プロローグ② 学園長室での話し合いー冥王、Zクラス後任に推薦される?
『カクヨム』で連載中の猫目少将さま作『即死モブ転生からの成り上がりーーバグ技&底辺社畜力でひっそり生きていたら、主人公のハーレム要員がなぜか全員ついてきたんだが。主人公はしっかり王道歩んで魔王倒せよ。こっちはまったり気ままに暮らすから』の2次創作です。
本編で主人公が卒業した後の学園を描いています。
気になる方は『カクヨム 猫目少将』で検索するか、下記のアドレスで読んで頂きたいです。
https://kakuyomu.jp/works/16816927860525904739
ヘクトールの学園長室に学園長、SSSクラスの担任フィオナと特別講師の3人の高位冒険者が集まり、先程の戦闘について話し合いとなった。
「学園長!一体あれは何なんですか!」
フィオナが口火を切る。
「何って模擬戦だろう。あれほどの強者が野に埋もれていたとは…世界は広いものだということを思い知りました。」
高位冒険者の一人、ガイウスが答える。近接戦闘に長けた戦士だが、低位ではあるが攻撃・回復・補助魔法を習得しており、力技と魔法を織り交ぜた柔軟な戦術を用いる優秀な冒険者だ。
「彼らは『冥王とその部下』を名乗っていたのですよ!事実だとしたらとんでもないことですよ!」
フィオナは反論する。冥王は魔王軍の極めて強力な戦力だ。前大戦では、大賢者ゼニスとの一騎打ちに明け暮れていたが、一軍を壊滅させたという古い記録もあるのだ。
「冥王が学園に侵入できる訳がないだろう。魔王ですら音もなく学園の結界を破ることはできないというのに。」
高位冒険者の一人、マゾフがフィオナの反論を切り捨てる。世界でも有数の魔術師で高位レベルの攻撃魔法、中位レベルの補助・回復魔法、低位レベルの杖術スキルを習得している。
「伝承によると、冥王は魔法においては魔王をも上回るといいます。冥王が伝承通りなら結界の何らかの隙間から入り込むことも可能なはずです!」
冥王が魔王軍で畏怖される理由はこれなのだ。膨大な魔力量と魔法技術。魔王が『魔族で最も強い者』ならば、冥王は『魔族最高の魔術師』と評されている。
「王都及び学園の結界は大賢者様によって張られたもの。大賢者様は冥王をも上回る魔法の使い手。冥王ごときに大賢者様が張られた結界の隙間を見破ることなぞできまい。それは獣王を退けた際の戦いの記録から明らかだ。」
高位冒険者の一人、ニックが反論する。一流のスカウターにして僧侶という変わり者だ。高位レベルの索敵スキル、回復・補助魔法、中位レベルの短剣スキル、低位レベルの攻撃魔法を習得している。
前の大戦における冥王と大賢者の一騎打ちは、互いの秘術を打ち合い、大賢者が勝利した。そのため、大賢者はありとあらゆる面で冥王を上回るとされている。
「大賢者さまの回顧録によると、『あの時冥王に勝てたのは、一騎打ち前に冥王が獣王軍全体にかけた大魔法により、冥王の魔力が底を尽きかけていた』からです!冥王は決して侮ってはならない存在です!」
フィオナはなおも食い下がる。大賢者ゼニスだから何とか勝てたのであって、自分たちなら負ける可能性が高い。しかも、学園で戦闘ともなれば、巻き添えになるのは未来ある生徒たちなのだ。
「それは大賢者様が謙遜されているだけだろう。あれほどの高みに至っても決して慢心しない大賢者様の気高きお心に感動したものだ。」
ガイウスが答える。冥王が学園に侵入できないと思い込んでいる。フィオナも冥王がどうやって学園に入れたか分からないので、どうしようもない苛立ちを感じる。
「大賢者様と魔法の打ち合いをし、学園長の矢を避け続けた回避能力!冥王とその部下であると判断するには十分ではないでしょうか!」
要は結果だ。侵入方法が分からないが、『冥王とその部下』に相応しい実力を示している。これで、自分の意見を聞き入れてもらえるはずーーとフィオナは確信した。
「それは『設定』というヤツだろう。冥王を名乗り、冥王のように行動する事で限りなく冥王に近い実力を身につける。
私ごときでは到底思いもつかない修練法だ。」
しかし、マゾフにとってはそうではなかったようだ。他の二人もマゾフの意見に頷いている。
「でも、あのスケルトン!あれはアンデットですよ!アンデットを引き連れているなんて、魔に属する者に違いありません!」
アンデットを引き連れているのは、魔族か死霊術師のどちらかだ。いずれにせよ、人類の敵と言っていい。
「冥王の部下と言えばスケルトンだからな。我らの知らないアーティファクトの効果でスケルトンに化けた人間であろう。」
ニックが『人間をスケルトンに変えるアーティファクト』の存在に心躍らされている。大方、『人間を獣人に変えるアーティファクト』の存在を夢見ているのだろう。先日、獣人の女冒険者に振られて酒場で飲んでいるところを見たばかりだ。
(何なの!話が通じない…!)
事実を元に話しているのにーーフィオナの苛立ちは最高潮に達した。そして、よりにもよって最悪の提案がされた。
「学園長。我らから提案が。」
「現在、Zクラスの担任が空席になっております。」
「ですので、あの『冥王』殿に担当して頂くのはいかがでしょうか?」
後日 Zクラス
「ホホホ。ワタシが居眠りじーさんに代わってZクラスを担当する冥王です。よろしくお願いします。」
「ヒョヒョヒョ。冥王様、一の部下ガイコツです。よろしくお願い致します。」
クラスが静まり返る。基本的に放置されているZクラスと言えども、『冥王を名乗る変人』が担任になるとは思わなかった。クラス全員の思いが一致した瞬間だった。
「ヒソヒソ…担任不在で放置されていたけど…担任が冥王を名乗る変人って…。」
「ヒソヒソ…でも、実力は本物なんだろう?他のクラスのヤツらが言ってたんだけど、あの模擬戦を見て、教師連中、真っ青だったんだって?」
「ヒソヒソ…大賢者魔法の『オーディンの槍』を完全に防げる教師は学園にいないらしいぜ?」
「ヒソヒソ…え、マジ?なんかよく分からない盾を出して防いでたよな?」
「ヒソヒソ…あのガイコツも、ほぼ必中に近い学園長の矢を全部回避してたし…只者じゃねーよ。」
Zクラスの生徒たちは不安とも期待とも恐怖とも言えない気持ちになるのだった…ーー
ーー腐腐腐、この方が冥王様…。まさか、『あの方』とのお目通りが叶う前にお会いすることになるとは思わなかったわ。腐腐っ。
ーー冥王ねえ、何でもいいわ。アイツらに目にモノ見せてやれるならね…。
ごく一部の例外を除いては。
◇◆◇
(なんて事…冥王の魔の手が学園に及ぶなんて…!私がしっかりしないと…!)
フィオナは心に固く誓うのであった。