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冥王、生徒にクラス目標を示す

ーー何てこと!冥王の魔の手が学園に及ぶなんて…!去年はブレイズくんが起こしたトラブル、微妙になった人間関係の修復に駆け回って大変だと思ったけど、今年は冥王!一体、どうすれば…?

--まずは敵を知らなければ…

そう考えたフィオナはZクラスに赴くのだった…。


Zクラス

--Zクラスの居眠りじーさんが実は大賢者様だと義父から知らされ、義兄たちと一緒にZクラスに入れるように言われたから、試験の点数を抑えたら…義兄たちは普通にSクラスだった。大賢者様がお辞めになったということを私にだけ知らせなかった…。


--数日放置されたかと思ったら、新しく来た担任は『冥王』を名乗っている…。過酷な冒険で頭がおかしくなったの?そんな人にZクラスとは言え、仕事をやらせるなんて…。ああ、学校が終わったら召使いと一緒に仕事をしなければならない自分と重ねてしまったわ…。


アーシェは冥王とその部下を名乗る二人の挨拶を聞きながら、物思いに耽る。

卒業後の自分の行く末、それよりも今日の夜に自分を待ち受ける運命を考えると暗澹とした気持ちになるが、自分の暗い未来については考えないようにしている。その未来と現在の訳の分からない状況と比べると頭がおかしくなるような気がしてくる。


「ヒョヒョヒョ。愚かなる人間どもよ。冥王様直々に教えを受ける喜びに打ち震えるがいい!」

冥王の部下を名乗るスケルトン--ガイコツという名前らしい--が劇の悪役のように高らかに謳い上げる。

スケルトンにこのように言われ、クラスのほとんどの生徒の顔がひきつる。一応、『スケルトンに化けた猛者』という説明を受けているが、何故スケルトンに化けているかという点については何も説明は意味が分からなかった。


「ホホホ。ガイコツさん、右も左も分からないような子供相手に脅すような事を言ってはいけませんねえ。」

「冥王様!差し出がましいことを言ってしまい、申し訳ありません!」

「ホホホ。アナタも生徒さんたちを前にテンションが上がってしまったのでしょう。」


--何なの、あの兜をかぶったスケルトン。名前も『ガイコツ』なんてそのまんまじゃない!

冥王を名乗る男とスケルトンの寸劇を見せられ、アーシェは混乱してくる。父を亡くし、母と別れてから、心と感情を切り離して生きてきたというのに、うまく切り離せなくなってきている。


「ホホホ。では、まずは自己紹介をお願いしたいですねえ。出席番号順にお願いしますねえ。」

冥王を名乗る男は意外にも普通の教師のように言うのだった。


◇◆◇

「ホホホ。次にこのクラスの目標を…」

自己紹介も無難に終わり、冥王を名乗る男が次の話題を口にする。

「ヒョヒョヒョ。愚かなる人間どもよ、これがZクラスの目標だ!刮目して見るように!」

待っていたとばかりにスケルトン--もうガイコツでいいだろう--が一枚の紙を黒板に貼り付ける。


--え?【狂 戯 乱 盗 淫 弄 悦 惑】…?何なの?

アーシェはあまりの内容に驚く。およそクラス目標にするには不適当なものばかりだからだ。しかし、何かの本で見たような気もする。


「ヒソヒソ…八つの悪徳…『冥王秘術』の詠唱…。」

隣でつぶやく声が聞こえて来る。隣の席の太った男子生徒だ。ここ二、三日、アーシェの方を見ては話をしたそうにしているのだが、アーシェとしては見知らぬ男子とどう接すればいいのか分からないでいる。


ー『冥王秘術』!40年前の大戦で大賢者様と冥王の最後の激突で冥王が使った冥王の切り札!

大賢者様と冥王の一騎打ちは前大戦を題材とした劇の見せ場の一つだ。しかし、冥王の魔法の詠唱については変更が加えられていて、正確な詠唱を知るには『大賢者ゼニス回顧録』を閲覧する必要がある。しかし、『大賢者ゼニス回顧録』は王立図書館に一冊あるのみだ。それを知るとは…アーシェはその男子生徒に少し興味が湧いた。


「ちょっと待ったー!」

そこに突然、SSSクラス担任のフィオナが入って来て、静止をかける。


「人間の女!冥王様の御前で無礼であろう!しかも貴様、他のクラスの担任だろう!自分のクラスはどうした!」

冥王云々はともかく、ガイコツは当然の反応をする。


「ホホホ。ワタシが何をするのか気になって仕方がなかったのでしょう。ガイコツさん、少々の無礼は許して差し上げましょうよ。」

「は、仰せのままに。人間の女!冥王様の広いお心に感謝するといい!」

冥王はフィオナの乱入を面白く思っているようだ。


「あなた達ね〜!何なの!あれが目標だなんてふざけているの!しかもアレ、冥王の魔法の詠唱部分じゃない!おかしいとは思わないの!」

冥王秘術と言われる冥王の切り札は、呪文詠唱系魔法の最上位に位置する。呪文詠唱系は『詠唱』により魔力の回路を構成し、『宣言』により術者の魔力を流し込み、魔法を発動させる。その詠唱部分をクラス目標にしたのだ!


「ホホホ。ワタシがワタシの魔法から引用しても問題あるとは思いませんねえ。」

オリジナリティの問題としか受け止めていない冥王にフィオナは苛立ちを覚える。

「問題はそこじゃない!内容!『狂』とか『弄』とか、生徒の目標としておかしいと言っているんです!」


「ヒョヒョヒョ。冥王様の遠大なお心を理解せぬとは人間とは愚かなものですな。」

「ホホホ。仕方ないですねえ。それでは説明して差し上げますよ。」


SSSクラスの担任と最底辺のZクラス担任の言い争い…想像もしていなかったやりとりを生徒たちは見守るのだった。


--意味不明なことを言うに違いないわ!これを理由に学園から追い出してやるんだから!

フィオナはまずは冥王を学園から追い出すべく今後の展開を頭に浮かべるのであった…。

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