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プロローグ① 学園に冥王が現れ、戦闘になる

『カクヨム』で連載中の猫目少将さま作『即死モブ転生からの成り上がりーーバグ技&底辺社畜力でひっそり生きていたら、主人公のハーレム要員がなぜか全員ついてきたんだが。主人公はしっかり王道歩んで魔王倒せよ。こっちはまったり気ままに暮らすから』の2次創作です。


本編で主人公が卒業した後の学園を描いています。

気になる方は『カクヨム 猫目少将』で検索するか、下記のアドレスで読んで頂きたいです。

https://kakuyomu.jp/works/16816927860525904739

「『即逃げモンスター』と懐かしいのー。色々美味しかったのー。」

冒険者学園ヘクトールの学園長室。大賢者ゼニスは自身が見聞きした魔王軍の様子をかつての仲間であり、今はヘクトールで学園長の任についているアイヴァンに話した後、突如振られた話題にそう答えた。

「何であんなに美味しい特典があるのか謎ですよね。」

アイヴァンはかつての冒険を振り返りながら答える。


「ホホホ。ワタシがお答えいたしましょう。」

そこに突如、冥王が現れる。冥王は40年前の大戦で幾度となく戦った敵である。魔王軍の侵攻ではないかとアイヴァンは身構える。


「また来たのか。飽きない奴じゃのー。」

ゼニスのすっかり打ち解けた返事にアイヴァンは驚愕する。ゼニスと冥王は、前大戦で伝説として語られる一騎討ちを繰り広げた間柄だというのに…。


「め、冥王!貴様!」

邪法を用いてゼニスを籠絡したのか?アイヴァンに疑念がよぎる。


「ホホホ。昔、アナタから受けた傷が疼きますが、このお菓子で水に流して差し上げますよ。」

そう言いながら冥王はアイヴァンの前に置かれていたお菓子に手をのばす。

「良かったのー。」

まるで、子供時代の喧嘩の手打ちのような会話にアイヴァンは脱力する。

「わ、私のお菓子…。」


「ホホホ。『即逃げモンスター』とは、エンカウント後、即座に逃げてしまう、回避性能が高い、物理・魔法の耐性がボス以上に高いモンスターのことを言いますねえ。」

冥王が『即逃げモンスター』について語り出す。


「倒し方さえマスターすれば、どうという事はないがの。」

「マスターするのが大変なんですがね。」

ゼニスの返答にアイヴァンが呆れながら応じる。


「ホホホ。しかし、彼らが一部とは言え、魔王サンや勇者をも上回る能力を有している事が問題なんですよねえ。」

そこに冥王が問題提起をする。言われてみれば、魔族と人間の最高峰以上の能力を『即逃げモンスター』は有しているのだ。

「神の領域に近いのー。」

ゼニスが端的に評する。

「大袈裟な…。」

そうは言いつつアイヴァンは否定できなかった。

「ホホホ。その通りなんですよ、英雄サン。魔王サンにそこそこのダメージを与える伝説の武具でさえ、彼らには大して効きませんからねえ。」

伝説の武具ですら正攻法ではダメージを与えられないのが『即逃げモンスター』なのだ。


「神器クラスだと話は変わるのー。」

『神器』というのは神に由来するアイテム、あるいは神自身の所有物をいう。

「『冥王の剣』の必中効果ですか…。まあ、神器という割には攻撃力はショボい…。」

この『冥王の剣』は神器としてアイヴァンも知る剣だ。冥界に座するという『真なる冥王』の剣だ。かつてゼニスが所持し、今はその愛弟子に託されたという。ちなみに目の前の『冥王』は『冥王を自称する魔族』という扱いだ。故にこの『冥王』は箔付けのために『冥王の剣』を欲し、前大戦時にこれを所持していたゼニスから奪うべく、一騎討ちに明け暮れていたと言われている。

「ホホホ。人の剣に対してよくも言ってくれますねえ。

まあ、それは置いとくとして、『即逃げモンスター』の性能には、神クラスの存在、あるいは『世界のシステム』が関わっているのですよ。」

そう冥王は結論づける。


「外つ国には『神の靴』を預かる『即逃げモンスター』がいるというのー。」

冥王の言を肯定するようにゼニスが応じる。

「歩くだけでレベルが上がるという話を聞いて羨ましく思いました。」

かつて仲間だった外つ国の戦士の言葉が頭に浮かぶ。


「ホホホ。つまり、『即逃げモンスター』とは、神クラスの存在から何らかの使命を受けた存在、あるいは『世界システム』と何らかの関わりを持つ存在であり、そのために美味しい特典がある、という仮説をワタシは持っているのですよ。」


「なんじゃ、仮説か。」

「『あなたのかんそう』ですか。」

二人は冥王の言葉を期待外れに感じ、アイヴァンは外つ国の戦士がよく言っていたことを口にする。


「ホホホ。実際、どうなのか分かりませんが…まあ、いいでしょう。」

冥王の様子が戦闘態勢に移行する。

「お、やるかの?」

ゼニスが嬉しそうに言う。まるで、遊びに誘われたような反応だ。

「冥王、ここで会ったが百年目…!」

アイヴァンも応じる。ここで冥王を討てれば良し。討てずとも冥王の手の内を探れればまた良しとしよう。


「ホホホ。ワタシも立場上、魔王サンへの言い訳が必要なんですよねえ。では、戦いましょうか!」

楽しそうに冥王が言う。冥王は実力が伯仲している者との戦いを好むことをアイヴァンは知っている。

「僭越ながら私めも…。」

兜をかぶったスケルトンが現れる。40年前に見た顔だ。戦いに参加することはなく、冥王のサポートを行うスケルトンのはずなのだが。


「『オーディンの槍』!」

外に出てゼニスはいきなり大技を放つ。大賢者魔法の中でも屈指の威力を持つ魔法だ。周囲のマナを一気に消費し空気が冷え込む。

「『冥盾』!」

冥王は魔法のバリアを作り難なく防ぐ。


「何だ?当たらない?スケルトンの分際で!」

アイヴァンは驚愕する。アイヴァンの弓手としての能力は必中に近い。それを難なく躱すとは…『即逃げモンスター』と同等ではないか!


「ヒョヒョヒョ。冥王様謹製たる私めの回避能力と耐性をご覧あれ!」

スケルトンは叫ぶ。

ーー冥王が作っただと?『冥王を自称する魔族』に可能なのか?それとも冥王についての認識に誤りがあるのか?

アイヴァンに一つの疑問が生まれた。冥界に座す『真なる冥王』が何らかの力の制約を受けた上で現世に顕現したのがこの『冥王』とでもいうのか?『真なる冥王』なら、このレベルのスケルトンを作成可能なのではないか?

何故そんなことが…馬鹿らしい。気持ちを切り替えるために目の前の敵に集中するのだったーー


◇◆◇


(あわわわわ…。何なのあれ?)

魔法が炸裂する音にSSSクラスの教室から出たフィオナは窓から見える光景に驚愕する。


「模擬戦だな。」

「学園長も楽しそうにしておられる。生徒には連絡が入っていなかったのだろう。各教室に連絡を入れて見学だな。」

「しかし、冥王とその部下に扮しての模擬戦とは凝っているな。実力も冥王本人と言われても信じてしまうレベルだ。」


そこに通りかかったヘクトールの特別講師として教鞭を取る三人の高位冒険者が感想を述べる。


ーーそんな訳ないでしょう?え、でも、え?え?

学園長アイヴァンと共に戦っているのは、かつてZクラス担任で『居眠りじーさん』と呼ばれていたゼニス。昨年、SSSクラスの担任となったフィオナは、Zクラスに煮湯を飲まされてきた。しかし、それもZクラスの『居眠りじーさん』が大賢者ゼニスと知ってからは、その結果に妙に納得していた。


そのゼニスとアイヴァンは王国最強と言ってもいい。その二人と互角に戦っているのが、伝承に語られる冥王の姿をした男とこれまた伝承に語られる冥王の部下のスケルトン。戦いぶりからすると、冥王とその部下である事は明白だ。


気がつけば、教室から生徒が出てきて戦いに見入っている。SSクラスやSクラス、そしてAからDの教師や生徒も同様だ。


生徒たちはただ見入っているだけだが、教師たちは違う。自分があの場で何ができるか。冥王に扮した男は、大賢者が放つ『オーディンの槍』を魔法の盾で防いでいたが、自分たちにできるか。冥王に扮した男は『オーディンの槍』と同等の威力の魔法を放っているが、自分たちにできるか。彼らのように飛翔魔法を行使できるか…

そんな思いに駆られた。


◇◆◇

旧校舎。老朽化が進んでおり、壁や床に穴が空いているが、Zクラスのみが使用している。Zクラスは適性のない生徒に「ヘクトール出身」という箔をつけさせるためのクラスだ。何故か卒業後にほどほどの成功を収める者が多いため、放置されていても問題視するものは少ない。

昨年まで大賢者ゼニスが担任を務めていたが、ゼニスはある使命のために常に幽体離脱を行なわざるを得ず、結果として放置が常態となっていた。

ところが、ゼニスは退職し、昨年の魔王軍の学園襲撃の事後処理もあってか、Zクラスの後任は決まらず、担任すらいない状態で放置されている状態だ。とにかく、自習していろということらしい。


アーシェは放置されている状態を悪くは思っていなかった。オーヴェル男爵家の生まれだったが、幼い頃、父親を亡くし寄親のトゥール侯爵家に養女として引き取られた。

そこでは厄介者として扱われ、召使いの仕事も義務付けられた。家人や召使いからの心ない言葉はアーシェを傷つけた。ここ最近、男爵家から侯爵家に移った使用人たちが気を利かせてくれなければ、最後の誇りを失うようなことが増えてきた。

それに比べれば、Zクラスで放置されている状態は嫌ではない。アーシェの容姿に気後れしてか、誰も話しかけてこないからだ。

Zクラスの居心地は悪くはないが、Zクラスになったため、アーシェの利用価値が低くなったとトゥール侯爵は評価している。自らZクラスに入るよう指示したにも関わらず。

このため、アーシェがトゥール侯爵の駒として権力者に売られる時期が早まるだろうと感じている。いずれにせよ売られることは決まっているので、もう考えないことにするしかなかった。


どおおおおぉぉぉぉん!


そこに、魔法と魔法の激突による爆音が響き渡る。

クラス全員が教室から出て様子を見に行く。アーシェもその波に乗って見に行くことにする。

遠目に戦う者の姿が映る。

その瞬間、何故かアーシェは胸が締めつけられるような懐かしさを感じるのであったーー


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