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少女漫画的恋愛のススメ

作者: 玉菜

 昼休み、女子の集まりとくれば会話の内容は大体決まってくる。昨日のテレビ番組、陰口文句、恋愛トーク、かっこいい芸能人、何年何組の誰々君がかっこいい、大体こんなところだろう。今まさに私が加わっている会話もそういったものだ。さっきは昨日やっていたドラマの話で盛り上がっていたが今は校内のかっこいい人の話題に変わっている。正直、私はこの手の話が苦手だ。いまどきの子が言う『かっこいい』ってよく分からないし、そもそも男子をそういう目で見たことが無かった。高校生にもなって流石にどうかと自分でも思うけど感心が持てないのだから仕方ない。

 だから、私はいつも何となくグループに加わって話を聞き流しながらお弁当を食べていた。どうでもいいけど、お母さんお手製のお弁当は何故か卵焼きだけが手作りでそれ以外は冷凍物だ。今日の冷凍物は小さなカップに入ったグラタンとグリーンピースの乗ったシュウマイとひじきの煮物で、私は冷凍物のひじきはあまり好きではない。何度お母さんに入れないでと言っても覚えてくれない。残すのは勿体無いから食べるけど。

「ねぇ、結花はどう思う?」

「ふぁひ?」

 ご飯を口に入れたときに話を振られ変な言葉になった。ひじきのことで頭がいっぱいで話を聞いていなかった。

 話を振ってきた佳織はわざとらしい溜息を吐いて、聞いてなかったの、と呆れた声を出した。佳織は高校に入って初めて出来た友達でよく話し掛けてくれる。興味の無い話題が多いこのグループに加わってお弁当を食べるのも佳織が誘ってくれるからだ。他の子が、結花はこういう話興味無いもんねーと相槌を打つ。興味の無い話を振ってくるのもどうかと思うがとりあえず首を傾げてもう一度話を繰り返してもらう。

「北刈くんってかっこよくない?」

 改めてされた質問に持っていた箸を落しそうになった。

 北刈といえば、同じクラス、しかも隣の席の北刈裕一のことだろう。なるほど、いくら男子に興味がない私といえど隣の席なら分かるだろうと思ったのか。

 そういえば、今の席になった時「席交換して」って言いに来た子がいたのを思い出した。その子の席は真ん中の列の前から二番目で結構当てられやすい場所だったから断ったんだっけ、それに窓側から二列目の後ろから二番目の席を譲れる訳が無かった。ちなみに北刈君は窓側の隣だ。

 北刈君の席を見た。彼の席はもぬけの殻で本人はいない。教室を見渡してみてもその姿を見つけることが出来なかった。恐らく別の場所で昼食をとっているのだろう。

 私が北刈裕一に対して思っていることといえば……

「女みたい」

 ご飯を飲み込み、ぽつりと言った言葉に身を乗り出すくらいの勢いで聞いていた友人達は呆気に取られていた。彼女たちにとって私の意見は予想斜め上くらいをいっていたようだ。

 顔立ちは整っていると思うが、二重のくりくりした目、白い肌に華奢に見える身体、サラサラの髪はショートボブくらい、身長は気にしたことが無いから覚えていないが、北刈裕一という人物はいわゆる中性的なタイプだった。制服でいるならいいが、私服、それがもし女子も着そうな物だったならば女と間違えられても不思議は無いと思う。ただ、かっこいいかと問われれば何か違うような気がした。違う意味で女の子の憧れではあると思うけど。

 そのあとは、私の発言で白けてしまったのか全く違う話になっていた。

 昼休みが終わり席に戻ると、隣の席の主も帰ってきていた。


 放課後、既に居ない北刈君の席を見ながら先程まで見ていた彼の横顔を思い出す。午後からの授業は気がつけば視線が北刈君にいっていて授業内容は全く頭に入ってこなかった。やっぱり肌白いとかまつげ長いなとか化粧栄えしそうとか女子に対する褒め言葉ばかりが浮かんできた。

 しかも、何度か目が合いそうになって視線をそらすたびに微妙な気分になったし、無意識に相手を見ているなんて少女漫画の主人公みたいだ。そういう自分を想像してみたら寒気がした。もしかすると鳥肌もたっているかもしれない。今後、自分で少女漫画っぽい妄想をするのはやめよう。

 友達に声を掛けられてようやく北刈君を頭の外へ押しやり、教室を出た。


 ◆


 二時限目が終わった休み時間、廊下を歩く私の腕にはクラスメイト分のノートの重みがあった。一冊ずつではペラペラのノートでも四〇人分も集まれば結構な重さになると今身にしみている。一時限目は我がクラス担任の英語の授業だったのだが、当てられた問題に答えられずこうして授業で回収されたみんなのノートを職員室で受け取り教室へ運ぶ羽目になっている。元々英語は大の苦手だったが、更に嫌いになった。

 三階の教室から棟が違う職員室までは、二階に下りて渡り廊下を通って行かなくてはいけない。往復するだけでも結構距離があるのに帰りにこの重量は辛い。

 母国語もろくに使えない若者が多いのに二ヶ国語とか馬鹿なんじゃないだろうか、英語なんて勉強したい人だけ勉強すればいいんだ、なんて愚痴愚痴思いながら、よいしょとノートを抱え直すと三時限目の予鈴が鳴った。廊下で話していた生徒が散開して教室に戻っていく。

 私のクラスは階段を上って二つ目の教室だけど急がないと間に合わないかもしれない。次は生物で先生より少しでも遅く教室に入ると五月蝿い人だったのを思い出して歩くスピードを速めた。階段も一段飛ばしに上りたいところだが、抱えたノートの束がそれを許さない。ノートをばら撒かないように階段を駆け上がり、もう少しと気を抜いたのが悪かったのか段に躓いて転びそうになり咄嗟に近くの手すりを掴んだ。

 セーフ。この歳になって階段から滑り落ちるなんて恥ずかしい真似はしないで済んだ。しかし、当然ながら抱えていた重みは無く、体勢を立て直して見渡すと見事に散らばっていた。

 とにかく拾わないと、と思い踊り場を振り返ると北刈君がそこにいた。滑り落ちていたノートに向いていた視線が私に向いた。引いていた血の気が一気に上ってくるのが分かる。昨日に引き続いての少女漫画的な展開に頭を振る。

「どうかした? 早くしないと授業始まるよ」

 近くから聞こえた声に驚いて顔を上げると目の前に北刈君の顔があった。正面から近くで見た北刈君は綺麗で慌てて頷き残りのノートを拾う。二人で走って教室の前までくると北刈君は持っていたノートを私に渡して「ありがとう」を言う間も無く教室に入っていった。数歩遅れて教室に入ると丁度本鈴が鳴った。ノートをロッカーの上に置いて席に着くと同時に先生が入ってくる。本当にギリギリだった。

 お礼を言おうと隣りをちらっと見たら近くで見た顔を思い出して、やっぱり顔を伏せた。


 帰宅して部屋に戻ると鞄を机の上に置いて制服のまま布団にダイブした。

 結局、あのあともまともに顔が見れなくて北刈君にお礼が言えなかった。ドジを見られた上に手伝ってもらったのにお礼が言えなかったなんて、私最悪だ。後悔しながらも頭の片隅では、北刈君って結構身長高いなどと思い出していた。よく考えたら階段では一段くらい差があったはずなのに同じくらいの目線だったし。恋人の身長差は男性が一〇センチ高いのが理想だと聞いたことがある。学校の階段一段分ってどのくらいだろう。私の身長が一五〇後半だから一六〇後半くらいの相手か。

 そこで何を考えているんだと枕に顔を埋めた。本当に少女漫画の恋する乙女状態だ。

「それもこれもいきなり話を振ってきた佳織が悪い。意識し始めたのもあの会話のあとだし、それにそんなときに漫画みたいに現れる北刈君も悪い。そうだ、これはつり橋効果みたいなもんだ、一時の気の迷い、きっとそうだ」

 言っていてむなしくなった。とにかく、明日は北刈君にお礼を言おうと決めて制服を脱いだ。


 ◆


「最悪……」

 放課後、掃除当番は私のグループでゴミ捨てに行く人を決めるじゃんけんで一人負けした。ゴミ袋を両手に持って回収場所に向かう。結局、今日も北刈君にお礼は言えなかった。というのも、佳織が昨日彼氏にデートすっぽかされたとかで休み時間になるたびに私のところにきては愚痴を聞かせていったせいだ。佳織は彼氏と何かあると何故か私に話に来た。帰りには次のデートの約束とプレゼントの要求を取り付けたと上機嫌だったけど。

「……の……」

 分別されたダストボックスにそれぞれのゴミを入れて教室に戻ろうとしたらかすかに声が聞こえた。好奇心だけで声のする方に近付くとここ数日で見慣れた北刈君がいた。向かい側には知らない女子も。ドキッとした。声の主は彼女のようだ。地雷を踏んだと思いつつも校舎の影に隠れたまま聞き耳を立てた。

「……あの、私ずっと、北刈君のこと見てて、その……好きですっ」

 やっぱりか、と静かに息を吐いた。自分がしているわけじゃないのに心臓がやけに五月蝿い。この間がじれったい。答えはまだかと更に聞き耳を立てた。

「ごめん」

「――っ」

 答えが聞こえて息を呑んだ瞬間、ばたばたとこっちに走ってくる音が近付いてきた。咄嗟に逃げるなんて選択肢は出てこなくて出来る限り壁に張り付いてみた。走ってきた彼女は周りを気にする余裕も無かったのかそのまま通り過ぎていった。足音が遠ざかっていくのを聞いてほっと胸を撫で下ろした。教室に戻ろうと壁から離れると

「見てた?」

 見たことの無い――といっても意識していたのはここ何日かだけど――子悪魔のような笑顔の北刈君がこっちを見ていた。昨日とは逆に顔から血の気がさっと引いて、別の意味で言葉が出なくなった。彼女に気を取られていて北刈君のことをすっかり忘れていた。

「覗きなんて悪趣味だよ、菊地さん」

「違っ、これは事故っていうか、偶々、そう偶々!」

 ぐるぐると回る思考で弁解しようとしてもうまく出来なくて、とはいえニヤニヤ笑う北刈君にはうまく弁解したとしても聞く耳を持っていないような気がした。好奇心は猫をも殺す、穴があったら入りたい、今の状況にぴったりの言葉だった。

 また明日、と立ち去ろうとする北刈君を思わず呼び止めた。自分でも何故呼び止めたのか分からなかった。

「昨日はありがとう!」

 北刈君は何のことか分からないようでぽかんとしていた。言った私も自分に呆れているくらいだ、言われた方はもっとわけが分からないだろう。でも、咄嗟に出たのが昨日のお礼だったのだから仕方ない。ええい勢いで押し切れと言葉を続けた。

「休み時間、ノート拾ってくれたから」

「あー、うん、どういたしまして。それだけ?」

 頷くと北刈君は今度こそ私の横を通って行ってしまった。緊張の糸が切れてまた壁に背中を預けた。興奮した身体に冷たい壁がとても気持ち良かった。

 そういえば、北刈君が私の苗字を呼んだことに今更気付いた。そんなことに気付かないくらい余裕が無かったことに凹んだ反面、名前を知っていてもらえたことが少し嬉しかった。私はクラスでも別段目立つわけじゃないし、隣りの席だけど北刈君とまともに話したのは昨日が初めてだったくらいだ。私はクラスで目立つ男子の名前しか覚えていないし、北刈君だってそういう女子の名前しか覚えていないだろうと勝手に思っていた。実際、私の名前がぱっと出てこないクラス男子も結構いると思う。

 辺りが赤く染まり始めた頃、ようやく長い間ぼーっとしていたことに気付いて、教室に鞄を取りに戻って帰宅した。


 ◆


 今日は寝起きから実にブルーだ。昨日の生告白シーンがかなり衝撃的だったのか夢にまで見てしまった。それが昨日の再現だったならまだいい方だ。告白していた女子が自分に入れ替わっているなんて悪夢でしかない。こういうとき、隣りの席というのが恨めしい。なんなら今日からでも席を換わって欲しいと言ってきた子に明け渡してあげたいくらいだ。誰が言ってきたか覚えてない時点でそれも叶わないことだけど。

 教室に入ると北刈君はまだ来ていなかった。必要最低限以外、自分の席にいたくなくて鞄を机の横にかけると友達と話している廊下側の佳織の席へ向かった。

 昼休み、佳織には用があるからと断ってお弁当を持って屋上に来ていた。本当は用なんて無かったけどあまり教室にはいたくない気分だったのだから仕方ない。緑色の高いフェンスに囲まれているここは生徒には開放されていないけど鍵が壊れたまま放置されていて自由に出入りできるようになっていた。それでも、来るのはサボり目的の人か一人になりたい人くらいでいつも閑散としている。ぐるりと見渡して誰もいないことを確認する。

 フェンスに駆け寄り手をかけ、息をめいっぱい吸い込んだ。

「あーーーーーーーーーーっ!!」

「うわ、ばかっぽい」

 自分以外の声に驚いて振り向けば今日一日避けていた相手がドアを開けて立っていた。頬が引き攣っているのが分かる。北刈君には醜態を晒してばかりだ。少しだけ泣きそうになった。唯一の出入り口を北刈君が塞いでいるから逃げるならフェンスを乗り越えて飛び降りるしかないが、生憎こんなことくらいで死にたくは無い。

「折角だし一緒にご飯食べよう。ほら、いつまでも牽制してたらその弁当お持ち帰りになるよ」

「え……あー、うん」

 普通に話し掛けられて思わず頷いていた。いつのまに隣りに来ていたのか、促されるままその場に座りお弁当を広げた。北刈君はビニール袋から紙パックのジュースとパンを取り出して齧り付いていた。会話は無く、お互い黙々と食事を続ける。いつもそんなに美味しいとは思わないけど、相変わらずの冷凍物ばかりのお弁当は今日はいちだんと味気ない気がしてかき込むようにお腹に収めていく。お弁当箱はあっという間に空になった。

 あのさーと声がして北刈君を見ると先に食べ終わっていたようで手持ち無沙汰なのか紙パックを持ちながらぼんやりと空を眺めていた。

「菊地さん、俺のこと女みたいって思ってるでしょ」

 言葉が出なかった。その話は佳織たちとしていて、その場に北刈君はいなかったはずだ。

 誰かが言った? 誰が? そもそもこんなことを言って誰が得をするんだろう。

 何がなんだか分からなくなって唖然としていると、北刈君はそんな私を見て吹きだした。

「すごい間抜け顔。何で知ってるか教えてあげようか、佳織に聞いたんだ」

「佳織が? 何で」

「だって、俺が聞いてって頼んだし」

 何食わぬ顔でさらっと何でもないように言うものだからそのまま納得しそうになったが、やはり意味が分からなかった。何がだってなんだ。今、北刈君をどう思うか聞かれたら私は迷わず「変」と答えるだろう。

「この外見嫌いなんだよね。白いとひ弱そうに見えるし、ちょっとでも焼けると赤くなってひりひりして痛いし、童顔のせいで服屋の店員に可愛い系ばっか勧められるし、時々おっさんに尻触られるし。本当最悪」

 北刈君は眉間に皺を寄せてぐだぐだと愚痴り始めた。脈絡の無い話の変わりように驚いたけど、北刈君の視線は私に向いていなくて話に夢中になっている間がチャンスと静かに腰を上げた。自分的には細心の注意を払って腰を上げたつもりだった。その体勢のまま動けずにいるのは、北刈君のひんやりとした手がアスファルトについた私の手首を握っているせいだ。

「どこ行くの?」

「そろそろ教室戻った方がいいかなーって」

 私の言葉に合わせるようにチャイムが鳴った。ほら、と言っても手を離してくれる気配も動こうとする様子も無かった。

 不意に掴まれた手を引かれ、中腰状態だった私はバランスを崩して背後のフェンスが派手な音を立てる。背中とお尻に鈍い痛みと冷たく硬い感触。いきなり日が翳って顔を上げれば北刈君の顔が近くにある。私を囲うように伸ばされた手はフェンスに掛けられている。無表情でぞくっとした。

「授業とかどうでもいいよ。さっきの続き、何で俺があんなこと聞いてもらったか知りたくない? あと佳織との関係とか」

 気になってるでしょと聞かれれば、首を横には振れなかった。それに、例え首を横に振ったとしても素直に解放してくれるとは思えなかったし。とりあえず、大人しくしておくのが得策だと判断して黙っていたら昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴った。

「怒られたら北刈君のせいだからね」

「日頃の行いがよければ大丈夫だよ。それとも、俺が誘って二人で屋上でサボってましたって言う?」

 何が楽しいのか嬉しそうに笑う北刈君に絶対止めてと釘を刺した。二人でいたなんて余計何を言われるか分かったものじゃない。残念と返してきた北刈君は肩を竦めて本当に少しだけ寂しそうに見えた。さてと改め、ようやく本題に入った。

「まず佳織との関係だけど、いわゆる幼馴染ってやつ。家が近所で俺の両親と佳織の両親の仲が良くて今でも家族ぐるみで付き合ってるってだけ。学校じゃあんまり話さないけどプライベートだと結構喋ってる。

 で、何であんな頼みごとしたかっていうと、菊地さんに俺のこと見て欲しかったから。最初は佳織がちょいちょい話題に出すから気になってて、偶々隣りの席になったときはちょっとだけ運命感じたりとかして、そんな感じ!」

 頼みごとのくだりの辺りからどんどん顔が赤くなっていく北刈君を見ていたら、感染するみたいに私の顔も熱くなった。本当は俺じゃなくて佳織から言ってきた、とか言い訳のようなことをぶつぶつと言っているが、私はまんまと二人の作戦に乗せられてしまったらしい。確かに佳織に聞かれてから北刈君のことを相当意識したし、恋愛感情のようなものを感じたような気もする。でも、私たちはお互いをまだ知らなさ過ぎる。数日意識しただけの私と佳織から話を聞いていただけの北刈君。『好き』というにはまだ幼すぎる感情。

 恥ずかしくてコンクリートを見ていた顔を上げて北刈君を見た。やっぱり照れくさいのか赤く染まった顔はそっぽを向いていた。

「ねぇ、良かったら友達から始めない?」

 出来るだけ自然に見えるように笑顔を作った。今度は北刈君が驚いていて形勢逆転したような気分だ。体勢は相変わらずだけれど。少し意地悪がしたくなって友達じゃ嫌? と聞けば、勢いよく首を左右に振った。

「じゃあ、名前で呼びたいから、名前で呼んで欲しい」

「え、と……裕一君?」

「結花」

 見つめ合って名前を呼び合うなんて、なんだか可笑しくて吹き出した。つられて裕一君も笑う。

 なんだか『恋人を前提としたお友達』みたいだと思った。



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