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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

道徳の授業

作者: 骨董屋

気楽に読んで下さい

 “男は、誰もいないとある山の麓に来ていた。その山では、金が沢山採れた、と噂されているからだ。周辺の地域では、一際目立つ聳立した山であったが、立ち入りは政府によって禁止されていた。しかし、男は柵を超えて森林の入り口へと入っていった。”

 「皆さんは、このお話についてどう思いますか?まずは自分で考えてみてプリントに書いてから、周りの人とも話し合ってみましょう。」

道徳の時間、先生が子供達に問いかける。こんな漠然とした質問ではいくらもう直ぐ高校生と言えども、一体何を考えて話せばいいのか分からない。先生は生徒が困っているのを察して、付け加える。

「えー、では、この男の人は何のために山へ入ったのか、考えてみましょう。」

それを聞いて、生徒たちの手はサッとプリントへ動いた。先生がしばらくして生徒たちが書いたプリントを見て周った。“お金が欲しかったから” “金が必要だったから” “生活にお金が必要で仕方なかった” “森林が楽しそうだったから” “高い山の頂上に登りたかったから” “家族のために金を採掘するため” etc…。後も同じような意見ばかりだった。やがて1人の生徒に先生は質問をした。

「なぜお金が必要だと考えていると思うんですか?」

生徒は答えた。

「金が沢山採れるからって書いてあるからです。」

「確かにそうですね、ありがとう。」

教室に、慣行の拍手がパラパラと響く。

「でもさ、誰もいないということはもう採り尽くされたんじゃないの?噂も広まってるんだしさ。」

1人の生徒が、閃き顔でそう言った。

「たしかにそうじゃん!」

「頭いい!」

この50分間で1番の盛り上がりを見せて、先生もまたうなづいていた。話はそれから、男が山に入った理由を都市伝説らしく考察する話題に移り変わった。しばらくして、先生がこう言った。

「このお話は、実は私が作ったんですよ。皆さんそれぞれ考えられて素晴らしいですね。」

生徒は興奮しつつ、作者である先生に皆んなが気になっている質問をした。

「男の人が山に入った本当の理由ってなんですか!?」

「本当の理由、正解は無いんですがね…昔話をしましょう。私が二十歳頃ですね、丁度君達ぐらいの子供を拾っていたんですよ、戦争孤児だったんですけどね。殺しちゃったんですね、私が。」

生徒たちの表情が変わるが、先生の責任感から来た言葉だと思い込んで、静かに聞いていた。

「私も生活が苦しくてねえ、苦しくて、でもね、ある日、私が住んでいた付近の山で金が沢山見つかったんですよ。」

「それで私も少しは生活が楽になると思って。だけど、出てきた金、全部政府が持ってって、外国の金持ちの手に渡っちまったんです。ついに、食べ物が尽きちゃって。もう孤児の世話ができなくなったからさ、せめてあの子たちを社会に貢献させて存在を知らせようと…死体にして、あの山の、金が掘られた後に空いた穴に、いや、墓穴に入れて、政府のやり方に被害について抗議したんだよ。後日政府がそれを見つけて、大混乱してたな、アハハ。きっとね、子供達も政府の様子見て、満足したんじゃないかな。」

生徒は先生と目を合わせることができなくなっていた。

「ああ、ごめんなさいね、話が長くなってしまったけど、正解は」

「金を掘ったときにできた墓穴で、抗議する為、でした。分かる訳ないし、道徳に正解なんて無いんだけどね。」

生徒は時計を見て、経過した時間の短さに驚いたのだった。

ありがとうございました。




先生解雇決定!

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