛いよ」
セイラ「これ以上私を甘やかさないで下さい」
龍君&クレナ
龍「クレナ、ホワイトデー」
クレナ「わぁありがとう!可愛い〜!花型のチョコレートだー♪」
可愛い可愛い可愛い(バグり中)
龍「クレナ花好きだから・・・」(ぷるぷる)
春樹&らん
春樹「らんちゃん、ちょっといい?」
クラスメイト1「何々、赤坂さん、五十嵐にチョコ渡したのー?」
クラスメイト2「あーなんかバレンタインの日に告白してたもんねぇw」
クラスメイト3「付き合ってたりしてw」
赤坂「あの、私の事ならともかく、五十嵐君に迷惑かけるような事言わないで」
クラスメイト2「何それ萎える〜w」
春樹「・・・あ!UFOだ!!」
春樹は窓の外を指差すとそう叫んだ。
騒いでたクラスメイト達「え!どこどこ!!」
らん「い、五十嵐君?」
春樹「シー」
その隙に春樹らんの手を繋いで教室の外へ出た。
春樹「ニッ」
らん「ふふふ」
二人は顔を見合わせて笑った。
番外編 春樹&らん
蓮「春樹君、今日は見学したいって言う女の子が来てるよ」
春樹「女の子が?珍しいっすね」
蓮「入っておいで」
春樹「あ!」
らん「あ!」
蓮「なんだ知り合いか?」
春樹「クラスは違うんすけどね」
蓮「そうかそうか!赤坂さん、まぁゆっくりしていってくれよ」
らん「はい、ありがとうございます」
一通り稽古姿を見学した後・・・
蓮「あー春樹君、悪いんだがちょっと出かけて来たいんだがいいかい?」
春樹「いいっすよ!」
春樹「なんでまた空手道場に?」
らん「格闘技好きなの、でも体が弱くて・・道場の近くで足を止めてたら葉山さんに会って
そしたら話しを聞いてくれて」
春樹「それで見学を」
らん「うん」
春樹「またおいでよ、親父さんも喜ぶよ」
らん「でも、見学だけしてたら迷惑になるよ」
春樹「俺からも話してみるからさ!俺のトレーニングなんか見ても面白くないだろうけど」
らん「そんなことない!凄くいいなって思って・・」
らんが気配に気付きぱっと振り返る。
春樹「うわ!?」
背後から蓮がぬっと現れた。
蓮「いいよ続けて」
ニヤニヤしながら蓮は近づいて来た。
春樹「親父さん、いつから・・・」
蓮「いや、またおいでよのあたりから」
春樹「帰って来たんなら言って下さいよー!」
蓮「いやー若い若い!はっはっは!
さ、春樹君、今日のトレーニングは終わりだ
2人でお茶でも飲んできたらどうだ?」
春樹「え、いや俺はいいけどらんちゃんにも都合ってもんが」
らん「な、ないです!」
春樹「お?じゃあ・・行く?」
らん「行きたい」
親父さんありがとう!!
二人が道場から出ていくのを見届けると。
・・・いや、だってあれどう見ても両思いだろ。
春樹君って意外と奥手なんだなぁ。
春樹「紅茶で」
らん「えと、クリームソーダで」
店員「かしこまりました」
らん「わぁ美味しそー♪」
春樹「らんちゃん嬉しそうだね」
らん「あ、ごめん、ついはしゃいで・・・」
春樹「いや、やっぱさ、らんちゃんは笑ってる方が可愛いよ」
らん「え?///」
春樹「今度は俺から誘ってもいいかな?
ゲームってのはもう無しにしてさ」
らん「わ、私で良ければ!」
春樹「ありがとう」
っしゃああ‼︎とりあえず一歩前進だあぁ‼︎
らん「わざわざ送ってくれてありがとう」
春樹「どういたしまして」
いい日だったなぁ!!
龍「・・・」
春樹「はっ・・・だから何でいつもベストタイミングでお前はいるんだよ!」
龍「いや、なんと今日はコウガも一緒だ」
龍の後ろからひょこっとコウガが出てきた。
コウガ「やぁ」
春樹「お前ら・・・」
龍「何だ春樹、お前、人には言いたい放題言っといて情けないな、さっさと告白しろよ」
春樹「俺はお前みたいにスケコマシじゃねーんだよ」
春樹は不貞腐れ顔で言った。
龍「な、誰がスケコマシだ、俺はまだ!・・・」
春樹「なんだ、お前まだシてねーのかよ」
龍「うるせぇな、俺にも色々と事情があるんだよ」
コウガ「ねぇスケコマシって何?」
春樹「え、いやスケコマシってのは」
説明後。
コウガ「なるほど」
春樹「それより!コウガはその彼女とはどこまでいったんだ?
」
コウガ「どこって最後までだけど」
龍「いつどんな感じで誘ったんだ?」
コウガ「え、会った瞬間抱きましたけど」(しれっ)
春樹&龍「恐ろしい子!!」
番外編 好きなところ
春樹「そういや、クレナちゃんは龍のどこが好きなの?」
龍「あ?」
春樹「まぁまぁ、お前も知りたくね?」
龍「まぁ、そう言えば聞いた事ないな」
クレナ「んー気にしたことないな
何となく?龍君は?」
龍「俺も何となくなんだよな」
春樹「君達ある意味凄いわ
じゃあじゃあ!コウガはどうやってセイラちゃんのどこを好きになったんだ?」
コウガ「俺は一目惚れだったからね」
春樹「おぉ!情熱的でいいね!セイラちゃんは?」
セイラ「そうですねぇ」
コウガ「俺が一方的に好意ぶつけて半ば強引に好きになってもらったようなものだし
無いと思うよ」
セイラ「ありますよ、優しいところ、気持ちを尊重して下さるところ、いつまでも好きだと言って下さるところ、
一緒にいて楽しいところですかね?」
コウガ「セイラ・・・」
春樹「何々、愛されてんじゃないの〜!」
龍「そう言うお前はどうなんだよ春樹
待ってるぞ」
龍はらんを指さした。
春樹「え?俺か?」
らん「ドキドキ」
春樹「そうだな、料理上手なとこ、真面目なとこ、優しいとこ、言いたいこと言えるとこ、笑顔が可愛いとこ」
指折り数えながら話した。
らん「////」
龍「んで、赤坂は?」
らん「わ、私は、優しいところ、正義感が強いところ、褒めてくれるところ、明るいところかな?」
春樹「なんか照れるな」
龍「顔赤くなってる」
春樹「う、うっせ!」
クレナ「2人とも可愛い」
番外編〜蓮の過去〜
俺は親父さんに龍の事を話した。
妖怪に命を狙われてる事やボディーガードとしてクレナちゃんが側にいた事は話しを聞いていた為、蓮さんは知っていた。
春樹「すみません親父さん、俺は龍を止められなかったっす」
蓮「君が謝ることはないよ、それに仮にその場に俺がいたとしても止めなかったさ」
春樹「え」
蓮「惚れた女を守るのは男の役目だろ?」
春樹「親父さん・・・あの」
蓮「何だい?」
春樹「お節介なのは分かってるんすけど
蓮さんはもう結婚しないんすか?蓮さんなら相手がいくらでも・・・」
蓮「うん、俺の妻は生涯で睦だけだからね
睦を好きなまま他の女を愛せるほど器用じゃないんだ・・・と、カッコつけてはみたが
本当はまた失うのが怖いだけなのかもしれないな
正直言うとね、俺は睦の後を追いたかったんだ
でも龍がいた、春樹君、君や凛ちゃんもだ
ありがとう、君達には感謝しているよ」
春樹「そんな・・・蓮さん、それは俺の方っすよ
俺も蓮さんには凄い感謝してるんす
俺に関心のなかった両親の代わりに可愛がってくれて
ずっと尊敬してるんですから!」
蓮「フッ、ありがとう春樹君、俺はね、最近楽しいんだよ
君達が成長していく姿を見ているからだろうね」
春樹「あんま成長した気はしないんすけどね」
蓮「いやいや、目に見えないところで必ず成長しているから大丈夫だよ」
春樹「ありがとうございます、蓮さんにそう言ってもらえると自信つきます」
蓮さんと睦さんは高校卒業と同時に18で結婚した。
19で龍が産まれた。
だがその5年後、睦さんは病気で亡くなった。
それから9年間、蓮さんは彼女さえ作らなかった。
声をかけられている所を何度か見かけた事もあったけど
蓮さんは一度も首を縦に振る事はなかった。
蓮「ところで・・・」
春樹「?何すか?」
蓮「最近、らんちゃんとはどうなのよ」
春樹「え!?///いや、どうって・・・」
蓮「なに、まだなの?」
春樹「まだ何もないっすよ・・・」
蓮「ひょっとしてキスもまだ?」
春樹「蓮さん、俺をあまりいじめんで下さいよ・・・」
蓮「いやーすまんすまん、春樹君は反応が素直だからついからかいたくなっちゃうんだよねぇ」
春樹「親父さん、俺どうしたらいいんすか・・・」
蓮「うーん、春樹君、こう言うのはあんまり深く考えない方が良いと思うよ」
春樹「うー・・・」
蓮「まぁでも、男は時には押しが必要なのは確かだな」
春樹「押し・・・」
蓮「そう!」
春樹「ちなみに蓮さんはどうだったんすか?」
蓮「ギクッ」
春樹「あ、その反応は何かあるんすね?」
蓮「いや、俺の話は参考にならないからさ」
春樹「いいじゃないっすか、この際、教えて下さいよ!」
蓮「そうだねぇ・・・あ、決して真似はしないでね」
春樹「?はい」
蓮「尊敬してくれている君に幻滅されるのは悲しいがそれも覚悟で話すよ」
16年前。
蓮(17歳)「へぇ、俺の事が好きなんだ?」
睦(17歳)「ええ、好きよ」
蓮「俺さー、人を信用できないんだよね、だから好きとか言われてもねぇ」
睦「じゃあどうすれば信じてくれるの?」
俺は顔だけは良かった。そのせいかどんなに荒れてても一定数近寄ってくる女がいた。
そして決まってこの台詞を吐く。
蓮「じゃあさ、俺の為にそこから飛び降りて死んでくれない?そしたら信じるよ」
蓮は窓の方を指差す。ここは3階だ。
春樹「うわぁ蓮さん最低!!」
蓮「まぁまぁ、とりあえず最後まで聞いてよ」
春樹「うー、分かったっす」
過去。
"何言ってるの?できる訳ないでしょ!?"
"私はただ蓮君の事が好きで・・・"
これでこの女も・・・。
睦「分かったわ」
蓮「え」
睦は迷う事なく飛び降りようとした。
俺は一気に血の気が引き、睦の腕を強引に引き寄せていた。
蓮「馬鹿じゃねーの!?マジで飛び降りる奴があるかよ!」
睦「だってあなたがそうしろって言ったんじゃない」
蓮「はー・・・分かった、とりあえずお前の事は信じる、だから飛び降りるのは無しだ」
睦「そう、それで、私はあなたの答えが聞きたいの
フラれる覚悟はできてるから一思いに振ってちょうだい」
蓮「分かった、けどその前に一つ聞きたい
俺のどこがそんないいわけ?」
命まで賭けるほどの理由って何なんだ?
理由なんてどいつもこいつも取って付けたようなもんばっかだ。
過去。
"だって蓮君かっこいいから"
"や、優しいところ!"
飽き飽きだよそんな台詞。
蓮「それって顔が好みって事?俺、あんたに一度も優しくした事ないだろ?つかそもそもあんた誰?」
蓮「それで睦の奴、何て答えたと思う?」
春樹「え、何だろ・・・」
睦「顔よ、それ以外ないわ」
蓮「だってさ」
春樹「あはは、睦さん最高(笑)、てか睦さんって意外とハッキリ言うんですね」
蓮「睦は普段は大人しいけど自分の言いたい事はちゃんと言える人でさ
それであまりにもはっきり言うもんだから
その瞬間から妙に気が抜けちゃってさ
こんな面白い女他にいない、手放したくない!って思ってその場で俺から告り直したってわけ」
「俺、あんたに惚れたわ、俺と付き合って」
春樹「はー、お二人にそんなエピソードがあったんすね!」
蓮「我ながら最低な男だったよ」
春樹「ほんとっすね!睦さんがいてくれて良かったっすよ」
蓮「本当にそう思うよ」
睦さんの話をする時の蓮さんはとても楽しそうだ。
春樹「そんな蓮さんがどうしてまた空手道場を?」
蓮「睦が空手道場の1人娘でさ
稽古場に連れて行かれた事があったんだ
その時だよ、生き生きしながらトレーニングしてる人達を見て
自分も空手道場を持ちたいって思ったんだ」
春樹「へぇ、空手って睦さんの影響から始まったんすね」
蓮「そうそう、睦の奴、あれで結構強かったんだよ、何度か大会にも出て優勝してたし
睦が本気で怒ったら俺は勝てなかったと思う」
春樹「マジっすか!?めちゃくちゃ意外だ・・・」
蓮「その時思ったんだ
俺は校内では喧嘩強かったけど、知らないだけで
実力を隠した奴は沢山いたんだろうなってさ」
春樹「それは確かにそうっすね」
蓮「いやー、ほんとあんないい女、他にいないよ」
春樹「あ、惚気っすか〜?」
蓮「ははは、これくらいの惚気は許してくれよ」
春樹「あはは」
蓮「俺さ、龍を見てるとほんと俺の息子なんだなってつくづく思うよ
自分より強い女に惚れるとことかさ」
春樹「確かにそうっすね笑」
蓮「俺の事、幻滅したろう?すまないね、尊敬してた男がこんなで」
春樹「まぁ最初は正直、幻滅したっす」
蓮「君は素直でよろしい」
春樹「けど、俺は蓮さんの良いところもいっぱい知ってるんで嫌いにはならないっす!」
蓮「ありがとう、そう言ってもらえると助かるよ」
春樹「また蓮さんの面白い話聞かせて下さいよ」
蓮「ははは、ヤバい話ならいくらでもあるよ」
春樹「楽しみにしてるっす」
蓮「まぁ何が言いたいかって言うと、そんな馬鹿な俺でもずっと側にいてくれる人がいたんだから
春樹君は大丈夫さ
君は相手の嫌がることはしないだろうし
多少自分本位になっても暴走してしまう事があっても
それを受け入れてくれる人は必ずいるよって事かな」
春樹「蓮さん・・・ありがとうございますっす
俺、やっぱり蓮さんの事、尊敬してるっすよ!」
蓮「ありがとう」
睦の話しをしていたらさつき先生の事も思い出しちゃったなぁ・・・。
先生との会話。
蓮「何で先生は俺を見捨てないんだ?周りの連中はみんな俺の事を諦めてるのに」
さつき先生(蓮の担任)「生徒はみんな可愛いわ、もちろん葉山君もね」
蓮「俺もって・・・」
さつき先生「君は若さゆえに自分を見失ってるだけよ
それは時期に見つかるわ」
蓮「何だよそれ」
さつき先生「葉山君は大丈夫よ、だって葉山君はまだ生きてるんだから」
その言葉の真の意味を知ったのは2か月後の事だった。
さつき先生は病気で亡くなった。
俺と最後に話した時にはもうすでに先が長くないと
医者から言われていたそうだ。
二人きりになると睦は蓮の頭撫でた。
蓮「何」
睦「落ち込んでるのかと思って」
頭を撫でられて反抗するかと思いきや蓮は大人しかった。
あら・・・さつき先生の事、相当ショックだったのね。
睦「あなたってまるで迷子になってる子どもみたいね」
蓮「かもな」
変わったわね蓮、前までのあなたならふざけんなって反論してたのに。
変わってしまうのね、あなたもこの街も・・・蓮、あなたには言わなかったけれど私はそれが寂しかったのよ。